追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)

文字の大きさ
上 下
170 / 252
閑話

クリストフ・レポート 10(書籍六巻前半ダイジェスト)

しおりを挟む
  これはクリストフの回顧録である。

 ※これはクリストフから見た物語のダイジェストになります。クリストフ視点のため、メインストーリーでない部分が中心であったり、物語中に無いシーンが含まれていたりします。また、クリストフがその時点で知りえない情報は含まれていません。
 ※文中の『バカ』『バカリーダー』『リーダー』『ディーさん』は全てディートリヒのことです。また『陰険グリフォン』「残虐グリフォン』などは全てグリおじさんのことです。



●月●日

 オレたちはロアたちと一緒に、母国であるネレウス王国に来ていた。

 あの城塞迷宮シタデルダンジョンの冒険から、もう三か月は過ぎている。
 あの冒険でロアは見習い職の万能職から本当の冒険者になり、しっかりと実績を重ねていた。

 今回のネレウス行きは、コラルドさんの依頼だ。
 ロアたちが実績を積み重ねていくのを見て、コラルドさんが護衛の仕事も経験しておいた方が良いと考えて依頼をしてくれたのだ。

 オレたちももちろん、その仕事に同行することになった。

 ただ、オレたち望郷のメンバーにとってはそれだけではない。
 
 城塞迷宮シタデルダンジョン行きの際、オレたちは母国の女王ととある取引をしていた。
 その取引の条件の中に、ネレウス王国までロアを連れて行くというものが含まれていたのだ。

 条件といっても、実際は女王にリーダーがハメられたというのが正しいだろう。
 
 考えが足りなくて書類仕事が嫌いなバカリーダーが、満足に書類を読まないのを見越して仕組まれていたに違いない。バカがその思惑通りにチェックをしないでサインした結果だった。
 
 そのせいで、オレたちはどうやってロアをネレウス王国に連れて行くか悩んでいたのだ。

 そこにコラルドさんの依頼の話が出て、オレたちは大喜びで飛び付いたのだった。
 そうでなければ、今でもオレたちはどうやってロアを連れて行こうか頭を悩ませていたことだろう。

 まあ、タイミングが良すぎて裏工作の臭いがプンプンしているが、選択肢が無いのだから気にしても仕方ない。
 バカリーダーはまったく気が付いて無さそうだけどな。

 とにもかくにも、そうしてオレたちはネレウス王国に来ているのだった。


●月●日

 国境を越えてネレウス王国に入ってから数日後には、オレたちは王都に到着した。
 王都は海に面した街だ。
 ロアは初めて見る海に興奮していたし、オレたちも故郷に帰ってきたことで浮かれていた。

 だがそこで、問題が持ち上がった。
 オレたちは、ほとんどの王都の宿の出入り禁止を食らっていた。コラルドさんが泊まるような高級宿は全滅だろう。
 いや、宿屋だけではない。飲食店や色町のほとんどから出入り禁止を食らっている。

 すべて、バカリーダーのせいだ。
 バカリーダーは酔うと昔の、残虐だった頃の性格が蘇る。
 そして、暴れる。
 しかも、リーダーはネレウス王国内では上から数えた方が早いくらいには腕が立つので、被害が大きい。

 何度も暴れてくれたせいで、宿屋や飲食店のギルドに噂が回り、実際に行ったこともない店まで出入り禁止にされている。

 ぶっちゃけ、オレは昔のリーダー……ディーさんのことも嫌いじゃないのだが、それでも暴れる悪癖は何とかして欲しいと思う。
 後処理が面倒だし、オレたちや周囲の人たちにかけられる迷惑も半端ない。

 そんな問題を抱えたまま、オレたちは王都へ入る門の前に差し掛かった。

 そして、そこにいたのはコルネリアの姉のエミーリア様だった。
 エミーリア様はコルネリアの実姉だが、侯爵家に養子に入ったため貴族としての地位も高い。しかも、近衛騎士副長で職務上の権力もある。
 オレには雲の上と言って良いほどの人だ。

 リーダーとは同じ人から剣を習っていたから旧知だが、オレとの関係は薄い。
 一応、何度か話したことはあるが顔見知り程度だ。

 エミーリア様は……その、なんというか、リーダーとは相性が悪い。リーダーを毛嫌いしている。
 それなのに溺愛しているコルネリアがバカリーダーにくっ付いて国外に出て行くことになったから、かなり恨まれているらしい。

 エミーリア様はオレたちが宿を取れない話を聞いていたらしく、自宅である侯爵家の屋敷にオレたちを招待してくれた。


 侯爵家の屋敷に移動し、やっと落ち着けると思った途端にまたひと悶着があった。
 やっぱり出かけた先でロアたちから目を離してはいけない。
 必ず何かやらかしてくれる。
 今回は陰険グリフォンは関わっておらず、ロアと双子の魔狼だけだったのは不幸中の幸いだろうか。
 
 ロアたちがやらかした相手は、剣聖でありエミーリア様の義祖父である前侯爵様だった。
 剣聖は剣を極めた物に与えられる称号で、他の剣聖から認められてなれる実力を伴ったものだった。
 ネレウス王国内では、今は前侯爵様しかいない。

 リーダーは残虐だった性格を改善させるためにこの前侯爵様に預けられ、剣の修行を通して性格の矯正をされたのだが……結果、今のバカリーダーが出来上がったことから前侯爵様の性格を察して欲しい。
 要するに、バカリーダーと似たようなもの、もしくはそれ以上のバカということだ。

 前侯爵様は、ロアのことを勝手に侯爵家の敷地に侵入した子供だと思ったらしい。
 そこで、ちょっと脅して追い出してやろうと思ってロアに斬りかかった。

 結果は、惨敗。
 怪しげな……たぶん陰険グリフォンがロアに掛けて置いたものだろう、不思議な魔法に返り討ちに合い、前侯爵様は双子の魔狼に押えつけられた。

 この件は、前侯爵様が謝罪してくれて収まった。
 客であるロアを侵入者と勘違いした自分が悪かったと言ってくれたのだ。そうでなければ、剣聖であり前侯爵である人物を傷付けたのだから、大問題になっていただろう。

 リーダーと同じく、前侯爵様が理不尽なことは嫌う性格で助かった。


 その夜。
 オレはある人物に会いに行った。

 王都に入る少し前から、オレたちは監視されていたらしい。
 そのことをグリおじさんや双子の魔狼から教えてもらい、監視している目的を聞くために行ったのだ。

 会った相手は同僚にして上司。
 しかもまたもや貴族としてもお偉いさん。
 さらには、この国の暗部にまで恐れられている人間だった。

 一見、人当たりが良くて怖い人物には見えないが、この国では敵対してはいけない人間の上位ランクに入っている。

 ……監視の目的は、オレたちにはあまり関係ないものだった。そのまま放置しておいても大丈夫だろう。
 少なくとも、あの人が語ってくれた内容の限りは。
 
 それにしても、シアナちゃんは結婚するのか……。
 
 
 



 
 

しおりを挟む
感想 1,419

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。