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閑話

クリストフ・レポート 13(書籍七巻後半ダイジェスト)

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  これはクリストフの回顧録である。

 ※これはクリストフから見た物語のダイジェストになります。クリストフ視点のため、メインストーリーでない部分が中心であったり、物語中に無いシーンが含まれていたりします。また、クリストフがその時点で知りえない情報は含まれていません。
 ※文中の『バカ』『バカリーダー』『リーダー』は全てディートリヒのことです。また『陰険グリフォン』「残虐グリフォン』などは全てグリおじさんのことです。



●月●日
 激動の一日から日付が変わり、早朝。
 ロアは昨夜から寝ずに鍛冶作業をしていた。

 えーと。
 まあ色々あって青少年のロアが眠れないのは分かる。
 何かに集中したくて気を紛らわしたい気持ちも分かる。ロアくらいの年齢なら、モンモンする類いの出来事が昨夜あったからな。

 だけど、鍛冶?
 鍛冶出来たんだな、ロア……。

 たしかロアは鍛冶はできないと主張していたはずだ。それも全力で。
 そう思って聞いてみたら、見よう見真似の素人鍛冶ならできるとのこと。
 ただ出来ることを知られるとマズい人間がいる手前、まったくできないということにしていたらしい。

 なるほどなと、オレは思った。
 知られるとマズい人間とは、やけにロアに対してだけ押しが強い暴力鍛冶屋だ。
 アレに知られるとロアは強制的に弟子にされてしまうだろう。隠すのも当然だと思った。

 ロアは黙々と作業を続ける。
 ひたすら続く作業を見つめながら、オレは色々と考えた。
 そして、考えに没頭していたのがいけなかったんだろう……。

 ここは外部からの侵入が容易ではない王城の島で、しかもロアは女王が手配した護衛に守られていると知っていたので、オレは油断していた。

 気付いた時には遅かった。
 オレは薬を使われ、意識を失った。



 そして、目覚めたのはどこかの島だった。
 オレは……いや、オレとロアは牢屋に入れられていた。

 調べてみると、内部の洞窟を利用して作った隠し港のある、いわゆる海賊島ってやつだった。

 ネレウス王国の周囲には、こういった海賊が隠れ住むための島が多数ある。
 大昔からネレウス周辺は海賊たちが多く集まる海域だったからだ。

 現在でも近隣住民に存在を知られないまま放置されている海賊島も多くあり、そういった島は悪事に利用されることも多い。

 オレたちは誘拐され、そういった発見されていない海賊島の一つに連れて来られたらしかった。

 オレとロアは服以外の持ち物を全て取り上げられていた。
 ただ、ロアは服に隠しポケットを作って色々と役立つ薬を隠し持っていたらしい。
 そのおかげで、助かった。

 ロアが誘拐されたということは、ロアの錬金術師としての才能に用があるということなのだろう。
 ロアに協力させて魔法薬を作らせるつもりに違いない。
 それならば、ロアの命は保証されている。

 ヤバいのは、オレ。
 ロアに対しての人質。もしくは見せしめ要因。

 ロアが魔法薬を作るのを拒んだ時に、痛めつけられたり殺されたりする可能性は高い。
 ロアがそのことに気付けば絶対にオレを守ろうとするだろう。

 オレはリーダーからロアを守る様に指示されていた。それなのにロアがオレを守ろうするなど、本末転倒だ。
 オレはロアに悟られないようにその事実を隠すことにした。

 しかし、その考えもすぐに無駄になる。
 オレたちの捕まっている牢屋に顔を見せた誘拐の主犯……アダドの第三皇子がバラしたからだ。
 まったく、面倒な事を。

 ロアは、オレを守らないといけないと気負ってしまっただろう。そのことを聞いて一瞬で表情が変わった。
 オレたちはすでに脱出するための計画を練っていた。
 脱出する時にロアが変な気を回したら、それが命取りになるかもしれないのに。

 何があっても、ロアが何を考えても、オレはロアを守らないといけない。
 それだけが、今のオレに課せられた使命だ。
 リーダーに指示されたからじゃない。オレ自身が、ロアを守りたいと考えていた。

 そんなことを考え、気負ってしまっていたからだろうか。
 いざ脱出計画を進めていた時に、オレはとんでもないヘマをしてしまった。

 いつもなら絶対にやらかさない様な、つまらないミス。
 ロアを気に掛けるあまり、どうやら気を回し過ぎて注意が疎かになっていたらしい。

 他人の命を背負って行動するってこんなに重い物なんだな。
 今更ながら、オレたちパーティーの、そしてロアの命を背負いながら行動していたリーダーの偉大さを知る。
 それでいて、いつもオレたちを気遣う余裕すらあったんだもんな。
 オレももう少し、成長しないとな。

 オレとロアはそのミスによって窮地に立たされた。
 もう逃げ場はないと思ったんだが……。

 …………何というか、もう笑うしかない。
 最終的には助かった訳なんだが……本当に笑うしかない状況だ。

 まるで土砂崩れのように。
 悪い事態が崩れ落ち、一気に好転した。

 助かったんだから文句を言ってる場合じゃないが、なんか納得がいかないぞ。
 ロアはこういう気持を味わいたくないから、自力で脱出することを提案したんだろうな。





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