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獅子国編

白獅子(てる)旅日記2

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 聖獣の村を目指して歩いているが、どうしてか、聖獣の村には辿り着けないのだ。

 聖獣である者は聖獣の村に入る事が許可されているが、迷い込んだ者や、聖獣の村から村人を連れだして、一獲千金を狙う馬鹿が探しても、迷い込む事すら出来ない。その者達は、聖獣の村に入れる許可を女神さまに出されていないからだ。

 だが、私が村に着けないのは納得がいかない。私は聖獣として獅子国を守っているし(実際は、仕事をサボって遊んでいるし、黒大猫に執着して追いかけまわしているストーカー)、女神さまに許可を出されているのだが、村が何処にあるのかも探っても、見当たらないのだ。

 だから、その事で何度も女神さまに呼びかけているが、『忙しいので、観光をしているがいい。』とか、『他に急ぎの用があるので、後にしてくれ。』とか、素っ気ない返事しか来ないのだ。

 まぁ、外に出たのは500年振りだからと、しばらくは観光をしようと気を取り直した。くよくよ悩んでいても仕方がないのだし、何処かで黒大猫と遭遇出来る機会があるかもしれないと、この場所へ転移出来るように自身の魔力を込めた、そこら辺にあった小石を目印にする為に、土の中へ埋めたのだった。

 白輝は真っ黒い表紙の日記帳を出してペンで記入していく。

「7053年11月6日。晴れ。少し寒くなってきた、低めの気温。

 認識疎外は常に発動中。白光に聖獣の村の場所を聞いた。それらしき場所に着いたが、探しても気配すら分からない。黒大猫の情報はなし。黒大猫と偶然に遭遇するのに期待する。適当な小石に魔力を込め、転移の目印として土の中へ埋め込んだ。」

 日記帳を閉じて、インベントリ(異次元空間収納)へ日記帳とペンをを放り込んでから、何処へ行こうかと考えたのだった。

 ウサギの耳のラーン・ビットか、熊耳のガオン・ロードか、それとも、ワーオランドーラにするか、黒大猫のいない所の国、ナーオ・ロウへわざわざ行くのかを。

 そこで、ラーン・ビットの白銀大兎とガオン・ロードの黒銀熊とワーオランドーラの黒大狼と、ナーオ・ロウを思い浮かべた。

 黒大猫のいない場所へわざわざ行くのは、気に食わない。私を避けて逃げた黒大猫が自身の守護する国へ戻らなくなるだけだと。

 ワーオランドーラは、ナーオ・ロウの者が犬臭いと獅子国の暗躍で嫌うように仕向けた国だから、黒大猫が更に避けるような事態にはなりたくないので、入国すら却下するとして、どうしようか。

 ガオン・ロードのクマ野郎は、私が良い男だから、会うと必ず、「黒大猫を諦めろ」と私にからんでくるアホだから、第二候補にしておこう。

 残るは、ラーン・ビットのギンギラまぶしいデカい兎の所か。

 あそこなら、デカい兎に遠慮して、クマ野郎も手出ししてこない。クマ野郎も惚れた相手の国へ干渉して嫌われたくないと出て来ないだろうし。

 この場所は、獅子国とラーン・ビット国とガオン・ロード国の国境の森の奥深くだから、ラーン・ビット国へ行くのも楽か。

 白銀大兎には、聖獣が使う念話で話しかけた。

『おーい、久しぶりだなー。500年振りに外へ出たので、あそびにきたから。しばらく滞在する予定だよ。人型になっているから、観光したいんだ。それだけ。国に観光で来ているのに知らんぷりは出来ないからさ。』

『獅子の小僧か。久しいの。わらわは、一切、そなたへは関知しない。観光だけなら、滞在を許可しよう。小僧が揉め事や厄災を起こさない限りな。何かを起こしたら、わらわも、女神さまも容赦しないからの。』

『怖いなー。だから、派手派手ババアって陰で言われるんだよ。』

『獅子の小僧ほどではないがな。』

『言うねー。じゃあ、城下で良い宿を教えて欲しいな。』

『わらわの基準と、小僧の基準は違うし、趣味が合わないだろうから、観光案内所で聞け。』

 その後、何度も呼び掛けても、音沙汰がなくなったのだ。ババアだから仕方がないか。

 そこで、また日記帳を出してペンで記入していく。

「7053年11月6日。追加分。

 派手派手ババアの国へ行くからと念話したが、文句を言われただけだった。何度呼び掛けても音沙汰がない。」

 日記帳を閉じて、インベントリ(異次元空間収納)へ日記帳とペンをを放り込んだ。

 インベントリの中からサッパリする飲み物を出して、飲みながら歩き、途中の茶屋で休憩をしてから歩き、夜になったので野宿をして…を繰り返す事をして数日、ラーン・ビット国へ白光が用意した身分証で入国する事が出来たのだ。

 ナイス、白光!さすが、私の弟子だ。

 まずは、観光案内所で美味しいご飯が出ると評判の宿を紹介してもらって、その宿で1月分を前払いしてから、食事をして、何日か振りに普通の布団で眠ったのだった。

 温くて、良い。おやすみなさい。
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