入れたいのに入れたいのに入れたいのに「ピュルッ」と出てしまう「元ショタ勇者」の物語

人外倫理

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第二部

ポチタロウと、糸目の男:5

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 糸目の男は「いかに自分がすごいか?」を知らしめる為に、僕らの「魔王討伐」についての、種明かしをした。



 この世界の創造者クリエイターが「いかに無能か?」を伝える為に「この世界の仕組み」なんかについてを語った。(この時、僕は質問しまくって、この世界の情報を少しでも集めようとした)



 それらをてんでバラバラで、とても長いことしゃべり続けた後で、糸目の男は「ガイドタブレット」を(やっぱりこちら側に見えないようにしながら)操作して飲み物を取り出した。


 透明な、シンプルな容器に入ったそれは、中身も透明だった。おそらく水か何かだろう。



 男は(糸目で)ニヤニヤしながら「こんなこと君にはできないでしょ?」って感じで、取り出した飲み物を見せびらかすかのようにして、二口ほど飲んだ。(この時、僕には、何か少し違和感があった)



 そうして一息ついて、糸目の男はこう言った。



「ふぅ・・・。なんで、魔王討伐から、性的要素を一切排除したか? わかるかい、ポッちゃん?」


 
 男は、実に楽しそうに、糸目をもっと細くして、そう聞いてきた。この男にしては珍しく、僕の答えを待った。しばらく考えてから、僕はこう答えた。



「健全な印象を保ちたかったから・・・ですか?」
「まぁぁぁぁあ、それもあったけど、それは計画の一部でしかないねぇぇぇええ♪ その答えじゃ5点しか上げられないねぇぇえ? 百点満点中の・・・・」



 糸目の男は、この世界の創造者クリエイターに対してと同じように、どんどんと僕に辛辣になっていた。



「あんまりにもすごすぎて、君にはわかんなかったねぇぇぇえええ。ごめんね、ごめんねぇぇぇぇえええ?」



 さらに重ねて糸目はそんなことを言ってきたけど、全然、謝っている感じはしなかった。むしろ「謝ることが多い」僕を揶揄しているかのように思えた。



ー この男は僕を怒らせようとしているのかもしれない。 ー



 そんな風に思ったのが、確信に変わりつつあった。



 何も言わなかった僕を、ねめつけてから、男は言葉を続けた。



「動物、子供、セックス。・・・その三大要素のうちの『セックス』の部分は残しておいたんだよぉぉぉおおお? 次の布石の為にねぇぇぇえ♪」

 

ー 糸目の男は「僕らがエッチをしているところ」まで配信していた。 ー



 僕がそれを知ることになったのは、糸目のこの言葉がきっかけだった。


 
■■■■■■
□□□□□□


ポチタロウと、糸目の男:5


■■■■■■
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「魔王討伐の時に、エロ要素を排除したのは『あえて』だったんだよ? あ・え・て? 視聴者を喜ばせる為に、さりげないパンチラなんかは、ちょくちょく編集で、差し挟んだけどね?」



 「布石」について尋ねてみると、糸目の男は、僕に向かってそんなことを「平気で」言ってのけた。この男には「良心」っていうものがないんだろうか?



 その言葉自体は、僕を怒らせようと、煽ってくる感じではなくて、むしろ、なにげなく言い放った感じだった。逆にでも、この言葉に、僕は怒りを覚えていた。



 基本的には「高次の存在のやってることだから」と(気にくわないことがありながらも)達観して聞くようにはしていた。



 神様的な立場の存在に、見られていた・・・。それに対しては、今のところ、なすすべがない気がしていた。でも、これにはさすがに腹がたった。



ー 僕の大事な子達の、パンチラを勝手に配信されていた。 ー



 まだ「エッチをしていたことまで配信されていたこと」を、知らなかった僕は、この時、この糸目を「ホテルごと、焼き尽くしてやろうか?」と思ってしまった。



ー ギュムッ・・・ ー



 その瞬間。



 スーが、僕の尻尾をひっぱって「正して」くれた。おかげで僕は怒りに身をまかせるような、おろかな真似はせずに済んだ。



 実は、この時にはすでに、糸目の話を聞きながら(サラとシルを介して)僕はスーと念話でいろいろと話していたのだ。そして、その中で、こうお願いしておいた。


 
(「スー、尻尾、支えててくれる?」)



 僕は、恥ずかしげも無く、スーにそれを頼んだ。「頼るのは苦手だ」とか思うまでもなく、「スーに頼る」ことを選択した。一人ではこの男に勝てない気がしていた。(僕はこの時点で、この男には、負けてはいけない気がしていた)



ー しっぽや顔に、感情が出ちゃう ー 



 それは今の僕の、情けない弱点だ><。



 でも、すぐに直せそうなものではなかったし、この男の前では、感情が読まれてしまうのは危険な気がした。



 だから僕はスーに「支えてもらう」ことを選んだ。むしろ、スーにしっぽを「まっすぐ」持ってもらうことで、顔に感情が出てしまうのも抑えていた。



 スーが(糸目の男に隠れて)僕の背後から、しっぽを握ってくれる度に、僕は平静を保つように心がけていたのだ。



 なるべく怒らずに、この糸目の話が聞けたのには、実はそんな仕掛けもあった。



 糸目の話は続いていた。



「可愛いこども達が健全に、魔王を倒しにいこうと頑張る姿、とかね? 時折差し挟む、健康的なエロスで、ちょっとずつ視聴者の性癖をロリコンにめざめさせながら・・・僕はちゃくちゃくと、次の企画の準備を整えていたのさ?」



 糸目はそんなことを自慢げに告げてきた。「それを聞いた僕が、どんな気持ちになるか?」なんてことは、全く意にも介していないようだった。



ーーーーーー



 ここまで聞いた時点で、僕はすでに嫌な予感がしていた。「セックス要素」を残しておいた・・・ってことはつまり、それを後で「使う」つもりだったのだろう、と予測できてしまった。



 この男は「8畳ほどの空間」の中では、カメラもなしに僕らのことを観察できるのだという・・・。それもこの糸目が創造者クリエイターに与えられた特権の一つだった。



「ひょっとして・・・僕らの性行為も、配信してた・・・ってことですか?」



 思い当たってしまって、それを言葉に出してしまった。



 企画屋のこの男が「クイズを配信した」と言ってきた時に「まだ配信は続いている」ことはわかっていた。



 今回の「セックスを残した」って情報から、僕は「エッチなことをしていたことまで、配信されていた可能性」に気づいてしまった><。悪魔の所業だとは思ったけど、この男なら「それをやりかねない」と思いあたってしまった。



 僕の言葉を聞いて、糸目の男はみるみる不機嫌になった。糸目がしゃべっている最中に、水を差す形になっちゃったし、この男が「言いたかったであろうこと」をどうやら僕が先に言ってしまったようだ。



「・・・君はちょくちょく・・・小さく、さかしいね・・・そういうのを『こざかしい』って言うんだよぉぉぉぉおおお? 知らなかったのかぃぃぃぃいいい??」



 男はいまいましそうに、僕を糸目でにらみつけてきた。



「ファックだねぇぇ? ファックだよ。 ・・・死ねばいいのに」



 糸目の男は一見ニコニコとしたまんまで、右手の中指を突き立てながら、そんなことを平然と言ってのけた。・・・こんなことができる人間がいるなんて、僕は思いもしなかった。



(高次の存在になると同時に、高慢になったんだろうか?)



 一瞬そんなことが頭をよぎったけど、この糸目は元からこんな奴だったような気もした。いずれにせよ、今、目の前にいるこの男が、どこかおかしいことだけは確かだった。



 中指を突き立てた糸目の企画屋を見て、スーが風をまとった。臨戦態勢に近かった。こちらの世界で中指を突き立てるような行為は、僕は見たことがないけれども、糸目の男の態度から、スーも敵意を感じ取ったのだと思う。



「おっとっと・・・。一応、言っておくけど、僕に攻撃のたぐいは一切、効かないからね? 試してみてもいいけど、ホテルの修繕費を払うのは、僕じゃない・・・君たちだからね?」



 糸目の男は「欧米か!」ってツッコミたくなるような、大げさな身振りで、ヤレヤレって感じで頭を振って、また肩をすくめた。僕はそれをスルーしつつ「大丈夫だよ」って(サラとシルは経由せずに)直接、スーに告げた。スーが風を解いた。



 たぶん、このラブホテルは、僕らがいなくなった時点で「元の状態」に戻されるのだろう。修繕費の話と、糸目がタブレットを隠れて操作していることから、僕はそう推測していた。



 ブレイクスルーが起こっちゃって「この世界が大幅に変わってしまうこと」をこの糸目は避けようとしているようだった。



 この世界の創造者クリエイター自身がそういう方針らしいし、企画以外で世界を変えてしまうと、この糸目に何かペナルティがあるのかもしれない。(ペナルティでもなければ、この男は、もっと堂々とタブレットを見せびらかしてきていたように思った)



 もしこのホテルがこのままここに残るのなら、それを運営している「この世界の人」もいるだろう。そうでなくても「今、利用しているお客さん」だっているハズだ。



 (僕自身も燃やしてしまおうか、なんて思ってしまったけれど)スーが風で、ホテルのフロントを倒壊させたって、きっといいことは何一つない。



 大方、この糸目に変な風に編集されて「僕らを悪者」に仕立て上げて、この男は自身の正当性をおおっぴらに宣伝するんじゃないだろうか? そう思った。



 まだこの糸目が明かしていない「てこ入れ」って部分が気にかかっていた。それが何か? ・・・は、まだわからなかったけれど、この男が、何かをたくらんでいることだけはわかった。



「ふぅ・・・。まぁぁぁあ、いいや。言ったとおり、ぼかぁ寛大だからね?」



 「中指を突き立てるような寛大な人物」は、たぶんいない。それでも僕は黙っていた。「僕を怒らせること」が男のたくらみの中に含まれているように感じた。



「 ・・・とにかくさ? セックス要素を残しておいて、満を持してそれを解放した。・・・そうして『勇者と聖女の初体験』の配信を始めたのさ? 企画自体は完璧だった・・・企画自体は完璧だったのにねぇぇぇぇ・・・」



 糸目はそこまで言うと、大きなため息を吐いた。



ーーーーーー



・・・
・・・
・・・。




 男はまた飲み物に、二口ほど口をつけると、しゃべり始めた。この糸目はどんだけしゃべりたいんだろうか? 僕はそんなことを思ってしまった。



「動物子供で、清純な魔王討伐を演出してさぁあ? 残ったセックス要素で、その清純な子供達が、エッチなことをしているところまで見せてしまう。それでまた数字をガンガン稼げるハズだった。ハズだったんだよねぇぇぇえ? ・・・僕は悪くない。企画自体は間違ってなかった。悪いのは全部、君なんだよ? 君がしょぼすぎたのが、悪いんだょぉぉお?」



 その言葉を皮切りに・・・。男は早口で、いろんなことを、まくしたててきた。



 ・・・この男の早口を、全部を書いていると、キリがないし、悪意に満ちた言葉が多かったので、ここもまた、要約したいと思う。



 「初めての魔王討伐」とはうってかわって、僕があまりにも、エッチなことのレベルが低いものだから「勇者と聖女の初体験」は、糸目が思ったほどの数字が稼げていないらしい。(僕にとっては知ったこっちゃないどころか、迷惑な話でしかなかったけど・・・)



 魔王討伐で、僕らが機転を効かせて、いろいろと乗り越えたものだから「セックスをしようとした際」にもハードルが設定されたらしい。



ー 大精霊見習いの干渉が起きて、挿入が困難。 ー



 こんな設定が、この糸目によって考えられて、この世界の創造者クリエイターが、後からプロンプトで、それを付け加えた。糸目の男は、そうしてから配信を始めたらしい。



 最初の想定の10倍以上の強さの魔王を倒した僕らなら、それをなんとかするだろうと、糸目は踏んだそうだ。障害を乗り越えて僕らがエッチをすれば、その分、感動を呼ぶだろうという意図があったらしい。



 ・・・なのに、僕は恋愛関連に(なさけない話だけど、事実として)あんまりにもショボかった><。おまけに早漏なものだから、サファとの初めての時には、挿入にすら到らぬままで、ピュルっと精子を出してしまった。



 その後も、僕が4人のお嫁さん達を相手に、全然挿入できず、情け無い姿をさらしてきたのは、今まで書いてきたとおりだ。



 サラとのエッチについては、何も言われなかったので、僕はこの時「頭の中の空間までは見られてなかったのかな?」と判断した。



ー スーの割れ目に、おちんちんを、挿入する。 ー



 その段階に僕がたどりついたのは「昨日」のことでしかなかった。(もちろん、この男の付け足した設定によって、僕は挿入にまで到らなかった)



「設定を付け足す意味あったぁぁぁああ? ってくらいにさぁ? ・・・君、ちょっと早漏すぎない? 名前をピュル男にでも変えたら?」



(ピュル男・・・)



 超がんばって、ツッコミとヘコミを抑えた・・・。(スーの支え(尻尾)もあって、なんとか僕は、堪えられた)



「自治区を承認してもらえるように、助力までしてやったのにさぁぁああ? あんな体たらくじゃ、数字が減っちゃって困ってるんだよねぇぇぇええ?」



 糸目のこの言葉の後で、僕は、王様や偉い人達が、僕らの要求を涙ぐみながら受け入れてくれた理由を知った。



 「僕らの自治区が承認されやすいように」と、この糸目が(こっちの世界の住人の前で)魔王討伐の様子を編集したものを公開したそうだ。それを見て、感動した王様達は「国庫フルオープン」の心づもりで、僕らを待っていてくれたらしい・・・。
 


 なんとも言い表せそうにない、モヤモヤを感じた。


 
ー 糸目の男は「僕らがエッチをしているところ」まで、高次の存在に配信していた。 ー



 それを知った僕は(パンチラを配信されていたと聞いた時とは違って)怒る気にもなれなかった。今さらジタバタしたところで、配信されちゃったものはどうしようもないだろう。逆に何か開き直った感じになっていた。



 そこへ来て、この男が「自治区が承認される方向」へ動いてくれたことを知ったのだ。でもそれは「勇者と聖女の初体験」を滞りなく映像として残せるように、って理由でしかなかった・・・。



(うーーーん・・・)



 素直に感謝する気にはなれなかった。けど、おかげで僕はロリ合法な自治区を(誰からの反対もなく)手に入れたのだ。・・・ほんとになんとも、モヤモヤした。



ー ギュムッ・・・ ー



 スーがまたしっぽを引っ張って、僕を「正して」くれた。(僕は「調教されている犬」みたいな気分に、ちょっとだけなってしまった)



 あと。開き直った感じになっていた僕は、「子供のエッチ配信」について、コンプライアンス的なことが(変に冷静に)気になってしまった。



 僕の元いた世界ではそういうのは児童ポル○だとか言われて、とても配信できたものではなかった。それをこの男は平然と「配信した」と言ってのけたのだ。



「次元が違うんだよ、次元がぁぁあ? 創造者クリエイターがメインの世界でコンプラなんて概念は、邪魔になるだけだろぉぉぉぉお? そんなこともわかんないのぉぉぉぉおおお?」



 僕がそれについて尋ねると、そんなことを言われてしまった><。(スーがまたしっぽを・・・以下略)



 創造者クリエイターの次元では「面白くて数字がとれる」それが一番優先されるようだった。僕の元いた世界のコンプライアンスとかは全く関係なかった。



 アダルト向け裏配信的に公開されていた・・・なんて書いちゃったけど、あくまでそれは「僕の元いた世界」を基準とした表現で、創造者クリエイター世界の人々にとっては、そういう配信ですら「普通のこと」らしかった。



ー 児童ポ○ノが見放題・・・ ー



 なんだか、ある意味羨ましいような・・・また、変なモヤモヤ気分になってしまった><。(この時僕は、ピュル男ってよりは、モヤ男になっていたと思う)



ーーーーーー



 ・・・そこから、糸目による僕へのディスりが始まった。(男はまだまだしゃべっていた)僕の早漏っぷりを思う存分バカにされた。何度もピュル男と言われて、心が少し折れそうになった><。



 その後で、糸目は、僕が「スーに何回も精子をぶっかけたこと」を引き合いに出してきて、笑いものにし始めた。



「まぁぁぁああ、節操もなく何回も、幼女にぶっかけちゃって? 変態にも程があるだろぉぉぉぉお? おかげで、いい絵は撮れたけど、さぁぁぁぁあ?」



 糸目はゲラゲラと大げさに笑って、僕を指さしながら、そんな風に煽ってきた。



 この時にまた、何か変な違和感があったんだけど、僕はまだ、その正体に気づけずにいた。


 気づいてくれたのは、サラだった。



(ポチ公! この男はたぶん、昨日の出来事は何も知らねぇ!)



 今まで黙っていた、サラがそう言った。



ーーーーーー



 僕自身に対しては「どんどん連絡をとっていい」と言ってくれたサラだったけど、実は
サラから僕に(頭の中から)話しかけてくることは、ほとんどなくなっていた。



 きっと、サラは僕に話しかけることで、精霊ポイントが減らないように配慮してくれていたんだと思う。(逆に僕からの話しかけには、いろいろと答えてくれたから、たぶんそれで間違っていないと思う)



 昨日の僕はそんなサラにわざと話しかけたりして、サラに気をつかわせないようにしようとした。エッチなこと以外でなら、精霊ポイントを増やす方法は考えつけるような気がしていた。



 それでもサラはあんまり自分からは、話しかけてこなかった。けど、そのサラが今、僕に話しかけてきた。大事な局面だと思った。



(何かわかったの、サラ?)



 サラにそう聞いてみた。



(あぁ! もしこいつが昨日のことを知ってたら・・・。穴のあいてないオナホールを、ポチ公がスーに渡してたこととか、変なベルトを作って疑似挿入してたこととかさ・・・あと、お前がお尻の穴を、棒でいじられてたこととかを・・・この男はイジってきたハズだ!)
(うぐ・・・)



 サラにそう断定されて、僕は「うぐの音?」しか出てこなかった><。たしかにそれは、トッテモ、カッコ悪かっただろう・・・自分でも、そう思ってしまった><。



(スーにぴゅっぴゅく出してた時より、お尻に棒を挿れられてたポチ公の方が、その・・・カッコ悪かったからな・・・)



 最後に、ちょっと申し訳なさそうにしながらも、サラはそんなことを付け足した。



(うん。知ってるよ? サラ><。・・・僕も今、自分でも、そう思ったもん><。)



 サラには告げずに僕はそんなことを頭の中で思った。付け足された言葉で、心に大ダメージを受けた><。



 でも悲しくもあれど、その言葉は、僕の腑に落ちた><。



 僕の感じていた違和感の正体はそれだった。



 糸目が「こんなこと君にはできないでしょ?」って感じで飲み物を出して、僕を見てきたけど、今の僕にはそれが「可能」なのだ。



 今の僕なら、サラに念話で、先に水を出しておいてもらって、一瞬だけサラのところへ行って(その水を手渡してもらって)すぐにこっちに戻ってきたら「あっという間に水を取り出した感」を演出できるだろう。




 あと、サラが言ったように(僕も自分で思ったように)たぶん「おしりをディルドでいじられていた僕」の方が「スーに精子をぶっかけていた僕」よりも、何倍もカッコ悪くて、いじりがいがあったのも確かだろう・・・><。



 この男は、いろんなことをおおっぴらに話しながらも、僕を糸目の奥から観察しているようだった。実際、僕が「ガラケーで男の話を録音しようとした」時には、気づかれてしまった。



 糸目の話を聞きながら、この男が「ガイドタブレット」をいじっていたのを見て、僕は自身も「ガラケー」を持っていたことを思い出していた。糸目の男が創造者クリエイターをディスり始めたのを見て、録音できないか? と考えた。



 何かのきっかけがあって創造者クリエイターに直接会えたなら、この男の言動を「創造者クリエイターをディスりまくっていたその内容」を、聞かせることができるかもしれない・・・。そう思ったのだ。



 でも、僕がさりげなく後ろを向いて、ポケットに手をつっこんだ時点で、この男はめざとくそれを見つけて、こう言ってきた。



「ポケットに手をつっこんで、何するつもりなの、ポっちゃん? 殺されたい?」



 そう。この男は決して無能ではないのだ。知っていることから、いろんなことを推察できるくらいの知能はある。(あと、僕の「さりげなさ」が足りてなかったっていうのも、きっとある><)僕はそれで「ガラケーでの録音」を諦めた。



 そんな鋭さがあるのに、この男は、僕がスーと(サラとシルを介して)念話で話していることについては、何も言ってこなかった。



 スーはほとんど無言だったし、僕自身もスーやサラと、念話で話していたので、糸目への返答がおろそかになっていた部分はあったと思う。



 もしこの糸目が「僕が、サラと会話できるようになっていた」と「知っていた」なら、僕らの反応から「念話で話している」ってくらいのことは看破されてしまっていたような気がした。



 それに対してつっこんでこなかったということは、この男が、サラの言うとおり、昨日の僕らを見ていなくて、それを知らなかった・・・。そういうことなんだろう。



ー 糸目の知っている僕らの近況が、一日前のものであった ー



 それを「事実」だと仮定して、僕はその線でいろいろ考えてみることにした。



 高次元の存在らしき、この男に対して、僕の武器は、今のところそれだけだった。でも、一日前の朝には、とても重要な出来事があった。



ー 僕が「サラと話せるようになった」こと・・・ ー



 これを、この糸目の男が知らなかったのなら、それは大きな武器になりそうだった。



 なりそうではあったんだけれども・・・><。



 僕はこの時点で、かなり疲弊していた。糸目の話が長かったのもあるんだけれども、それ以上に僕をへこたれさせていたのは、さっきのサラの言葉だった。



ー お前がお尻の穴を、棒でいじられてたこととかを、この男はイジってきたハズだ! ー



 この言葉が、今、僕の中に、ジワジワと染みこんできていた。冬のしみしみの、おでんのダイコンのように、体中を浸していた><。



 お尻にディルドを突っ込まれているところも、サラにしっかり見られていた。そんなことがきっかけで、重要なことに気づけた。そのシュールな状況に、なんともやるせない気持ちになってしまった><。



(だいたいさ? ・・・お尻をいじられてたこととか、そっちのがいじりがいがあったハズだとか・・・。なんか、そこ、うまいこと、言わなくてもいいよね!?)



 頭の中で、ひっそりと、またサラにツッコミを入れた。



 僕は(主にサラに言われた言葉で)ヘロヘロになりながら(スーに尻尾を支えてもらいながら)なんとか立っている状態だった。すでに満身創痍な気分だった。



 それでも僕は、この男に勝つ方法を模索していた。


 
 何をすれば勝ちで、何をすれば負けなのか? そんなこともよくわからないままに・・・。


 全身に「サラに言われた言葉」が染みこみながらも、その想いだけは、僕の頭の中から、離れなかった。


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