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虎の国、小国群編
ロート、再会する
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うーん、城下町は、わいが国を出てからもあんまり変わってないから、いいんやけど。
ユーイお嬢はんに里帰りするちゅうて、あれから2日経ったんだけども、王族に関する噂や情報に関しての話が何もない。ふつーは何かしらの話が少しでも出ているんのが当たり前やのに、なぁ。
当たり障りのない無難な噂や話しかないっちゅうのは、おかしいわ。
お母はんや兄貴に連絡して、話を聞くしかないんやろな。はぁ、面倒くさいわぁ。
街中の様子を偵察に見えないように覗き見しながら、大通りにある店の軒先や、ショーウィンドウを見て、頭の中で情報を整理していると、大通りを走る豪華な魔馬車がわいのすぐ近くの横で停まった。
あー、来たか。昨日の夜に近衛の幼馴染に接触しておいたからやろな。わいの極秘帰国したっちゅう話が漏れたんやな。
魔馬車の窓から、貴婦人で貴族の位が高いのだろうと思われる女性がわいに向かって叫んできた。
「へいへいへーい!そこの青少年!ちょーっと話を聞きたいわ!あ、私?怪しくないからっ!近衛の勧誘に来たのよぉー!話だけでも聞いてほしいわぁ。ね?断ってもいいんだから!ね?」
「話を聞くだけでもいいですか?」
わいは、しらじらしいと思いつつも、話を合わせたんや。往来で貴族に逆らう真似をしないようにと。
「私も同席しているので、ご婦人と2人でと言う事はない。安心して欲しい。」
魔馬車のもう一方側の窓から、わいに声をかけてきた青年に念押しをしたったわ。
「断っても大丈夫ですか?私に何もお咎めなしで良いと?」
「私が保証しよう。沿道にいる者達も、そなたの証人になるであろう?」
しゃーないな、この流れに身を任すか。
「分かりました。ここでは落ち着かないので、どこか違う場所でお願いしてもいいですか?これでも貧乏貴族の末席にいるもので、こんな大通りで魔馬車を停めてもらった上、上位貴族の方々と話をしたのだと、悪目立ちしたくはないのです。」
「あい、分かった。魔馬車に同席する事を光栄に思え。この魔馬車への同乗を私が許そう。さぁ、魔馬車に乗ってこい。」
「ありがたき幸せ。同乗を許可していただき、光栄です。」
わいが魔馬車に乗ってすぐ、盗聴禁止の魔法が発動したんや。
「…すまんな、ローエンド。この兄を許したってやぁー。」
兄貴がぺこぺこと、わいに頭を下げて謝ってきたんで、「もうええわ。」と兄貴の頭を上げさせたんや。
わいの近衛にいる幼馴染は、兄貴の側近なんやから、わいが極秘に帰国した事が伝わっても仕方ないんやけどな。こうでもせえへんと、今、内紛状態のこの国では、やすやすと王族との接触も出来ひんのやから、わいにとっては必要な措置やってん。
「それにしてもや、お母はんのあの勧誘の仕方は変わってないんやなー。」
「そや。母上がいつも、あの調子で勧誘しているから、ローエンドに声をかけても、男性が騎士に勧誘されただけなんだって認識で済んだし、民衆の興味がすぐにローエンドやこの魔馬車から逸れたんやからな。」
「わいの小さい時に、あの幼馴染が同じように勧誘されて、目を白黒させて驚いていたのも、思い出したわぁ。」
「それにな、母上が静かなんは理由があるんや。場所を移動したら、細かく話すんで、ローエンドの話を聞きたいなぁ。」
「兄貴はそう言うけどな、わいも守秘義務ちゅうもんがあるんでな、話せない事があるんやで。
今回、わいがここに来たんは、乗っていた魔馬車が足止めされたからや。
それとな、わいの身元保証人が家族の話を聞いてくればいいと里帰りの許可をくれはったからや。家族の話が解決しないと、わいの主の乗った魔馬車が、虎の国へ行けへんやろ。」
「それもそうか。案内するんは、今の城下で私達の話が出来て、美味しいと評判の店なんだ。」
「妹達の開いた店なんでっしゃろ?わいも楽しみや。…お母はんが何もしゃべらんのは不気味やな。どうしたんや?」
「えー、あー、えーと、それも追々話すから。な、なぁ、ローエンドの話をしようか。」
あー、妹達と言う、ストッパーがいない所では話したくないと言う事なんやな。理解したわ。
「分かったわ。まずはこの、兄貴、立ち合いを頼むわ。荷物を出すから。」
わいのブレスレットの中に、ユーイお嬢はんの作ってくれはった食べ物がぎょーさん入っているんやで。何でも、非常時に食べるものや飲み物があると安心できるからちゅうて、わいに作ったモノを沢山渡してくれたんで。ま、これはユーイお嬢はんからの受け売りなんやけど。
「ええで。何を出すんや?」
不思議そうなルゥ兄貴は、置いておいてっと。
「わいの今の護衛対象のお方が作ったもんやけどな、凄く美味いんや。」
ルアンプ兄貴の立ち合いで、わいのブレスレットの中から、ユーイお嬢はんが作ってくれはった各種おにぎりと唐揚げを出して、わいが一口ずつ食べた後、ルゥ兄貴へ差し出した。
おっかなびっくり食べ始めたルゥ兄貴は、一口食べた後、もの凄い勢いで兄貴の分にと出した物を食べ尽くした。
最後の方は、毒見もしない物を食べてはった。結構な量を出したんやけど、わいも昼食を兼ねていたから、兄貴と競うようにして食べてたわ。
わいの持っているもんを食べ尽くされても困るんで、それ以上はルゥ兄貴が何度か催促しても出さなかったけど。
この魔馬車が向かっている先は、妹達が準備して開いた飲食店なんや。
貴族や裕福層の商人が多く訪れ、予約をする店として有名になったと聞いてはる。中々、美味いもんを出すんだとの評判も聞いているんで、楽しみや。
当たり障りのない話をしていると、魔馬車が停まった。どうやら、店の前に着いたらしいわ。
ユーイお嬢はんに里帰りするちゅうて、あれから2日経ったんだけども、王族に関する噂や情報に関しての話が何もない。ふつーは何かしらの話が少しでも出ているんのが当たり前やのに、なぁ。
当たり障りのない無難な噂や話しかないっちゅうのは、おかしいわ。
お母はんや兄貴に連絡して、話を聞くしかないんやろな。はぁ、面倒くさいわぁ。
街中の様子を偵察に見えないように覗き見しながら、大通りにある店の軒先や、ショーウィンドウを見て、頭の中で情報を整理していると、大通りを走る豪華な魔馬車がわいのすぐ近くの横で停まった。
あー、来たか。昨日の夜に近衛の幼馴染に接触しておいたからやろな。わいの極秘帰国したっちゅう話が漏れたんやな。
魔馬車の窓から、貴婦人で貴族の位が高いのだろうと思われる女性がわいに向かって叫んできた。
「へいへいへーい!そこの青少年!ちょーっと話を聞きたいわ!あ、私?怪しくないからっ!近衛の勧誘に来たのよぉー!話だけでも聞いてほしいわぁ。ね?断ってもいいんだから!ね?」
「話を聞くだけでもいいですか?」
わいは、しらじらしいと思いつつも、話を合わせたんや。往来で貴族に逆らう真似をしないようにと。
「私も同席しているので、ご婦人と2人でと言う事はない。安心して欲しい。」
魔馬車のもう一方側の窓から、わいに声をかけてきた青年に念押しをしたったわ。
「断っても大丈夫ですか?私に何もお咎めなしで良いと?」
「私が保証しよう。沿道にいる者達も、そなたの証人になるであろう?」
しゃーないな、この流れに身を任すか。
「分かりました。ここでは落ち着かないので、どこか違う場所でお願いしてもいいですか?これでも貧乏貴族の末席にいるもので、こんな大通りで魔馬車を停めてもらった上、上位貴族の方々と話をしたのだと、悪目立ちしたくはないのです。」
「あい、分かった。魔馬車に同席する事を光栄に思え。この魔馬車への同乗を私が許そう。さぁ、魔馬車に乗ってこい。」
「ありがたき幸せ。同乗を許可していただき、光栄です。」
わいが魔馬車に乗ってすぐ、盗聴禁止の魔法が発動したんや。
「…すまんな、ローエンド。この兄を許したってやぁー。」
兄貴がぺこぺこと、わいに頭を下げて謝ってきたんで、「もうええわ。」と兄貴の頭を上げさせたんや。
わいの近衛にいる幼馴染は、兄貴の側近なんやから、わいが極秘に帰国した事が伝わっても仕方ないんやけどな。こうでもせえへんと、今、内紛状態のこの国では、やすやすと王族との接触も出来ひんのやから、わいにとっては必要な措置やってん。
「それにしてもや、お母はんのあの勧誘の仕方は変わってないんやなー。」
「そや。母上がいつも、あの調子で勧誘しているから、ローエンドに声をかけても、男性が騎士に勧誘されただけなんだって認識で済んだし、民衆の興味がすぐにローエンドやこの魔馬車から逸れたんやからな。」
「わいの小さい時に、あの幼馴染が同じように勧誘されて、目を白黒させて驚いていたのも、思い出したわぁ。」
「それにな、母上が静かなんは理由があるんや。場所を移動したら、細かく話すんで、ローエンドの話を聞きたいなぁ。」
「兄貴はそう言うけどな、わいも守秘義務ちゅうもんがあるんでな、話せない事があるんやで。
今回、わいがここに来たんは、乗っていた魔馬車が足止めされたからや。
それとな、わいの身元保証人が家族の話を聞いてくればいいと里帰りの許可をくれはったからや。家族の話が解決しないと、わいの主の乗った魔馬車が、虎の国へ行けへんやろ。」
「それもそうか。案内するんは、今の城下で私達の話が出来て、美味しいと評判の店なんだ。」
「妹達の開いた店なんでっしゃろ?わいも楽しみや。…お母はんが何もしゃべらんのは不気味やな。どうしたんや?」
「えー、あー、えーと、それも追々話すから。な、なぁ、ローエンドの話をしようか。」
あー、妹達と言う、ストッパーがいない所では話したくないと言う事なんやな。理解したわ。
「分かったわ。まずはこの、兄貴、立ち合いを頼むわ。荷物を出すから。」
わいのブレスレットの中に、ユーイお嬢はんの作ってくれはった食べ物がぎょーさん入っているんやで。何でも、非常時に食べるものや飲み物があると安心できるからちゅうて、わいに作ったモノを沢山渡してくれたんで。ま、これはユーイお嬢はんからの受け売りなんやけど。
「ええで。何を出すんや?」
不思議そうなルゥ兄貴は、置いておいてっと。
「わいの今の護衛対象のお方が作ったもんやけどな、凄く美味いんや。」
ルアンプ兄貴の立ち合いで、わいのブレスレットの中から、ユーイお嬢はんが作ってくれはった各種おにぎりと唐揚げを出して、わいが一口ずつ食べた後、ルゥ兄貴へ差し出した。
おっかなびっくり食べ始めたルゥ兄貴は、一口食べた後、もの凄い勢いで兄貴の分にと出した物を食べ尽くした。
最後の方は、毒見もしない物を食べてはった。結構な量を出したんやけど、わいも昼食を兼ねていたから、兄貴と競うようにして食べてたわ。
わいの持っているもんを食べ尽くされても困るんで、それ以上はルゥ兄貴が何度か催促しても出さなかったけど。
この魔馬車が向かっている先は、妹達が準備して開いた飲食店なんや。
貴族や裕福層の商人が多く訪れ、予約をする店として有名になったと聞いてはる。中々、美味いもんを出すんだとの評判も聞いているんで、楽しみや。
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