22 / 91
第一部
ポチタロウと、トリックアートなおじいさん:1
しおりを挟む青い空に、雲みたいに白い、鯨が飛んでいた。
大きな大きな、大きな鯨が。
長い長い眉毛と、長い長い口ひげを生やし、悠然と空を漂っている。
「・・・!!!」(でかー! すごー!)
「おっきぃね、ポチ兄ぃ」
「うん・・・」
あまりの出来事に言葉を失っていた僕は、スーの声に意識を取り戻した。
決してスーの言葉がエッチに聞こえたからではない。・・・ホントだよ?
「・・・スー、たぶん、あの中だ」
「!? ・・・わかった」
スーは一瞬、息をのんだ後、理解を示してくれて、僕らはそのまま鯨へと進んだ。
鯨は巨大な口を開け、あくびをするように息を吸い込んだ。
僕とスーは、掃除機の前に転がった塵のように、クジラに吸引されていくのに身を任せた。
そうして僕らは、長い眉毛と、長い口ひげを生やした、とある、おじいさんと再開した。
■■■■■■
□□□□□□
ポチタロウとトリックアートなおじいさん:1
■■■■■■
□□□□□□
サファに挿れようとして、その前にピュルっと出ちゃって。
リリに挿れる前に、やっぱりピュルっと出ちゃって。
その次の日には、体がピュルっと? でっかくなっちゃって。
僕はちょっと途方に暮れていた。
ただでさえ挿れられてないのに、大きくなったら、もっと挿入が難しくなる。
体格差エッチとかもやってみたいと思うけど、そもそも入らなければ意味がない。
てか、このまま、さらにでっかくなる可能性だってある。
何これ? 魔王討伐より、挿入の方が大変じゃね?
鏡に映るのは、前世で15歳くらいだった時の僕そのものだ。(耳と尻尾を除いて)
今にも盗んだバイクで走りだしそうだ。
「あー、あー、あー・・・」
・・・声も低くなった。ダンディでカッコイイってところまではいかないけど。
ー チラッ ー
ズボンの前を引っ張って、中を確認してみると、息子も大きく育っていた。本来ならば嬉しいことのハズなんだけど、今は両手を上げて喜ぶ訳にもいかない。とにもかくにも僕は挿れたいのだ。
不意に訪れたこの体の変化は、大精霊が関係してるんじゃないかな? って僕は推測していた。魔王を倒して王都に滞在していた頃、大精霊を宿してくれた、おじいさんに、こんなことを言われていたからだ。
「これからの生活で、お主の体には、大きな変化が起こるかもしれん。何かあったら、いつでも訪ねておいで。・・・ほっほっほ」
その口調は意味深な感じだった。おじいさんの眉毛に隠されて良く見えない、瞳がキラリと光った気がした。あれは僕がこうなることを予期しての発言だったのかもしれない。
「わしは、普段、空を彷徨っておるからの・・・これを使って来ると良いぞ」
そう言って手渡されたのは、大きめの懐中時計みたいな物だった。なんか、てっぺんにボタンが付いている。「ポチッ」と押してみると地図と点が表示された。・・・ん? これってド○ゴンレーダー?
「わしがおる場所に、点が表示される。・・・わしは7人おらんから、集めて願いを叶えるのは無理じゃがな。 ・・・ほっほっほ」
「それってどういう・・・?」
「ほっほっほ、次回のお楽しみじゃ」
おじいさんは腰の後ろに手を回し、笑いながら、去って行った。
このおじいさんは、どこまで知っているんだろう? ドラゴン○ールを知っていることだけは確かだ。このおじいさんも異世界転生者だったりするのだろうか?
「話を聞きに行きたいな」とは思いながら、自治区作りに忙しくしていた僕は、結局今まで、おじいさんを訪ねることができずにいた。
いい機会だ。
おじいさんのところへ行ってみよう・・・。
ちょうど、飛行ユニットを作ったとこだし。
リフォームの終わった屋敷の中、僕はスーの元へと向かった。
ーーーーーー
僕は、スーの部屋まで行くと、スーをたたき起こ・・・すと大惨事になるので、頬に手を当てて、耳元でささやいた。
「お姫様、お目覚めの時間だよ」
「・・・」
「・・・お姫様?」
「・・・」
「・・・僕のお姫様」
「・・・誰?」
スーは寝覚めが悪い。
いつもはタレ目がちのスーが、ツリ目で、半分しか目が開いてなくて、おまけに目が据わってる感じで、ちょっと怖い。
「ポチタロウだよ・・・君の王子様の」
「・・・ポチ兄ぃはそんな声してない」
寝起きのスーはだいたい不機嫌だ。今もなんか周りに風をまとって、半分寝たまま攻撃態勢になっている。
「ほ、ほんとに僕だって! スー、ちゃんと目を開けてこっちを見て?」
「・・・・・・ん?・・・ポチ兄ぃ?・・・でもポチ兄ぃはそんなにおっきくない・・・」
「な、なんか成長期が来ちゃったっていうか、なんというか、まあ、急におっきくなっちゃったというか・・・」
「・・・・・・・・・そういう獣人もいるって本で読んだ・・・」
しどろもどろになった僕に、スーは、寝起きのスローな反応ながらに、まとった風を解いてくれた。急に成長する獣人がいてくれてよかった・・・。
「ホントにポチ兄ぃなら、いつもみたいに、お口に、チュッて、してくれる?」
「・・・ふふっ、そんなのしたことないだろ? でも、して欲しいなら、してあげるよ」
ー チュッ ー
目を閉じたスーの唇に、僕は自然と軽いキスをした。
リリに習って少し口を開けるのも忘れずに。
「・・・うん。ポチ兄ぃだ。ちゃんとボクの、やって欲しいことをしてくれた!」
パッと顔を輝かせたスーが、抱きついてくる。
・・・なんか流れで、自然にキスできちゃって、そんな自分にちょっとビックリした。
4人のお嫁さんの中で、スーとリリは、お姫様扱いをことさら喜んでくれる。
僕もその方がやりやすい。・・・チョロいとか思ってないよ?
ロールプレイングは得意なのだ。素の自分での恋愛よりはよっぽど。
とは言え、ちょっと前の僕ならスーの言葉をはぐらかしていたことだろう。「まだ、ほんの少しだけ早いよ、お姫様」なんて、ほっぺに口づけたりして。
挿れられなかったとはいえ、僕自身も、多少の経験を積んで、何かが変わったのかもしれない。あっけなくスーの唇への、初キスができてしまった。・・・よし!
(この調子で、挿れるところまでいけるといいな・・・)
・・・僕は切に願った。
ーーーーーー
スーが完全に目を覚ましたところで、僕は説明をした。
・体が急に大きくなっちゃったこと
・大精霊が関係しているかもしれないこと
・精霊を宿したおじいちゃんの所へ連れて行って欲しいこと
「おじいちゃんが、どこに、いるか・・・は、わかるの?」
「うん・・・。なんかおじいちゃんの位置がわかる道具をもらったから・・・そんで、空にいるって言ってたから、スーに連れてって欲しいんだ」
「把握、した。いいよ。ポチ兄ぃ」
「ありがとね、スー」
僕はスーの頭を撫でる。
スーは「むふん」と誇らしげだ。
さて。ここで、僕らの秘密飛行ユニットの出番だ。
ーーーーーー
ワフルがブランコで吹っ飛んだ、次の日。
僕とワフルは、こりもせず、ブランコの改良にいそしんでいた。
今回は、スーも一緒だ。飛行自由なスーがいてくれたら何かと楽だし、せっかくだし、スーとも共有したかったのだ。
壊れたブランコをスーに見せた後、僕はワフルと一緒に考えた改善案も、スーに話した。
スーは天才ちゃんなので、あっという間に理解を示して、僕らのブランコ制作を手伝ってくれた。
「ワフー♪♪♪」
僕は押す。ワフルの背中を。
「ワフフー♪♪♪」
ドンドン押す。水平を超えるまで。
「わーい!やっタ!」
「こえたー!」
ブランコはあっけなく水平超えを果たした。ポキリと折れたりすることもなく。
「やった!やった!」
「ワフーーー♪」
「・・・・・・」
手を叩いて喜び合うワフルと僕の横で、スーは何か考え込んでいた。
「スー? なんかあった?」
「スーが先にやりたかったカ?」
「これ、ボクがブランコの、ロープを持ったら、飛べるんじゃ、ないかな?」
「・・・おお、それだ!」
「なら、やってみるカ♪」
ーーーーーー
僕らは、魔王討伐へ向かう道中で「飛んでいけないかな?」と試行錯誤したことがある。乗り物だとか空中移動に、憧れてた時期があるのだ。
前にもちょっと書いたけど、僕らが飛んでみた結果はこうだ。
僕がジェットで飛ぶと、飛び火が危なかった。
サファが、水圧で飛ぶと、着地が危うかった。
ワフルが、土を勢いよく飛び出させて飛ぶのも、着地が危うかった。
スーに風を起こしてもらって飛ぼうとも思ったけど、とんでもない風圧じゃないと飛べなかった。台風でも「人が飛んでいく」なんて稀なので、どんくらい風が必要か? 少しは分かってもらえるんじゃないかな? あと、無理矢理、飛んだ後、やっぱり着地が危うかった。
単純にスーと手をつないで飛ぶことも思いついたんだけど、お互いの大精霊が干渉しあうのか? うまく飛べなかった。
スーだけは、風の大精霊を身にまとっているので、自然に飛べて・・・。
なんとかしてその風の精霊の力で、みんなで飛べないかなー? って考えながら、結局、歩きで、魔王討伐が終わってしまった。討伐が終わった今でも「飛んでいけなかったこと」は、ちょっとした心残りだった。
天才かつ凝り性のスーは、こっちへ帰ってきてからも、みんなで飛べる方法を模索していたし、僕も「解けないパズルを残してきた」感じでちょっとモヤモヤしていた。
このモヤモヤが解消される時が来たのかもしれない。
僕らはさっそく「ブランコで飛べるかな作戦」を試してみることにした。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。




転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる