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ナーオ・ロウ国編Ⅱ

王太后の茶会

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「だから、ショウとユーイ殿の間に子供が出来たら、結婚を許す事とすると条文を付けてですね、「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、やっぱり馬鹿だったわ。」話の途中ですが。」

「そんなくだらない思い付きをしてどうするのだ?」

 今日は息子のリンクスから、話がしたいと言われたので、茶を飲みがてら話をしているのだが、こやつは馬鹿だったのかと、ガックリしているのだ。

「母上!なんですと?!」

 すごんでも、全く怖くないのだが。

「リュン前王妃にはこんな馬鹿でも見捨てないでいてくれた事と、王太子を産んでくれた事には感謝をしなくてはならないな。」

「どこが馬鹿ですか!!」

「では、馬鹿だと証明しようか。
 リンクス王として、自分の子は何人いるのだ?

 分かり易くしてやろう。
 結婚生活はリュン前王妃とも長かった筈だし、婚約者としても長かった筈なのに、子供が生まれたのは1人だけ。

 そなたも、私の産んだ子も少ないのだぞ。それなのに、子が出来たらとすると、ショウはいつになったら結婚出来るのだろうか?

 ユーイ殿に子を産まなければ結婚出来ないとプレッシャーをかけるのか?息子に子が出来ないのだと責を負わせて責めるのか?

 それのどこが馬鹿でないと言えるのだ?」

「…済みません。」

 息子が王になっても、息子のダメな所ばかりが目に付くとは、はぁ。反省はしているが、どうしようか。

「仕事が出来ても、恋愛はダメダメであるな。

 私は母として、リンクスが2回も結婚出来たのが不思議であったが、その認識は間違ってはいなかった様だ。」

「お婆様、もっと言ってやって下さい。」

 私の茶会に遅れてやって来た孫のショウ王太子とカッツェ宰相が、茶会の応接間に入って来たのだ。

「そうだな。カッツェが結婚出来たのも謎であったがな。」

「そ、そんな…。」

「あんなに凄まじい母親がいたのに、嫁を守らずにカッツェは親に同調してばかりで、嫁を大事にしないでいたのに、どうしてまだ離婚せずに済んでいるのかが不思議だったわ。」

「あぁ、日頃から、イッチェンが母親と祖父母が会わない様にと裏で苦労していますからね。カーナさんと母親の仲を取り持っていると聞いていますので、そのお陰で離婚せずに済んでいるのではないかと思われます。」

「なかなかの分析である。ショウのおかげで、ユーイ殿も助かっているのだろう。」

「ええ。ただし、ユーイも陛下と宰相が決めた結婚出来る条件には納得していないので、女神さまと聖獣様にはその件での愚痴を言っているみたいですが。」

「ふむ。女神さまや聖獣様からの何らかの罰が王と宰相に下される可能性も出て来たのか。」

「そ、そんな…。」「母上~、」

「ユーイ殿はお二方に気に入られているからな。仕方あるまい。

 宰相は、離婚の危機を乗り越えてはいないのだがな。カーナ殿の出産と産後の為に、家に帰ったに過ぎないだけだから。それも、イッチェンとカーナの願いだったからだが。」

「えっ!?!」

「どうせ、カーナ殿よりも孫を心配したのであろう?カーナ殿が孫を産むのにな。

 それに、王城にいる私の元まで、カッツェの母親のした嫁いびりの内容が伝わって来ていたのだ。孫まで産まれたのだ、今更、カッツェに遠慮をして我慢をする必要がどこにあるのだ?」

「!!」

「今更気付いても、遅過ぎるだろうに。

 して、リンクスは、再々婚する気はないのか?」

「相手には断られたので、無理かと。」

「そうであったな。まぁ、相手はリンクスだけとは再々婚しないだろうと私でも思うぞ。」

「母上、その理由は?」

「恋のライバルであったからとだけしか言えない。」

「は?!」

 女神さまや聖獣様に内緒で話された事は息子でも話せないし、どうしようか。苑が白炎である事は話せないのだし。ううむ。

「うむ。お相手が男だったらミュンを好きになっていただろうって事だと解釈しても良い。今は友人になっているのだから、リンクスが何をしたのかをミュンから洗いざらい聞いているだろうし、リンクスは再婚相手には無理だろうと言ったのだ。」

「…そうですね。」

 男色ではないのだろうが、息子が不憫だ。まさか、女性化した獅子国皇帝に惚れるとは…。

「それで、ショウはどうするつもりでいるのだ?」

「父上のせいで私が結婚出来ないのですから、父上には王を当分は頑張ってもらってですね、ユーイとのんびり各国へ行こうかと思ってます。外交の仕事と旅行を兼ねて、ですかね。」

「その場合は、当たり前に聖獣様が付いて行こうとされるのが想像出来るので、聖獣様に弟子がついて見習い期間が終わるまでは無理だと思うが。」

「聖獣様が代替わりしてから、まだ日が浅いですし、仕方ないですよ、ね。」

『にゃううん。にゃ。(せめて、半年は待ってよ。弟子も来たばっかりだし。)』

 やっぱり。聖獣様のお気に入りのユーイとは聖獣様が離れたくないのだろうな。ここで言葉を発してくるとは。

「短期間、転移で近隣国へ行くなら問題なくなるのが半年後ぐらいだろうと、聖獣様が言っているのだ。分かるな、ショウ。」

「ええ。私も、聖獣様がいるのが当たり前に思ってしまっているので、近くにいないと変な感じがします。」

『みみゃう。(えらいぞ、王太子。)』

「ショウも気に入られているのだな。リンクスとカッツェ、精々、罰を下されない様に働くのだな。」

「「はい。」」

 あぁ、淹れてもらった茶が美味い。

 代理母として私がカッツェを産んだ事を忘れる魔法をかけてあるというのに、嫁いびりなどして自身の価値を下げるとは、情けない。
 自身の双子の妹でも許しがたい行為である。妹が産まれた孫を手にかける未来を見たと姪が急いで伝えてきたので、そろそろ処分しなくてはならないか。

 丁度、王城へ妹の夫が宰相の手伝いに来ているのだ。話をしてから、動こうか。
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