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異世界転生編
第十話 シルキー
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きんぐ・ぴよこの謎に首を傾げながらも階下に降りたオベロンは、キッチンの方から良い匂いがするのに気が付いた。
「え……。なんか、食欲が刺激される匂いがする……」
驚き、キッチンを覗いてみれば、そこには理想の朝ごはんが用意されていた。
パンケーキの様に丸く焼いたマッシュポテト。色とりどりの野菜のサラダには、オレンジ色のソースが掛かっている。縁がカリっと焼かれた目玉焼きは半熟で、小皿に塩が盛られている。
コップの中に入っているのは、林檎ジュースだろう。林檎の甘い匂いが薄っすらと感じられた。
そして、オベロンが一番に注目した先、そこには、小さな淑女が居た。
「おはようございます。王様」
鈴の転がるような可愛らしい声で、囁くような小さな声の挨拶だった。
「わたくしの名は、シルキーと申します。勝手に朝食を作ってしまい、申し訳ありません」
ぺこり、と頭を下げるのは、オベロンの腰くらいまでの伸長の、ぷにっとした小人だ。彼女の小さな頭を覆うのは、純白のヘッドドレスで、彼女が身に纏うのは、ヘッドドレスと同色の中世の女性が着ていたようなドレスだった。
ヘッドドレスから覗く髪は金色で、緑の瞳が鮮やかな可愛らしいお嬢さんだ。
「あ、いや、ええと……。初めまして、妖精王のオベロンだ。朝食を作ってくれて、ありがとう。とても美味しそうで、嬉しいよ」
戸惑いながらもそう言えば、シルキーと名乗った少女は嬉しそうに微笑んだ。
一応、鑑定してみれば、彼女もやはり妖精なのだと分かった。
『シルキー』
家に憑く家政妖精。
家事のプロフェッショナル。『家』というテリトリー内では、出来ない事の方が少ない。
何というか、『ファンタジー』というより、彼女は『メルヘン』枠の存在の様な気がする。
オベロンはそんな事を考えながら、シルキーに話しかけた。
「君は家に憑く妖精……、なんだよね? と、いう事は、この家の子になった、という認識で大丈夫かい?」
オベロンの問いかけに、シルキーは少し緊張した様子で背筋を正し、頷いた。
「はい。勝手に憑いてしまって、申し訳ありません。あの……、このお家に、わたしを置いていただけないでしょうか?」
シルキーのお願いに、オベロンは笑顔で頷いた。
シルキーは嬉しそうに微笑んだが、オベロンとしては少しばかり申し訳なく思った。
何故なら、きっと最近のオベロンの不摂生を見た精霊が、オベロンの世話をするために『シルキー』になったのだと察したからだ。
身を慎んで生活しようと思ったばかりなのに、自らの不摂生で、少なくとも『きんぐ・ぴよこ』と『シルキー』が生まれてしまった。
両者の存在は、嬉しいと思うと同時に、オベロンに反省を促す存在となった。
***
シルキーに促されて朝食の席に着き、ふと気づく。
「あれ? 卵って、うちにあったっけ?」
鳥が早くもこの島に住み着くようになったのかと首を傾げると、シルキーがその答えを教えてくれた。
「それでしたら、ノームさんが鹿と兎を連れて来るついでに、ニワハトを五羽連れてきてくれたんです」
「ニワハト?」
首を傾げるオベロンに、シルキーは勝手口から外に出て、その鳥を連れて来た。
「ニワトリ…じゃ、無いな」
それは、ニワトリによく似た鳥だった。
大きさも姿もよく見る白いニワトリと似ているのだが、翼の先の方の羽に虹色の照りがあり、そこは少しハトを思い出させる。翼はニワトリより大きく、この鳥は空を飛べそうだ。
「これがニワハトです。人への警戒心が薄く、卵をよく産むので人に飼われる事が多いです。空を飛べますが、滅多に飛ぶようなことは無く、逆に飛んで逃げるようであれば、それは途轍もない危機が迫っている時だ、と言われています」
相変わらず囁くような小さな声で一生懸命に説明してくれるシルキーに、オベロンは笑顔で頷く。
ニワハトはシルキーの腕の中で「コケッポー」と鳴きながら、大人しくしている。本当に、警戒心が薄い。
「そうか。卵はありがたいな。ニワトリ…じゃなかった、ニワハト小屋を作らなきゃな」
シルキーとにっこり笑い合い、オベロンは材料に限りがあるとは思えない美味しい朝食に舌鼓を打った。
「え……。なんか、食欲が刺激される匂いがする……」
驚き、キッチンを覗いてみれば、そこには理想の朝ごはんが用意されていた。
パンケーキの様に丸く焼いたマッシュポテト。色とりどりの野菜のサラダには、オレンジ色のソースが掛かっている。縁がカリっと焼かれた目玉焼きは半熟で、小皿に塩が盛られている。
コップの中に入っているのは、林檎ジュースだろう。林檎の甘い匂いが薄っすらと感じられた。
そして、オベロンが一番に注目した先、そこには、小さな淑女が居た。
「おはようございます。王様」
鈴の転がるような可愛らしい声で、囁くような小さな声の挨拶だった。
「わたくしの名は、シルキーと申します。勝手に朝食を作ってしまい、申し訳ありません」
ぺこり、と頭を下げるのは、オベロンの腰くらいまでの伸長の、ぷにっとした小人だ。彼女の小さな頭を覆うのは、純白のヘッドドレスで、彼女が身に纏うのは、ヘッドドレスと同色の中世の女性が着ていたようなドレスだった。
ヘッドドレスから覗く髪は金色で、緑の瞳が鮮やかな可愛らしいお嬢さんだ。
「あ、いや、ええと……。初めまして、妖精王のオベロンだ。朝食を作ってくれて、ありがとう。とても美味しそうで、嬉しいよ」
戸惑いながらもそう言えば、シルキーと名乗った少女は嬉しそうに微笑んだ。
一応、鑑定してみれば、彼女もやはり妖精なのだと分かった。
『シルキー』
家に憑く家政妖精。
家事のプロフェッショナル。『家』というテリトリー内では、出来ない事の方が少ない。
何というか、『ファンタジー』というより、彼女は『メルヘン』枠の存在の様な気がする。
オベロンはそんな事を考えながら、シルキーに話しかけた。
「君は家に憑く妖精……、なんだよね? と、いう事は、この家の子になった、という認識で大丈夫かい?」
オベロンの問いかけに、シルキーは少し緊張した様子で背筋を正し、頷いた。
「はい。勝手に憑いてしまって、申し訳ありません。あの……、このお家に、わたしを置いていただけないでしょうか?」
シルキーのお願いに、オベロンは笑顔で頷いた。
シルキーは嬉しそうに微笑んだが、オベロンとしては少しばかり申し訳なく思った。
何故なら、きっと最近のオベロンの不摂生を見た精霊が、オベロンの世話をするために『シルキー』になったのだと察したからだ。
身を慎んで生活しようと思ったばかりなのに、自らの不摂生で、少なくとも『きんぐ・ぴよこ』と『シルキー』が生まれてしまった。
両者の存在は、嬉しいと思うと同時に、オベロンに反省を促す存在となった。
***
シルキーに促されて朝食の席に着き、ふと気づく。
「あれ? 卵って、うちにあったっけ?」
鳥が早くもこの島に住み着くようになったのかと首を傾げると、シルキーがその答えを教えてくれた。
「それでしたら、ノームさんが鹿と兎を連れて来るついでに、ニワハトを五羽連れてきてくれたんです」
「ニワハト?」
首を傾げるオベロンに、シルキーは勝手口から外に出て、その鳥を連れて来た。
「ニワトリ…じゃ、無いな」
それは、ニワトリによく似た鳥だった。
大きさも姿もよく見る白いニワトリと似ているのだが、翼の先の方の羽に虹色の照りがあり、そこは少しハトを思い出させる。翼はニワトリより大きく、この鳥は空を飛べそうだ。
「これがニワハトです。人への警戒心が薄く、卵をよく産むので人に飼われる事が多いです。空を飛べますが、滅多に飛ぶようなことは無く、逆に飛んで逃げるようであれば、それは途轍もない危機が迫っている時だ、と言われています」
相変わらず囁くような小さな声で一生懸命に説明してくれるシルキーに、オベロンは笑顔で頷く。
ニワハトはシルキーの腕の中で「コケッポー」と鳴きながら、大人しくしている。本当に、警戒心が薄い。
「そうか。卵はありがたいな。ニワトリ…じゃなかった、ニワハト小屋を作らなきゃな」
シルキーとにっこり笑い合い、オベロンは材料に限りがあるとは思えない美味しい朝食に舌鼓を打った。
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