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第二部
ポチタロウ、帰還する(後)
しおりを挟む「これは共創の為の競争だ」
サラはそう言った。
(何を「共に創る」んだろう? 赤ちゃんかな?)
僕はそう思った。
また性欲が大変なことになってきている。いけないぞポチタロウ><。自重しろ。
流れに身をまかせることにした(けどエッチな方には流されないように)僕は、サラへの質問を、続けることにした。
「サラの大きな夢って、さ。口上で述べてた、あれで合ってる?」
そう聞いてみた。
サラは「みんなの処女膜をぶち破って、最後に俺様を盛大にイかせろ」的なことを「ヤンキーの口上」みたいな形で大声で言い放った。無茶苦茶な口上だったけど、あれを貫き通したサラはカッコ良かった。
「あれも大きな夢だけど、俺様もお前に乗っかろうと思った! 実体のポチ公に会うのも俺様の大きな夢にする!」
「なら『競争』しながら『共創』になるね。・・・同じ夢を叶える為に」
「おぅ!」
サラは同じ夢を共有してくれたのだ。夢を共に創る。それを競い合う。「共創の為の競争」の意味がやっとわかった。共に創るのは赤ちゃんじゃなくて「夢」だった。
「最初はさ・・・最初の『大きな夢』は『100万ポイント』貯めて一発で大精霊になることだったんだ・・・」
「100万ポイント貯めて帰ると、大精霊になれるってこと?」
「あぁ・・・普通の『体宿り』だと、100万ポイント貯めるのに、だいたい10回くらいかかるんだ」
「大精霊になるまでに、10回くらい、誰かに宿るってこと?」
「そうなんだよ! そんなチマチマしたこと、したくなかったからさ。最初の『体宿り』で『異世界転生者の魔王討伐』に抜擢された時には、すげー嬉しかった!」
「サラは選ばれたの?」
「おぅ! 選ばれし者だぜ? 選ばれたわずか4人のうちの一人だ。・・・ちったぁ敬う気になったか?」
サラ、シル、ノム、ディネ。4人の大精霊見習いも、僕ら4人みたいに選ばれたのだ・・・。「わずか4人」ってことは見習いは結構、大勢いるのかもしれない。ここらへんはでも、サラが「NG」かもしれないって言ってた・・・。あまり深くは聞かない方がいいかもしれない。
「『選ばれたすごさ』は、ちょっと良くわからないけど・・・サラの行動とかを見てて、サラのことはすごいと思ってるよ」
「はぐ! ・・・あ、ありがと・・・」
「どういたしまして」
褒められると、結局、照れてしまうサラを見ながら、僕はニッコリしてしまった。
そうなのだ。サラはすごいところが一杯あるのだ。判断力とかリーダーシップとか見習いたいところがたくさんある。でも幼女声と容姿のせいで、僕はすぐに忘れてしまうのだ><。
ー サラを敬うこと ー
素直にそうメモに付け足した。
ーーーーーー
「キュウロクも言ってたけど『見習い』が『異世界転生者に宿る』のは初めての試みでさ? きっと、すごい経験ができるだろうって、ワクワクした! ちょうどお前、男だったしな!」
「そうなんだ」
「あぁ!」
(そういや、サラはレズだって言ってたよな・・・)
サラはレズなので「女の子の中に入っている体験」がしたくて、僕を選んだようなことを言っていた。他の3人の大精霊見習い達も、みんな女の子だったけど、レズではなかったということだろうか?
それにしても「異世界転生者」である僕に、宿りたいって子はいなかったんだろうか? 「初の試み」ってことだったら、そういうのを「経験したい」って子が他にいてもおかしくはないと思うんだけど・・・。
「他に選ばれた3人で『僕に宿りたい』って子は、いなかったの?」
「いなかったな」
「・・・僕って人気なかったの?」
「逆だよ逆。お前可愛いから、人気あったぞ? むしろ『つっこまれたい』から他の誰かに宿ることを選んだんだよ・・・」
「・・・なるほど(また、可愛いか><。)・・・って。それってほんとなの? なんか他の大精霊見習いの子達に、僕、あまりいいように思われてない気がするんだけど・・・?」
「それはまぁ・・・あれだな・・・」
「あれ?」
「ポチ公、お前、誰かにその・・・チンポをつっこめたか?」
「え? サラには一応、VR体で、だけど、つっこめたけど?」
「はぅぅ・・・ちげえよ! お前の4人の仲間達にだよ?」
「・・・つっこめてない・・・ね・・・」
「だから、呆れられるか、怒られてるんだよ!?」
「そ、そっか・・・」
「あぁ・・・お前、挿れる前にぴゅっぴゅく出しちゃうだろ?」
「出しちゃうね・・・><」
裏側でそんなことになっているとは知らなかった・・・。つっこまれたかったのに、つっこまれなかったら、そりゃ怒る子もいるだろう・・・。ボケとツッコミがいて、初めて漫才は成立するのだ・・・。って、これは今、関係なかった。
僕の仲間達4人はそういうことを怒ったり責めたりするでもなく、まだ僕のそばにいてくれる。そう思うと、本当にいいお嫁さん達だ。もっともっと感謝していくべきところだろう・・・。毎日誰かの「大感謝祭」をしてもいいくらいだ・・・。せめて帰りになんか、おみやげを買って帰ろう・・・。これもメモしておいた。
とりあえずは僕が早漏なのが悪い。基本はそこをなんとかしてかなきゃいけない。・・・でも「時が止まっていく状況」は、むしろ大精霊見習いの子達が宿っていることで起こっているハズなのだ。その部分まで責められる理由はないハズなんだけど・・・。
あの状況を、サラは「ただ僕が止まってしまった」と言った。たぶん(スーに宿っている)シルも同じように感じていたことだろう。あの状況を知らずに、ただ僕がしばらく停止して、精子を出しちゃったと思われてるとしたら、ちょっと歯がゆい感じがした。
本当にあの状況は大変だったのだ><。進もうとするたびに時間が遅くなっていって、快感だけは蓄積されていって・・・。最終的に本当に時が止まっちゃうかと思った。かといって今さら、サラからシルに連絡してもらって「あの状況はヤバかった」と伝えてもらうのも、なんか違う気がする><。
ー よく「歯がゆい」って言うけど、歯が「かゆい」ってどういうことだろう・・・かゆいのは、歯茎の方じゃないのかな? ー
もどかしさで、ちょっと思考を脱線させてしまっていた僕に、サラが言った。
「これからカッコいいとこ見せてくれんだろ?」
「え?」
「いつもみたいに機転利かせて、膜をぶち破っていくんだろ?」
「(膜をぶち破るって・・・)うん・・・そのつもりではいるんだけど・・・」
まだそれをするための、手がかりは(最悪の方法以外には)何もなかった。とりあえず試行錯誤してみるしかないだろう。でも「魔王を倒す」のと違って、今回のこれは「エッチなこと」なのだ。
エッチなことに関して機転を利かせて、果たして僕は立ち回れるのだろうか?
「・・・ポチ公にしては、なんか弱気だな?」
「まあ、エッチなことだからね・・・これに関しては僕は真逆に走りがちだし・・・><」
「まあ・・・それは否定しねぇ・・・」
「・・・」
サラもこれに関しては否定してくれなかった。
でも、サラのおかげで、ちょっとヒントはもらえた気がした。真逆を走りがちなら、いつもしないようなことを・・・あえて「真逆のこと」をしてみるのはいいかもしれない。これもメモしておいた。僕はメモ魔なのだ。
ーーーーーー
「ポチ公のおかげで、思ったとおりワクワクすることを一杯、体験できた! ポイントよりも大切なことがあるってわかった! だから俺様はもう・・・大精霊になる気はねぇんだ」
サラの熱弁は続いていた。良い経験ができたと思ってくれてるようで何よりだ。でも最後の言葉を聞いて、ちょっと驚いてしまった。
「え? サラは、大精霊にならないの!?」
「だって、大精霊になっちまったら、お前とその・・・また次元が離れちゃうんだぜ?」
「ああ・・・そうなるんだ><。」
「そうなるんだよ・・・><。」
たしかサラは「今、68万ポイントある」と言っていた。このままポイントが貯まっていって、100万ポイントになってしまったらどうなるんだろう? 自動的に大精霊になってしまうのだろうか?
それもそのまま、聞いてみることにした。
「もし、100万ポイント貯まっちゃったら、サラは自動的に『大精霊』に昇格しちゃうの?」
「そうはならねぇ。戻って、大精霊に『クラスチェンジ』する為のアイテムを買うことになってた」
「100万ポイントで?」
「そう。100万ポイントで」
100万ポイントを貯めて、それでまた、アイテムを買わされる・・・。
なんだか怪しげな感じがしてきた。当初のサラはせっかく「経験して」貯めたポイントを丸々取られてまで、大精霊になりたかったらしい。大精霊になって「100万ポイント分のメリット」があるものなのだろうか?
サラにそれを聞いてみたら「大精霊になると、より多くの力が使えるようになる」と言った。でも「具体的に何ができるようになるか?」は知らなかった。今まで何の疑問も持たずに「大精霊になる」ことを夢見ていたらしい。それ自体が「目標」であって、なった後に「何がしたい」というようなこともなかったらしい・・・。
「考えてみたらおかしかったんだ! 別に大きな力を得て、俺様が『やりたいこと』なんて特にねぇからな? 明日太と次元がさらに離れちまうくらいなら、なる必要ねぇよな・・・」
サラもそれに、気づいたようだった。
ある種の洗脳だったんだろうか? サラの世界では「いいこと」もいっぱい教えてるようだったけど「悪いこと」も教えているかもしれない・・・。一応、サラが自分の意思で「大精霊になるか?」を選択できるようなので「強制的」ではないようだけど・・・。
「月が変わったら、そこらへんのことも、キュウロクに聞いてみる」
サラも気になったようで、そう言ってくれたのだった。
ーーーーーー
「ポイントなんて関係ねぇ」とサラは言ったものの、二人で話し合っているうちに「ポイントは持っていても損はないだろう」との結論に到った。
ポイントでいろんな物が買えるようだし、大精霊になった方が「できること」が増えて、僕らが実体で会える確率が増すかもしれない・・・。選択肢は多い方がいいのだ。
いろいろ話しているうちに、サラが思いだしたんだけど、大精霊にクラスチェンジするアイテム以外にも、100万ポイントで買えるアイテムがいくつかあったらしい。それらはサラの世界に戻らないと買えないし、どんなアイテムがあったのか? サラは覚えていなかった。
またサラが、機転を利かせて他の3人の見習いシル、ノム、ディネに、念話でそれについて聞いてみてくれたんだけど、他の3人も他のアイテムについては、よく覚えていなかった。みんながみんな「大精霊になること」以外に興味がなかったようだ・・・。ますます洗脳の疑いが強くなってきた。
「とにかく、最初の目標どおり、100万ポイント貯めて帰る方がよさそうだね・・・他にもなんか『100万ポイントアイテム』があるみたいだし・・・」
「まあ、そうだなぁ・・・でも大変だぜ?」
「あと32万ポイントでしょ? いけるんじゃないかな?」
「あのなぁ、ポチ公・・・。『魔王を倒して、お城に帰ってきた時点』ですでに、70万ポイント以上貯まってたんだ。ちょっと使っちまって68万ポイントになっちゃったけど・・・」
「じゃあ、自治区に住みだしてから、数万ポイントしか手に入ってないわけ?」
「そうだよ・・・しかも入手理由の大半は『ブランコ』だとか『飛行ユニット』を作った『経験』だ」
「えーっと・・・。エッチなことを『経験』して貯まったポイントとかはないの?」
「全部で一万ポイントと、ちょいくらいかな・・・」
「一万ポイントちょい・・・」
「しかもワフルの手こきの『経験』、あれ一発で、一万くらい入った」
「じゃあ、他のエッチなことの『ポイント』は?」
「30ポイントもいってねぇんじゃねぇかな・・・」
「30ポイント・・・」
「サラとえっと・・・エッチなことをしたのを含めて、30ポイントなの?」
「はぅ。・・・あれはカウントされてねぇ・・・。あくまで『ポチ公の体を通して』俺様が経験した分がポイントになるらしい」
ちょっと、ショボーンとしてしまった。
自分なりに新しい性知識を得ながら、がんばってきたつもりだったんだけど、それらの「経験」は数字にしてしまうと、30ポイント程度でしかなかったらしい・・・。メモ帳すら買えやしない・・・。思った以上に僕のエッチ経験は、まだまだ全然、大したことなかった><。
てか、ワフルすごっ! 一発で一万ポイントて・・・。
ーーーーーー
「そんなわけで、だ・・・。よっぽど頑張らねぇと、100万ポイントなんて、夢のまた夢だぜ?」
「うん。頑張るよ・・・」
・・・と言いながらも僕は「エッチなこと以外」で「経験」を得る方法がないかな? なんて考え始めていた。ラーメンとかカレーとか、こっちの世界にないものを、作って売ってみるのは(ありがちだろうけど)いい「経験」になるかもしれない・・・。
「ポチ公・・・お前。なんか別のことで『経験が得られないか』考えてるな?」
「うっ・・・」
やっぱりサラにはすぐバレた・・・><。ほんとに思考まで読まれてたりしてないのかな?
「いいか、ポチ公? 俺様は『究極のエロス』を知る為にこっちへやってきたんだぞ? ちゃんと、俺様にも、エッチなことを経験させろ!」
「エッチなことなら、したじゃない・・・ってそういうことではないんだよね?」
「あぁ・・・せっかくだしその・・・『入っていく感覚』も体験したい」
「わかった・・・僕も確かめたいしね。VR体で感じたアレは、本当の感触だったのか?」
そう。「半分、童貞卒業」ってことにしたけど、逆に言うと、まだ「半分は童貞」のままなのだ。
ー 今までのエッチの経験が数値にしてみると「30ポイント」くらいだった・・・ ー
その事実に腰がひけてしまっていたけど、腰を引いたままではダメだ。エッチなことはむしろ、腰を突き出してするものなのだ。逃げている場合ではない・・・。
「ポチ公・・・おめぇは、ほんっと、エッチなことでは真逆とか、ナナメ下に走りがちだけどさ・・・。それでも応援はしてやるし、俺様に『お前が壁をぶち破っていく姿』をまた、見せてくれよな?」
「・・・うん! 頑張るよ!」
ちょっと、自信はないながらにも、僕は「できるだけ元気良く」を心がけながら、そう答えた。
ーーーーーー
「じゃあ、サラ・・・今度こそ行ってくるよ・・・」
「それなんだけどさ・・・」
サラは言いにくそうに、そう切り出した。申し訳なさそうにしながらも「今、言っとくべきだと思う」とハッキリと言った。
その後のサラは、サラにしては歯切れの悪い、逆にハッキリしない感じになってしまったので、少しまとめてお伝えしたいと思う。
外に出てしまったら「もうあまり連絡は取らない方がいいかも」というようなことをサラが言い出した。理由を聞いてみると、外にいる僕とサラが話すだけでも「精霊ポイント」が減るのだという。一回会話をやり取りするごとに、100ポイントずつ・・・。
一回やり取りするだけで、100ポイント・・・。ノートやペンが買えてしまうポイントをそれだけで消費してしまうのは、かなり高いと感じた。
70万ポイント以上あったポイントは、主に「外にいた僕との会話」が原因で減ってしまったらしい。
「ポイントなんて関係ねぇ」と言っていたサラだったから、平気でポイントを使っちゃったのかもしれない。100万ポイント貯めた方がいいと、結論を出し直した今だから、それを教えてくれたのだと思う。
そうは思いながらも、聞かずにはいられなかった。
「なんでそれをもっと早く言ってくれなかったの? ポイント使わせちゃってゴメンね・・・」
「・・・そんな感じで、ポチ公がそういうの気にしちゃうだろうと思って、言えなかった・・・俺様自身も、いろいろ話したかったし・・・」
「ごめ・・・僕のこと、気にかけてくれてありがとね、サラ。・・・じゃあ、なおさら、ポイントを稼いでおく方が良さそうだね? ・・・ポイントとか気にしないで、サラともっと、いろいろ外でも話せるように・・・」
「明日太・・・」
その後、サラはもう一つ隠していたことも教えてくれた。僕がこの場所へ来るたびに、やっぱりポイントを消費するという・・・。こっちは「時間で消費する」とかではなくて入る時だけ、ポイントを消費するらしい・・・。一回毎に1000ポイント。漫画喫茶方式ではなくて、銭湯方式。
こっちは外でやり取りするよりはまだ、リーズナブルな感じがした。
サラが「入場許可」の権限を設定してくれたので、今後、僕は自由に出入りできるらしい。けど、その度に、1000ポイントを「サラが」消費するみたいだ。僕の出入りでサラのポイントが減っちゃうのは、なんか申し訳ない感じがした。
あんまり気軽に、出入りしない方がいいだろう。
僕らは話し合って「外ではなるべく話さない」「ここに入るのは一日、一回」と決めたのだった。
・・・
・・・
・・・。
「応援しててね、僕、頑張ってくるから」
「おぅ! 頑張ってこい!」
まだ名残惜しい感じはしたし、もうポイントを消費して、ここにいるのだから、もったいない気もしてしまったけど、僕は今度こそ、元の世界に戻ることに決めた。ここにいても、できることは限られている。動き出さなければ何も変わらない。
僕はサラをそっと抱きしめた。今の僕はVR体らしいけど、やっぱり、ちゃんとぬくもりを感じた。改めて不思議な感じがした。
僕は、サラに再び、軽い口づけをすると、元の世界へと意識を向けた。
■■■■■■
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ポチタロウ、帰還する(後)
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