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春 2
春の捌 淡竹とエンドウ豆の煮物 淡竹のメンマ風煮物
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タケノコの時期が過ぎてしばらくすると、淡竹のタケノコが出回り始める。
普通に売っているタケノコは孟宗竹という品種らしい。
代表的過ぎてタケノコと言えばほぼ無条件でこの品種を思い浮かべるだろう。
ビクターも、竹の種類があることは知っていたが、淡竹などを知るまではタケノコとして食べられる品種は一種類しかないと思っていた。
淡竹は孟宗竹から一カ月程度遅れて出回り始める。
寒さに強いおかげで、寒い地方で出回りやすい。北の方だとスーパーでも普通に売ってたりするらしい。
ビクターの住んでる地域はスーパーでは見かけないが、地元産のものが旬の時期だけ直売所に並ぶ程度だった。
「よしよし、今年も出てるな」
直売所で今年も地元の人が持ち込んだものが並ぶのを見て、ビクターは早速買い込んだ。
孟宗竹より細く長くいのが外見的特徴で、一見すると成長しすぎで硬そうに見えるが、そうではない。むしろ孟宗竹のタケノコより柔らかく、灰汁も少ないので灰汁抜きの手間も少ない。
「ついでに、うすいえんどう……は無いか、じゃあエンドウ豆を」
ちょうど取れる時期が同じなため、ビクターの中では淡竹はエンドウ豆と煮るのが定番だ。
うすいえんどうの方が皮が薄くてあまり青臭い感じもないので煮物にしても美味しい。しかし、今日は入荷が無いらしく、仕方なしに普通のエンドウ豆を買った。
それでも、十分に美味しいはずだ。
家に帰って、まずは灰汁抜きだ。
淡竹は前述の通り灰汁は少ない。水茹でだけで十分だ。
見るからに育ち過ぎの太いものを茹でる時や、灰汁が気になるようだったら、普通のタケノコと同じ様に米のとぎ汁や米糠を一つ紙入れて茹でても問題ないので、そこは好みだ。
まずは普通のタケノコを茹でる時と同じように、皮に縦に切り目を入れ、穂先を切り落とす。
このまま皮を剥いてしまってもいいが、やはり茹でた後の方が皮は剥きやすいし、皮の付け根の柔らかい部分……姫皮も美味しく食べられるので、ビクターは皮ごと茹でる。
淡竹は長く成長したものが多く、大鍋でも中に入りきらないものも多いので、適当な長さに切って鍋に入れた。
鍋に淡竹を入れてから、浮き上がってこないように重しに一回り小さい鍋の耐熱ガラスの蓋を入れる。
これは単に水に全体を浸けるための重しなので、皿など熱に耐えるものでそれなりに重いものだったらなんでもいい。
淡竹がしっかり浸かるだけの水を入れ、茹で始める。
沸騰するまで強火で、そこから弱火にして吹きこぼれないように四十分ほど茹でていく。
火を止めたら、完全に冷めるまでそのまま放置して、ゆっくりと灰汁を抜いた。時間の余裕があるなら、冷めた後も丸一日そのまま置いておいた方が確実に灰汁が抜けてエグみが無くなるので、そちらの方がおすすめだ。
灰汁抜きができたら皮を剥いて、今日使わない分は水に浸けて保存しておく。
「さて、作ろう」
基本的に、孟宗竹のタケノコと同じ食べ方ができるの(「春の参 タケノコ色々」などを参考に)が、料理はやはり同じ時期の食べ物と合わせて料理するのが楽しいし嬉しい。
孟宗竹なら蕨と合わせて煮たりするし、淡竹の時期なら買ってきたエンドウ豆だ。
出汁に酒と味醂と醤油で薄く味を付け、そこに適当な大きさに切った淡竹を入れて煮て行く。
淡竹は長めに煮て味を染みこませ、エンドウ豆は煮崩れないように最後に入れてサッと煮る程度。時間をずらして入れて煮るのがいい。
ビクターも淡竹を煮る間に、エンドウ豆の皮を剥いて豆だけにして、煮終わる五分くらい前に入れた。
エンドウ豆はサッと煮た方が豆の甘さがあって美味しい。
「ついでに、メンマ風の煮物も作っちゃうか」
メンマは中国の麻竹というタケノコを発酵させて乾燥したものを使うらしいが、メンマ風の煮物は他のタケノコとでもできる。
発酵も乾燥もしてないのでそっくりとまではいかないが、淡竹だと近い感じに仕上がる。
ビクターは淡竹の根元の方の固い部分を短冊状に切って鍋に入れた。
胡麻油を入れて、全体に馴染むくらい軽く炒める。
そこに淡竹が浸かる程度の量の鶏ガラスープの素と水を入れ、酒と醤油で少し濃い目の味付けに。好みで少量の砂糖とオイスターソース、そしてピリ辛好きなら鷹の爪。
それを十分ほど煮て、冷めるまで放置して味を染みこませたら出来上がりだ。
「さて、作ったからには今日食べたいよな。和風と中華風でチグハグだけど……」
そういいながら、適当に残り物や常備菜をだして、今夜の夕食の準備を整えた。
淡竹料理が和風中華風混在なので、食卓に並べた物はあえて和洋中折衷でチグハグにした。
「よし、食おう!」
まずは淡竹とエンドウ豆の煮物。
淡竹自体も少し青臭いような風味があるため、エンドウ豆と合う。
シャキシャキとした食感、孟宗竹のタケノコよりあっさりとした味。豆の甘みも相まって、これから夏になる味という感じがする。
薄めに付けた味が爽やかだ。
対照的にメンマ風はしっかりとした鶏がらスープの味にしっかりとした味付け。
鷹の爪を入れたのでピリ辛だ。胡麻油の風味もいい。
エンドウ豆と煮たのが日本酒向けなら、メンマ風はご飯に合う味だろう。
「いいな。もうすぐ夏って感じだ!」
淡竹のシャキシャキとした食感を楽しみながら、これから来る夏に思いを馳せるビクターだった。
普通に売っているタケノコは孟宗竹という品種らしい。
代表的過ぎてタケノコと言えばほぼ無条件でこの品種を思い浮かべるだろう。
ビクターも、竹の種類があることは知っていたが、淡竹などを知るまではタケノコとして食べられる品種は一種類しかないと思っていた。
淡竹は孟宗竹から一カ月程度遅れて出回り始める。
寒さに強いおかげで、寒い地方で出回りやすい。北の方だとスーパーでも普通に売ってたりするらしい。
ビクターの住んでる地域はスーパーでは見かけないが、地元産のものが旬の時期だけ直売所に並ぶ程度だった。
「よしよし、今年も出てるな」
直売所で今年も地元の人が持ち込んだものが並ぶのを見て、ビクターは早速買い込んだ。
孟宗竹より細く長くいのが外見的特徴で、一見すると成長しすぎで硬そうに見えるが、そうではない。むしろ孟宗竹のタケノコより柔らかく、灰汁も少ないので灰汁抜きの手間も少ない。
「ついでに、うすいえんどう……は無いか、じゃあエンドウ豆を」
ちょうど取れる時期が同じなため、ビクターの中では淡竹はエンドウ豆と煮るのが定番だ。
うすいえんどうの方が皮が薄くてあまり青臭い感じもないので煮物にしても美味しい。しかし、今日は入荷が無いらしく、仕方なしに普通のエンドウ豆を買った。
それでも、十分に美味しいはずだ。
家に帰って、まずは灰汁抜きだ。
淡竹は前述の通り灰汁は少ない。水茹でだけで十分だ。
見るからに育ち過ぎの太いものを茹でる時や、灰汁が気になるようだったら、普通のタケノコと同じ様に米のとぎ汁や米糠を一つ紙入れて茹でても問題ないので、そこは好みだ。
まずは普通のタケノコを茹でる時と同じように、皮に縦に切り目を入れ、穂先を切り落とす。
このまま皮を剥いてしまってもいいが、やはり茹でた後の方が皮は剥きやすいし、皮の付け根の柔らかい部分……姫皮も美味しく食べられるので、ビクターは皮ごと茹でる。
淡竹は長く成長したものが多く、大鍋でも中に入りきらないものも多いので、適当な長さに切って鍋に入れた。
鍋に淡竹を入れてから、浮き上がってこないように重しに一回り小さい鍋の耐熱ガラスの蓋を入れる。
これは単に水に全体を浸けるための重しなので、皿など熱に耐えるものでそれなりに重いものだったらなんでもいい。
淡竹がしっかり浸かるだけの水を入れ、茹で始める。
沸騰するまで強火で、そこから弱火にして吹きこぼれないように四十分ほど茹でていく。
火を止めたら、完全に冷めるまでそのまま放置して、ゆっくりと灰汁を抜いた。時間の余裕があるなら、冷めた後も丸一日そのまま置いておいた方が確実に灰汁が抜けてエグみが無くなるので、そちらの方がおすすめだ。
灰汁抜きができたら皮を剥いて、今日使わない分は水に浸けて保存しておく。
「さて、作ろう」
基本的に、孟宗竹のタケノコと同じ食べ方ができるの(「春の参 タケノコ色々」などを参考に)が、料理はやはり同じ時期の食べ物と合わせて料理するのが楽しいし嬉しい。
孟宗竹なら蕨と合わせて煮たりするし、淡竹の時期なら買ってきたエンドウ豆だ。
出汁に酒と味醂と醤油で薄く味を付け、そこに適当な大きさに切った淡竹を入れて煮て行く。
淡竹は長めに煮て味を染みこませ、エンドウ豆は煮崩れないように最後に入れてサッと煮る程度。時間をずらして入れて煮るのがいい。
ビクターも淡竹を煮る間に、エンドウ豆の皮を剥いて豆だけにして、煮終わる五分くらい前に入れた。
エンドウ豆はサッと煮た方が豆の甘さがあって美味しい。
「ついでに、メンマ風の煮物も作っちゃうか」
メンマは中国の麻竹というタケノコを発酵させて乾燥したものを使うらしいが、メンマ風の煮物は他のタケノコとでもできる。
発酵も乾燥もしてないのでそっくりとまではいかないが、淡竹だと近い感じに仕上がる。
ビクターは淡竹の根元の方の固い部分を短冊状に切って鍋に入れた。
胡麻油を入れて、全体に馴染むくらい軽く炒める。
そこに淡竹が浸かる程度の量の鶏ガラスープの素と水を入れ、酒と醤油で少し濃い目の味付けに。好みで少量の砂糖とオイスターソース、そしてピリ辛好きなら鷹の爪。
それを十分ほど煮て、冷めるまで放置して味を染みこませたら出来上がりだ。
「さて、作ったからには今日食べたいよな。和風と中華風でチグハグだけど……」
そういいながら、適当に残り物や常備菜をだして、今夜の夕食の準備を整えた。
淡竹料理が和風中華風混在なので、食卓に並べた物はあえて和洋中折衷でチグハグにした。
「よし、食おう!」
まずは淡竹とエンドウ豆の煮物。
淡竹自体も少し青臭いような風味があるため、エンドウ豆と合う。
シャキシャキとした食感、孟宗竹のタケノコよりあっさりとした味。豆の甘みも相まって、これから夏になる味という感じがする。
薄めに付けた味が爽やかだ。
対照的にメンマ風はしっかりとした鶏がらスープの味にしっかりとした味付け。
鷹の爪を入れたのでピリ辛だ。胡麻油の風味もいい。
エンドウ豆と煮たのが日本酒向けなら、メンマ風はご飯に合う味だろう。
「いいな。もうすぐ夏って感じだ!」
淡竹のシャキシャキとした食感を楽しみながら、これから来る夏に思いを馳せるビクターだった。
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