錬金術師の成り上がり!? 家族と絶縁したら、天才伯爵令息に溺愛されました

悠十

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芽ぐむ日

第八話 ダンジョンアタック1

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 そうして雑談しながら辿り着いたダンジョンの入り口は、堅牢な砦の中に存在した。
 ここは領軍の管轄下にあるものの、冒険者カードを見せればすんなり通されるため、出入りは難しくない。ここに領軍が詰めているのは、ダンジョンに異変があった場合、速やかに対処するためだ。
 そのダンジョンに、レナ達は足を踏み入れた。
 階段を降りた先は岩肌が目立つ洞窟だった。
少しばかり肌寒く、湿度を感じるそこは、暗闇の世界では無かった。岩肌から覗く結晶体が淡く発光しており、それが光源となってダンジョン内の姿を薄っすらと浮かび上がらせる。
奥を見るにはもっと明るい光源が必要だろうが、足元を見るには不自由しないそれは、ありがたいものだった。
イヴァンがランタンと取り出し、マッチを擦る。そうしてかざしたランタンは、洞窟の奥を明るく照らした。
 洞窟の奥は道幅がだんだん広くなっているようで、先にぽっかりと大きなスペースがあるようだ。
 レナとイザベラは物珍し気に辺りを見回し、発光する突き出した結晶体をつつく。
「ネモ先輩、これってどうして光っていますの?」
 採取したらお金になるかしら? と尋ねるイザベラに、ネモは苦笑する。
「この結晶体は魔力で光っているのよ。採取は出来るけど、お勧めしないわ。掘り出したらただの石になってしまって、値段がつかないわ。こういう綺麗な結晶の姿をしているのは、ダンジョン内でだけなの」
 要は、ダンジョンが餌をより腹の奥へ招くための気遣いなのだ。
実に複雑な気分になる気遣いである。
「たまにダンジョンでもないのに発光する結晶体があるんだけど、それは魔石だから採取できるようなら採取した方が良いよ。結構、良い値がつくんだ」
 ネモの説明に、イヴァンがそう補足した。
 魔石とは、宝石に魔力が宿ったものである。それは魔道具を作るのにも用いられるが、主に貴族などの富裕層によってアクセサリーに加工され、身を守るための術式が付与される。
「そういえば、我が家にも魔石を使ったアクセサリーがありましたわ。けど、この結晶体のように発光していませんでしたし、普通の宝石にしか見えませんでしたわ」
 それはどうしてなんでしょう? と首を傾げるイザベラに、ネモが答えた。
「それは採取場所から離れたら自然と光らなくなるのよ。宝石が貯められる以上の魔力を受けると、貯めきれなかった魔力が発光という形で逃げていくの。つまり、余剰魔力が宝石を光らせているわけ」
 へえ~、と感心するような声をイザベラが上げた時、一行は開けた場所に辿り着いた。
 そこは、妙な空間だった。
 しかし、何を妙だと思ったのか。レナは自分が一瞬感じた違和感の正体が分からず、首を傾げた。
 そんなレナの様子を見て、イヴァンが何か察したのか、おもむろに口を開いた。
「ここ、変な感じがするでしょう? 多分、レナの感じた違和感は、天井の高さだと思うんだ」
 レナはキョトン、と目を瞬かせ、「あっ」と小さく声を上げて天井を見上げた。
 天井は、五階建ての建物が入りそうなくらいの高さがあったのだ。
 現在レナ達が居るのは、ダンジョンの一階層だ。そして、その一階層に入るために降りた階段は、建物の一階分くらいの深さだった筈だ。
 それなのに、この天井の高さはいったいどういうことだろうか?
 コウモリに似た魔獣がチラチラと見える高すぎる天井を見上げ、レナは唖然とした。
「これこそが、ダンジョンが魔物であるという説が挙げられる理由だね。通常、あり得ない現象が起きている。空間がねじ曲がって、新たな異空間を生み出しているような現象がね」
 イヴァンの言葉に、レナは彼に視線を向ける。
「ダンジョンとは、異空間を生み出す魔物。そして、ダンジョンとはその魔物の腹の中。常に冷静であれ。自分の力を過信し、欲をかいてはいけない。――これが、ダンジョンアタックの心得だよ」
 口元に柔らかな笑みを浮かべた、ほどよく緊張の解けた顔。
 けれど、彼の目は真剣な色を帯びていて――レナは緊張に再び顔を強張らせた。
 イヴァンはそれに慌て、「大丈夫だよ! 上層だから!」とレナの緊張をほぐそうとし、前を歩く先輩達に呆れたような視線を貰ったのだった。
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