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令嬢は踊る
第三十七話 アメリア・オルセン伯爵令嬢3
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脱力状態から何とか回復し、お茶とお菓子を頂いていると、隣の部屋から二人が戻って来る。
「レナちゃん、私はアメリア様の主治医の方に話を聞いてくるから、その間に美容用品を紹介しちゃって」
「えっ、今から聞いてくるんですか⁉」
平民は自らの足で医師の元へ行くが、貴族の場合、医師が往診に来る。そのため、ネモが今から聞きに行くとしたら、それなりに時間がかかる筈だ。
「それがね、結構ご近所に住んでいるらしいのよ。だから、ちょっと行ってくるわ」
すぐ戻って来るからね~、と言い残し、ネモはさっさと退室した。流石は各地を放浪する野良錬金術師。フットワークが軽い。
唖然とするレナとエラにアメリアは苦笑し、改めて席に着く。
「噂には聞いていたけど、錬金術師の方って面白いわね」
あの強引さをそれで片づけるあたり、過去に錬金術師達が何をやらかしたか気になるところである。
「ネモ先生に聞いたのだけど、レナさんは美容用品の研究をしているのよね?」
「あ、はい。そうなんです――って、ネモ先生⁉」
アメリアの問いに頷こうとし、ネモに対する呼び方に気付いて彼女を二度見する。
レナのその反応にアメリアはクスクス笑い、だって長く生きている凄い錬金術師なんでしょう? と言った。
確かにネモは二つ名持ちの錬金術師ではあるが、ネモはそれを彼女に言ったのだろうか?
ネモは自分が二つ名持ちである事を基本的に隠しているため、下手に聞くのは藪蛇になる。そのため、レナはそれに頷くだけに留めた。
エラはそんなレナの様子に気付き、そっと話題を移す。
「レナ、ネモ先輩が言った通りに美容用品をご紹介してみたらどうかしら? 色々持って来たんでしょう?」
エラの気遣いに気付き、それに感謝しながら頷く。
取り出したのは、革製のマジックバックだ。
そこから化粧水、美容液、乳液、保湿クリームを出していき、更に保湿成分高めの化粧水を出す。
「今日は基礎化粧品を持って来ました。ちょっと肌に塗ってみて、大丈夫そうであれば試していただけたらと思いまして……」
「アメリア様、レナの美容用品は凄いんですよ。下手な高い化粧品より、よっぽどお肌に良いんです」
美容液なんて特に素敵、とエラが微笑む。
「美容液……。名前からして気になるお品ね」
「保湿力も肌の張りも良くなりますよ」
そうして勧められるままにアメリアはそれを手首につけ、「まあ!」と小さく歓声を上げる。
「本当に保湿に優れているのね。気持ちの良い滑らかさだわ」
美容液を塗った所をさすり、瞳をきらめかせる。
そんなアメリアの様子に安堵し、レナは他も勧める。
「実はこれらの美容用品の元は、ネモ先輩が教えてくれたんです。私はそこから改良して、庶民でも手に取りやすい美容用品の研究をしています」
「あら、元はネモさんのお品なの?」
「はい。これから幾らでも発展できるから、好きにやってみなさいと言われて……」
それで好きにやって、木べらを溶かすヤバイ失敗美容液を作ってしまった。なお、それは全てスタンピートの際に攻撃アイテムとして消費済みである。
しかし、そうやって研究を重ね、美容液の改良に成功した事を皮切りに、少しずつ改良していった。
特にサンドフォード家に養子入りしてからは、エセルが美容用品の研究のために雇っている研究員と意見を交わすことが可能となり、商品化出来るような出来栄えの物が完成した。
「まあ、それでもネモ先輩の作る物には敵わないんですけどね……」
ダメージケアが出来るファンデーションや、美白美容ポーションなんて反則だと思う。とてもじゃないが、レナの今の腕前では、到底太刀打ちできない。
「でもレナ、確かにネモ先輩の作った化粧品は凄かったけれど、とても高かったじゃない。私程度の財力だと、とても手が出せないわ……」
だからレナの作る美容用品はありがたいわ、とエラが微笑む。
それにアメリアも頷く。
「そうね。普段使いの物が高すぎるのは困ってしまうわ。特別な日に使うとっておきならともかく、普段使いの物は自分の財力に見合うものになるもの。それが質の良いものだととても助かるし、嬉しいわ」
そこまで言って、彼女はふと、手元に視線を落とす。
「……特別な化粧品、私にもあったのよ」
ポツリ、と落とされたそれに、レナ達はアメリアを見つめる。
「オーランド様と婚約が決まってから、少し高いけど、良いクリームを塗って肌をケアして……。あの方とお会いするときは、ドレスはお気に入りの物を用意して、差し色にあの方の瞳の色を意識して……」
ふっ、と彼女は小さく息を吐く。
アメリアは少し疲れたように微笑んだ。
「ごめんなさいね、突然こんな事を言って。けど、ようやくあの方の事を吐き出せそうなの」
「いえ、そんな、お気になさらないで下さい」
「そうですよ。吐き出せるときに、吐き出した方が良いです。私なんて、初恋の人に当たって砕けた時はネモ先輩に縋りついて大泣きしましたもの!」
そうしたら大分スッキリしました! と言えば、アメリアは目を細めて頷いた。
「レナちゃん、私はアメリア様の主治医の方に話を聞いてくるから、その間に美容用品を紹介しちゃって」
「えっ、今から聞いてくるんですか⁉」
平民は自らの足で医師の元へ行くが、貴族の場合、医師が往診に来る。そのため、ネモが今から聞きに行くとしたら、それなりに時間がかかる筈だ。
「それがね、結構ご近所に住んでいるらしいのよ。だから、ちょっと行ってくるわ」
すぐ戻って来るからね~、と言い残し、ネモはさっさと退室した。流石は各地を放浪する野良錬金術師。フットワークが軽い。
唖然とするレナとエラにアメリアは苦笑し、改めて席に着く。
「噂には聞いていたけど、錬金術師の方って面白いわね」
あの強引さをそれで片づけるあたり、過去に錬金術師達が何をやらかしたか気になるところである。
「ネモ先生に聞いたのだけど、レナさんは美容用品の研究をしているのよね?」
「あ、はい。そうなんです――って、ネモ先生⁉」
アメリアの問いに頷こうとし、ネモに対する呼び方に気付いて彼女を二度見する。
レナのその反応にアメリアはクスクス笑い、だって長く生きている凄い錬金術師なんでしょう? と言った。
確かにネモは二つ名持ちの錬金術師ではあるが、ネモはそれを彼女に言ったのだろうか?
ネモは自分が二つ名持ちである事を基本的に隠しているため、下手に聞くのは藪蛇になる。そのため、レナはそれに頷くだけに留めた。
エラはそんなレナの様子に気付き、そっと話題を移す。
「レナ、ネモ先輩が言った通りに美容用品をご紹介してみたらどうかしら? 色々持って来たんでしょう?」
エラの気遣いに気付き、それに感謝しながら頷く。
取り出したのは、革製のマジックバックだ。
そこから化粧水、美容液、乳液、保湿クリームを出していき、更に保湿成分高めの化粧水を出す。
「今日は基礎化粧品を持って来ました。ちょっと肌に塗ってみて、大丈夫そうであれば試していただけたらと思いまして……」
「アメリア様、レナの美容用品は凄いんですよ。下手な高い化粧品より、よっぽどお肌に良いんです」
美容液なんて特に素敵、とエラが微笑む。
「美容液……。名前からして気になるお品ね」
「保湿力も肌の張りも良くなりますよ」
そうして勧められるままにアメリアはそれを手首につけ、「まあ!」と小さく歓声を上げる。
「本当に保湿に優れているのね。気持ちの良い滑らかさだわ」
美容液を塗った所をさすり、瞳をきらめかせる。
そんなアメリアの様子に安堵し、レナは他も勧める。
「実はこれらの美容用品の元は、ネモ先輩が教えてくれたんです。私はそこから改良して、庶民でも手に取りやすい美容用品の研究をしています」
「あら、元はネモさんのお品なの?」
「はい。これから幾らでも発展できるから、好きにやってみなさいと言われて……」
それで好きにやって、木べらを溶かすヤバイ失敗美容液を作ってしまった。なお、それは全てスタンピートの際に攻撃アイテムとして消費済みである。
しかし、そうやって研究を重ね、美容液の改良に成功した事を皮切りに、少しずつ改良していった。
特にサンドフォード家に養子入りしてからは、エセルが美容用品の研究のために雇っている研究員と意見を交わすことが可能となり、商品化出来るような出来栄えの物が完成した。
「まあ、それでもネモ先輩の作る物には敵わないんですけどね……」
ダメージケアが出来るファンデーションや、美白美容ポーションなんて反則だと思う。とてもじゃないが、レナの今の腕前では、到底太刀打ちできない。
「でもレナ、確かにネモ先輩の作った化粧品は凄かったけれど、とても高かったじゃない。私程度の財力だと、とても手が出せないわ……」
だからレナの作る美容用品はありがたいわ、とエラが微笑む。
それにアメリアも頷く。
「そうね。普段使いの物が高すぎるのは困ってしまうわ。特別な日に使うとっておきならともかく、普段使いの物は自分の財力に見合うものになるもの。それが質の良いものだととても助かるし、嬉しいわ」
そこまで言って、彼女はふと、手元に視線を落とす。
「……特別な化粧品、私にもあったのよ」
ポツリ、と落とされたそれに、レナ達はアメリアを見つめる。
「オーランド様と婚約が決まってから、少し高いけど、良いクリームを塗って肌をケアして……。あの方とお会いするときは、ドレスはお気に入りの物を用意して、差し色にあの方の瞳の色を意識して……」
ふっ、と彼女は小さく息を吐く。
アメリアは少し疲れたように微笑んだ。
「ごめんなさいね、突然こんな事を言って。けど、ようやくあの方の事を吐き出せそうなの」
「いえ、そんな、お気になさらないで下さい」
「そうですよ。吐き出せるときに、吐き出した方が良いです。私なんて、初恋の人に当たって砕けた時はネモ先輩に縋りついて大泣きしましたもの!」
そうしたら大分スッキリしました! と言えば、アメリアは目を細めて頷いた。
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