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篩編
プロローグ
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季節は秋の終わり。
動物達は冬支度に忙しく、夏の終わりに連れて来た狼の番は随分健康的になり、冬毛に生え変わってモコモコしていた。
「……狼って、こんなに懐くもんなの?」
「王だからのう」
森の様子を見に行ったら、狼が寄って来て足に纏わりつかれたのだ。
オベロンが狼を撫でれば、盛大に尾を振られる。
「来年は狼の番をもう一組と、狐の番辺りを増やしてみるか?」
「そうじゃの、草食獣の増え具合も見て、考えてみるかの」
場合によっては、熊も増やそう、と言われ、少しドキドキした。
熊など前世に出会いたくない野生動物上位ランクの獣である。しかし、この世界では魔法もあり、魔物というもっと恐ろしいモノが居るので、熊等は程々に恐ろしい獣、という認識である。何とも、異世界らしいギャップであった。
オベロンに撫でられて満足したらしい狼の番は、別れの挨拶のつもりなのか、一鳴きして、尾を振りながらご機嫌で去って行った。
「そろそろ雪が降るかもしれんな」
「寒くなったからなぁ……」
オベロン達の着ている服も、暖かな冬服である。この服は、たくみ達とシルキーの手によっていつの間にか作られており、サイズもぴったりだった。
オベロンの服は全体的に白を基調とした寒色系で、雪が降ったら保護色の所為で紛れてしまいそうだ。
ノームは主にダークブラウン系の服装で、コートは厚く、頑丈そうな印象を受けた。
「……ん? あれ?」
ふと、オベロンは視界の端にちらついた者に気付き、空を見上げた。
「雪だ……」
「おや……」
ノームと二人して空を見上げ、振ってくる小さな雪を見つめる。
「初雪じゃのう。この辺りは一度雪が降れば、あっという間に冬じゃ。十日後には雪が積もっているかもしれんぞ」
「え、そうなのか」
そんな事を話しながら、オベロン達は森の中へ消えて行った。
***
「あ、雪だ……」
その言葉に、道行く人が空を見上げる。
ロムルド王国は何十年かぶりの豊作により、人々の顔は例年よりも明るい。
それもこれも広場ですっかりお馴染みになった小さな妖精のお陰である。
その妖精は、自分が宿る木の側でお昼寝中だ。
そんな妖精を眺めながら、木の側を囲むのは子供達である。
「あったかい……」
「この木、じんわりあったかい……」
子供達はうっとりと目を細め、溜息を吐いた。
柔らかな光を纏う『生命の樹』の周りは、なぜかじんわりと暖かかった。
「お前等、そろそろ木から離れろ。子供は走り回って暖を取れ」
「えー!」
「こどもだからって、テキトーなこと言って!」
「おーぼーだ!」
ブーブー文句を言う子供達を、屈強な体つきをした騎士は適当に相手して散らした後、同僚の騎士に話しかけた。
「おい、アーロン。そろそろ交代の時間だ」
「ん? ああ、もうそんな時間か」
騎士が話しかけたのは、例の島へ調査に行ったアーロンだった。
アーロンは交代の騎士の姿を認め、同僚に礼を言い、騎士の詰め所へ向かう。
「あ、アーロン、良い所に!」
「あ、ラリー」
詰所の前でばったり出会ったのは、ラリーだった。
「何か用ですか?」
「陛下が君をお呼びなんだよ。俺達に聞きたい事があるらしい」
何だろう、と首を傾げつつ、アーロンとラリーは国王の元へと向かった。
***
通された国王の執務室には、国王と宰相が待っていた。
国王は一つの書類の山を指し、言った。
「この書類の山全部が他国からの問い合わせの親書だ」
そう言って国王が指さしたそれは、ロムルド王国の分厚いと評判の歴史書位の厚さがあった。
「どの国も滅びに怯えており、我が国の豊作の噂を聞きつけて探りに来たのだ」
それを聞き、アーロンとラリーはまじまじと親書の山を見つめた。
「我が国の豊作の秘密を知るのにどの国も必死だ。遠方の国など、貴重な魔道具を使って何度も親書をよこして来た。まあ、実際は秘密でも何でもないんだがな」
「秘密にしようにも、広場に堂々と居ますからねぇ」
その場にいた全員が、思わず苦笑する。
「親書を携えてやって来た使者殿も居る。その使者殿達は、あの木をどうやったら手に入れられるか知りたいらしい。私としては下手な事を言って誤解を与えたくない。その為、正直に入手先を言ってしまいたいのだが、それについて君たちに聞きたい事がある」
その言葉を聞き、アーロンとラリーはなぜ自分達が呼ばれたのか理解した。
「あの木を、妖精を使わして下さった妖精王は、他国に慈悲を与えて下さるだろうか?」
妖精と人間、その道が、再び交わろうとしていた。
動物達は冬支度に忙しく、夏の終わりに連れて来た狼の番は随分健康的になり、冬毛に生え変わってモコモコしていた。
「……狼って、こんなに懐くもんなの?」
「王だからのう」
森の様子を見に行ったら、狼が寄って来て足に纏わりつかれたのだ。
オベロンが狼を撫でれば、盛大に尾を振られる。
「来年は狼の番をもう一組と、狐の番辺りを増やしてみるか?」
「そうじゃの、草食獣の増え具合も見て、考えてみるかの」
場合によっては、熊も増やそう、と言われ、少しドキドキした。
熊など前世に出会いたくない野生動物上位ランクの獣である。しかし、この世界では魔法もあり、魔物というもっと恐ろしいモノが居るので、熊等は程々に恐ろしい獣、という認識である。何とも、異世界らしいギャップであった。
オベロンに撫でられて満足したらしい狼の番は、別れの挨拶のつもりなのか、一鳴きして、尾を振りながらご機嫌で去って行った。
「そろそろ雪が降るかもしれんな」
「寒くなったからなぁ……」
オベロン達の着ている服も、暖かな冬服である。この服は、たくみ達とシルキーの手によっていつの間にか作られており、サイズもぴったりだった。
オベロンの服は全体的に白を基調とした寒色系で、雪が降ったら保護色の所為で紛れてしまいそうだ。
ノームは主にダークブラウン系の服装で、コートは厚く、頑丈そうな印象を受けた。
「……ん? あれ?」
ふと、オベロンは視界の端にちらついた者に気付き、空を見上げた。
「雪だ……」
「おや……」
ノームと二人して空を見上げ、振ってくる小さな雪を見つめる。
「初雪じゃのう。この辺りは一度雪が降れば、あっという間に冬じゃ。十日後には雪が積もっているかもしれんぞ」
「え、そうなのか」
そんな事を話しながら、オベロン達は森の中へ消えて行った。
***
「あ、雪だ……」
その言葉に、道行く人が空を見上げる。
ロムルド王国は何十年かぶりの豊作により、人々の顔は例年よりも明るい。
それもこれも広場ですっかりお馴染みになった小さな妖精のお陰である。
その妖精は、自分が宿る木の側でお昼寝中だ。
そんな妖精を眺めながら、木の側を囲むのは子供達である。
「あったかい……」
「この木、じんわりあったかい……」
子供達はうっとりと目を細め、溜息を吐いた。
柔らかな光を纏う『生命の樹』の周りは、なぜかじんわりと暖かかった。
「お前等、そろそろ木から離れろ。子供は走り回って暖を取れ」
「えー!」
「こどもだからって、テキトーなこと言って!」
「おーぼーだ!」
ブーブー文句を言う子供達を、屈強な体つきをした騎士は適当に相手して散らした後、同僚の騎士に話しかけた。
「おい、アーロン。そろそろ交代の時間だ」
「ん? ああ、もうそんな時間か」
騎士が話しかけたのは、例の島へ調査に行ったアーロンだった。
アーロンは交代の騎士の姿を認め、同僚に礼を言い、騎士の詰め所へ向かう。
「あ、アーロン、良い所に!」
「あ、ラリー」
詰所の前でばったり出会ったのは、ラリーだった。
「何か用ですか?」
「陛下が君をお呼びなんだよ。俺達に聞きたい事があるらしい」
何だろう、と首を傾げつつ、アーロンとラリーは国王の元へと向かった。
***
通された国王の執務室には、国王と宰相が待っていた。
国王は一つの書類の山を指し、言った。
「この書類の山全部が他国からの問い合わせの親書だ」
そう言って国王が指さしたそれは、ロムルド王国の分厚いと評判の歴史書位の厚さがあった。
「どの国も滅びに怯えており、我が国の豊作の噂を聞きつけて探りに来たのだ」
それを聞き、アーロンとラリーはまじまじと親書の山を見つめた。
「我が国の豊作の秘密を知るのにどの国も必死だ。遠方の国など、貴重な魔道具を使って何度も親書をよこして来た。まあ、実際は秘密でも何でもないんだがな」
「秘密にしようにも、広場に堂々と居ますからねぇ」
その場にいた全員が、思わず苦笑する。
「親書を携えてやって来た使者殿も居る。その使者殿達は、あの木をどうやったら手に入れられるか知りたいらしい。私としては下手な事を言って誤解を与えたくない。その為、正直に入手先を言ってしまいたいのだが、それについて君たちに聞きたい事がある」
その言葉を聞き、アーロンとラリーはなぜ自分達が呼ばれたのか理解した。
「あの木を、妖精を使わして下さった妖精王は、他国に慈悲を与えて下さるだろうか?」
妖精と人間、その道が、再び交わろうとしていた。
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