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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

獅子国では4

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 赤雪皇妃が勝手に獅子国から抜け出して、ナーオ・ロウで茶会をしている間に捕まった事は、皇帝である私にとっての僥倖ぎょうこうと言えた。

 あの赤雪の愛人も肉親を人質にしたら、暗殺者へ簡単に職替えして、訓練を行って送った。そのせいで取り調べを受けているだろうが、人質がいる限り、何も話さないだろう。くくくっ。

 愛人を何人も抱えていた赤雪、その愛人諸共もろとも処分出来たのだから、手間が省けたものだ。後は、私の新たな皇妃として亡きリュンでなく、気位の高いミュンを我が、手に入れればいい。

 そのミュンも、リンクスと離婚をして王城を出たとの連絡は入ったのだが、その後の行方が知れない。我を恋しく思うばかりに悪手に走っていなければいいが。

 ナーオ・ロウで言われているような、ミュンから我の元へ保護を頼む手紙なぞ届いてはおらんが、な。

 あのミュンの人生を白獅子様から見せてもらえたので、気に入ったのだ。我の名の様な炎の女が気に入ったのだ。リンクスはいつでも手に入れられた筈の最高の女を手離してしまったのだが、つくづく馬鹿な奴だ。

 後宮に残っている女はいない。もう十年以上、後宮には女が一人もいなかったのだが、貴族や赤雪などに事実を教えてやるつもりはなかった。

 皇帝としての見栄もあって、少しずつ後宮の女が減っているように見せかけていたのだが、赤雪を犯罪者として他国で処分されれば、我の面目も立つのだから。

 新たな皇妃を迎えても誰も疑問に思わないだろうて。

 それに、女神の仕打ちで不能になってすぐ、白獅子様のおかげで一人だけなら相手が出来る様に戻してもらえたのだ。それを秘密にしていたら、赤雪の奴が愛人を山のように作ったので、それで赤雪を見限った。

 赤雪の親であり、邪魔な宰相白角を排除しようと決めたのも、赤雪がキッカケだった。醜悪な所が似ているのに気付いたら、もう赤雪を心から愛せなくなった。
 だが、渋々、赤雪で性欲処理をしたが、我だけを見てくれる女が欲しくなって、ミュンを観察していたのだ。

 リンクスには冷たくあしらわれていても王妃を演じ、陰で王妃たる勉強をし、リンクスが王として支えられていた事にも気付かない様に影から支えていたのだ。その上、王に相手にされなくても愛人を作らなかった。

 赤雪のような愛人だらけの女よりも、ミュンのような、ただ一人と添い遂げる事を選ぶ女を手に入れたくなるのは男としては正常だろう。

 子が出来なくても良い。ミュンを手に入れるべく、まずは、邪魔な赤雪元皇妃が処刑されて、我が悲劇の皇帝だと、周辺国からの同情を集めなければならないな。

 ナーオ・ロウ国から、
『獅子国の赤雪皇妃は、我が国の王妃への殺害未遂、王太子妃の毒殺未遂、王と王太子の毒殺未遂の疑惑、
 長期間、我が国へ、国家で認められない毒物や危険な物と、王国民を害する人々を大量に流していた。
 獅子国はどうしてくれるんだ?
 皇妃だった頃からの犯罪なんだよ。責任取ってくれ。』と来ていた。

 獅子国としては、
『赤雪の受け取りは断固拒否する。常日頃、赤雪の醜悪さと奔放さに悩んでいた皇帝の離婚への決心は固い。
 近年、皇太子の成人も近くなってきた事もあり、何年も前から、神殿へ離縁をしたいと申請していた程。』と、
『皇妃だった者の処断はナーオ・ロウ国に任せるので、好きにして構わない。
 お詫びに、ナーオ・ロウ国で返還を希望していた国境くにざかいにあるデア・プロミシオンの森をナーオ・ロウ国のモノとして認める様、各国へ書状を出しておいた。』としたためた書状を返送しておいた。

 長年、ナーオ・ロウが所有を主張していて、各国からも批判が来ていて面倒だった、獅子国が実質支配下にしていた広大な森を返してやると言えば、批判も減るだろう。

 それに、皇妃だった赤雪の立場は、獅子国から勝手に移動してナーオ・ロウにいた一貴族令嬢となるだろう。赤雪をかばう様な者は、異界へ出した白虹と幽閉している白角だけだったのだから。そのどちらも我をさえぎる事も出来ない。

 あははははは!愉快だ!面倒なまつりごとは皇太子に押し付けられるようになったし、余生を好きな様に生きてやろう。我もまだ130才と若いのだから。わははははは!

 後は、好みな女を抱いて生きられれば良い。

 獅子国皇帝白炎は、自室の中で、自身の思考にまっていたが、それを眺めていた者が一人だけ、いた。

『やれやれ、えんはもう僕との約束を忘れてしまったのかな?
 仕方ない。まだ10にもならないチビ獅子だったからか。

 『僕の欲しいのは黒大猫だから、引きこもっている黒大猫を引っ張り出せたら、僕から炎へ、ご褒美を上げよう。』って言って約束したのになぁ。

 僕の大事な黒大猫は、気配を探ってもどこにもいない。一体、どこに隠れているんだろう?』

 そう呟いていた、大きくて白い獅子が人型へ変化すると、白髪で赤目の10代後半の美少年になっていた。

『自分で探すしかないのかな?面倒だけど、たまには旅をするのもいいかな。
 外へ出るのは500年振りだから、たまには外へ出るのも丁度いいか。

 弟子の白獅子、白光、後は任せたよ。お前ももう2,000才なんだから大丈夫だろう?留守番頼むね。』

『白輝様、お気をつけて。旅を楽しんで下さい。』
 
『行ってくるね。』

 白輝がひらひらと手を振って出ていくと、白光と呼ばれた白獅子が呟いた。

『おいらは、白銀大兎様の所の見習いちゃんが好みなんだけどな。
 白輝様はストーカー並みだから、気持ち悪くて嫌われているって、他の聖動物様達も皆、何百回も説明しているのにさ。全然、聞いちゃいないんだよね。

 女神さまから皆様へ、白輝様が旅に出たからって通達をしてもらわにゃ。

 女神さま~!聞いて下さいよぉ~!』
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