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ガオン・ロード国編
次はどこの国へ?
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ガオン・ロード国で私は勉強をして過ごしました。何だかんだと長引いてしまい、1月も、滞在していました。
ガオン・ロード国の大臣の何人かが、急な人事での入れ替えがあったのだとショウ様から聞きましたが、派手な混乱はなかったようです。ガオン・ロード国内での人事ですので、ナーオ・ロウ国の王太子妃の私には、何ら影響がありませんでした。
そういう訳で、私の方には何も起きなくてホッとしましたーーー。
次に訪れる国はどこかと聞いたらば、小国群を廻るそうです。
白花の住んで居る虎の国を拠点として、小国群を視察するんですよ。白花とグレイル王太子様と会うのが楽しみ!です。
ですが、その移動の魔馬車の中に、見慣れない方が1名います。ショウ様は不機嫌さを隠さず、私を守るように抱き締めたまま、その方には誰も話かけもしないで、誰も自己紹介をもしませんでした。
たしか、ガオン・ロード国の王城で、クーちゃんには関わらない方がいいと言われた方だったので、私の方もあえて話しかけたり、空気を読んで場を和ませたりもしませんでした。
ロートもショウ様も私にはあの後に、ガオン・ロード国では何も説明をしてくれないままでしたので。要するに、ヤバい奴なので近寄るな!ってことなんでしょうね。
クーちゃんに尋ねても、『後で詳しく話すので、アレとは話さないようににゃ!あたいも寝るから!』と、またもや、厳命されました。
ショウ様とクーちゃんからの空気だけを読んで、私はダンマリ、お口にチャック状態の姿勢のままです。
相手の方から何度か私に話しかけようとしていたようなのですが、私はショウ様の方だけを見て、身体ごとショウ様の方へ向けていました。
ロートも「王太子妃様はお疲れのご様子。そっとしておいてくださいませ。」と言って、その様子見の視線を撥ねつけてくれていましたから。
ショウ様の腕の中で大人しくして固まっていました。
だからか、緊張のあまり、疲労が激しかったのでしょう、いつの間にかショウ様の腕の中で眠っていたようです(だるまさんが転んだ状態で身動き出来なかったんです!!)
気付いたら魔馬車内の寝室でショウ様に抱き締められていましたし、その状態で目が覚めました。
周りを見て耳を澄ますと、「くぅーくぅー。」と小さな猫の寝息が聞こえています。クーちゃんもクーちゃん専用の籠の中で眠っているようです。
ショウ様もガオン・ロード国を出たので気が抜けたのでしょう。私を抱きしめたまま、熟睡していました。
お役目、ご苦労様です。
それから30分ぐらいするとショウ様が起きました。寝起きでもカッコいい私の番です。
「…おはよ、ユーイ。」
その掠れた低音の声が、腰にキますから…。
「おはようございます。ショウ様。」
ちゅっちゅとお目覚めのキスをして、2人して起き上がりました。それから、あの紹介のない人の事を聞きました。
面倒だと言いた気に、ショウ様が答えてくれました。
「あれは小国群の一つ、ワーオランドーラから離れた王族の灰色オオカミが興した国の王子だ。女タラシで、女を寝取るのが得意だと有名でね、今までにも番を何組か、永久の別離にまで追い込んでいる。
番をアイツに紹介しなければ、番の女性に手出しをしないが、紹介すればたちまちに喰いつくと言われているし、噂もされているんだ。
実際、ワーオランドーラの王も紹介しないでいたにも関わらず、番のジャンヌ殿に手を出されそうになったり、攫われそうになった所を退けたのだと言っていた。番がいる者にとっては、要注意人物だと懇々と言い聞かせられていたんだよ。
だから、ユーイも充分に気を付けてほしい。白花にもグレイルにもこの事は連絡済みなんだ。
くれぐれも、あの男に自己紹介をしないように。万が一、あの男に名を呼ばれても、返事を一切、しないよ・う・に。正式の場で紹介をと言われても、自分では何一つ言わなくてもいいし、返事をしなくてもいいんだからね!」
うわー、女タラシ!!無理!!ショウ様だけしか知らないから、女タラシって不潔に感じる!!
「気を付けます。まずは誰に呼ばれているかを確認してから、その返事をします。
…女タラシって、私個人としては途轍もなく気持ち悪い存在です。だって、不特定多数と接触して肉体関係を行っているのでしょう?
無理!私には無理です!!潔癖なので、ぞわぞわして、気持ち悪いです!!
…あ、の、ショウ様は…?」
不安だったので、必ず答えてくれるように願いを込めて、上目遣いで聞いてみました…。
「そうだね、私もそういう女性は無理だな。
前にも言ったと思うけど、閨教育でも番でないからと実践教育の部分が実地で出来なかったんだ。
私はユーイだけしか知らないし、万が一、間違いが起こっても、薬で強制的にされる以外は不能で、交尾出来ないと思っていてくれていい。
ただな、あの男には上に姉がいて、下にも妹がいるそうだ。そっちも危ないって聞いている。私も用心しておくから。」
ふと、また違う意味で生じた不安を口にした。
「もしかして、その姉妹もタラシなのですか?」
『そうにゃ。寝技の姉妹、寝取りの女版と言われているにゃよ。』
「クーちゃん!そこの所を詳しく!!」
『ショウもグレイル殿も気を付けないと、番との永久の別離が待っているにゃん。女神さまによって、白花やユーイに新しい番を用意されたくはないでしょうにゃ。ショウ王太子にゃ。』
「もちろん!!されたくないっ!!ユーイは私のものだっ!!」「私もショウ様以外の番なんて今更、イヤッ!!」
私とショウ様は抱き締め合って、怖くなった気持ちを落ち着けました。
『先王もイッチェンもリヨウもロートにも気を付けるようにと、あたいが厳命したにゃ。それでも、あざとい女の姉妹達とあの男が手を組んで仕掛けてくるかもしれないにゃ。』
そ、そんな!!私だけじゃなくて、白花も王太后様も番を寝取られる危険性があるの!?!ええっ!!どうするの!?!
『あたいが手を貸すにゃ。あんなのに邪魔をされて、王家が不和になるのは勘弁にゃ!!聖獣としての務めにゃよ!
グレイルの国の聖獣とも話をつけておくにゃ!
あ!!それからにゃ!あの国には聖獣がいないにゃよ。
あくまでワーオランドーラから逃げて来ただけで、勝手に国を興して、そう名乗っているだけにゃ。正式には女神さまにも国として認められていにゃいのにゃ。
ま、罪人の王族が興した国と言い張っているだけの場所だから、正式な挨拶もしなくていいにゃ。
罪人の子供が勝手に王子やら姫やらと名乗っているだけにゃ。相手にする価値もないにゃ。』
「罪人の?」
『ショウから事情を聞いておくにゃ。ちょっくら、出掛けて打ち合わせをしてくるにゃ。気を付けるにゃよ。特にユーイは。女神さまの愛し子だから、ショウと別離されないように!!』
「はい…!」
クーちゃんが籠の中から言うだけ言って、どこかへ転移していきました。
ショウ様は真剣な目で、私に話をし始めました。
「ワーオランドーラの王には姉がいたんだ。その王姉が王配になる予定だった男性の番を殺して幾人かの貴族共と逃げたのが、その頃に内紛していた小国群だった。
内紛していたからか、どこにも属していない空白の地域があってね、その空白の地域が国を興した場所だと言われているし、知られているんだ。
どうして王配になる番を殺してまで国から出て行ったのかとか、その辺りの内情は、他国には伝わっていない。
王配になる予定だった番を殺して国から逃げたという事実しか、分からなかったんだ。
その王姉と言うのが、クロード王の姉で、ジャンヌ王妃の義姉にあたる人なんだ。
ただ、その子供達の父親は誰なのかという推測はされているけど、噂だけでね、正式には誰なのかは知られていない。というか、誰も知らないんだそうだ。」
そんな馬鹿な?親がいないと精子と卵子の受精卵での子が生まれないでしょう?それとも私の知らない方法があるの?
「でも、子供が生まれたなら、その親となった男性がいるはずでしょう?」
「ああ。それしか子供が生まれる方法がない。」
そっか、他に方法があるって訳ではないんだ。
「アノ男に、国へ帰る金も方法もないので乗せて欲しいと、何でもするからと頼み込まれてしまったんだ。
一度目は外交上の秘密があるので無理だと、二度目も、噂通りだと国としても困るからと断ったんだ。
ただ、ガオン・ロード国では真面目に過ごしていたらしくてね、浮いた噂の一つもなかったそうで、ね。
あの熊の国の王族達に「相乗りだけでも何でもいいから、国へ帰してあげたいのだ。」とこちらも何度か頼まれてしまったんだ。交渉が長引いたのはそのせいだ。
そのおかげか、ナーオ・ロウ国への方へ、とても都合のいい条件での外交と貿易についての条約を締結出来たんだけれども、何だか腑に落ちなかったんだよなぁ。
ふぅ、熊の国はのんびりし過ぎていて、危ないな。今後も厄介ごとを押し付けられないように気を付けねば。」
話を聞いていた私のどこかに何かが引っ掛かった。
「ねぇ、ショウ様。もしかして、あの国のお姫様が騙されて、番である婚約者と別離させられそうになっていたから、私達に体よく押し付けた線はないですか?」
「…そういう話も、ありえたかもしれない。はぁ、陰で何をしていたか掴めなかったんだ。」
まさか、もしかして、メイドや女官達が聞いてきた噂の中にそんなような話が合ったような気がす・る。
急いで立ち上がって、カーナさんに渡すはずだった噂を集めて書き溜めたものを出して、読んでいった。
ショウ様にも読むのを手伝ってもらった。
そうしたら、秘密の恋人の容姿があの王族と名乗っている男と一致したのでした。
ああ、嫌な感じはこれだったんだ…。
噂から、ガオン・ロード国の成人前の姫の恋人として王城に出入りしていた事も、その姫の周りの女官を端から喰いまくって肉体関係を結んでいたのも判明したのだから。
ショウ様とその事実が浮上した時点で頭を抱えたのだが、私達では決められないので、王太后様と先王様へ相談という名の報告会をしました。
相談の末、イッチェンさんとリヨウさんとロートにも判明した事を報告し、王族で決めた事を伝えました。
ナーオ・ロウ国としては、あの男はガオン・ロード国の王族に頼まれて、仕方なく、たまたま魔馬車に乗せた関係しかないし、この先もそれ以上になるつもりもない。公式にも非公式にも、あの男は知り合いでもなんでもないとしました。
あの男について、名も知らない同情させただけの者として国内でも国外にも終始徹底をする。
そうそう、王太后様が魔馬車に同乗させるにあたり、私や女官達、そして、メイド達がその毒牙にかかる前にと、内密にクー様があの男の下半身を不能状態にしてあるので、危険を多少は排除出来ているのだそうです。
下半身が反応しないと、あの手の男は手を出さないだろうと、先王様と王太后様が背景を真っ黒にして、嗤っていましたよ…。こ、こわー!!
明日、あの男が自分の国と呼んでいる場所に一番近い場所を通るそうなので、そこまではこの魔馬車内での滞在を許可しているが、ユーイやショウ王太子は同席もしないし、視線も合わせず、声掛けも一切しないようにと、更なる決まりごとが増やされる事になりました。
うん、用心に用心を重ねてですね。気を付けよう。
あくまで、無関係を貫き通し、ワーオランドーラの王に今回の経緯を速やかに伝え、私達の今後の予定を伝えて、鼻の利く者を派遣してもらう事を検討して欲しいとの要望を出す事になった。
重苦しい空気の中でも、私個人としては、ジャンヌ様の様子が聞ける方が派遣されて来るといいなと密かに思っていましたよ。
あの男も魔馬車内の空気を読んだのでしょう。何事もなく、翌日には私達の乗っている魔馬車から降りて行きました。
はぁ、気を抜ける筈だった魔馬車内で、どっと疲れました…。
ワーオランドーラの王には書簡を持った急使が送られましたし、あの男が降りて遠ざかったのを確認してから、魔馬車内をあの男に魔法や何かしらの細工をされていないかの点検と検証が行われました。
魔馬車内にもその周辺にも人にも影響も何もなく、何も痕跡が出てこなかったので、一応、平穏を取り戻したのでした。
ガオン・ロード国の大臣の何人かが、急な人事での入れ替えがあったのだとショウ様から聞きましたが、派手な混乱はなかったようです。ガオン・ロード国内での人事ですので、ナーオ・ロウ国の王太子妃の私には、何ら影響がありませんでした。
そういう訳で、私の方には何も起きなくてホッとしましたーーー。
次に訪れる国はどこかと聞いたらば、小国群を廻るそうです。
白花の住んで居る虎の国を拠点として、小国群を視察するんですよ。白花とグレイル王太子様と会うのが楽しみ!です。
ですが、その移動の魔馬車の中に、見慣れない方が1名います。ショウ様は不機嫌さを隠さず、私を守るように抱き締めたまま、その方には誰も話かけもしないで、誰も自己紹介をもしませんでした。
たしか、ガオン・ロード国の王城で、クーちゃんには関わらない方がいいと言われた方だったので、私の方もあえて話しかけたり、空気を読んで場を和ませたりもしませんでした。
ロートもショウ様も私にはあの後に、ガオン・ロード国では何も説明をしてくれないままでしたので。要するに、ヤバい奴なので近寄るな!ってことなんでしょうね。
クーちゃんに尋ねても、『後で詳しく話すので、アレとは話さないようににゃ!あたいも寝るから!』と、またもや、厳命されました。
ショウ様とクーちゃんからの空気だけを読んで、私はダンマリ、お口にチャック状態の姿勢のままです。
相手の方から何度か私に話しかけようとしていたようなのですが、私はショウ様の方だけを見て、身体ごとショウ様の方へ向けていました。
ロートも「王太子妃様はお疲れのご様子。そっとしておいてくださいませ。」と言って、その様子見の視線を撥ねつけてくれていましたから。
ショウ様の腕の中で大人しくして固まっていました。
だからか、緊張のあまり、疲労が激しかったのでしょう、いつの間にかショウ様の腕の中で眠っていたようです(だるまさんが転んだ状態で身動き出来なかったんです!!)
気付いたら魔馬車内の寝室でショウ様に抱き締められていましたし、その状態で目が覚めました。
周りを見て耳を澄ますと、「くぅーくぅー。」と小さな猫の寝息が聞こえています。クーちゃんもクーちゃん専用の籠の中で眠っているようです。
ショウ様もガオン・ロード国を出たので気が抜けたのでしょう。私を抱きしめたまま、熟睡していました。
お役目、ご苦労様です。
それから30分ぐらいするとショウ様が起きました。寝起きでもカッコいい私の番です。
「…おはよ、ユーイ。」
その掠れた低音の声が、腰にキますから…。
「おはようございます。ショウ様。」
ちゅっちゅとお目覚めのキスをして、2人して起き上がりました。それから、あの紹介のない人の事を聞きました。
面倒だと言いた気に、ショウ様が答えてくれました。
「あれは小国群の一つ、ワーオランドーラから離れた王族の灰色オオカミが興した国の王子だ。女タラシで、女を寝取るのが得意だと有名でね、今までにも番を何組か、永久の別離にまで追い込んでいる。
番をアイツに紹介しなければ、番の女性に手出しをしないが、紹介すればたちまちに喰いつくと言われているし、噂もされているんだ。
実際、ワーオランドーラの王も紹介しないでいたにも関わらず、番のジャンヌ殿に手を出されそうになったり、攫われそうになった所を退けたのだと言っていた。番がいる者にとっては、要注意人物だと懇々と言い聞かせられていたんだよ。
だから、ユーイも充分に気を付けてほしい。白花にもグレイルにもこの事は連絡済みなんだ。
くれぐれも、あの男に自己紹介をしないように。万が一、あの男に名を呼ばれても、返事を一切、しないよ・う・に。正式の場で紹介をと言われても、自分では何一つ言わなくてもいいし、返事をしなくてもいいんだからね!」
うわー、女タラシ!!無理!!ショウ様だけしか知らないから、女タラシって不潔に感じる!!
「気を付けます。まずは誰に呼ばれているかを確認してから、その返事をします。
…女タラシって、私個人としては途轍もなく気持ち悪い存在です。だって、不特定多数と接触して肉体関係を行っているのでしょう?
無理!私には無理です!!潔癖なので、ぞわぞわして、気持ち悪いです!!
…あ、の、ショウ様は…?」
不安だったので、必ず答えてくれるように願いを込めて、上目遣いで聞いてみました…。
「そうだね、私もそういう女性は無理だな。
前にも言ったと思うけど、閨教育でも番でないからと実践教育の部分が実地で出来なかったんだ。
私はユーイだけしか知らないし、万が一、間違いが起こっても、薬で強制的にされる以外は不能で、交尾出来ないと思っていてくれていい。
ただな、あの男には上に姉がいて、下にも妹がいるそうだ。そっちも危ないって聞いている。私も用心しておくから。」
ふと、また違う意味で生じた不安を口にした。
「もしかして、その姉妹もタラシなのですか?」
『そうにゃ。寝技の姉妹、寝取りの女版と言われているにゃよ。』
「クーちゃん!そこの所を詳しく!!」
『ショウもグレイル殿も気を付けないと、番との永久の別離が待っているにゃん。女神さまによって、白花やユーイに新しい番を用意されたくはないでしょうにゃ。ショウ王太子にゃ。』
「もちろん!!されたくないっ!!ユーイは私のものだっ!!」「私もショウ様以外の番なんて今更、イヤッ!!」
私とショウ様は抱き締め合って、怖くなった気持ちを落ち着けました。
『先王もイッチェンもリヨウもロートにも気を付けるようにと、あたいが厳命したにゃ。それでも、あざとい女の姉妹達とあの男が手を組んで仕掛けてくるかもしれないにゃ。』
そ、そんな!!私だけじゃなくて、白花も王太后様も番を寝取られる危険性があるの!?!ええっ!!どうするの!?!
『あたいが手を貸すにゃ。あんなのに邪魔をされて、王家が不和になるのは勘弁にゃ!!聖獣としての務めにゃよ!
グレイルの国の聖獣とも話をつけておくにゃ!
あ!!それからにゃ!あの国には聖獣がいないにゃよ。
あくまでワーオランドーラから逃げて来ただけで、勝手に国を興して、そう名乗っているだけにゃ。正式には女神さまにも国として認められていにゃいのにゃ。
ま、罪人の王族が興した国と言い張っているだけの場所だから、正式な挨拶もしなくていいにゃ。
罪人の子供が勝手に王子やら姫やらと名乗っているだけにゃ。相手にする価値もないにゃ。』
「罪人の?」
『ショウから事情を聞いておくにゃ。ちょっくら、出掛けて打ち合わせをしてくるにゃ。気を付けるにゃよ。特にユーイは。女神さまの愛し子だから、ショウと別離されないように!!』
「はい…!」
クーちゃんが籠の中から言うだけ言って、どこかへ転移していきました。
ショウ様は真剣な目で、私に話をし始めました。
「ワーオランドーラの王には姉がいたんだ。その王姉が王配になる予定だった男性の番を殺して幾人かの貴族共と逃げたのが、その頃に内紛していた小国群だった。
内紛していたからか、どこにも属していない空白の地域があってね、その空白の地域が国を興した場所だと言われているし、知られているんだ。
どうして王配になる番を殺してまで国から出て行ったのかとか、その辺りの内情は、他国には伝わっていない。
王配になる予定だった番を殺して国から逃げたという事実しか、分からなかったんだ。
その王姉と言うのが、クロード王の姉で、ジャンヌ王妃の義姉にあたる人なんだ。
ただ、その子供達の父親は誰なのかという推測はされているけど、噂だけでね、正式には誰なのかは知られていない。というか、誰も知らないんだそうだ。」
そんな馬鹿な?親がいないと精子と卵子の受精卵での子が生まれないでしょう?それとも私の知らない方法があるの?
「でも、子供が生まれたなら、その親となった男性がいるはずでしょう?」
「ああ。それしか子供が生まれる方法がない。」
そっか、他に方法があるって訳ではないんだ。
「アノ男に、国へ帰る金も方法もないので乗せて欲しいと、何でもするからと頼み込まれてしまったんだ。
一度目は外交上の秘密があるので無理だと、二度目も、噂通りだと国としても困るからと断ったんだ。
ただ、ガオン・ロード国では真面目に過ごしていたらしくてね、浮いた噂の一つもなかったそうで、ね。
あの熊の国の王族達に「相乗りだけでも何でもいいから、国へ帰してあげたいのだ。」とこちらも何度か頼まれてしまったんだ。交渉が長引いたのはそのせいだ。
そのおかげか、ナーオ・ロウ国への方へ、とても都合のいい条件での外交と貿易についての条約を締結出来たんだけれども、何だか腑に落ちなかったんだよなぁ。
ふぅ、熊の国はのんびりし過ぎていて、危ないな。今後も厄介ごとを押し付けられないように気を付けねば。」
話を聞いていた私のどこかに何かが引っ掛かった。
「ねぇ、ショウ様。もしかして、あの国のお姫様が騙されて、番である婚約者と別離させられそうになっていたから、私達に体よく押し付けた線はないですか?」
「…そういう話も、ありえたかもしれない。はぁ、陰で何をしていたか掴めなかったんだ。」
まさか、もしかして、メイドや女官達が聞いてきた噂の中にそんなような話が合ったような気がす・る。
急いで立ち上がって、カーナさんに渡すはずだった噂を集めて書き溜めたものを出して、読んでいった。
ショウ様にも読むのを手伝ってもらった。
そうしたら、秘密の恋人の容姿があの王族と名乗っている男と一致したのでした。
ああ、嫌な感じはこれだったんだ…。
噂から、ガオン・ロード国の成人前の姫の恋人として王城に出入りしていた事も、その姫の周りの女官を端から喰いまくって肉体関係を結んでいたのも判明したのだから。
ショウ様とその事実が浮上した時点で頭を抱えたのだが、私達では決められないので、王太后様と先王様へ相談という名の報告会をしました。
相談の末、イッチェンさんとリヨウさんとロートにも判明した事を報告し、王族で決めた事を伝えました。
ナーオ・ロウ国としては、あの男はガオン・ロード国の王族に頼まれて、仕方なく、たまたま魔馬車に乗せた関係しかないし、この先もそれ以上になるつもりもない。公式にも非公式にも、あの男は知り合いでもなんでもないとしました。
あの男について、名も知らない同情させただけの者として国内でも国外にも終始徹底をする。
そうそう、王太后様が魔馬車に同乗させるにあたり、私や女官達、そして、メイド達がその毒牙にかかる前にと、内密にクー様があの男の下半身を不能状態にしてあるので、危険を多少は排除出来ているのだそうです。
下半身が反応しないと、あの手の男は手を出さないだろうと、先王様と王太后様が背景を真っ黒にして、嗤っていましたよ…。こ、こわー!!
明日、あの男が自分の国と呼んでいる場所に一番近い場所を通るそうなので、そこまではこの魔馬車内での滞在を許可しているが、ユーイやショウ王太子は同席もしないし、視線も合わせず、声掛けも一切しないようにと、更なる決まりごとが増やされる事になりました。
うん、用心に用心を重ねてですね。気を付けよう。
あくまで、無関係を貫き通し、ワーオランドーラの王に今回の経緯を速やかに伝え、私達の今後の予定を伝えて、鼻の利く者を派遣してもらう事を検討して欲しいとの要望を出す事になった。
重苦しい空気の中でも、私個人としては、ジャンヌ様の様子が聞ける方が派遣されて来るといいなと密かに思っていましたよ。
あの男も魔馬車内の空気を読んだのでしょう。何事もなく、翌日には私達の乗っている魔馬車から降りて行きました。
はぁ、気を抜ける筈だった魔馬車内で、どっと疲れました…。
ワーオランドーラの王には書簡を持った急使が送られましたし、あの男が降りて遠ざかったのを確認してから、魔馬車内をあの男に魔法や何かしらの細工をされていないかの点検と検証が行われました。
魔馬車内にもその周辺にも人にも影響も何もなく、何も痕跡が出てこなかったので、一応、平穏を取り戻したのでした。
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