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2巻
2-3
しおりを挟む「……オレたちも迎撃の準備をするぞ。どうせ、逃げられないだろうしな。なに、たった一体なんだろ? オレたち四人とあの魔狼たちが力を合わせりゃ、すぐに片が付くさ」
ディートリヒは皆を安心させるために軽い口調で言い、歯を剥き出して笑みを浮かべた。
望郷のメンバーは軽く目を合わせ頷き合うと、魔狼たちが走って行った方向に向かって、迎撃のための準備をする。
あれだけの数のゴーレムと戦い、肉体的にも精神的にも疲れ切っているはずだ。それでも彼らはさらに大きな敵の襲来にも怯えず、隙を作らず、真っ直ぐな視線で敵の来る方向を睨みつける。
森の木々が折れる音が聞こえ始め、段々とそれが近づいてきた。
望郷の面々は剣を抜く。
そして、森の闇の中から、それは姿を現した。
「……ミスリルゴーレム……」
呟いた声は、いったい誰のものだったのだろう……。
それはやけに大きく聞こえた。
ゴーレムは素材となる鉱物を吸収して肉体を作り出す、錬金生物だ。
錬金生物とは錬金術によって様々な能力を付与され、改造された生き物のことで、多くは魔獣から作られていた。
ゴーレムの場合は、その基となった魔獣は『スライム』だと言われている。
金属でできた鎧のような肉体を、内部でスライムが動かしていた。その性質は、外骨格を持つ昆虫に近い。
ミスリルゴーレム。
その名の通り、魔法銀の肉体を持ったゴーレムだ。
「……ミスリル鉱山があったの……?」
コルネリアが呆然と呟いた。
彼女の呟きは正しくない。
ゴーレムのいた谷どころか、この付近にはミスリルを産出する鉱脈はなかった。
ミスリル鉱脈は本来は銀鉱脈であり、銀鉱脈に近い場所に魔素溜まりがあった場合に、長い年月を経て変化する。
確かにノーファ渓谷のゴーレムがいた銀鉱脈は、森の魔素溜まりに近い位置にあったが、それでもミスリルに変質するには魔素の量が不十分だった。
ならばなぜ、ここにミスリルゴーレムが存在するのか?
「……光ってる……」
ミスリルゴーレムは光を放っていた。
その暖かささえ感じる柔らかな光を、クリストフは呆然と見つめる。
コラルドの御者頭の傷を治すために、ディートリヒのミスリル製の剣から出したことのある光だった。
「聖光だよな?」
ディートリヒの問いかけに答える者はいない。しかしそれは間違いなく聖光だ。
ミスリルに魔力を通すと薄らと発光し、通常の剣ではダメージを与えられない不死者なども倒せる。そして、さらに強い魔力を通せば、治癒魔法と同じ効果が現れると言われていた。
向かってくるゴーレムがその光を纏っている。
しかも、魔法の光の下で見ても発光しているのがしっかり分かるほど強く、継続して光っている。
それは、シルバーゴーレムが自らの魔力で変質した姿だった。
魔狼の双子に手も足も出ず、グリフォンに指一本触れるどころか、近づくことすらできなかったシルバーゴーレムは、さらなる力を求めた。
数ではどうにもならないことを理解した彼らは、別の方法を本能で求めた。
それは生き残った者たちの核を再び一つに融合させ、強い個体を作ることだった。
魔狼の双子が弄び、狩りを楽しむために命を取らなかった結果、ノーファ渓谷の中には行動不能となった個体が数百と生き残っていた。
その全てを融合したゴーレムの核は、通常の数百倍の魔力を持つに至った。
また、魔力が圧縮され、核から溢れ出た分が目視すら可能なほどに濃くなった結果、銀の肉体すら急激に変質した。そうして、シルバーゴーレムは魔法銀人形魔獣へと変化したのだった。
そして、変質させ終わってもなお溢れ出る魔力は、ミスリルを通して聖光になっていた。
聖光ではあるが、その姿は恨みの炎を纏った幽鬼のようだ。
「あっ!」
ロアが叫びを上げる。
向かってくるミスリルゴーレムを追撃していた双子の魔狼が、羽虫のように軽く払い落とされる。
「キャン!」
双子の魔狼は短く悲鳴を上げ、ロアたちの前まで転がされる。
「大丈夫!?」
「がうっ!」
双子は短く吠える。
ロアは双子に駆け寄るが、双子の魔狼はロアの方を見向きもせず、体勢を立て直すとまたミスリルゴーレムへと向かって行った。
その目は闘気に満ちており、怯えはまったくない。
「バカ犬だけにまかせてられねぇ!」
ディートリヒが吠え、駆け出す。
双子の魔狼を「バカ犬」扱いしているのは、肉球スタンプを付けられた恨みから皮肉ったのだろう。彼もまた、怯みはしなかった。
笑みすら浮かべており、その口元からは獣じみた白い歯が覗いている。
狂戦士の笑み。
そうとしか思えないが、それは仲間を思って浮かべられたものだ。いかなる強者が現れても、仲間を不安にさせないために彼は笑みを浮かべ続ける。
ミスリルゴーレムはクリストフが言っていた通り、シルバーゴーレムよりもさらに大きかった。
高さだけでも五メートル以上ある。
ディートリヒであっても、ゴーレムの腹にも届いていない。
自然、剣が届く範囲は、腰より下しかなかった。
「デカブツが!」
ディートリヒはミスリルの剣を、膝裏の外殻の一番薄そうなところを狙って振るうが、それはあっさりと弾かれてしまった。
キンッと、甲高い音が響く。
ミスリルの剣で銀を斬ることはできた。しかし、ミスリルでミスリルを斬り捨てることはほぼ不可能だ。
同じ硬さの物を斬ることは難しい。
ましてや、それが動いているとなると、傷をつけるのがやっとだった。
その傷も、見る間に塞がってしまった。
「ちっ」
ミスリルゴーレムの巨体を動かしているのは膨大な魔力だ。
魔法を使えない代わりに、ミスリルゴーレムは膨大な魔力を身体強化と操作に注ぎ込んでいた。そして、それでもなお余った魔力は、傷ついた肉体の再構成と、漏れ出る聖光に費やされている。
ブン。
ディートリヒの頭上で風が唸る。
ミスリルゴーレムに接近しており、しかも斬りつけた剣が弾かれたことで、ディートリヒの動きは止まっていた。それは一瞬のことだったが、ミスリルゴーレムの腕が、彼目掛けて振り降ろされるには十分だった。
光が瞬く。
ベルンハルトの雷撃魔法がミスリルゴーレムに当たる。
しかし効果はなく、動きは鈍りすらしない。
ミスリルゴーレムの拳がディートリヒを叩き潰そうとした時。
大きくその軌道が逸れた。
拳はディートリヒの数十センチ横に落ち、地面に穴を空けた。
「……バカ犬! 感謝する!」
それは青い毛並の魔狼だった。ゴーレムの腕に体当たりをし、拳の軌道を逸らしたのだ。
青い毛並の魔狼は体当たりの勢いのまま宙を舞い、くるりと身をひるがえすと、重さを感じさせない動きで、ディートリヒの頭を軽く踏みつけ足場にしてから、さらに跳んで大地に立った。
ふん。
魔狼はディートリヒを横目で見て鼻を鳴らす。
踏みつけられたディートリヒにダメージはなく、苦笑を浮かべただけだ。
数条の魔法の火の玉がミスリルゴーレムの頭に当たり弾けた。ゴーレムは人型をしているが、感覚器官が頭部にあるわけではない。しかし攻撃を加えてバランスを崩させるには有効だった。
ベルンハルトの放ったそれはダメージこそ与えられなかったが、ディートリヒと魔狼の双子がミスリルゴーレムから距離を取るには十分な隙を作った。
「歯が立たないな」
「魔法がまったく通らない。牽制にもならない」
「注意を向けさせようとしても無視される! 私が止められるとも思えない!」
「くーん」
「くーん」
口々に報告をするが、希望を持てる言葉はなかった。
言葉を交わせた時間はわずかだ。次の瞬間には向かってくるミスリルゴーレムに対抗するため、望郷のメンバーは散開する。
訓練によって身体に馴染んだ自然な動きだ。ロアとベルンハルトは後方に、それ以外の者は十分な距離を取りつつ、ミスリルゴーレムを囲むように円を描く配置を取った。
盾役が機能できない時のための配置だ。
それには一緒に訓練どころか、意思疎通すらしてないはずの双子の魔狼も加わっている。
望郷のメンバーは双子の魔狼の察しの良さに驚いたが、それはグリフォンの教育のおかげだった。人間との共闘は嫌というほど叩き込まれている。
ミスリルゴーレムは望郷を無視し、真っ直ぐにロアに向かって迫ってきた。
その線上にいるのはコルネリア。
一番防御力がある彼女が、守るべきロアとベルンハルトの前に立っているのは当然のことだった。
大盾でミスリルゴーレムを止めようとするが、金属が激しくぶつかり合っただけで、ゴーレムの動きに変化はなく、彼女の存在などないかのように前へと進んでいく。
「コルネリア!」
近い位置のクリストフがフォローに入ろうとするものの、ミスリルゴーレムの腕の一振りで吹き飛ばされ、周囲にあった木に身体を打ち付ける。
双子の魔狼が後ろから飛び掛かるが、ミスリルゴーレムは気にかける様子すらない。
ディートリヒが斬りつけても同様だ。軽い腕の一振りで、双子もディートリヒも大地に転がされた。
コルネリアは魔法を併用して踏ん張っていたが、ブーツが地面に大きく溝を作るだけでゴーレムを止められない。
ついには吹き飛ばされてしまった。
ロアは魔法の鞄から治癒魔法薬を取り出し、傷ついた者たちに駆け寄ろうとしたが、ミスリルゴーレムが自分を目指していることに気が付いて、動きを止めた。
このミスリルゴーレムも当然ながら、グリフォンの匂いを追っていた。
シルバーゴーレムの大群をおびき寄せるために、ロアはグリフォンの魔獣除けを大量に使ったのだ。その効果は消えておらず、この中では一番匂いが強い。
「ロア!」
ベルンハルトが、ロアとミスリルゴーレムの間に身体を割り込ませ、魔法の火の玉を撃ち込む。
魔力の温存などしていられない。全力で可能な限りあらゆる方向から大量に撃ち込んだものの、それは匂いを目指して動いているゴーレムには、目くらましにもならない。
邪魔な草木でも掻き退けるように、軽く腕を払うだけで、ベルンハルトの身体も横に転がされる。
あたりを赤く染めた後、炎はあっさりと掻き消えた。
光の魔法すら消えてしまった。
……それはベルンハルトの魔力切れを示していた。
光が消え、闇が押し寄せる。
夜の闇。
月明かりが照らしている。
その中で、ミスリルゴーレムだけは聖光を放ち続け、存在を主張していた。
それは単色の世界で唯一色を持った存在のように、鮮やかだ。
ミスリルゴーレムの手が伸びる。
人間を容易に握り潰せる、巨大な掌。
その手は真っ直ぐにロアを目指す。
ロアは息を呑む……。
一度は死を覚悟したものの、その時、ロアはまだ生きたいと思った。
自分自身のために。
自分を守ろうとしてくれた人たちのために。
しかし、ミスリルゴーレムを止められる者は誰もいない。
いない、はずだった……。
ドゴッ!
轟音と共に光が瞬く。
天空から伸びる、一条の光。
月明かりを引き裂くように……。
それは、ミスリルゴーレムの脳天から大地へと真っ直ぐに貫く。
青白い、光。
雷だ。
ロアは発光するミスリルゴーレムの掌に潰され、視界に異常が起きたのかと思った。しかし、ミスリルゴーレムの掌はロアに届くことなく、ロアの目の前で止まっていた。
まるで凍ったように動かない。
魔法?
ロアはベルンハルトを見るが、彼も大地に転がったまま天空を見つめている。
彼は目を見開いて一点を見つめていた。
ロアもそれにつられるように、天空に視線を向けた。
月が浮かび星が瞬く天空。
そこにあったのは、月明かりに照らし出された、見慣れた影だった。
「…………グリ……おじさん……?」
ぽつりと呟く。
その呟きが空気に溶け込むほどの間をおいて、ロアは軽い目眩を覚えた。
同時に、天空から『声』が降り注いでくる。
〈ふふふふ……ははははははっ!! これ以上ない絶妙の好機!! まさに凡人たちの危機を救う英雄の登場に相応しい!! 焦る気持ちを我慢して、手を出す頃合いを見計らっただけあったわっ! やはり我のような絶対強者は、最高の見せ場に現れ、皆の賞賛を浴びるものであろう!! さあ! 小僧ども、我を賞賛するが良いっ! 褒め称えよ!! そして我に最高の名前を献上するのだっ! 具体的にはアポメーカネーステオスなどが良いぞ!!〉
人の声とは違うその能天気な『声』は、ロアにも聞こえ、理解することができた。
この『声』は? オレたち意外に誰かいる?
声は頭に直接響くように聞こえてきた。
ロアは突然聞こえてきた声に周囲を見渡すが、人影はない。
倒れていた望郷のメンバーたちも命に別状はないが、痛みに耐えて呆然と上空を見上げているだけで話をしている様子はなかった。
空中のグリフォンは月を背にして、ロアたちを見下ろす位置に静止していた。
羽ばたきすらしていないことから、魔法で浮かんでいるのだろう。
〈さて! 最後の仕上げを…………むむ? カタツムリのやつめ、もう死んでおるではないかっ! 根性がない! なさ過ぎるぞ!! 牽制の雷撃で命を落とすとは軟弱過ぎるだろう……まずいな……一撃で終わっては我の見せ場が少な過ぎる。小僧に我の本当の強さを見せつけられぬではないか……たいして強くないと思っていた相手が実は最強だったという浪漫あふれる展開であるのに! 地味な技で終わっては、危機一髪を待って登場したのが台なしだ!〉
ロアと望郷のメンバーが呆然と上空のグリフォンを見上げている中で、双子の魔狼だけはどこか呆れたような表情を浮かべていた。
その顔に先ほどまでの勇ましさはどこにもない。
完全に気が抜けていた。獰猛な獣とヌイグルミくらい表情に差があった。
その双子の気の抜けた表情にロアは見覚えがあった。
グリフォンと一緒にいる時に、よく浮かべていた表情だ。
グリフォンが馬鹿なことをやった時に、軽蔑混じりの目で見つめていた。
双子の魔狼が「くーん」と声を合わせて鳴いた。
〈……いや、双子よ。我に文句を言うのはお門違いだぞ。ミスリルは魔力も熱も伝えにくいのだから、お前たちの魔法がまったく通らないのは仕方ない。倒したかったらさらに魔力操作の鍛錬をして、自在に魔法を操れるようになるのだな〉
「くーん」
〈いや、そもそもこのピカピカが生まれたのは、お前たちが遊び過ぎた結果であろう。これはトドメを刺さなかったゴーレム共が融合して生まれたものだぞ? 遊びを優先せずにちゃんと全てにトドメを刺しておけば、このようなやつは生まれなかったはずだ〉
声が続くにつれ、双子の魔狼のシッポが下がっていく。
「ばう」
「ばう」
〈いつも言っておっただろう? どんな弱者でも、思いもよらぬ手段で逆襲を仕掛けてくる時があるのだ。トドメを刺せる時に刺さないでおくと、後でしっぺ返しを食らうものだぞ。手を抜いたり慈悲をかけたりしていいのは、全てを撥ねのけられる絶対的強者だけだ! 我のようにな!〉
双子の魔狼は少し不満そうな表情を浮かべ、落ち込んだ風に頭を下げた。
声の主は明らかに双子の魔狼と会話していた。
ロアは天空のグリフォンに目を向けるが、「まさか」という思いが先に立って声の主に確信が持てない。
〈さて……仕方ない。すでに死んでいるものにムチ打つのは趣味ではないが、少し演出をして終わりにするか。分かりやすく賞賛しやすい状況にしてやらぬと、小僧も凡人たちも呆然と我を見つめたままで終わりそうだからな……〉
ヒューイ。
グリフォンが注目を集めるように高らかに鳴いた。
そして魔法の灯りが現れる。
その光によって、今まで月明かりに淡く照らされていたグリフォンの姿がハッキリと見えた。
「やっぱり、グリおじさんだ……」
グリフォンは個体差の見分けが付きにくいと言われているが、長年一緒にいたロアは見分けることができる。
ロアのその呟きをかき消すように強風が吹き、森の木の葉を巻き上げた。
木の葉がグリフォンの高さまで舞い上がると風はやみ、ゆっくりと木の葉が漂い落ちていく。
ヒューイ。
グリフォンがまた一鳴きすると、鋭い風切り音と共に、何かがグリフォンの元から飛んだ。
それは舞い落ちる木の葉の中を進み、斬り刻んでいった。
見えない何かが、複数、木の葉の中を進んでいる。
風の刃。
魔法によって作り出された見えない刃は、停止しているミスリルゴーレムに到達すると四肢を斬り落とし、そして核を守っているぶ厚い胴体さえも、縦に真っ二つに斬り裂いた。
ミスリルゴーレムはあっさりと、冗談のように最後の時を迎えた。
崩れ落ち、轟音が響き渡る。
「……風の刃でミスリルを斬り裂いただと!?」
ベルンハルトが整った顔を驚愕に歪め、呟いた。
〈ほう。良い解説係がおるようだな! さあ! 我の素晴らしい技を説明するのだ! 褒め称えよ!〉
「実体を持たない風の刃で鉱物を斬るなんて……しかもミスリル……」
〈ふふふ。我は風の魔法が得意だからな!! 風の刃は初歩にして究極! 極めればミスリルすらこの通りだっ! 演出も良かったであろう! 人には見えない風の刃を、木の葉を使って可視化してやったのだぞ! これで最初の雷撃でカタツムリを足止めし、風の刃でトドメを刺したように小僧たちには見えたであろう! まあ、我の力が強大過ぎて最初の雷撃で絶命しておったのだがなっ! 魔獣の死を視覚でしか感じられない愚か者たちにはこれくらいの演出をした方が、誰が救いの主か分かりやすいであろう! 我は配慮ができる子だからな!!〉
「素晴らしい……」
ベルンハルトの尊敬の眼差しに気を良くしたグリフォンは、空中でひっくり返りそうなくらいに自慢げに胸を反らした。
ロアも起こったことだけ見れば、すごい魔法で賞賛に値すると思える。それに命を助けられたわけなので感謝の気持ちもある。
しかし、聞こえてくる声の内容のせいで、若干引き気味になっていた。
色々、ひどい。
双子の魔狼はいつものことだと、無視して二匹でじゃれ合い始めていた。すでに声の相手をする気はあまりないようだった。
先ほど落ち込んだばかりなのに、立ち直りが早い。
グリフォンは胸を反らしたまま、天空からロアたちの元に降りてくる。
羽ばたきすらせず、ゆっくりと滑るような動きだった。
そして、斬り裂かれたミスリルゴーレムの残骸の上に降り立つと、嘴を笑みの形に歪めながらロアを見下ろした。
まだ発光し続けるミスリルの上に立つ姿は、光り輝く財宝すらぞんざいに扱う傲慢な王のようだ。
それは美しく、神話の一場面にさえ見えた。
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