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閑話

クリストフ・レポート 6(書籍四巻前半ダイジェスト)

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  これはクリストフの回顧録である。

 ※これはクリストフから見た物語のダイジェストになります。クリストフ視点のため、メインストーリーでない部分が中心であったり、物語中に無いシーンが含まれていたりします。また、クリストフがその時点で知りえない情報は含まれていません。
 ※文中の『バカ』『バカリーダー』『リーダー』は全てディートリヒのことです。また、『陰険グリフォン』『悪質グリフォン』などは全てグリおじさんのことです。



●月●日

 オレたち『望郷』はペルデュ王国と北方連合国との国境近くにある、北方連合国側の砦から城塞迷宮シタデルダンジョンに入った。

 城塞迷宮シタデルダンジョン入りを確認する北方連合国の役人とのやり取りはあっさりと終わったが、その後にとんでもないことが判明した。

 バカリーダーのやつ、申請書類に何が書いてあるか確認すらしてなかった!
 城塞迷宮シタデルダンジョンに入るための申請書類には本当の名前や地位などが書いてある。他国とやり取りする公文書なのだから、当然だ。
 なのにバカはそのことすら把握していなかった。

 書類を読まず、サインだけしていたのが丸わかりだ!!

 オレがそのことを指摘するとリーダーは焦りだしたが、問題はそこじゃない。
 許可を出してもらうために、本国に交換条件を出されていたのだ。

 すでにオレたち……いや、サインしたのはバカリーダーだから、リーダーがその交換条件を呑んだことになっている。
 今更やっぱりダメとは言えない。
 それに、交換条件はオレたちだけの問題じゃなく、ロアが大きく関わっている。

 ……うん。オレは知らん!
 バカリーダーが全部の作業を俺に押し付けて、サインする書類すら読まなかったのが悪い!オレはもう限界だ。何が起こっても知らん!!
 オレはリーダーに責任を丸投げすることにした。


●月●日

 城塞迷宮シタデルダンジョンの周辺地域に入ってからというもの、引っ切り無しに不死者アンデッドが襲ってくるようになった。
 古戦場だっただけあって、出てくるのはほとんど古い鎧を身に着けた動く骸骨スケルトンだ。

 スケルトンは弱いが、倒してもすぐに復活して、仲間を呼び寄せる。
 完全に浄化されるまで、ひたすら増え続ける最悪の魔獣だ。

 ただ、オレたちは安全に旅ができていた。
 すべてロアのおかげだ。

 ロアが持たせてくれた清浄結界の魔道具は、アンデッドが近寄ってこないようにできる。
 さらにスケルトンを浄化するための治癒魔法薬も使い切れないくらいにある。
 
 死んだ人間の魂や肉体に魔素が作用して生まれたアンデッドは、治癒魔法や治癒魔法薬で浄化することができる。
 闇の存在であるやつらには治癒効果が裏返り、消滅させる効果となるのだ。

 オレたちはアンデッドの素早い倒し方を練習できるくらいに、余裕をもって旅を進めることができた。
 マジでロアには頭が上がらない。

 事前にロアに渡された魔法の鞄マジックバッグには色々な魔法薬が入っていた。
 即死魔法を回避できる魔法薬なんていう新薬もあって、絶対に城塞迷宮シタデルダンジョンに近付く前に飲んでくれという指示のメモが付いていた。

 オレたちはそれを迷うことなく飲んだ。
 新薬だろうが、ロアの作ったものを疑うやつはいない。


 

●月●日

 アンデットの大きな戦闘の気配があり、そちらに向かって進むことにした。
 今、公式にこの場所に入っているのはオレたちと、ロアたちがいる城塞迷宮シタデルダンジョン調査団だけのはずだ。
 大きな戦闘があったとすれば、そこにロアがいると思って間違いない。

 向かう途中で人面禿鷲ハーピーに襲われた。
 空を飛ぶ魔獣の対処は難しいが、やっと登場したアンデッド以外の魔獣にむしろオレたちは胸が弾んだ。
 ハッキリ言って、ひたすらアンデッドの相手をするのに飽きていたのだ。

 ハーピーは三匹。
 ベルンハルトが魔法で羽を焼いて落としてから、残りの三人で倒す作戦を取った。
 逆襲されると思っていなかったのか、ハーピーはまっすぐにオレたちめがけて襲ってきたため、二匹は比較的楽に落として倒すことができた。
 しかし、残り一匹を手負いの状態で逃がしてしまった。

 「私がやるわ」

 コルネリアが武器を槍に持ち替える。
 コルネリアはこの旅に出てからは、ブルーノという鍛冶屋の弟子が作った戦槌ウォーハンマーを主に武器に使っていた。
 なんでもやたら使いやすいらしい。
 オレも同じように弟子が作ったアサシンナイフを貰ったが、やたら切れ味が良くて扱いやすいナイフだったので、気持ちは分かる。

 あのブルーノって鍛冶屋のことは、情報だけだがオレは知っていた。
 顔を合わせた時には思い出せなかったが、伝説の聖工と呼ばれている男だ。
 『聖』という言葉と、あのオッサンの風貌と性格が一致しなかったせいで思い出せなかったのだ。
 あれで『聖』とか言われても納得できるはずがない。あれじゃ邪工だろう。
 思い出せなかったのも仕方ない。

 とにかく、コルネリアはウォーハンマーを使っていたが、さすがに空にいる魔獣相手では不利すぎるので、遠距離を攻撃できる投てき武器の槍に持ち替えたのだった。
 
 逃げたハーピーを追いかけていくと、別の何かを狙う体制に入ったのに気づいた。
 それ目掛けて、コルネリアが槍を投げる。

 普通なら届く距離じゃないが、身体強化をしたコルネリアが投げた槍は一直線にハーピーに向かって飛んで行った。
 槍が翼に当たってハーピーが硬直したところに、ベルンハルトの雷撃の魔法でトドメだ。

 落ちていくハーピーの姿を見つめていると、ハーピーが狙っていたものが目に入った。
 どこかの軍隊だ。
 間違いない。目当ての城塞迷宮シタデルダンジョン調査団だろう。

 オレは慌ててその中からロアを探す。
 いた。
 陰険グリフォンが目立ってすぐ見つけられた。

 こうして、オレたちはロアと合流できたのだった。
 
 









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