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獅子国編
白炎皇帝は何をしていたか
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ナーオ・ロウに送っている密偵からは、ミュンが見付からないと何度も報告が来ている。国外へ出たのだろうか?
いや、あの王妃だったミュンが国外へ出る筈はないと思うが、リンクスが嫌で出ている可能性はあるのか。リンクスも再々婚の見合いで貴族共に突かれているだろうな。
我も今、貴族共が皇妃の座を狙う獅子女共を送って来ているからだ。我は、長年一緒に居た赤雪が…と傷心を装い逃げていられるが、リンクスはミュンには何の落ち度もない、ただただリンクスの自業自得なのだからな。
番であるミュンを大事にしなかったので、その報いで失恋したのだ。その上、愛想をつかされ離婚されたのだから、不甲斐無いリンクスに貴族共が再々婚を捻じ込むだろう事は、その辺の子供でも容易く想像がつくからな。
「ん?」誰かに呼ばれたような気がする。「誰だ?!」
『…炎、白炎、』ああ、白獅子様だったか。
『白炎、白獅子様は『たまには旅をするのもいいかな。外へ出るのは500年振りだから、たまには外へ出るのも丁度いいか。』と出掛けられてしまわれた。
私は白獅子様の次代である白獅子で、仮の名を「光」と名乗っておこう。何かあれば私に言うがいい。
ただし、国に関する事以外は聞かん。私は白獅子様と違い、くだらない事や暇つぶしをしたくてと言う相談事については、一切、聞く耳は持っていない。』
よし!おいらは言い切ったぞ!聖動物らしく言ってみたけど、どうだったかな?威厳、出てたかな?
おいらは白輝様みたく弟子がまだいないんだ。まだ、白輝様の跡目を継いでいないからさ。跡目を継がないと弟子を採用出来る資格がないんだよなぁ。
白輝様は弟子のおいらに仕事を丸投げで押し付けて遊んでいるけどさ、おいらは遊ぶ事も出来ないんだもんな。弟子がいない中、元々、白輝様が一人でする筈だった仕事をおいらがするんだから、炎に邪魔をされたら迷惑だし、変な相談されても困るしさ。
まずは、ガツンと!おいらが白輝様とは違うって事を先に伝えとかないと、ね。炎はすぐに頼って来るから、嫌なんだよねー。
後で何かあったらさ、おいらに責任を押し付けて白輝様が逃げるつもりでいるって知っているし、白輝様が逃げられない様に手を打っておかなくちゃ。おいらが女神さまに、やってもいない事で代わりに怒られちゃうのは嫌なんだよ!!
白輝様もいい加減、黒大猫様に嫌われて逃げられているのにさ、気付いて欲しい。
…おお!…おいらを呼びだして何かさせようとしていた炎が、呼びだすのを止めたんすけど、ね…、
「白獅子様にも後継ぎがいたのか。しかし、国の事以外は聞かないと言われてしまったが、どうしようか。いつもなら、白獅子様が相談に乗って下さっていたんだが、どうしたらいいのか。」
あれで皇帝なんですか、子供の白星の方がまだマシでしょうが。
白輝様の気まぐれで、炎好みの女を見つけて与えていたせいで、どうしょうもない色狂いが出来上がったんすから。尻拭いは、その元凶の白輝様にさせましょうか。女神さまにもそう伝えておかなくては!
まぁ、炎はいずれ淘汰されるっすね。星が頑張りそうだし。………頭ん中でも、碌な事を考えてないっすね。
おいらは女神さまの味方です。でも、白輝様は女神さまの話も誰の話も聞かない、自分の道を突き進むタイプっすから、仕方がないと言えば、仕方がないんすけどね。
「…ではその様に取り計らいます。」
「ああ、頼む。」
何だか計画が動き始めたか。面倒っすけど、女神さまに伝えるか、炎の計画を。『女神さま~!!聞いて下さい~!!』
「ふっふっふっ、我もまだ捨てたものではない。」
白炎はミュンを手に入れる計画が、自分でも上手く練れて実行まで手配出来たと思っているが…。
その白炎皇帝が映った鏡を見て溜め息をついている者がいた。先日、儀式を済ませて、次代の皇帝になると正式に認められた白星皇太子だった。
「…父上もいい加減、引退して引っ込んで欲しいな。碌な事をしないから。はぁ。
母上が馬鹿な事をして、皇家の威信が揺らいでいるって言うのに、自分は色事の事だけしか考えないのかよ。
今までは母上の補助で何とか出来ていた事が、今は穴だらけの計画しか出来ない父上しかいない事実に、馬鹿らしさを感じる。
皆、いつもの様に細部まで探っておいてくれ。またアノ加護のある女に出て来られるのは面倒だからな。」
白星がそう言うと、部屋から何人かの影が飛び出していった。
いや、あの王妃だったミュンが国外へ出る筈はないと思うが、リンクスが嫌で出ている可能性はあるのか。リンクスも再々婚の見合いで貴族共に突かれているだろうな。
我も今、貴族共が皇妃の座を狙う獅子女共を送って来ているからだ。我は、長年一緒に居た赤雪が…と傷心を装い逃げていられるが、リンクスはミュンには何の落ち度もない、ただただリンクスの自業自得なのだからな。
番であるミュンを大事にしなかったので、その報いで失恋したのだ。その上、愛想をつかされ離婚されたのだから、不甲斐無いリンクスに貴族共が再々婚を捻じ込むだろう事は、その辺の子供でも容易く想像がつくからな。
「ん?」誰かに呼ばれたような気がする。「誰だ?!」
『…炎、白炎、』ああ、白獅子様だったか。
『白炎、白獅子様は『たまには旅をするのもいいかな。外へ出るのは500年振りだから、たまには外へ出るのも丁度いいか。』と出掛けられてしまわれた。
私は白獅子様の次代である白獅子で、仮の名を「光」と名乗っておこう。何かあれば私に言うがいい。
ただし、国に関する事以外は聞かん。私は白獅子様と違い、くだらない事や暇つぶしをしたくてと言う相談事については、一切、聞く耳は持っていない。』
よし!おいらは言い切ったぞ!聖動物らしく言ってみたけど、どうだったかな?威厳、出てたかな?
おいらは白輝様みたく弟子がまだいないんだ。まだ、白輝様の跡目を継いでいないからさ。跡目を継がないと弟子を採用出来る資格がないんだよなぁ。
白輝様は弟子のおいらに仕事を丸投げで押し付けて遊んでいるけどさ、おいらは遊ぶ事も出来ないんだもんな。弟子がいない中、元々、白輝様が一人でする筈だった仕事をおいらがするんだから、炎に邪魔をされたら迷惑だし、変な相談されても困るしさ。
まずは、ガツンと!おいらが白輝様とは違うって事を先に伝えとかないと、ね。炎はすぐに頼って来るから、嫌なんだよねー。
後で何かあったらさ、おいらに責任を押し付けて白輝様が逃げるつもりでいるって知っているし、白輝様が逃げられない様に手を打っておかなくちゃ。おいらが女神さまに、やってもいない事で代わりに怒られちゃうのは嫌なんだよ!!
白輝様もいい加減、黒大猫様に嫌われて逃げられているのにさ、気付いて欲しい。
…おお!…おいらを呼びだして何かさせようとしていた炎が、呼びだすのを止めたんすけど、ね…、
「白獅子様にも後継ぎがいたのか。しかし、国の事以外は聞かないと言われてしまったが、どうしようか。いつもなら、白獅子様が相談に乗って下さっていたんだが、どうしたらいいのか。」
あれで皇帝なんですか、子供の白星の方がまだマシでしょうが。
白輝様の気まぐれで、炎好みの女を見つけて与えていたせいで、どうしょうもない色狂いが出来上がったんすから。尻拭いは、その元凶の白輝様にさせましょうか。女神さまにもそう伝えておかなくては!
まぁ、炎はいずれ淘汰されるっすね。星が頑張りそうだし。………頭ん中でも、碌な事を考えてないっすね。
おいらは女神さまの味方です。でも、白輝様は女神さまの話も誰の話も聞かない、自分の道を突き進むタイプっすから、仕方がないと言えば、仕方がないんすけどね。
「…ではその様に取り計らいます。」
「ああ、頼む。」
何だか計画が動き始めたか。面倒っすけど、女神さまに伝えるか、炎の計画を。『女神さま~!!聞いて下さい~!!』
「ふっふっふっ、我もまだ捨てたものではない。」
白炎はミュンを手に入れる計画が、自分でも上手く練れて実行まで手配出来たと思っているが…。
その白炎皇帝が映った鏡を見て溜め息をついている者がいた。先日、儀式を済ませて、次代の皇帝になると正式に認められた白星皇太子だった。
「…父上もいい加減、引退して引っ込んで欲しいな。碌な事をしないから。はぁ。
母上が馬鹿な事をして、皇家の威信が揺らいでいるって言うのに、自分は色事の事だけしか考えないのかよ。
今までは母上の補助で何とか出来ていた事が、今は穴だらけの計画しか出来ない父上しかいない事実に、馬鹿らしさを感じる。
皆、いつもの様に細部まで探っておいてくれ。またアノ加護のある女に出て来られるのは面倒だからな。」
白星がそう言うと、部屋から何人かの影が飛び出していった。
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