79 / 88
たった一つの真実
しおりを挟む
それは不思議な感覚だった。
ついさっきまで叫び声を上げてしまうほどの激痛を感じていたのに、今は完全に消えている。
徐々に寒さを感じているのに、自然と意識は揺らめき、今にでも眠ってしまいそうだ。
――ぁぁ……僕……斬られたんだっけ?
ふと、薄れゆく意識の中で思い出した。
徐々に鈍感になっていく中、薫の手は脇腹の傷口をなぞった。
感じている寒さとは相反して、手に残る感触は温かい。
指の隙間からその感触は外に流れていく。
こんな状態でも、薫はどこか落ち着いていて、僅かにだが傷が塞がっていることを理解して、それがウィリアムのおかげだということも察した。
死が近づいているという状況下で、薫の脳はいつも以上に冷静だった。
ウィリアムが戦っている激しい音も、川の音のような静かに聞こえる。
それはまるで海の底にいるような感覚だった。
だからこそ、薫の意識は集中していた。
戦うことを忘れて、情報を集めることだけに脳を使う。
仰向けの薫。
視界。
天井。ひび割れて、戦闘の衝撃で今にも崩れそうだ。
少し視点をずらす。
天井の隅、影になっている部分に妙な膨らみ。
何かを覆い隠しているような、そんな膨らみがそこにあった。
また少し視点を変える。
外から漏れる光。柱のように伸びる光芒が、この建物を明るくしている。
その輝きを一瞬だけ反射した何か。
そこに宝石でもあるかのように、小さな光を反射した。それは一か所だけでなく複数あった。
また視点を変える。
光の当たっていない壁。もう築何年経つのだろうか、壁自体に穴が開いていて、外の世界が少し覗ける。
そこにも違和感。不自然に壁の色が変わっている。影になっているため分かり辛いが、目を凝らすと布のようなもので覆われていた。
そして再び天井。
目を閉じる。視覚を遮断し、雑音も聞き流し、薫はガントロイトの戦闘を想起する。
感じていた違和感と、集めた情報と組み合わせていく。
――もしかして……
*******************
「「――ッッ」」
ウィリアムは笑っていた。
その笑みはまるで玩具で遊ぶ子供のようなものだった。
「フハハハ、どうした? さっきまでの威勢はどこに消えた」
二人のガントロイトを相手に、神器を抜いたウィリアムは圧倒的な力を見せつける。
彼の一振りは、建物を破壊しそうな衝撃を生み出し、いつ倒壊してもおかしくないことは、広がるヒビと、小さな瓦礫が証明していた。
だが、ガントロイトも食らいつく。
武器生成、瞬間移動、分身能力、攻撃範囲拡張。使える能力全てを行使して、目前の獅子――怪物を相手にする。
しかし、形勢は徐々に傾いた。
「クソッ!」
「さっきの言葉を返えさせてもらう」
「さっきまでの威勢はどこに消えた?」
ウィリアムの表情が曇る。
ウィリアムは薫とクラリスを助けるために動いている。
本気を出せばガントロイトは倒せるかもしれないが、肝心の二人は巻き込み殺してしまうだろう。
それでは意味は無い。建物ごと破壊した為、敵は倒したが二人も死にましたなど笑い話にもならない。
「何故この場所で待っていたか分かるか?」
「……なるほど。貴様はかなり周到な計画を立てていたようだな」
「おれがこの場所を選んだ理由はただ思い入れがあるだけではない。むしろ、そんな理由では選ばない。この場所で戦うために準備したのではなく、勝てる条件が揃っているのがこの場所だったのだ」
ガントロイトはウィリアムが握る神器を指さして、
「お前の神器“エクスカリバー”はその威力故に最強の神器と称されているが、威力が高すぎる。軽く振っただけで凄まじい衝撃を生み出し、マナを込めて振れば万人を吹き飛ばす斬撃となる」
ウィリアムが本気を出せばガントロイトは敵わない。
だからこそ、本気を出させない場所でなくてはならない。
「このままでは自分が殺される。だからといって本気を出せば二人は倒壊した建物の下敷きになって死ぬ。場所を変えようとしておれから離れれば、おれは躊躇なくこいつらを殺す。お前を殺した後は二人を殺す。お前達に待っているのは全滅の二文字だけだ」
「オレを倒そうと人質を取る奴は結構いたが、ここまで苦しまされたのは初めてだ。反乱軍にいなければ騎士団の参謀としてほしいくらいだな」
「参謀か……その現実も面白いだろうな。だが、お前に見せるのはあったかもしれない現実ではなく、今ここに起きる真実」
そう言って、ガントロイトは再び両手を握る。
「武器の生成か? 残念だが貴様の作る武器はスペックが低い。いくら生み出そうとオレのエクスカリバーの前にはただの鉄塊に変わりない」
「そう思うか? おれがいつ普通の武器しか作れないと言った?」
光が生まれる。その光に包まれて、ガントロイトの手にはウィリアムと同じエクスカリバーが握られていた。
流石のウィリアムでも、これには動揺を隠すことが出来ず、
「ほう、人間らしい顔も出来るのだな。武器の生成? そっちの都合でおれの力を過小されては困る。武器の生成ではなく、見た武器の複製をつくることが出来る。こんな風にな」
ガントロイトはエクスカリバーを横に一閃する。
振るというには遅い。剣先を横になぞるように動かしたのに対して、ウィリアムの身体を後方に押し出すような風が襲い掛かった。
「この状態のオレは散々怪物だの化け物だの言われていたが、オレ以上の化け物を目の当たりにすると、奴らの気持ちが分からなくもないな」
「帝国の英雄にそう言ってもらえるとは光栄だな」
ガントロイトはエクスカリバーを大地に突き刺し衝撃が周囲の空気揺らす。両手を組み今度はデュランダルを二本生み出した。
「いくぞ!」
聖剣を持った二人のガントロイトは、ウィリアムの体力とマナを急激に消費させる。
本気を出せないウィリアムと、徐々に強くなっていくガントロイト。
最初にエクスカリバーを複製して動揺を誘い、デュランダルで攻撃を始める。
「ぐぁは!?」
ガントロイトの一人が、デュランダルでウィリアムの背中を斬り裂いた。
鮮血が噴き出して、片膝をついたところをもう片方のガントロイトが聖剣を振り下ろす。
表情を歪ませながらもエクスカリバーで受け止める。
鍔迫り合いに持ち込んだ状況ではマナを奪うデュランダルの方が有利。
この状況では、一人しか対応できない。
つまり、ウィリアムの背後はがら空きなのだ。
それはウィリアムも分かっている。だが、背後に気を遣えば目前のガントロイトに押し負ける。
死を覚悟した。
だが、何故か一向に斬りつけられない。それどころかマナの消費も止まってただの力だけになっていた。
一体何が起こったのか? そう思っているのはウィリアムだけではない。ガントロイトもまた僅かに首を傾げていた。
だが、心当たりがあるのか、ガントロイトはウィリアムから視線を外した。
「やっぱり……みたいだね」
ガントロイトの視線の先、血に染まり立っているのもやっとな薫が、薄ら笑みを浮かべていた。
「カオルッ無事か?」
「やぁウィリアム……おかげで少し回復したよッっと……」
ふらついて片膝をついた薫。動けることは可能なようだが、戦闘に参加できないのは変わらない。
「そんな状態では戦えないだろう。そこでおとなしくしていろ。今こいつを殺して次はお前だ」
「残念だけどそうはならない……もうあなたに勝ち目はないよ」
薫の言葉に、ガントロイトの眼は鋭く変わる。
「勝ち目がない? この状況を見てもそう言えるのか? 勇者は瀕死、英雄もこの通り重症、超級魔族は人質を取られて動けない。おれの計画に支障はない」
「そうじゃないことはあなた自身が一番よく分かっているはずだ」
「どういうことだカオル」
「彼の天恵は複数じゃない。たった一つだ」
薫の発言にガントロイトの表情は歪む。
それは薫の言葉が的を射ていることの表れだ。
「最初に引っかかったのはあなたが爆破能力を見せた時。シュレイドの話だと何の準備もなく突然敵が爆発したみたいだけど、少なくとも刻印を押さなければならない。もし敵チームとの抗争の時に事前に刻印を押していたのなら何故味方が負けそうになるまで能力を使わなかった? 何故シュレイドは刻印に気付かなかった? 情報の違いから僕は少し疑問を感じた」
ガントロイトは押し黙る。
「次にあなたは僕と対峙する際、一度手を組んで武器を生成しようとした。その時一瞬だけ表情を変えましたよね」
「それがどうした?」
「あなたが僅かに表情を変えた理由。それは能力が発動しなかったからじゃないんですか?」
「どういうことだ?」
思わずウィリアムが尋ねた。
「ウィリアムも不思議に思わなかった? これほどまでに慎重な男がなぜ瞬間移動や分身能力を最初から使わなかったのか。戦いを楽しんでいるならともかく、彼は僕らを殺すことだけに集中している。何なら僕らが現れた瞬間に背後に瞬間移動して爆破の刻印を刻めば終わりなはずだ」
「……能力発動に何らかの条件を有するということか」
「そう。それに周囲を調べれば不自然なところはたくさんある」
薫はゆっくりと歩く。
それは建物の壁で、少し色が変わっている場所。
薫はその場所を殴る。するとその壁は脆いのか簡単に壊れた。
「なッ、これは……」
薫が破壊した壁の向こうには大量の武器が、糸に繋がれて置いてあった。そこにはエクスカリバーやデュランダルもある。
「あなたは両手を組んで武器を生成する。その際、光が僕らの視界を僅かに奪う。その間にあなたはここから武器を調達して、あたかも武器を作ったように見せかけていた」
「だがカオル、あの光は本当に僅かな時間だ。その間にその場所から武器を取り壁を修復して同じ場所に戻ることは難しいだろ」
薫の理論では時間が短すぎる。だが、ウィリアムの指摘も薫は「可能なんだよ」と否定。
薫はデュランダルを投げる。
デュランダルは刃先を真っ直ぐに飛んでいき、壁に刺さった瞬間、薫の傍にある武器の内一つがガントロイトの方へ勢いよく飛んでいった。
「これは……」
「目を凝らせばわかるけど、所々何かが光を反射しているんだ。多分それは糸」
「糸?」
「そう。それを切ればこの武器は射出される。どの糸を切ればどの位置にどの武器が飛んでくるのかはガントロイトしか分からない。つまり武器生成の正体は光の魔石を手の中に潜ませて砕き、光が視界を奪っている間に武器を自分の方に飛ばして掴む。壁の修復は【創成】の恵術で薄く作る」
「だが、それなら表情を変えた理由は? そもそも能力が無いのなら能力が発動しなくて表情が乱れたという薫の理論はおかしくなる」
「いや、ガントロイトに能力はある。だけど、それはいつでも使える物じゃないんだよ」
薫は再び場所を移動する。
そして、ガントロイトが地面に突き刺したエクスカリバーを掴んだ。
「武器の複製も何故エクスカリバーを最初に選んだ? この場所が倒壊すれば僕と姫は死ぬけどその後ウィリアムは本気で戦える。エクスカリバーは一振りで倒壊させる危険があるのにそれをガントロイトが使えば自分もやり辛いだけだ」
ガントロイトもしエクスカリバーで戦っていたなら、建物を壊さないように気を使わなければならない。それなら条件はウィリアムと同じということになる。
あくまであの状況ではウィリアムを真っ先に始末しなければならない。その状況下で有利な条件を自ら潰すようなことをするとは思えない。
「だが、それはオレの動揺を誘う為かもしれない。現にガントロイトはデュランダルで戦っている」
「なんで動揺を誘う必要がある? エクスカリバーを複製したくらいでウィリアムが確実に動揺する保証はない。それならデュランダルを先に複製して戦った方が相手を殺すという意味では有効だ。それに、僕と戦っている時もデュランダルでならマナを消費せずに済んだ可能性もあるのに」
「つまり、エクスカリバーの複製にはほかに意味があった?」
「そういう事。思い返せばガントロイトの多数の能力は一度見せてから頻繁に使っている。それまで一切に使わなかったのに、一度使ったら堂々と晒すようになっている」
薫はエクスカリバーを抜いて一閃する。
だが、何故かそこに衝撃は無かった。ただ見た目だけそっくりな玩具のように。
「ここまで用意周到で合理的且つ慎重なあなたには不自然な行動。ここから僕はあなたの天恵をこう睨んでいる。現実を真実にする天恵。つまり、僕らがその能力を使えると思った瞬間に使える天恵」
薫が言うと、ガントロイトは図星を突かれたように脂汗を掻いていた。
「攻撃範囲拡張も、刃先に合わせて針か何かを飛ばしてかすり傷をつければ可能だし、分身能力も事前に用意してあったあなたのオブジェを構えて置き、そこから糸のからくりを使ってナイフを飛ばせば、あたかもそこに二人目のガントロイトがいるように思わせることが出来る」
そうやって分身能力を使えるようになれば、薫の背後に分身体を作り羽交い絞めにする。それと同時に気が逸れたガントロイトのオブジェを何処かに隠せば、分身体が瞬間移動したかのように思わせることが出来る。
爆破の能力もわざわざ実践したのはその能力が使えると思わせる為。元々爆裂石でも仕込んでいたのだろう。シュレイドの時も、一人に爆裂石を仕込んでおいて爆破させる。その時はリーダーの言葉が刻印替わりになっていた。爆破という命令を下してから爆破することで敵は爆破能力を持っていると勘違いする。
刻印は爆破する対象を明確にし、敵のイメージをより鮮明にする為だ。
「僕はまだその時あなたの能力を疑っていた。つまり、武器生成の力も疑っている。僕が相手の時は武器生成が出来なくて表情を変えた。一度手を放し、光の魔石を準備してからもう一度糸を切って武器を手に取り実演して見せ、僕に印象を刻もうとした。天井にある妙な膨らみ。あそこにはあなたの形をした模型か人形が隠されているんじゃないのかな?」
ガントロイトは武器を落とす。
そして顔を覆うと、こみ上げる笑いを抑えきれなくなって肩を震わせていた。
「ククク……そうだ、その通りだ。おれの天恵は相手が認識して初めて使える。これがおれの天恵【空想の真実】。薔薇の刻印もマナスタンプ、ただの玩具に過ぎん。シュレイドの話の時は爆裂石が胃液でひびが入るまでにかなりの時間を要した。だからすぐに使えなかった」
「なるほど。最初にエクスカリバーを見せつけたのも、実際に斬らないと効果を発揮しないデュランダルよりはイメージを与えやすいからか。風の魔石さえうまく使えば衝撃波を偽装できる。そして、急に分身体が消えたのも、デュランダルの力が使えなくなったのも、カオルがその事実を認識したから。更に、その能力の裏を返せば――」
「種さえ分かればあなたは天恵が無いのと同じ」
天恵が使えないのなら、クラリスは人質ではなくなる。人質ではなくなるのならフォルテも戦闘に参加できる。
たった一つの真実が、形勢を一気に逆転させた。
「そういう事ならオレも本気が出せる。フォルテが動けるなら建物を破壊しても二人を安全な場所に連れてってもらえるからね」
それだけじゃない。フォルテがガントロイトを相手にすれば、ウィリアムは集中して薫を回復させることが出来る。
もはや、ガントロイトに勝ち目はなかった。
「どうしますか? もうあなたに勝ち目はありませんよ。おとなしく降参してください」
「確かにおれに勝ち目は無くなった。だが、勝ち目がないからと言って降参する道理はない」
するとガントロイトは恵術を使う。
天恵ではない恵術【移転】だ。ガントロイトの横に現れたのは、車いすに座った少年。
おそらく彼にマーキングして何時でも自分の所に来れるようにしていたのだろう。
眼に光は無く、魂が抜け落ちたような少年が、ガントロイトの前に現れた。
「その子は……」
「こいつは貴族に飼われていたガキだ。その貴族は拷問が趣味でな、足の筋肉をやられて歩けないし、薬で耳は聞こえない。過度のストレスで心は壊れた」
その少年の痛々しさに、クラリスは口元を手で覆い、薫も眉をひそめた。
「おれはこいつを連れ出していろんな場所に連れて行った。見た光景を認識しているのかは分からんが、薄っすらと笑顔を浮かべるようにはなっている」
「いろんな場所に……まさかッ!」
ふと、薫は思った。
ガントロイトの天恵は対象がいないと使えない。なら、どうやってクラリスを誘拐したのか。
その時のウィリアムはガントロイトを知らないのだ。瞬間移動が出来ると思い込ませることが出来ない。
そんな状況でも瞬間移動が使えたということは、この少年はガントロイトが瞬間移動できると思っているという事。
「こいつは俺が瞬間移動できると完全に思い込んでいる。まぁ、こいつは思い込みが激しすぎるからこいつの周りでは瞬間移動しか出来ないという欠点はあるが、逆に言えばこいつが傍にいればいくら能力がバレようと瞬間移動は使えるという事だ」
「逃げる気だッ、ウィリアム!」
ウィリアムは薫の呼びかけに反応するが、思ったより傷が深く咄嗟の動きが出来ない。
状況を瞬時に把握したフォルテがガントロイトを攻撃しようと変化する。
「もう遅い。また会おう――――――――ッん?」
もう移動してもおかしくないのに、ガントロイトはまだここにいる。
どういうことか。全員が戸惑う中、たった一人だけ、原因を理解し思わず笑みを零した。
「ハハッ……なるほどね。僕の天恵は思ったより使い勝手が良いらしい」
「何故だ。何故瞬間移動が使えない」
「どうやら彼の過剰な思い込みよりも僕の認識の方が優先されるらしい」
薫の天恵【絶対的優先権】は全てにおいて薫が優先される。
いくら少年の強い真実を前にしても、薫の真実の方が優先される。薫の真実はガントロイトに瞬間移動は使えないという事。
ガントロイトに手はない。瞬間移動によほどの自信があったのか、【移空】や【標転】の準備はしていないようで、諦観の表情を見せた。
「これで、一件落着かな……」
ウィリアムはガントロイトを拘束し、ようやくといった感じで薫は座り込む。
緊張状態から解放されたからか、急激な眠気が……
「ぁ……これは……まず……ぃ……」
「カオル様!?」
「カオルッ」
朱色に染まる床に薫は倒れこみ、クラリスとウィリアムは駆け寄った。
遠のく意識は、二人の声を反芻させて――
ついさっきまで叫び声を上げてしまうほどの激痛を感じていたのに、今は完全に消えている。
徐々に寒さを感じているのに、自然と意識は揺らめき、今にでも眠ってしまいそうだ。
――ぁぁ……僕……斬られたんだっけ?
ふと、薄れゆく意識の中で思い出した。
徐々に鈍感になっていく中、薫の手は脇腹の傷口をなぞった。
感じている寒さとは相反して、手に残る感触は温かい。
指の隙間からその感触は外に流れていく。
こんな状態でも、薫はどこか落ち着いていて、僅かにだが傷が塞がっていることを理解して、それがウィリアムのおかげだということも察した。
死が近づいているという状況下で、薫の脳はいつも以上に冷静だった。
ウィリアムが戦っている激しい音も、川の音のような静かに聞こえる。
それはまるで海の底にいるような感覚だった。
だからこそ、薫の意識は集中していた。
戦うことを忘れて、情報を集めることだけに脳を使う。
仰向けの薫。
視界。
天井。ひび割れて、戦闘の衝撃で今にも崩れそうだ。
少し視点をずらす。
天井の隅、影になっている部分に妙な膨らみ。
何かを覆い隠しているような、そんな膨らみがそこにあった。
また少し視点を変える。
外から漏れる光。柱のように伸びる光芒が、この建物を明るくしている。
その輝きを一瞬だけ反射した何か。
そこに宝石でもあるかのように、小さな光を反射した。それは一か所だけでなく複数あった。
また視点を変える。
光の当たっていない壁。もう築何年経つのだろうか、壁自体に穴が開いていて、外の世界が少し覗ける。
そこにも違和感。不自然に壁の色が変わっている。影になっているため分かり辛いが、目を凝らすと布のようなもので覆われていた。
そして再び天井。
目を閉じる。視覚を遮断し、雑音も聞き流し、薫はガントロイトの戦闘を想起する。
感じていた違和感と、集めた情報と組み合わせていく。
――もしかして……
*******************
「「――ッッ」」
ウィリアムは笑っていた。
その笑みはまるで玩具で遊ぶ子供のようなものだった。
「フハハハ、どうした? さっきまでの威勢はどこに消えた」
二人のガントロイトを相手に、神器を抜いたウィリアムは圧倒的な力を見せつける。
彼の一振りは、建物を破壊しそうな衝撃を生み出し、いつ倒壊してもおかしくないことは、広がるヒビと、小さな瓦礫が証明していた。
だが、ガントロイトも食らいつく。
武器生成、瞬間移動、分身能力、攻撃範囲拡張。使える能力全てを行使して、目前の獅子――怪物を相手にする。
しかし、形勢は徐々に傾いた。
「クソッ!」
「さっきの言葉を返えさせてもらう」
「さっきまでの威勢はどこに消えた?」
ウィリアムの表情が曇る。
ウィリアムは薫とクラリスを助けるために動いている。
本気を出せばガントロイトは倒せるかもしれないが、肝心の二人は巻き込み殺してしまうだろう。
それでは意味は無い。建物ごと破壊した為、敵は倒したが二人も死にましたなど笑い話にもならない。
「何故この場所で待っていたか分かるか?」
「……なるほど。貴様はかなり周到な計画を立てていたようだな」
「おれがこの場所を選んだ理由はただ思い入れがあるだけではない。むしろ、そんな理由では選ばない。この場所で戦うために準備したのではなく、勝てる条件が揃っているのがこの場所だったのだ」
ガントロイトはウィリアムが握る神器を指さして、
「お前の神器“エクスカリバー”はその威力故に最強の神器と称されているが、威力が高すぎる。軽く振っただけで凄まじい衝撃を生み出し、マナを込めて振れば万人を吹き飛ばす斬撃となる」
ウィリアムが本気を出せばガントロイトは敵わない。
だからこそ、本気を出させない場所でなくてはならない。
「このままでは自分が殺される。だからといって本気を出せば二人は倒壊した建物の下敷きになって死ぬ。場所を変えようとしておれから離れれば、おれは躊躇なくこいつらを殺す。お前を殺した後は二人を殺す。お前達に待っているのは全滅の二文字だけだ」
「オレを倒そうと人質を取る奴は結構いたが、ここまで苦しまされたのは初めてだ。反乱軍にいなければ騎士団の参謀としてほしいくらいだな」
「参謀か……その現実も面白いだろうな。だが、お前に見せるのはあったかもしれない現実ではなく、今ここに起きる真実」
そう言って、ガントロイトは再び両手を握る。
「武器の生成か? 残念だが貴様の作る武器はスペックが低い。いくら生み出そうとオレのエクスカリバーの前にはただの鉄塊に変わりない」
「そう思うか? おれがいつ普通の武器しか作れないと言った?」
光が生まれる。その光に包まれて、ガントロイトの手にはウィリアムと同じエクスカリバーが握られていた。
流石のウィリアムでも、これには動揺を隠すことが出来ず、
「ほう、人間らしい顔も出来るのだな。武器の生成? そっちの都合でおれの力を過小されては困る。武器の生成ではなく、見た武器の複製をつくることが出来る。こんな風にな」
ガントロイトはエクスカリバーを横に一閃する。
振るというには遅い。剣先を横になぞるように動かしたのに対して、ウィリアムの身体を後方に押し出すような風が襲い掛かった。
「この状態のオレは散々怪物だの化け物だの言われていたが、オレ以上の化け物を目の当たりにすると、奴らの気持ちが分からなくもないな」
「帝国の英雄にそう言ってもらえるとは光栄だな」
ガントロイトはエクスカリバーを大地に突き刺し衝撃が周囲の空気揺らす。両手を組み今度はデュランダルを二本生み出した。
「いくぞ!」
聖剣を持った二人のガントロイトは、ウィリアムの体力とマナを急激に消費させる。
本気を出せないウィリアムと、徐々に強くなっていくガントロイト。
最初にエクスカリバーを複製して動揺を誘い、デュランダルで攻撃を始める。
「ぐぁは!?」
ガントロイトの一人が、デュランダルでウィリアムの背中を斬り裂いた。
鮮血が噴き出して、片膝をついたところをもう片方のガントロイトが聖剣を振り下ろす。
表情を歪ませながらもエクスカリバーで受け止める。
鍔迫り合いに持ち込んだ状況ではマナを奪うデュランダルの方が有利。
この状況では、一人しか対応できない。
つまり、ウィリアムの背後はがら空きなのだ。
それはウィリアムも分かっている。だが、背後に気を遣えば目前のガントロイトに押し負ける。
死を覚悟した。
だが、何故か一向に斬りつけられない。それどころかマナの消費も止まってただの力だけになっていた。
一体何が起こったのか? そう思っているのはウィリアムだけではない。ガントロイトもまた僅かに首を傾げていた。
だが、心当たりがあるのか、ガントロイトはウィリアムから視線を外した。
「やっぱり……みたいだね」
ガントロイトの視線の先、血に染まり立っているのもやっとな薫が、薄ら笑みを浮かべていた。
「カオルッ無事か?」
「やぁウィリアム……おかげで少し回復したよッっと……」
ふらついて片膝をついた薫。動けることは可能なようだが、戦闘に参加できないのは変わらない。
「そんな状態では戦えないだろう。そこでおとなしくしていろ。今こいつを殺して次はお前だ」
「残念だけどそうはならない……もうあなたに勝ち目はないよ」
薫の言葉に、ガントロイトの眼は鋭く変わる。
「勝ち目がない? この状況を見てもそう言えるのか? 勇者は瀕死、英雄もこの通り重症、超級魔族は人質を取られて動けない。おれの計画に支障はない」
「そうじゃないことはあなた自身が一番よく分かっているはずだ」
「どういうことだカオル」
「彼の天恵は複数じゃない。たった一つだ」
薫の発言にガントロイトの表情は歪む。
それは薫の言葉が的を射ていることの表れだ。
「最初に引っかかったのはあなたが爆破能力を見せた時。シュレイドの話だと何の準備もなく突然敵が爆発したみたいだけど、少なくとも刻印を押さなければならない。もし敵チームとの抗争の時に事前に刻印を押していたのなら何故味方が負けそうになるまで能力を使わなかった? 何故シュレイドは刻印に気付かなかった? 情報の違いから僕は少し疑問を感じた」
ガントロイトは押し黙る。
「次にあなたは僕と対峙する際、一度手を組んで武器を生成しようとした。その時一瞬だけ表情を変えましたよね」
「それがどうした?」
「あなたが僅かに表情を変えた理由。それは能力が発動しなかったからじゃないんですか?」
「どういうことだ?」
思わずウィリアムが尋ねた。
「ウィリアムも不思議に思わなかった? これほどまでに慎重な男がなぜ瞬間移動や分身能力を最初から使わなかったのか。戦いを楽しんでいるならともかく、彼は僕らを殺すことだけに集中している。何なら僕らが現れた瞬間に背後に瞬間移動して爆破の刻印を刻めば終わりなはずだ」
「……能力発動に何らかの条件を有するということか」
「そう。それに周囲を調べれば不自然なところはたくさんある」
薫はゆっくりと歩く。
それは建物の壁で、少し色が変わっている場所。
薫はその場所を殴る。するとその壁は脆いのか簡単に壊れた。
「なッ、これは……」
薫が破壊した壁の向こうには大量の武器が、糸に繋がれて置いてあった。そこにはエクスカリバーやデュランダルもある。
「あなたは両手を組んで武器を生成する。その際、光が僕らの視界を僅かに奪う。その間にあなたはここから武器を調達して、あたかも武器を作ったように見せかけていた」
「だがカオル、あの光は本当に僅かな時間だ。その間にその場所から武器を取り壁を修復して同じ場所に戻ることは難しいだろ」
薫の理論では時間が短すぎる。だが、ウィリアムの指摘も薫は「可能なんだよ」と否定。
薫はデュランダルを投げる。
デュランダルは刃先を真っ直ぐに飛んでいき、壁に刺さった瞬間、薫の傍にある武器の内一つがガントロイトの方へ勢いよく飛んでいった。
「これは……」
「目を凝らせばわかるけど、所々何かが光を反射しているんだ。多分それは糸」
「糸?」
「そう。それを切ればこの武器は射出される。どの糸を切ればどの位置にどの武器が飛んでくるのかはガントロイトしか分からない。つまり武器生成の正体は光の魔石を手の中に潜ませて砕き、光が視界を奪っている間に武器を自分の方に飛ばして掴む。壁の修復は【創成】の恵術で薄く作る」
「だが、それなら表情を変えた理由は? そもそも能力が無いのなら能力が発動しなくて表情が乱れたという薫の理論はおかしくなる」
「いや、ガントロイトに能力はある。だけど、それはいつでも使える物じゃないんだよ」
薫は再び場所を移動する。
そして、ガントロイトが地面に突き刺したエクスカリバーを掴んだ。
「武器の複製も何故エクスカリバーを最初に選んだ? この場所が倒壊すれば僕と姫は死ぬけどその後ウィリアムは本気で戦える。エクスカリバーは一振りで倒壊させる危険があるのにそれをガントロイトが使えば自分もやり辛いだけだ」
ガントロイトもしエクスカリバーで戦っていたなら、建物を壊さないように気を使わなければならない。それなら条件はウィリアムと同じということになる。
あくまであの状況ではウィリアムを真っ先に始末しなければならない。その状況下で有利な条件を自ら潰すようなことをするとは思えない。
「だが、それはオレの動揺を誘う為かもしれない。現にガントロイトはデュランダルで戦っている」
「なんで動揺を誘う必要がある? エクスカリバーを複製したくらいでウィリアムが確実に動揺する保証はない。それならデュランダルを先に複製して戦った方が相手を殺すという意味では有効だ。それに、僕と戦っている時もデュランダルでならマナを消費せずに済んだ可能性もあるのに」
「つまり、エクスカリバーの複製にはほかに意味があった?」
「そういう事。思い返せばガントロイトの多数の能力は一度見せてから頻繁に使っている。それまで一切に使わなかったのに、一度使ったら堂々と晒すようになっている」
薫はエクスカリバーを抜いて一閃する。
だが、何故かそこに衝撃は無かった。ただ見た目だけそっくりな玩具のように。
「ここまで用意周到で合理的且つ慎重なあなたには不自然な行動。ここから僕はあなたの天恵をこう睨んでいる。現実を真実にする天恵。つまり、僕らがその能力を使えると思った瞬間に使える天恵」
薫が言うと、ガントロイトは図星を突かれたように脂汗を掻いていた。
「攻撃範囲拡張も、刃先に合わせて針か何かを飛ばしてかすり傷をつければ可能だし、分身能力も事前に用意してあったあなたのオブジェを構えて置き、そこから糸のからくりを使ってナイフを飛ばせば、あたかもそこに二人目のガントロイトがいるように思わせることが出来る」
そうやって分身能力を使えるようになれば、薫の背後に分身体を作り羽交い絞めにする。それと同時に気が逸れたガントロイトのオブジェを何処かに隠せば、分身体が瞬間移動したかのように思わせることが出来る。
爆破の能力もわざわざ実践したのはその能力が使えると思わせる為。元々爆裂石でも仕込んでいたのだろう。シュレイドの時も、一人に爆裂石を仕込んでおいて爆破させる。その時はリーダーの言葉が刻印替わりになっていた。爆破という命令を下してから爆破することで敵は爆破能力を持っていると勘違いする。
刻印は爆破する対象を明確にし、敵のイメージをより鮮明にする為だ。
「僕はまだその時あなたの能力を疑っていた。つまり、武器生成の力も疑っている。僕が相手の時は武器生成が出来なくて表情を変えた。一度手を放し、光の魔石を準備してからもう一度糸を切って武器を手に取り実演して見せ、僕に印象を刻もうとした。天井にある妙な膨らみ。あそこにはあなたの形をした模型か人形が隠されているんじゃないのかな?」
ガントロイトは武器を落とす。
そして顔を覆うと、こみ上げる笑いを抑えきれなくなって肩を震わせていた。
「ククク……そうだ、その通りだ。おれの天恵は相手が認識して初めて使える。これがおれの天恵【空想の真実】。薔薇の刻印もマナスタンプ、ただの玩具に過ぎん。シュレイドの話の時は爆裂石が胃液でひびが入るまでにかなりの時間を要した。だからすぐに使えなかった」
「なるほど。最初にエクスカリバーを見せつけたのも、実際に斬らないと効果を発揮しないデュランダルよりはイメージを与えやすいからか。風の魔石さえうまく使えば衝撃波を偽装できる。そして、急に分身体が消えたのも、デュランダルの力が使えなくなったのも、カオルがその事実を認識したから。更に、その能力の裏を返せば――」
「種さえ分かればあなたは天恵が無いのと同じ」
天恵が使えないのなら、クラリスは人質ではなくなる。人質ではなくなるのならフォルテも戦闘に参加できる。
たった一つの真実が、形勢を一気に逆転させた。
「そういう事ならオレも本気が出せる。フォルテが動けるなら建物を破壊しても二人を安全な場所に連れてってもらえるからね」
それだけじゃない。フォルテがガントロイトを相手にすれば、ウィリアムは集中して薫を回復させることが出来る。
もはや、ガントロイトに勝ち目はなかった。
「どうしますか? もうあなたに勝ち目はありませんよ。おとなしく降参してください」
「確かにおれに勝ち目は無くなった。だが、勝ち目がないからと言って降参する道理はない」
するとガントロイトは恵術を使う。
天恵ではない恵術【移転】だ。ガントロイトの横に現れたのは、車いすに座った少年。
おそらく彼にマーキングして何時でも自分の所に来れるようにしていたのだろう。
眼に光は無く、魂が抜け落ちたような少年が、ガントロイトの前に現れた。
「その子は……」
「こいつは貴族に飼われていたガキだ。その貴族は拷問が趣味でな、足の筋肉をやられて歩けないし、薬で耳は聞こえない。過度のストレスで心は壊れた」
その少年の痛々しさに、クラリスは口元を手で覆い、薫も眉をひそめた。
「おれはこいつを連れ出していろんな場所に連れて行った。見た光景を認識しているのかは分からんが、薄っすらと笑顔を浮かべるようにはなっている」
「いろんな場所に……まさかッ!」
ふと、薫は思った。
ガントロイトの天恵は対象がいないと使えない。なら、どうやってクラリスを誘拐したのか。
その時のウィリアムはガントロイトを知らないのだ。瞬間移動が出来ると思い込ませることが出来ない。
そんな状況でも瞬間移動が使えたということは、この少年はガントロイトが瞬間移動できると思っているという事。
「こいつは俺が瞬間移動できると完全に思い込んでいる。まぁ、こいつは思い込みが激しすぎるからこいつの周りでは瞬間移動しか出来ないという欠点はあるが、逆に言えばこいつが傍にいればいくら能力がバレようと瞬間移動は使えるという事だ」
「逃げる気だッ、ウィリアム!」
ウィリアムは薫の呼びかけに反応するが、思ったより傷が深く咄嗟の動きが出来ない。
状況を瞬時に把握したフォルテがガントロイトを攻撃しようと変化する。
「もう遅い。また会おう――――――――ッん?」
もう移動してもおかしくないのに、ガントロイトはまだここにいる。
どういうことか。全員が戸惑う中、たった一人だけ、原因を理解し思わず笑みを零した。
「ハハッ……なるほどね。僕の天恵は思ったより使い勝手が良いらしい」
「何故だ。何故瞬間移動が使えない」
「どうやら彼の過剰な思い込みよりも僕の認識の方が優先されるらしい」
薫の天恵【絶対的優先権】は全てにおいて薫が優先される。
いくら少年の強い真実を前にしても、薫の真実の方が優先される。薫の真実はガントロイトに瞬間移動は使えないという事。
ガントロイトに手はない。瞬間移動によほどの自信があったのか、【移空】や【標転】の準備はしていないようで、諦観の表情を見せた。
「これで、一件落着かな……」
ウィリアムはガントロイトを拘束し、ようやくといった感じで薫は座り込む。
緊張状態から解放されたからか、急激な眠気が……
「ぁ……これは……まず……ぃ……」
「カオル様!?」
「カオルッ」
朱色に染まる床に薫は倒れこみ、クラリスとウィリアムは駆け寄った。
遠のく意識は、二人の声を反芻させて――
0
お気に入りに追加
1,025
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~
平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。
しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。
パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。
【完結】では、なぜ貴方も生きているのですか?
月白ヤトヒコ
恋愛
父から呼び出された。
ああ、いや。父、と呼ぶと憎しみの籠る眼差しで、「彼女の命を奪ったお前に父などと呼ばれる謂われは無い。穢らわしい」と言われるので、わたしは彼のことを『侯爵様』と呼ぶべき相手か。
「……貴様の婚約が決まった。彼女の命を奪ったお前が幸せになることなど絶対に赦されることではないが、家の為だ。憎いお前が幸せになることは赦せんが、結婚して後継ぎを作れ」
単刀直入な言葉と共に、釣り書きが放り投げられた。
「婚約はお断り致します。というか、婚約はできません。わたしは、母の命を奪って生を受けた罪深い存在ですので。教会へ入り、祈りを捧げようと思います。わたしはこの家を継ぐつもりはありませんので、養子を迎え、その子へこの家を継がせてください」
「貴様、自分がなにを言っているのか判っているのかっ!? このわたしが、罪深い貴様にこの家を継がせてやると言っているんだぞっ!? 有難く思えっ!!」
「いえ、わたしは自分の罪深さを自覚しておりますので。このようなわたしが、家を継ぐなど赦されないことです。常々侯爵様が仰っているではありませんか。『生かしておいているだけで有難いと思え。この罪人め』と。なので、罪人であるわたしは自分の罪を償い、母の冥福を祈る為、教会に参ります」
という感じの重めでダークな話。
設定はふわっと。
人によっては胸くそ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる