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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

ミュン王妃様が王妃を辞めるまで

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 王太后様と女神さまに私の本音を話せたと安心して眠った翌日、王妃付きメイド達の叫び声で目が覚めました。

「誰かー!!誰か!」
「「「キャー!」」」

 余りの騒がしさで、寝ていられなかったのが本当なんですけれど。もぞもぞと起き出すと、

「ミュン!!」「王妃様!!」あ?!何でリンクス王にカッツェ宰相まで?!私を王と宰相、メイド達が覗き込んでいた。

「何しているのですか、あなた達!私の部屋には王と宰相を入れないでと言ってあったでしょう!」

「「「「申し訳ありません!」」」」

「分かればいいわ。では、この人達を追い出して。」
「王妃様!そのお姿はどうしたのですか?」

 またお説教?宰相は私へ文句を言いに来る筆頭で、五月蠅いから好きじゃないのよ。

 宰相の奥方様は「うちのは底が浅くて表面しか見ていないから、口うるさいでしょう?王妃様に、いつも生意気な口を聞いているのを知っています。本当に申し訳ありません。」と、謝罪をして下さった、私の数少ない理解者なのに。

 宰相殿もボケたの?そんな年齢だったかしら?顎に手をついて考えていた。あら?何か違和感があるわ?!

 「手が小さい?!」なんで???

 メイドの1人が何も言わずに、私へ手鏡を手渡してきた。鏡にうつる自分を見て、手鏡を手から落としてしまう程、驚いた。

「えええええ!!!!」

 …メイド達は私を起こしに来て、見知らぬ少女が王妃の寝台にいたので叫んだと、王と宰相にもその連絡が行って、駆けつけて来たんだわと、この状態を理解した、けど、何で13才位の私に戻っているの?成人前の姿よ?!

「王妃様、医師と治癒魔法使いが診察をしたいと申し出ています。」
「お願いすると伝えてちょうだい。王と宰相は診察を見る気じゃないでしょうね?!出て行って下さいません?」

 王と宰相が出ていくのと入れ替わりで、医師と治癒魔法使いが入って来た。私は診察を受け、医師の言葉を待っていた。

「王妃様、魔法が使えない術式を起動されたのにも関わらず、魔力をお使いになられた反動で、王妃様は小さくなられたのでございます。」と、医師が告げる。
「治癒魔法で元に戻すにも大分、時間が掛かります。」と、治癒魔法使いも言う。

「自然に戻るのを待つのが万全かと。」医師の告げる言葉に治癒魔法使いが頷く。

「それで、私はどの位で戻るのでしょう。」

 これ大事!王に夜這いでもされたら大変だし、そうすると、月のモノが来たかを確認するまで、離婚する予定が延びてしまうじゃない!

「元に戻るのは2、3ヵ月掛かるでしょう。」そう言う医師の診断結果を聞いた。

「同じく。この状態を治癒魔法で元に戻すと、魔力の不安定さも伴いよくありません。自己の魔力が回復していくのに任せた方が、身体の負担も魔力の不安定さも出ないで済むでしょう。」

 治癒魔法使いも医師と同じ見解のようだわ。

「公務は、無理でしょうか?」メイドがおずおずと聞いている。

「医師として、公務への参加も含む、王妃業務全般の停止を、ドクターストップをする必要があると進言致します。」
「治癒魔法使いとしてもダメ出しを致します。」

「そ、そんなぁ。」リンクス王と、「仕方ないです。調整致しましょう。」カッツェ宰相が聞き耳をたてていたのね。でも、私から告げる手間が省けたわ。

 声が聞こえたので見回すと、部屋の扉のすぐ内側に、王と宰相が立っていた。

「王妃様は何らかの事情で魔力を使えなくされたのでしょう、刺客に襲われた時、ご自分が死なない様にする為にと、無意識で魔力をギリギリまでお使いになったのでしょう。」

「ええ、医師殿の言う通りです。5日間でお目覚めになられたのは運が良かったのだと思います。本当にあと少しで、魔力枯渇で死んでしまうか、傷が酷過ぎて死んでしまうかのギリギリの中で、王妃様は生き残られたのです。」

 王城の王族しか起動出来ない術式を私に使ったせいで小さくなったと、医師と治癒魔法使いに言われたので、王と宰相が黙った。いい気味ね!

「ですので、病人の私がいる部屋に関係ない方は出て言って下さいます?」

 メイド達も何となく、私がどうして魔法が使えなくなったのかを知っているようで、王と宰相には塩対応で出ていってもらったようだ。

「女神さまから私達も王妃様付きだからと、夢を見せられました。」
「「「「他言無用の誓約を王太子様としておりますので、ご安心を。」」」」

「私達5人、王妃様の、いいえ、ミュン様の味方です。王妃でなくなっても仲良くして頂けると嬉しいです。」

「私達の夫や婚約者は、皆、騎士なのですわ。だから、バル様との縁を手伝うようにと皇太后様からも命を受けておりますの。」

「まぁ、嬉しい。私、友人がいなかったから、そう言ってもらえるのが嬉しいわ。」

「泣かないで下さいませ。」
「ミュン様ー。」
「これからは王や宰相も出来るだけ追い払いますので。」

「ほら!あなた達、ミュン様が困っていらっしゃるわ!着替えと朝食の準備を致しましょう!はいっ!」

「メイド長のリルルがいなかったら、収まりがつかなかったわ、ありがとう。」

「ミュン様、私は総騎士団団長デッドリーの姉ですの。バル様の再婚相手で番だって言うミュン様を応援致しております。」

「職場結婚が多いのね。」
「いいえ。番や夫の近くにいたいから、メイドになる女性が多いのですわ。騎士の訓練風景を見る事が出来ますし、差し入れも、し易い環境ですもの。」

「リルルの夫は?」
「文官ですが、宰相室へ行けば会えますわ。ミュン様、朝食のご用意が出来ました。」

 朝食後も「まだ安静にしていて下さい。」とメイド達にも押し切られ、する事もなかった私は、昼寝をしてしまったわ。

「ミュン、魔力の枯渇で小さくなる話をし忘れた。すまん。」
「女神さま、また言い忘れですの?」

 前も言い忘れで、私が大変な目に遭ったのに、ですの…。

「おお、口調も戻った様でなにより。」
「私、どこかおかしかったのですか?」

「ああ、口調がな、10代の少女のような話し方であったぞ。」
「はーっ、口調だけでも元に戻って良かったわ。」

「小さくなったので、王からの夜伽を免れたな。夜這いも出来ない年齢に戻ったのは幸いであったな。」
「私、今、何才なんですか?」
「12才。1ヵ月後には16才の女性の成人年齢に戻るから、それまでに城を出るがいい。」
「1ヵ月後ですのね。」
「王太后が宰相補佐と離婚の手続きをしておる。あと、2、3日後には成立するだろう。」

 私物は少ないから、ブレスレットに入れればいいわ。私専属で雇った者達はそのまま王城で雇ってもらえればいいし、私が王妃になった後は、王城から給金が出るようになっていたし、心配ないわよね。生活費は、王妃代理をしていた時の給金の残りがあるし、住む所があれば大丈夫な筈。

「住処はバルバドスの所の住み込み用部屋が空いておるから、すぐにでも移ればよい。」

「では、お茶会をすればお終いね。」
「王太后がお茶会の後に逃がしてくれるだろうて。」

 んー、これで王妃から逃げられるわ。
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