錬金術師の成り上がり!? 家族と絶縁したら、天才伯爵令息に溺愛されました

悠十

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令嬢は踊る

第七話 破裂玉

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 さて。
 王子襲来という予定外のハプニングがあったが、レナ達がやることは変わらない。
 イヴァンが戻ってきた後、レナ達はキャンプ地にチアンとあっくんを残して森へ入った。

「ネモ先輩。今日は何をするんですか?」
「今日は錬金術で作った魔道具での魔物の狩り方を教えるわ」

 そう言ってネモが取り出したのは、子供の握り拳大のカプセルだった。とある異世界からの転生者なら、ガチャのカプセルみたいだと言うだろう。
 
「これは錬金術で作る攻撃用の初級魔道具よ」

 手渡され、レナはそれを目の前に持って来て透かし見る。
 カプセルは半透明で、中には薄い緑色の液体が入っているのが見えた。

「カプセルは錬金術で作った樹脂で、使用期限は三年。使用後は土に還る自然に優しい仕様になってるわ。使い方は簡単。魔力を通して、すぐに魔物に投げるだけ。魔力を通すと酸素に反応してカプセルに五秒くらいで穴が開いて、中の液体と反応して破裂――いえ、一応爆発する仕組みになってるの」
「そうなんですか。ばくは――爆発⁉」
「そう、爆発するの。つまり、これは爆弾よ」

 ひえぇ、と震えるレナに、彼女は容赦なく告げる。

「なにを驚いてるのよ。スタンピードの時に攻撃用の魔道具は色々見たし、実際使ったでしょう?」
「うぅ……、そうですけど……」

 確かにそうだが、それはそれ、これはこれ、である。
 ストレートに爆弾と言われると、何故か身構えてしまうのだ。これは、爆弾というものに対するイメージのせいだろう。

「レナ、大丈夫だよ。これ、威力が弱いタイプだから」
「はい……」

 優しくイヴァンに言われるも、レナが浮かべる微笑みは引き攣っている。
 そんなレナを見て、仕方なないわね、とネモが肩を竦める。

「単純で作りやすく、コスパがかかってないぶん、スタンピードで使ったものや火薬を使ったものよりも断然、威力は弱いわ。だから魔物をこれ一つでは倒せない。コレは魔物を怯ませるために使うのよ」
「そうなんですか……」

 手の中でトプリと液体が揺れるカプセルを見つめる。

「まあ、すぐに魔物に使え、なんて言わないわよ。まずは爆発までのタイミングを知るために、無機物相手に使ってみましょう。さ、岩石地帯に行くわよ」
「は、はい……」

 さっさと歩き出したネモの後を慌てて追い、レナとイヴァンは歩き出した。



   ***



 十分ほど歩くと、唐突に木々が無くなり、硬い岩肌がむき出しになった開けた場所が現れた。
 その硬い地質故に草木が生えるのが難しいらしく、地面には小さな雑草がチラホラ生えているだけだ。
遠目に見えるのは切り立った岩壁で、確かにここなら訓練がしやすそうである。
 
「さて、ここで良いわね。じゃあ、レナちゃん。カプセルに魔力を通すわけだけど、やり方は分かるわよね?」
「はい!」

 それじゃあ、あそこに投げてみて、と大きな岩を指され、レナは頷く。
 魔道具に魔力を通すというのは、多少コツはあるが、慣れてしまえば簡単な作業だ。
 まず、魔力を放出し、土に水をしみこませるかの如く魔道具に魔力を注ぐのだ。ただし、魔力を通す際はきちんと意識して通さなければ、魔力は魔道具に注がれない。ただ放出すればいいというものではないのだ。これを苦手としている者もおり、そういう者は攻撃用魔道具を使わず、それこそ火薬を使った爆弾を用いることもある。
 また、この魔力を通すという技能は錬金術師には必須技能である。繊細な魔力操作を行って物を創り上げるので、これが出来なければ話にならない。
 そうしたことから、一人前の錬金術師を目指すレナには魔道具に魔力を通すのは朝飯前だ。
 レナは魔道具に魔力を通す。
 すると、カプセルから感じる感触が微かに変った。
 レナは頭の中でカウントしながら、岩へ向かって魔道具を放る。
 カウントが五になったその時、魔道具がパァン、と大きな音を立てて破裂した。
 魔道具は岩に当たったが、岩は割れも削がれもしていない。しかし、確かに衝撃はあったらしく、魔道具が破裂した所を中心にいくつかの放射線状の筋が入っていた。

「なるほど。爆発するというより、破裂するんですね」
「そうよ。爆発は爆発なんだけど、威力的に破裂程度なのよ。だから商品名は『破裂玉』っていうの。――ま、昔はそれなりに需要があったんだけど、今はあんまり作られてないわね。後で作り方を教えてあげるから、作ってみると良いわ。それと著作権は期限切れしてるから、好きに作ってくれて大丈夫よ」

 言われ、もしやとレナはイヴァンに視線を遣る。すると、彼はレナの視線の意味を正確に読み取り、頷いた。

「これは師匠が考案した魔道具だよ」
「やっぱり!」

 素直に凄いな、と思うと同時に、著作権が切れる年月を生きてるネモに、いったいこの人は何歳なんだろうと考える。
 そんな考えが顔に出てたのか、ネモの浮かべる微笑みに凄みが加わったので、レナは視線をさっとそらした。
 女に年齢の話は禁句である。
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