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獅子国編

白虹の留学6 白虹と青水仙の話し合い

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 20時に主寝室で青水仙に会うからと、風呂に入って足の先から頭の天辺てっぺんまで洗って、風呂を出たけど、悩んでしまったの。

 青水仙の母様から頂いた中にあった、どの下着と夜着を着るのかを。

 獣化すると白い獅子である私だけど、白じゃ代わり映えがしないようだし、黒だと気恥ずかしさが増しそうだし、薄ピンクか薄いペパーミント色のどちらの色にするかで悩んでしまったのですわ。

 どちらにするかを決められなくても、時間は過ぎていくし、約束した時間まで余裕が無かったので、2つをベッドに並べて目を瞑ってから、手に取った方を着る事にしたわ!

 急いで着替えながら思う事は青水仙の事。

 青水仙には告白する前に是非、聞いておきたい事があるの!

 だって、青水仙には、結婚する前から側室が5人もいる男だと言う噂があったんですもの。青水仙にとって、私が一夜限りの恋人でもセフレでも、それだけは恋する乙女としては聞いておきたいところなのです!

 まずはそこの所をはっきりさせなくては!私は頑張るの!

 急いで着替え終えると、時間が20時になっていたので、急いで主寝室のドアを叩いてから、中へ入ったのですわ。

 20時過ぎに入って来た白虹は化粧もなく、淡いピンクの色合いのワンピースを着ている。
 髪は緩く三つ編みにして編んであって、髪を縛るリボンも薄いピンクであった。
 その姿で、少し赤みを増した顔で入って来たのだ。それだけで、私の理性が揺すぶられてしまっている。

「遅れてしまって、ごめんなさい。」

「ここはくつろぐ家だから、気にしなくていいですよ。30分も過ぎていたら、具合が悪いのかと心配しますが、ね。まだ、誤差の範囲内で、20時だと言い張ってもいいのですよ。」

「性格的に、それは私には無理だわ。」

「では、座って話をしましょうか。」
「ええ。」

「先に私の話をしてもいいでしょうか。」
「青水仙さんのする話を聞きますわ。」

「私の出自はお聞かせしましたね。」
「はい。」

「私は養母を実の母だと思っていました。ですが、ある日、心無い者によって事実を湾曲させられた噂をバラまかれたのです。

 私がいるから、好きでもない養母と父が結婚したのだと。私は産みの母親に父と共に捨てられた情けない者だから、嫁が中々来なかったのだと言われたのです。だから、家にとってお前は邪魔者なんだと。

 私にそれを告げて来たのは、父から爵位を奪おうと画策していた親戚の家だったのですが、ね。小さい私はまだそんな事情や、貴族のしがらみを知らなかったので、それを信じてしまったのですよ。

 実際は、父と養母は好き合っていたのですが、政略結婚で、家格を今いる位置よりも上げさせたかった養母の実家の求めていた高位貴族、すなわち、公爵家でなかった為に結婚を反対されていたのだそうです。」

「え?!侯爵家ですわよね、青水仙の家は。」

「欲の皮が張っていたのでしょう、公爵でないならと反対されていたんです。」

「立場は余り変わらないでしょうに。」

「今なら、そんな馬鹿な事と笑い飛ばしますが、養母とその母である義祖母が父の所へ、押しかけ女房とその付き添いの居候となって、父の屋敷に住み着いてしまったそうです。実力行使ですね。」

「まぁ!」

「義祖父にあたる人も、義祖母には弱かったのでしょうね、渋々ながら結婚を許可したそうです。「傷物を喜ぶ若い男はいない。」と言って。
 その言葉に怒って、義祖母は義祖父の所へ帰るつもりを取り止めて、私を育ててくれるのに協力してくれたそうですが、流行り病で私が小さい頃に亡くなってしまいました。」

「それから?」

「5年後、体調不良を妊娠かもしれないと診てもらった医師から、養母は子が出来ない身体なのだと診断されたんです。
 それからですか、義祖父が、ナーオ・ロウの公爵家のご令嬢が婚約者を探していると言っていたので、契約して来たと、父と養母である母に言ってきたそうです。
 勝手に私の婚約を自身の孫だと言って、受けて決めてきてしまったんですよ。それがカーナさんとの婚約です。

 実際は、カーナさんの番が見付かるまでの婚約者を探していたのですが、隣国でも公爵家に恩を売っておけば、義祖父にとって優位な繋がりを持てると思ったらしくて、勝手に決めてしまっただけなんです。」

「それも、一人しかいない娘が子を産めないのだから、仕方なく、義理の孫でもいいから義祖父の役に立てれば、孫と名乗るのを許してやると言い切っていたそうです。」

「私は初恋がカーナさんでした。
 今更、隠す事でもないのですが。
 と言うか、親戚の子供も爵位を狙うか、お零れを期待する親が付いていましたから、父は親戚が母の事で私に嘘を吹き込んだ事に腹を立て、ろくでもない奴とは付き合わないと言って、親戚とは最低限の付き合いになってしまっていたんです。

 だから、子供同士での交流はなかったのですよ。そこで私の前に現れた唯一、同年代の子供が婚約者でした。だからこそ、私は友人も知り合いもいなくて寂しかったので、相手に執着してしまったのでしょうね。

 今ならそれは恋ではなく、ただの執着だったと理解しています。」

「それで、宰相だったお爺様と今は失脚したカーナ様の父親との思惑とは?」

「国家機密です。それは答えられません。」

「では、カーナ様との婚約破棄後に起きた暴行犯の一味疑いを掛けられた話は?

 宰相の良い駒にされたとは?

 青水仙さんが何もしていない事が青水仙さんの母様からの手紙に書いてありました。」

「そうですか。母からですか。

 そうですね、私を宰相補佐にする為に弱みを握りたかったみたいです。私が宰相殿の孫だと知っていたから。

 多分ですが、白星皇太子を異父兄弟としてではなく、宰相として支えて欲しかったのではないかと。」

「あの狸爺たぬきじじいのお爺様が?!、」

「白虹さんも中々、言いますね。」

「本当の事ですわ。」

「ここまでで、私に聞きたい事はありますか?」

「では、執着って?」

「恋ではありませんでした。憧れでした。」

「側室が5人いるって言う噂は?」

「白角宰相の流した嘘です。5人もいるので、カーナさんには執着していませんと表明するのと、国外で交渉する時に、はったりが効くのですよ。若造が!と舐められないので、噂を活用させて頂きました。」

「…はぁ、側室が5人もいなくて良かったわ。」

「5人もいたら、こっちへ来る時に、一緒に1人くらい付いてきたでしょうし。私が連絡を取っている様に見えましたか?」

「いいえ。でも、私が学校へ行っている間なら分からないと答えるわ。」

「それで、白虹さんが言いたい事は?」

「あるわ!でも、ちょっとだけ待って欲しいの、5分でいいから、待って。」
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