野良錬金術師ネモの異世界転生放浪録(旧題:野良錬金術師は頭のネジを投げ捨てた!)

悠十

文字の大きさ
上 下
30 / 57
番外編・すいーと・ぱにっく

プロローグ

しおりを挟む
森。
 それは、生命の宝庫。
 太陽の光を求めて木々が聳え立ち、草木が茂る。虫は葉を食べ、甘い蜜を求めて花々の間を飛び回る。それを鳥が啄み、落ちた果実を動物が食べる。それを食すのは肉食獣だ。
 そして、それらとは一線を画し、生態系の頂点に立つのは魔物だ。
 魔物の始まりは、魔素が生態系に影響を及ぼしたのが原因ではないかと言われている。
 最初は動物ばかりの森だったが、どこからか魔物が現れれば、あっという間にその森は魔物だらけの森へと変わってしまう。魔物ではない生物は、虫や鳥、小動物のみとなってしまうのだから、魔物は恐ろしい。
 そして、魔物は人間を――魔力をより多く持つ生物を好んで食べる。
 それは魔核という魔力を多分に含む心臓を持つからだ。
 魔物は普段は他種族の魔物を食べるが、一度人間が縄張りに入ればそちらを優先して襲う。何故なら、本能で魔物より人間の方が弱いと知っているからだ。
 さて、そうやって増えてきた魔物だが、やはり彼等にもヒエラルキーというものがある。
 力の大きい者、体の大きい者が頂点に立ちやすいが、それがひっくり返る場合がある。
 それが、集団。

 群れであった。



   ***



 辺りが一望できる草原の丘の、爽やかな朝。
 ネモとあっくんは朝食を摂るため、大きな岩に腰を下ろしていた。
 あっくんはネモから半分に割った丸パンに、バターと蜂蜜がたっぷりつけてもらい、それを受け取る。
最近のあっくんのマイブームは、蜂蜜だ。
とろりと甘い黄金色の蜜が、バターの塩気とマッチして、大変素晴らしいハーモニーを奏でている。
 うっとりとしながら食べていると、ネモが蜂蜜壺をのぞき込み、呟いた。

「あらら。あっくん、蜂蜜、それで最後だわ」
「きゅきゃっ!?」
 
 ガーン‼
 バックにそんな擬音が流れそうな分かりやすい顔をするあっくんに、ネモは笑う。

「あはは! あっくんたら! 町に着いたら新しいのを買うから、ちょっとの我慢よ」
「きゅ~……」

 無い物は仕方ない。
 あっくんは涙目になりながら、大切に蜂蜜バターパンを味わった。

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚
ファンタジー
にゃんこ大好きな私はいつの間にか乙女ゲームの世界に転生していたようです。 しかも、なんと悪役令嬢として転生してしまったようです。 どうせ転生するのであればモブがよかったです。 この乙女ゲームでは精霊の卵を育てる必要があるんですが・・・。 精霊の卵が孵ったら悪役令嬢役の私は死んでしまうではないですか。 だって、悪役令嬢が育てた卵からは邪竜が孵るんですよ・・・? あれ? そう言えば邪竜が孵ったら、世界の人口が1/3まで減るんでした。 邪竜が生まれてこないようにするにはどうしたらいいんでしょう!?

前世の幸福ポイントを使用してチート冒険者やってます。

サツキ コウ
ファンタジー
俗に言う異世界転生物。 人生の幸福ポイントを人一倍残した状態で不慮の死を遂げた主人公が、 前世のポイントを使ってチート化! 新たな人生では柵に囚われない為に一流の冒険者を目指す。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

処理中です...