錬金術師の成り上がり!? 家族と絶縁したら、天才伯爵令息に溺愛されました

悠十

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令嬢は踊る

第五十八話 繋がり1

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 さて、イヴァンが目を回すほどレナを赤面させた翌週。
 部室には、さめざめと泣いて床に転がるヘンリーと、黒い瘴気をまき散らすチアンが居た。

「ちょっと、邪魔だし空気が悪いんだけど」
「俺のこの状態を見て、言う事はそれか⁉」
「鬼だな」

 ネモの言葉にヘンリーはツッコミ、チアンは据わっていた目を閉じ、目頭を揉む。
 そんなあんまりな様子の男達を見て、レナ達後輩組は顔を見合わせる。
 その中から、代表するようにイヴァンが前に出て尋ねる。

「あの、殿下。何があったんですか?」
「あー……」
「あったぞ。厄介なのがな」

 ヘンリーが気まずそうに起き上がり、チアンから再び瘴気が漏れだす。
 だからそれを止めろ、とネモに叩かれるチアンを横目に、レナとエラはお茶を淹れ、お菓子を用意する。
 それらをサーブし、それぞれが席について一息ついたところで、ヘンリーが口を開いた。

「まず、そうだな……、『ゼメイン薬剤店』がヤバイんじゃないか、っていう話は覚えてるか?」
「あ、はい」
「そういえば、あの店、ちょっと前に監査が入って店主が捕まったと聞いたような?」

 ポポ誕生のある意味原因となった店だ。その薬剤店で買った薬剤に問題があったらしく、まさかの新生物誕生となったのだ。忘れるわけがない。
 その店の薬剤は不良品だらけだと次々に問題が報告され、国からついに監査が入り、店主が捕まり収監されたという。
 そういえば『ゼメイン薬剤店』だった店舗が空になり、そこは今度カフェになるのだと聞いた。
 レナがそう言えば、ヘンリーは疲れたように頷く。

「そうなんだよ。まあ、それは良いんだが、問題はその『ゼメイン薬剤店』を乗っ取られた元店主が、最近、錬金術師ギルドに登録した事が分かった」
「はあ……」
 
 それがどうしたのかと首を傾げれば、チアンが分からないか、と呟く。

「その元店主は最近錬金術師になった。……つまり、最近『不老の秘薬』を作り上げた、という事だ」

 『不老の秘薬』というワードに、レナは嫌な予感がした。
 そして、どうやらレナと同じ想像をしたらしい錬金術師二人が顔を歪める。

「『錬金術師』と正式に名乗れるのは、『不老の秘薬』を作り、それをギルドに認められる必要があるわ。そして、それを飲むことで、生きている限り永遠に世界の謎を追い、新たな物を創る覚悟を示すことになる。そうやって、ようやく『錬金術師ギルド』に登録できるのよ」
「そうですね。そして、そのギルドに登録ための一番の壁が、『不老の秘薬』の材料集めです」

 ネモとイヴァンの言葉に、レナも続く。

「『錬金術師』になりたくて、『錬金術師』を名乗る腕も、覚悟もあるのに、材料が手に入らないって人が一定数いますよね。その一定数の一人が、もしかして……」

 レナの視線を受けて、ヘンリーは頷く。

「そうだ。その一人が、『ゼメイン薬剤店』の元店主だ」

 それに微妙な顔をして、ネモがチアンに尋ねる。

「もしかして、その元店主に材料を提供したのが例のハイエルフなの?」
「いや……、恐らくはそうではないかと、思う」

 歯切れの悪い言葉に、ネモが片眉を上げ、レナ達は顔を見合わせる。
 
「どうも、そうした者達の元にオーランドが足を運んでいるらしい」
「「「「えっ⁉」」」」

 ヘンリーとチアンを除く四人が驚きの声を上げた。

「ちょっと、待って下さい。それって、オーランド様があのハイエルフと繋がってるって言う事ですか⁉」
「いや、それがな……、まだ確固たる情報も、証拠も出て来てないんだよ」

 そうだとは思うのだが、それが無いために断言できないと言われ、レナ達は唖然とする。
 それに、ネモが身を乗り出して言う。

「ちょっと、嘘でしょ⁉ アンタ達が揃っていて証拠どころか、情報すら出てこないの!?」
「それが、出てこないんだよ。いや、状況からしてレナが薬草畑でハイエルフ――エリアス・ヴェンネルベリを見たあの日に接触したのは確かだと思うんだが、薬草畑への入出記録はオーランドものだけで、奴の記録は無かった。伝手で入ったのか、金を握らせたか……、あそこへ入るのはあまり厳しくないからな……」

 むしろ、そのレナの目撃情報が無ければ、繋がりがあると想像すらできなかっただろう。

「けどな、オーランドの現状では『不老の秘薬』の材料を集められるだけの資金力も伝手も無い。それを解消できるのは、『不老の秘薬』を欲していて、資金力も、伝手もあるエリアス・ヴェンネルベリだけだ」

 ヘンリーの言葉に、それぞれが苦い顔をしたり、戸惑いに視線を泳がせたりしている。

「しかし、オーランドがエリアスと繋がっていて、奴を後見としたなら、これはとんでもない起死回生の一手になる」

 ハイエルフは排他的で、他種族を見下している。
 彼等にとって他種族の命は野の獣並みに軽く、同じテーブルに座らせるに値しないと思っている。
 しかし、もし、彼等を交渉のテーブルにつかせられる人間が居たとしたなら、それは貴重な人材となる。何故なら、彼等が住まうハイエルフの里は貴重な植物系の素材の宝庫だとされているからだ。
 
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