入れたいのに入れたいのに入れたいのに「ピュルッ」と出てしまう「元ショタ勇者」の物語

人外倫理

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第一部

ポチタロウと、サラの夢:5

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 全身が、ブレた映像みたいになって「ブツッ」というノイズと共に、サラは消えてしまった。



「サラ? ・・・サラ?」
 いくら呼びかけても返事はなかった。



(・・・・・・・・・・・・)
 しばらく放心した後、僕にものすごい後悔の念が押し寄せてきた。



・なんで僕は不用意にもあんなことを言っちゃったんだ!
・二度と会えなくなる可能性だってあるのに、何を欲望のままに、エッチなことしちゃってんだよ!
・どうしてこうも、エロ方面でナナメ下へ走る!?



 賢者モードも相まって、気分は最悪だった。このままおちんちんを引きちぎって、去勢して、死んでしまう方がいいような気までしてしまった。



「こんの、バッカ野郎がーーーっ!!!!」



 この世界へ来て、二度目の激怒だった。今度も僕は僕自身に怒っていた。いつも一番嫌悪してしまうのは、自分自身だ・・・。

 

 両手の拳を力一杯握りしめると、声の限りに叫んだ。でもそれは、真っ白な空間に飲み込まれて、すぐに消えていった。



■■■■■■
□□□□□□


ポチタロウと、サラの夢:5


■■■■■■
□□□□□□



ー どうすればいい? 何かできることは? ー



 状況を整理しようとした。小さな空間をせかせかと歩き回った。



 一瞬、スーのところへ戻って、知恵を貸してもらおうかと、頭によぎったけど、やめておくことにした。



 この、僕の頭の中にできた「よくわからない空間」から、僕が抜け出しちゃったら、そのまま二度と戻ってこれないかもしれない。この空間自体も消失してしまうかもしれない・・・。ここはサラの為の空間だろうから、僕までいなくなったら、それと同時に消えてしまう可能性も否定できない。



 とりあえず、ここに留まろう・・・。ステイだ、ポチタロウ。犬コロみたいにここで「待て」だ。・・・自虐と直感を、1:1で、まぜこぜにしたような気持ちでそう考えた。



 ・・・そんで、直感で思い出した。ゾンビだとか耳なし芳一だとか、今回、やけにホラーなことが頭に浮かんできた。きっと、心のどこかに、不吉な予感があったのだろう・・・。何故、僕はそれを見逃したんだ><。



 ・・・8畳ほどの空間を歩き回ってた僕は、思わずサラの洋服ダンスに手をかけていた。サラがそうしていたように。



 タンスの横には、マジックで書いたような黒い文字でこう書いてあった。



 「平常心」と。



・・・
・・・
・・・。



 今の僕に必要な言葉だった。



 サラもこれを見ながら心を落ち着けていたのだろうか? 僕と会うのに緊張してこれを書いたんだろうか? それともリーダーとしての責務を果たす為に、これを読んで、自分に言い聞かせていた・・・のかな? 



 推測してみたけど、当てずっぽうに過ぎなかった。僕はまだ全然サラのことを知らないじゃないか><。強い子だなんて思ったけど、サラだってやっぱり怖かったり、怯えたりしたのだろう・・・。



 サラの作ったその小さなギミックに、僕はなんとも言えない気持ちになった。



 とにかく、僕も「平常心」だ。一旦、落ち着こう。



「すーーーーーーーーっ・・・・・・はーーーーーーーーっ・・・・・・」
 深呼吸をした。



 何度も繰り返した。



ーーーーーー



ー 何か手がかりはないだろうか? サラの世界のことが記されたものが残ってないか? ー



 サラは「言っちゃいけないことがある」といってたから、ここには「見てはいけないもの」も、あるかもしれない。



 でも・・・それでもいい。かまうものか! 僕にとってはサラの行方を知る方が大事だ。



 部屋にあるのは、ベッドとタンスと本棚だけ。僕は迷わず本棚を調べていった。まずは書籍類だろう。なんかしら「精霊宿り?」のマニュアルなんかがあるかもしれない。そこに今回のようなケースで、こっちへ戻ってくる対策が書かれているかもしれない。



 本棚は横幅1m、高さ1.2mくらいの3段組みで、上の二段が小説や漫画が入りそうな、高さ20cmくらいのスペースになっていて、一番下の段が雑誌が入りそうな縦長のスペースで、そこは引き出しになっていた。


 
 上の2段には、僕の世界の「ヤンキー漫画」が何冊も置いてあった。チラホラと「少女漫画」もあった。



 サラはきっと、僕の世界のことも調べたのだろう。そんで、サラはこれらの漫画が気に入ったのだろう。



 ・・・てか、サラのあのヤンキー口調はこれらの漫画の影響を受けているのだろう・・・。またサラの新しい情報が入ってきた。・・・でも、こういうのはちゃんと、サラの口から聞きたかった><。



 漫画の巻数は飛び飛びだった。サラがお気に入りの巻だけを泣く泣く選んで、紙媒体で持ち込んだんだろうなと予測できた。そんなに本棚は広くないのだ。なのに僕の元いた世界には漫画は山ほどある。



 一番下、3段目の引き出しをガラガラと引っ張り出してみた。5冊の絵本と、タブレットっぽいもの、サラの手描きらしき表紙の冊子が1冊あった。題名は読めなかった。たぶん大精霊界? の言葉だろう・・・。僕の知らない字だった。



 でもなんとなく「俺様の夢」とでも書いてある気がした。表紙でサラ自身を模したであろう赤髪の少女が、片手をあげていた。それは「頑張るぞ!」とでもいってそうなガッツポーズで描いてあった。のびのびとした線で、大きく描かれていた。なんかサラらしい・・・。



 この引き出しの中で、何かヒントがあるならきっと「タブレットっぽいもの」の中だろう。だけど、僕はサラの書いた、その手作りの冊子を手にとっていた。サラのことをもっと知りたかった。



 ・・・
 ・・・
 ・・・。



 目を通してみたけど、内容はわからなかった。文字が読めないのだ、当然だ。でもその中身を見て僕は涙を流していた。ノートに涙が落ちそうになって、僕はあわててノートを移動した。



 何が書いてあるかはわからないけど、サラのそのノートの中には「書いては消して」が繰り広げられていた。僕がしてきたのと同じように。そこには「サラの苦悩」が映し出されていた。



 涙が止まらなかった・・・。「にしし」って感じで笑ってたサラを思い出してまた泣けてきた。僕と同じような苦悩を抱えながらも、サラはあんなに素直に笑ってたんだ・・・。僕は心からサラを尊敬した。心から大好きだと思った。



 うん・・・。泣いてる場合じゃなくなった・・・。



 僕はサラにせめてもう一度会いたいと思った。



 手がかりを探さなきゃ。



ーーーーーー



 そうして僕は、また行動を開始した。



 次にタブレットらしきものへと手を伸ばした。いろんな角度からそれを見てみたけど、スイッチらしきものはどこにもなかった。あれこれ試した後、画面に手のひらをあててみたら、僕もよく知る、赤丸に「\」の線が入ったおなじみの警告画面が出てきた。認証エラーといったところだろうか? これはサラがいないと見ることはできないかもしれない。



 これは一旦、保留だ・・・。



 逸る気持ちを抑えて、今度はタンスを開いてみることにした。タンスは4段でそれぞれ高さが30cmくらいだった。



 1段目には、ヒラヒラ、フリフリの可愛い服が入っていた。サラが最初に着てたドレスもあった。サラはヤンキー漫画が好きなのに、こういうフリフリの服が好きなのだろう。やっぱりアンバランスな子だ・・・。また「サラの言葉」で、じゃない方法で僕にサラの情報が追加された。



 2段目もほぼ同じだった。ゴスロリチックな衣装が大半のスペースを占拠していた。あとは寝間着が何点かあった。その全部にフリルがついていた。ただ、一番底に、隠されたかのように収納されていた服だけは趣きが違っていた。



 肩当て、ビキニ、黒タイツ、髪飾り。黒タイツを除いて、それぞれが赤基調で金の装飾がなされていた。ビキニアーマー的なやつだった。他の服と違って、エッチな感じの服だった。コスプレ衣装って感じだった。そう、まるで「火の精霊」のコスプレのような・・・。



 そこまで考えて、僕はハッとなった。よく考えればサラは「炎の精霊」なのだ。しかも「大精霊」なのだ。きっとたぶんこれが、大精霊としての、サラの正式衣装だったのだろう。恥ずかしがり屋のサラはこれを着れなかったのだろう・・・。



 この服を着たサラも見てみたい。きっとこれはこれで似合うだろう。



 そんで、サラが「大精霊」なのを、また失念していたことに気づいた><。



 ・・・大丈夫だ。サラは消えちゃったけど、別に死んだわけではない。むしろ僕らよりもすごい高次の存在なのだ。大精霊様なのだ。そんで、きっとサラも僕の元へ戻ってこようとしてくれるだろう。



 もし、サラが自分の世界に戻ってしまっていたなら、こちらの世界とは時間の流れが10000倍違うという・・・。サラが向こうで一日滞在したら、僕の今いる世界では10000日経ってしまう。



 でも、その中でもきっとサラはこっちへ、なるべく早く戻ってこれるように精一杯やってくれるハズだ・・・。



 僕も、こっちの世界で、それを待とう・・・。たとえ何年かかったって、またサラに会いたい。最悪、サラを今すぐ連れ戻せないとしたら、僕はなんとしてでも、長生きしてやる! 絶対またサラに会ってやる!



 そこでまた思い出した。「先代の勇者だった」というトリックアートなおじいちゃんのことを・・・。



ーーーーーー



 おじいちゃんは「寿命を200年伸ばしてもらって、じじい状態で魔王を倒しに行った」・・・というようなことを言っていた。



 異世界転生ものなんかでよくありそうな展開だから(老人の魔王退治は、あんまりないかもしれないけど)僕はそのまま流して聞いていた。



 おじいちゃんはしれっと言ったし、僕も聞き流してしまったけど、よく考えたら、すごい情報だった。「寿命を100年伸ばしてもらった」っていうのは><。



 この世界では普通にそれが「可能」なのだ。同じように魔王を倒した僕らだって、頼めば寿命を伸ばしてもらえるかもしれない。王様が「何でも望みのものを与えよう」・・・って言ってたのは、あながち嘘ではなかったのかもしれない。



 僕はもう少しだけこの部屋を調べて、何も出てこなかったら「寿命を延ばしてでも、意地汚く生き延びてでも、サラにまた会ってやる」なんて思った。サラに会えるなら、一万年だって、生き延びてやる・・・。うん。これを僕の「大きな夢」に設定しよう。



 よし! やってやる!



 そんな風に心を決めると、力が沸いてきた。もう立ち止まってなんかいられない。僕はまた進もう! 最悪そういう状況になっちゃうかもしれないけど、僕は今、僕にできることをしよう・・・。



 そうしてサラの洋服ダンスの3段目に手をかけた時、僕の全身に、激痛が走った。



「う、ぐあああああああっ!!!!」



 関節という関節から、筋肉を引き裂かれるような痛みを感じた。骨がきしむような感覚があった。体を少しでも動かそうとするたびに、それらが鋭く僕に跳ね返ってきた。



・3段目の引き出しに、何か見てはいけないものがあったのだろうか?
・僕がまた、調子に乗ってしまったからだろうか?
・神様的な何かは、僕が嫌いなのだろうか?



 そんなことを瞬時に考えた。



(痛い・・・痛い・・・いた、い・・・)



 後は痛みで、何も考えられなかった。



ーーーーーー



ー バシューーーーーーーーーッ!!!! ー



 激痛に身もだえていたところに、そんな音が聞こえてきた。この小さな空間に、亀裂が入り、その裂け目に球状の小さな穴ができていた。



 小さな穴はどんどん大きくなった。中は渦巻き状で、よくは知らないけど、それはブラックホールを連想させた。一瞬「飲み込まれる!?」と僕は恐怖した。8畳ほどのこの空間から、真っ白い何もない空間へ、飛び降りて逃げそうになってしまった。



 瞬時に魔王討伐の頃みたいに頭を回転させて「飛び降りるよりは、この渦へ飛び込む方がマシだ」と判断した。渦の中にサラの世界があるかもしれない。「逃げるよりは立ち向かえ!」と。



 でも、その穴は、僕を飲み込むのではなく、その真逆で。逆に中から、すごい光を放ちながら、人影が姿を表した。まぶしくて何も見えない・・・何も見えない・・・けど・・・。



 僕はサラだと思った。そう信じた。



ーーーーーー



 渦は、次第に光を失いつつ消えていき、そこには全裸の小さな少女がいた。片膝立ち状態で座っているその幼女は、やっぱりサラだった。サラだ! サラが帰ってきた! 



 嬉しさに身を包まれながらも、体はまだ痛くて・・・激痛と嬉しさで、僕はひどい有様だった。冬に唇がカサカサになって割れている時に、笑わされて唇が痛い・・・それの何倍もひどい感じの「笑いたいのに笑えない」そんな状態だった・・・。



 サラはサラでなんか「ブシューーーーーッ」っと、ケムリを上げながらそこにいて。なんか「タイムマシンに乗って、未来から来た人」みたいな様相で・・・。まるでコメディ映画の登場人物な僕と、シリアス映画の登場人物なサラが、一堂に会した・・・みたいな感じだった。



 僕らの再会は、やっぱりなんか「アンバランス」だった。



ーーーーーー



「サラ・・・」
「・・・・・・!」



 痛みをこらえながら呼びかけてみたけど、サラは何も言わなかった。僕を見て、ビックリしたような顔をしていた。自分でも、戻ってこれたのが信じられない、って感じなのだろうか?



 やがて「ブシューーーッ」って感じで、サラから出ていたケムリが「フスフス」と燻って消えると、サラは頭をかきながら、言った。



「あちゃーーーーっ・・・やっぱりか><。 わりぃな、ポチ公・・・><。」
 僕には何がなんだか、わけがわからなかった・・・。



ーーーーーー



「一体何が?」
「今、説明するから、待て・・・」



 サラはそう言うと、まっすぐ本棚まで歩いて、タブレット的なやつを取り出した。物が散乱していることへの追求はなかった。僕に悪気があって、家捜しをしたのではないことはサラにもわかっているようで、サラがそう思っているだろうことが、僕にもわかってしまった。・・・これが「調和」というやつだろうか?



 サラはタブレット的なやつに手のひらを当てて認証すると、それをスイスイと操作した。僕の目の前に「ウィーーン」って感じで下から姿見鏡が出てきた。全身が移せるでっかいのが出てきた。



 すごい! サラはなんか、異世界転生物の主人公みたいだ!

 

 そう思いながらも、なんか釈然としない思いもあった。こういうのは普通「異世界転生をした」僕自身ができてもいいやつなんじゃないかな・・・? なんで僕にはこういう系のチートがないんだろう? 主人公って器ではないのかな?



 若干、そんなことを嘆きながらも、サラの出してくれた姿見鏡を見てみた。



「え?」



 僕は、僕自身を見てびっくりした。



 僕の体はまた、大きくなっていた・・・。

 

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