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異世界転生編
第十三話 青薔薇の守り
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オベロンは悩んでいた。
魔物狩りの時にノームから教えてもらった人族についてだ。
いずれは関わるだろうが、直ぐでは無いと思っていた。
しかし、そうだろうか?
この地が緑で溢れているのは、割とすぐに察知されてしまうのではないだろうか?
何といっても、この世界には魔法が有るのだ。思いもよらない事が有るかもしれない。
その為に、この島を守る何かを作った方が良いのではないかと考えたのだ。
「何か、使えそうなものは無いかな……」
困った時のアイテムボックス。
オベロンは、そう嘯きながらアイテムボックスの中にある物を確認する。
そして、見つけた。
「あ、これ、使えそうだな……」
オベロンが取り出したのは、青い薔薇の苗だった。
***
「何をするんじゃ?」
「んー……。ちょっと、守りを固めようかと思って」
オベロンは畑を作った場所と反対側に少し開けた場所を作り、そこに青薔薇の苗を植えた。
「さて。じゃあ、ちょっと離れて」
「うむ」
ノームはオベロンの指示に従い、数歩離れ、様子を見守るようにオベロンの背を見つめる。
オベロンはアイテムボックスから『緑の王笏』を取り出し、力を籠めた。
王笏の輝石が輝きを放ち、オベロンの顔から表情が消える。
薄っすらと開けられた目は青薔薇の苗を見つめているが、どこか焦点が合っていなかった。しかし、確かにオベロンは青薔薇の苗を見ていた。正確には、その植物の仕組み、遺伝子ともいえるものを見ていたのだ。
オベロンは王笏の力を借り、青薔薇の苗を望み通りに作り変えていく。
そして、変化は起こった。
青薔薇の苗が、急成長を始めたのだ。
青薔薇はぐんぐん育ち、あっという間にオベロンの背を超え、さらに大きくなっていく。
ノームが唖然としてその様子を見つめる中、それはとうとう樹の家よりも大きくなった、しかし、それでもまだ成長を止めない。
ついには雲まで届き、それはそこから島を覆う様に、するすると枝を伸ばしていく。
そうしてついに島全体を覆い尽くすと、今度は青い薔薇の花が一斉に咲き乱れた。
それは美しく、けれども異様な光景だった。
青い花びらが天からひらひら降って来て、薔薇の芳しい香りが風に乗って流れてくる。
そして、薔薇の花びらが全て落ちると、今度はそこに実が生り、ころり、と落ちてきた。
ころり、ころり、と実が落ちる中、その一つはノームの頭にも降ってきて、コツリ、と音を立てて地面に落ちた。
ノームは思わずそれを拾おうとし、気付いた。
落ちてきた薔薇の実から、既に根が生えてきているのだ。
根はそのまま大地に根付き、首を持ち上げてするすると大きくなり、やがて一輪の可憐な青い薔薇の花を咲かせた。
そうしているうちに、ざぁ、と強い風が吹いた。すると、空を覆っていた薔薇の枝や葉が枯れていき、ボロボロと砂の様な小さな粒子となって、風にさらわれていく。
残ったのは、最初に植えた青薔薇と、新たに根付いた青薔薇だけだった。
「ふぅ……」
息を吐き、方から力を抜くオベロンに、ノームが恐る恐る尋ねてきた。
「王よ……。今のは、いったい……」
「ん? ああ、この島の侵入者対策に使おうと思ってね」
オベロンの言葉に、ますます困惑した顔をするノームに、オベロンは微笑む。
「ほら、この島って、他の地とは比べ物にならない程豊かだろ? だから、人族に見つかったら、奪い取られるかもしれないと思ったんだ」
「ああ、まあ、確かに……」
ノームは頷くも、それとこれとは何の関係があるのか、と首を傾げ、その様子を見たオベロンは言葉を重ねた。
「この青薔薇は、元々進入禁止を意味するものなんだ」
そう言って、オベロンは青薔薇の苗を撫で、再び自分の肩口あたりまで成長させる。
この青薔薇は、元となるゲームの中で、オベロンが担当するイベント内で使用される薔薇だ。これは、条件を満たさなければ入る事の出来ない塔の周辺に配置され、侵入者を拒む物だった。
そして、その塔へ入る条件を満たせば、青薔薇が動き、道を開くのだ。
「それをちょっといじってね、人族がこの島にやってきたら捕らえるように設定して、島中に種を蒔いたんだ。一応、邪魔にならない様に普段は小さいままだけど、人族が島に入ったら大きくなって、追跡して捕らえる様にしたんだ」
いい仕事をした、と言わんばかりの笑顔を浮かべたオベロンは気付かなかった。
「……うむ。さすが、王じゃの」
そう呟くノームの笑顔が少し引きつっていた事に。
魔物狩りの時にノームから教えてもらった人族についてだ。
いずれは関わるだろうが、直ぐでは無いと思っていた。
しかし、そうだろうか?
この地が緑で溢れているのは、割とすぐに察知されてしまうのではないだろうか?
何といっても、この世界には魔法が有るのだ。思いもよらない事が有るかもしれない。
その為に、この島を守る何かを作った方が良いのではないかと考えたのだ。
「何か、使えそうなものは無いかな……」
困った時のアイテムボックス。
オベロンは、そう嘯きながらアイテムボックスの中にある物を確認する。
そして、見つけた。
「あ、これ、使えそうだな……」
オベロンが取り出したのは、青い薔薇の苗だった。
***
「何をするんじゃ?」
「んー……。ちょっと、守りを固めようかと思って」
オベロンは畑を作った場所と反対側に少し開けた場所を作り、そこに青薔薇の苗を植えた。
「さて。じゃあ、ちょっと離れて」
「うむ」
ノームはオベロンの指示に従い、数歩離れ、様子を見守るようにオベロンの背を見つめる。
オベロンはアイテムボックスから『緑の王笏』を取り出し、力を籠めた。
王笏の輝石が輝きを放ち、オベロンの顔から表情が消える。
薄っすらと開けられた目は青薔薇の苗を見つめているが、どこか焦点が合っていなかった。しかし、確かにオベロンは青薔薇の苗を見ていた。正確には、その植物の仕組み、遺伝子ともいえるものを見ていたのだ。
オベロンは王笏の力を借り、青薔薇の苗を望み通りに作り変えていく。
そして、変化は起こった。
青薔薇の苗が、急成長を始めたのだ。
青薔薇はぐんぐん育ち、あっという間にオベロンの背を超え、さらに大きくなっていく。
ノームが唖然としてその様子を見つめる中、それはとうとう樹の家よりも大きくなった、しかし、それでもまだ成長を止めない。
ついには雲まで届き、それはそこから島を覆う様に、するすると枝を伸ばしていく。
そうしてついに島全体を覆い尽くすと、今度は青い薔薇の花が一斉に咲き乱れた。
それは美しく、けれども異様な光景だった。
青い花びらが天からひらひら降って来て、薔薇の芳しい香りが風に乗って流れてくる。
そして、薔薇の花びらが全て落ちると、今度はそこに実が生り、ころり、と落ちてきた。
ころり、ころり、と実が落ちる中、その一つはノームの頭にも降ってきて、コツリ、と音を立てて地面に落ちた。
ノームは思わずそれを拾おうとし、気付いた。
落ちてきた薔薇の実から、既に根が生えてきているのだ。
根はそのまま大地に根付き、首を持ち上げてするすると大きくなり、やがて一輪の可憐な青い薔薇の花を咲かせた。
そうしているうちに、ざぁ、と強い風が吹いた。すると、空を覆っていた薔薇の枝や葉が枯れていき、ボロボロと砂の様な小さな粒子となって、風にさらわれていく。
残ったのは、最初に植えた青薔薇と、新たに根付いた青薔薇だけだった。
「ふぅ……」
息を吐き、方から力を抜くオベロンに、ノームが恐る恐る尋ねてきた。
「王よ……。今のは、いったい……」
「ん? ああ、この島の侵入者対策に使おうと思ってね」
オベロンの言葉に、ますます困惑した顔をするノームに、オベロンは微笑む。
「ほら、この島って、他の地とは比べ物にならない程豊かだろ? だから、人族に見つかったら、奪い取られるかもしれないと思ったんだ」
「ああ、まあ、確かに……」
ノームは頷くも、それとこれとは何の関係があるのか、と首を傾げ、その様子を見たオベロンは言葉を重ねた。
「この青薔薇は、元々進入禁止を意味するものなんだ」
そう言って、オベロンは青薔薇の苗を撫で、再び自分の肩口あたりまで成長させる。
この青薔薇は、元となるゲームの中で、オベロンが担当するイベント内で使用される薔薇だ。これは、条件を満たさなければ入る事の出来ない塔の周辺に配置され、侵入者を拒む物だった。
そして、その塔へ入る条件を満たせば、青薔薇が動き、道を開くのだ。
「それをちょっといじってね、人族がこの島にやってきたら捕らえるように設定して、島中に種を蒔いたんだ。一応、邪魔にならない様に普段は小さいままだけど、人族が島に入ったら大きくなって、追跡して捕らえる様にしたんだ」
いい仕事をした、と言わんばかりの笑顔を浮かべたオベロンは気付かなかった。
「……うむ。さすが、王じゃの」
そう呟くノームの笑顔が少し引きつっていた事に。
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