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芽ぐむ日

第九話 ダンジョンアタック2

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 レナの初ダンジョンアタックの感想としては、森や草原での魔物狩りとあまり変わらない、というものだった。
 もちろん、洞窟のような閉鎖世界なので、火の取り扱いには注意が必要だ。
 しかし、森や草原でも燃え移る可能性があるため、火魔法や火災が発生しそうな魔道具などは使用しないようにしている。
 そして、ダンジョンでは他にも決まりごとがある。
 それは、ダンジョン内にある魔物が襲ってこない安全な場所――セーフティ・ゾーンのことだ。
 体を休められるセーフティ・ゾーンは限られている。それが狭い場所なら、煮炊きできる場所も限られてくる。
 そのため、ダンジョンでは冒険者たちは焚火を共有し、材料を出し合って共に煮炊きをよく行う。
 焚火の共有は思わぬ争いも生むが、貴重な情報交換の場にもなったりする。レナたちもまた駆け出し冒険者グループと焚火の共有をして、情報交換を行った。
 そして、その際、不穏な噂話を聞いたのだ。
「仲間の置き去り?」
「そう! Bランク目前のちょっと有名なグループで、下層へ向かったんですけど、魔物との戦闘で分断されて、助けられず、一人残して仕方なく撤退したらしいんです。」
 焚火を囲み、レナの隣に座るのは、十二、三歳くらいの少女だ。
 彼女は男女ふたりずつの四人グループのリーダーで、昼食を摂るべく火を起こそうとしたところ、場所が狭かったため、レナ達と同じ火を囲むことになったのだ。
 ちなみに、彼女の仲間たちは、チアンの顔を見て魂を抜かれたように呆けている。
 彼女は昼食のトマトリゾットを食べながら、興奮したように話しだした。
「でも、すっごく怪しいんですよ! 仲間を失って悲しんでる、って顔してましたけど、あれ、絶対フリですよ! あの人たち、置き去りにした仲間の遺産分配でもめてたんです! そのお金で救助隊雇えばいいのに、すっかり死んだものとして扱ってるんですから!」
 冒険者は基本、根無し草だ。故郷の家族に自分の死後お金が行くようにしている者が多いが、組んでいるパーティーメンバーに冒険者ギルドに預けているお金が支払われるようにしている場合もある。
揉める程の金額なら、救助隊を雇い、助けに行けただろう。むしろ、それを期待してパーティーメンバーにお金が行くようにしている者も居るのだ。そのお金を使って自分を助けてくれ、と――
「その遺産も絶対救助依頼のためのお金ですよ! ギルドの方だって、それを見越してパーティーメンバーに素早く遺産の支払いをしているわけですし! けど、それを使わずにいるんだから、あの置き去りはきっとわざとです!」
 そして、どうやらそのパーティーは解散するつもりらしい。
 パーティーの人間が新しく誰かと組むべく声掛けを行っているそうだ。
 上層で訓練中のレナたちに声がかかるようなことは無いだろうが、しかし……
 『台所錬金術部』の面々の視線が、チアンに集まる。
 ネモが嫌そうな顔をし、溜息をつくのが視界の端に映った。彼女はここでチアンを一人にすれば、絶対に厄介なことになると思ったのだろう。
 それが、レナたちとネモたちの別行動が決まった瞬間だった。


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書籍化にあたり、多少の修正、加筆がございます。
もしよろしければ、お手に取ってご覧いただけましたら幸いです。



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