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閑話
クリストフ・レポート 12(書籍七巻前半ダイジェスト)
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これはクリストフの回顧録である。
※これはクリストフから見た物語のダイジェストになります。クリストフ視点のため、メインストーリーでない部分が中心であったり、物語中に無いシーンが含まれていたりします。また、クリストフがその時点で知りえない情報は含まれていません。
※文中の『バカ』『バカリーダー』『リーダー』は全てディートリヒのことです。また『陰険グリフォン』「残虐グリフォン』などは全てグリおじさんのことです。
●月●日
女王からの依頼は無事片付けられたが、その様子は王都からも見えていたらしく大騒ぎになっていた。
その騒ぎを治める為ために、王都の住民向けに討伐成功のお披露目が開かれることになった。
なんだか女王に利用されている気もするが、それでも自分の国を……住人たちを守れたことは誇らしい。
オレも双子の魔狼たちの無茶振りのせいでかなり大変だったが、オレも貢献できてたしな。
このお披露目は悪い気はしない。
そのお披露目の間、ふとした拍子にロアの態度が気になった。
最初は住人たちに感謝を伝えられて満更でもない顔をしていたが、途中からその表情に陰りが見えた。
どこか無理しているような感じだった。
また余計な事を考えて、思い悩んでいるのかもしれない。
オレが何を悩んでいるのか聞き出そうと考えた時に、またとんでもない出来事が起こった。
海竜が王都の近海にやってきたのだ。
海竜はネレウスの海の守り神だ。
広い海を周回しているのか四年に一度の周期でしか姿を現さないが、それでも多くの恩恵を受けている。
縄張りにしていて眷属であるイルカの魔獣もいるネレウス近海は、凶悪な海の魔獣の出現件数が大幅に減っていた。
海竜自体も人間に危害を加えることもないことから、信仰の対象になっていた。
オレもネレウスの海辺に生きて来たので、当然ながら信仰している。
そのせいで興奮してしまって、オレの頭からロアの悩みのことなど一気に吹き飛んでしまった。
オレや、コルネリア、お披露目を見に来ていた王都の住民たちは現れた海竜を見つめる。
いつも通りなら、近海に姿を現したら、また離れていくだけだ。
その様子を見守ろうと思っていた。
だが、海竜の動きはいつもと違っていた。
やけに近くまで近付いてきていた。
まるで、オレたちがいる場所に用事があるかのように、真っ直ぐに突き進んでいた。
結論だけ言うと、海竜の目的はロアだった。
性悪グリフォンを従魔にした、ロアに話があったらしい。
どうやら性悪グリフォンと海竜は知り合いらしく、自分の縄張りの中に現れたことで気になって真意を確かめに来たらしい。
話し合うために海竜はわざわざ従魔契約をしてまでロアに声を掛けてきた。
海竜が不安になって確かめに来るなんて、どんだけ悪行を重ねてるんだよ悪質グリフォン。
海竜の言葉の端々から、嫌っている雰囲気が滲み出ている。
海竜はロアに対しても不信感を持っていたようだが、話し合うことですぐに誤解は解けた。
そして海竜は笑い声と共に去っていった。
まったく、ロアは妙なところで豪胆だ。
オレなんて、信仰しているし、長年の経験から危害を加えてこないと知っていても、海竜の巨体を間近に見て腰が抜けたのに。
ロアは平然と話し合っていた。豪胆すぎる。
それに……ロアは聞き流していたようだが、海竜の話に聞き捨てならない情報が混ざっていてオレは混乱していた。
まず海竜が最初に名乗った「南海竜王」という名。
南海ってことは、ひょっとして各方角に海の王を名乗るドラゴンがいるのか?
そんな話は聞いたことがない。
海竜の外見はクジラそのもの。
それなのにクジラの魔獣ではなくドラゴンだと認識されているのは、大昔から船乗りたちがドラゴンだと認定していたためと、その実力から。
ドラゴンの外見は爬虫類系というイメージがあるが、研究者の話だとドラゴンは多くの獣の要素を持っていて環境によって姿を変えるらしい。
だからクジラの外見でもおかしくない。らしい。
とうことは、他の方角の竜王たちもドラゴンだと認識できない姿をしている可能性がある。
北方の海で最悪の怪物と言われてる巨大な触手の怪物なんかも、正体はドラゴンだったりするんだろうか?
それに、海竜が「盟主」と呼ぶ存在。
普通に考えれば、ドラゴンの王のことだろう。
勇者と共に魔王を倒した、神獣の青いドラゴン。
……盟主があの有名なドラゴンのことなら、この世界の守り神みたいな存在だし安心なんだが……なぜかオレの心の中には不安が満ちていた。
双子の魔狼が悪名高き潜む狼の子と呼ばれてたのも気になる。
それって、フェンリルのことじゃないよな?フェンリルって深い森に潜む者って意味で名付けられたと聞いたことがあるぞ?
双子なら、その子供だって可能性はありうるな。ロアは何か知っているんだろうか?性悪グリフォンは知ってそうだな。絶対に教えてくれそうにないが……。
オレがそんなことを考えていると、性悪グリフォンが慌てて現れ、なぜかリーダーが死にかけていた。
性悪グリフォンが慌ててリーダーを運んだため、咥えていた服の襟で首が締まったらしい。
オレたちが慌てて介護していると、今度はロアと極悪グリフォンがケンカを始めた。
傍若無人グリフォンめ!ロアとのケンカで周囲に殺気をばら撒くな!目視できそうなほどの濃密な魔力を漂わせるな!
弱い人間だと、恐怖で心臓が止まるぞ!!
双子の魔狼も興味無さそうに欠伸をしてないで、一人と一匹のケンカを止めてくれ!!
……結局、リーダーが目を覚まして仲裁してその場は収まったものの、ロアと性悪グリフォンのケンカ自体は夜になっても継続中だった。
夜は、王城で園遊会が開かれた。
海辺でやったお披露目の、貴族相手版だ。
政治的意図が多く絡んでいるのだろう。急遽開催された割に、多くの貴族が集まっていた。
夜に園遊会なんてかなり珍しいが、あの性悪グリフォンが室内で見世物になるのを嫌った結果らしい。
……その割に、当の性悪グリフォンは姿を現さないけどな。
まあ、あのグリフォンが自分勝手なのは女王もよく知っているらしく、姿が無くても誰も気にしていなかった。
オレも一応は招待客の立場だが、ロアとリーダーがいれば十分なのでこっそりと警備に紛れた。ベルンハルト同じように面倒事を嫌って人目が付かないところに逃げている。
コルネリアは積極的にロアに近付く人間の排除に向かったらしい。近衛騎士の制服を着て張り切っていた。
ロアに色仕掛けを仕掛けようとしている貴族令嬢を排除しているのが目に入った。
それにしてもこの園遊会。
ただですら曲者の多いネレウス王国の中でも、さらに癖が強い物ばかりが集められている気がする。
いかにも貴族ですって連中が少ないおかげでロアもリーダーも溶け込んでいるから、ロアたちに気を遣わせないために、そういう人間が多く混ざるようにしたんだろうか?
いや、あの女王がそんな気遣いをするわけがない。
何らかの意図があるんだろう。考え過ぎか?
何事も無く宴は進み、そろそろロアを引き上げさせても良いころ合いだと思った頃に、事件は起こった。
つうか、あれは反則だろう!!?
なんで女王はあんなことしたんだ?
ひょっとして、女王はそっちの方面の趣味があったのか?
そういや、女王がリーダーに興味を示して玩具にするようになったのも、少年と言って良い年齢の時だった。
まさかの女王、少年趣味疑惑が!!
これから先に起こる問題を考えると、胃が痛くなってくる……。
※これはクリストフから見た物語のダイジェストになります。クリストフ視点のため、メインストーリーでない部分が中心であったり、物語中に無いシーンが含まれていたりします。また、クリストフがその時点で知りえない情報は含まれていません。
※文中の『バカ』『バカリーダー』『リーダー』は全てディートリヒのことです。また『陰険グリフォン』「残虐グリフォン』などは全てグリおじさんのことです。
●月●日
女王からの依頼は無事片付けられたが、その様子は王都からも見えていたらしく大騒ぎになっていた。
その騒ぎを治める為ために、王都の住民向けに討伐成功のお披露目が開かれることになった。
なんだか女王に利用されている気もするが、それでも自分の国を……住人たちを守れたことは誇らしい。
オレも双子の魔狼たちの無茶振りのせいでかなり大変だったが、オレも貢献できてたしな。
このお披露目は悪い気はしない。
そのお披露目の間、ふとした拍子にロアの態度が気になった。
最初は住人たちに感謝を伝えられて満更でもない顔をしていたが、途中からその表情に陰りが見えた。
どこか無理しているような感じだった。
また余計な事を考えて、思い悩んでいるのかもしれない。
オレが何を悩んでいるのか聞き出そうと考えた時に、またとんでもない出来事が起こった。
海竜が王都の近海にやってきたのだ。
海竜はネレウスの海の守り神だ。
広い海を周回しているのか四年に一度の周期でしか姿を現さないが、それでも多くの恩恵を受けている。
縄張りにしていて眷属であるイルカの魔獣もいるネレウス近海は、凶悪な海の魔獣の出現件数が大幅に減っていた。
海竜自体も人間に危害を加えることもないことから、信仰の対象になっていた。
オレもネレウスの海辺に生きて来たので、当然ながら信仰している。
そのせいで興奮してしまって、オレの頭からロアの悩みのことなど一気に吹き飛んでしまった。
オレや、コルネリア、お披露目を見に来ていた王都の住民たちは現れた海竜を見つめる。
いつも通りなら、近海に姿を現したら、また離れていくだけだ。
その様子を見守ろうと思っていた。
だが、海竜の動きはいつもと違っていた。
やけに近くまで近付いてきていた。
まるで、オレたちがいる場所に用事があるかのように、真っ直ぐに突き進んでいた。
結論だけ言うと、海竜の目的はロアだった。
性悪グリフォンを従魔にした、ロアに話があったらしい。
どうやら性悪グリフォンと海竜は知り合いらしく、自分の縄張りの中に現れたことで気になって真意を確かめに来たらしい。
話し合うために海竜はわざわざ従魔契約をしてまでロアに声を掛けてきた。
海竜が不安になって確かめに来るなんて、どんだけ悪行を重ねてるんだよ悪質グリフォン。
海竜の言葉の端々から、嫌っている雰囲気が滲み出ている。
海竜はロアに対しても不信感を持っていたようだが、話し合うことですぐに誤解は解けた。
そして海竜は笑い声と共に去っていった。
まったく、ロアは妙なところで豪胆だ。
オレなんて、信仰しているし、長年の経験から危害を加えてこないと知っていても、海竜の巨体を間近に見て腰が抜けたのに。
ロアは平然と話し合っていた。豪胆すぎる。
それに……ロアは聞き流していたようだが、海竜の話に聞き捨てならない情報が混ざっていてオレは混乱していた。
まず海竜が最初に名乗った「南海竜王」という名。
南海ってことは、ひょっとして各方角に海の王を名乗るドラゴンがいるのか?
そんな話は聞いたことがない。
海竜の外見はクジラそのもの。
それなのにクジラの魔獣ではなくドラゴンだと認識されているのは、大昔から船乗りたちがドラゴンだと認定していたためと、その実力から。
ドラゴンの外見は爬虫類系というイメージがあるが、研究者の話だとドラゴンは多くの獣の要素を持っていて環境によって姿を変えるらしい。
だからクジラの外見でもおかしくない。らしい。
とうことは、他の方角の竜王たちもドラゴンだと認識できない姿をしている可能性がある。
北方の海で最悪の怪物と言われてる巨大な触手の怪物なんかも、正体はドラゴンだったりするんだろうか?
それに、海竜が「盟主」と呼ぶ存在。
普通に考えれば、ドラゴンの王のことだろう。
勇者と共に魔王を倒した、神獣の青いドラゴン。
……盟主があの有名なドラゴンのことなら、この世界の守り神みたいな存在だし安心なんだが……なぜかオレの心の中には不安が満ちていた。
双子の魔狼が悪名高き潜む狼の子と呼ばれてたのも気になる。
それって、フェンリルのことじゃないよな?フェンリルって深い森に潜む者って意味で名付けられたと聞いたことがあるぞ?
双子なら、その子供だって可能性はありうるな。ロアは何か知っているんだろうか?性悪グリフォンは知ってそうだな。絶対に教えてくれそうにないが……。
オレがそんなことを考えていると、性悪グリフォンが慌てて現れ、なぜかリーダーが死にかけていた。
性悪グリフォンが慌ててリーダーを運んだため、咥えていた服の襟で首が締まったらしい。
オレたちが慌てて介護していると、今度はロアと極悪グリフォンがケンカを始めた。
傍若無人グリフォンめ!ロアとのケンカで周囲に殺気をばら撒くな!目視できそうなほどの濃密な魔力を漂わせるな!
弱い人間だと、恐怖で心臓が止まるぞ!!
双子の魔狼も興味無さそうに欠伸をしてないで、一人と一匹のケンカを止めてくれ!!
……結局、リーダーが目を覚まして仲裁してその場は収まったものの、ロアと性悪グリフォンのケンカ自体は夜になっても継続中だった。
夜は、王城で園遊会が開かれた。
海辺でやったお披露目の、貴族相手版だ。
政治的意図が多く絡んでいるのだろう。急遽開催された割に、多くの貴族が集まっていた。
夜に園遊会なんてかなり珍しいが、あの性悪グリフォンが室内で見世物になるのを嫌った結果らしい。
……その割に、当の性悪グリフォンは姿を現さないけどな。
まあ、あのグリフォンが自分勝手なのは女王もよく知っているらしく、姿が無くても誰も気にしていなかった。
オレも一応は招待客の立場だが、ロアとリーダーがいれば十分なのでこっそりと警備に紛れた。ベルンハルト同じように面倒事を嫌って人目が付かないところに逃げている。
コルネリアは積極的にロアに近付く人間の排除に向かったらしい。近衛騎士の制服を着て張り切っていた。
ロアに色仕掛けを仕掛けようとしている貴族令嬢を排除しているのが目に入った。
それにしてもこの園遊会。
ただですら曲者の多いネレウス王国の中でも、さらに癖が強い物ばかりが集められている気がする。
いかにも貴族ですって連中が少ないおかげでロアもリーダーも溶け込んでいるから、ロアたちに気を遣わせないために、そういう人間が多く混ざるようにしたんだろうか?
いや、あの女王がそんな気遣いをするわけがない。
何らかの意図があるんだろう。考え過ぎか?
何事も無く宴は進み、そろそろロアを引き上げさせても良いころ合いだと思った頃に、事件は起こった。
つうか、あれは反則だろう!!?
なんで女王はあんなことしたんだ?
ひょっとして、女王はそっちの方面の趣味があったのか?
そういや、女王がリーダーに興味を示して玩具にするようになったのも、少年と言って良い年齢の時だった。
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