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日本編
祥太郎、色々考える
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その日は、買い物をして、一兄夫妻が来るまでに、申請書類を書いていた。
月曜日夜に加奈さんが来ると結衣子と約束していたので、2人が来た。部屋に入ってもらったが、ホテルの部屋に入って来たばかりの一兄夫妻が、突然、私達に向かって頭を下げたのだ。
「水曜日に帰るって聞いていたが、加奈も連れて行ってもらえないだろうか。お願いします。」
「私からもお願いします。」
どうしてなのか思い付いたが、ハッキリしておいた方がいいと思って、あえて聞いてみた。
「もしかして、一兄と加奈さんに子供が出来た?」
「ああ、今朝分かったんだ。」
「そうなの。ここの所、具合が良くなかったから休暇で休んでいたんだけど、昨日夜から吐き気が止まらなくて、ね、慌てた一が病院へ朝一番の診察を捻じ込んで、周りには怒られたけど、一に診察してもらったの。」
「そうなんだ、8週目なんだよ!!!本国へ加奈を先に帰してから、こっちでの片付けを2,3日中に終わらせて、私も急いで帰る事にしたんだ。」
「おめでとう、一兄に加奈さん。」
「一郎さんと加奈さん、おめでとうございます。」
一兄が、にやけながら話す。
「多分、2人か3人の多胎だと思う。」
「ますます、おめでたいじゃないですか。」
一兄の家系は、子供が他の人よりも生まれにくい系統で、双子か三つ子で産まれるのは非常に珍しいのだ。その証拠に、一兄は一人っ子なのだ。
だからだろう、一兄は本国で加奈さんを早く休ませてやりたいのだなと思った。
「だから、大事を取って、加奈を先に帰したいんだ。加奈を家でのんびりさせてやりたい。」
「陽に電話して手続きとか雑用をしてもらいますので、お茶でも飲んで待っていて下さい。」
「ああ、待ってる。」
一兄と加奈さんが結衣子とお茶を飲みながら話している間に、寝室へ移動してから陽へ電話した。
陽がなかなか電話に出なかったが、しつこく何度も電話しておいて陽からの折り返し電話を待っていたら、携帯電話が震えて「陽」と表示された。
「すまん、ちょっと帰国準備や週刊誌の対応で電話に出られなかった…。何かあった?」
「一兄と加奈さんが部屋に来ているんだが、加奈さんが多胎で妊娠したと今朝、判明したそうだ。ついては、水曜に一緒に帰還させたいと頼まれてしまった。
一兄も2,3日中に片付けて、本国へ早急に帰国するって言っている。
一兄帰国の手続きも今の業務と並行して行わなければならない。
その報告と、加奈さんの帰国手続きを迅速に追加して欲しい。」
「おめでたいけど、一兄の家での双子以上の妊娠自体が珍しいな。
早急な帰国理由になる案件だ。加奈さんと祥と結衣子さんの帰国が一緒になるように頑張るわ。
同時に、一兄の早急の片付けの手配に、早々に帰国しそうだから、そっちも手配する。」
「で、婚約者へ送る指輪は準備出来たか?」
「2組の番から話を聞けたんで、準備出来た。協力を感謝してる。」
「陽は、私達と一緒に一時帰国して、その足でプロポーズしに行くんだろ。スキンは買ったのか。」
「段ボールにギッシリ詰めたのを用意した。暴走してもいい様に、薬もあれこれ手配したよ。加奈さんの説教は祥と結衣子さんを見ていて、身に染みたからな。」
「止まれなかったからな。気付いたら、朝だった…。
一兄には「気持ちも身体もよーーーーく分かるが、結衣子さんの事も考えろ…。」って、肩を叩かれて言われたよ。」
「…一兄の言葉が経験から発せられた言葉だって分かるから、深くて重みがあるな…。」
「まったくだ。経験したからこそ、出る言葉だと思う。」
「明日は我が身か…。」
「じゃあ、頼む。」
「分かった、手配する。」
内容はともかく、しんみりしてしまった陽との電話を終わらせた。
寝室から出て、結衣子が何をしているかと見れば、加奈さんから常識や細々した知識を教えてもらっていた。それを微笑ましく見ている一兄。
「帰る時にはロングスカートが良いって聞きましたけど、持ってないんです。私は明日部屋から出れないんですよね、どうしましょう。」
「私が明日、買ってくるよ。要る物があったら、明日までに紙に書いておいて欲しい。」
「そうします。」
そんな私達の様子を見ていた一兄が、
「幸せそうだな。」
「これからも幸せになりますよ。」と、私が答えた。
「2人して話してないで、晩ご飯へ行きましょう。一、私、あっさりした物なら食べられそうなの。」
「あと食べたい物は?」
「んー、食べてみないと分かんない。」
加奈さんを甲斐甲斐しく世話する一兄を羨ましく思いながら、自分と結衣子で想像すると、顔がにやけてきた。幸せが増えるんだな…って思って。
晩ご飯では、加奈さんが米で出来たお粥なら食べられる事が分かって、一兄がレトルトのお粥各種を加奈さんに持たせる荷物とした事。
段ボール箱5箱に用意するぞ!!と私に嬉しそうに伝える一兄からの電話で話を聞いたのだった。
その後何時間かして、私達との食事後に寄ったコンビニでたまたま見掛けたミカン缶詰を買って帰ったら、これまた加奈さんの口に合って、ミカン缶詰を嬉々として食べていると、メールで報告された。
水曜朝の出発前までに一兄が24時間スーパーやコンビニを回って、ミカン缶詰を段ボールに嬉々として詰め込むであろう姿を想像してしまったが、気付かない振りをしようと決めたのだった。
月曜日夜に加奈さんが来ると結衣子と約束していたので、2人が来た。部屋に入ってもらったが、ホテルの部屋に入って来たばかりの一兄夫妻が、突然、私達に向かって頭を下げたのだ。
「水曜日に帰るって聞いていたが、加奈も連れて行ってもらえないだろうか。お願いします。」
「私からもお願いします。」
どうしてなのか思い付いたが、ハッキリしておいた方がいいと思って、あえて聞いてみた。
「もしかして、一兄と加奈さんに子供が出来た?」
「ああ、今朝分かったんだ。」
「そうなの。ここの所、具合が良くなかったから休暇で休んでいたんだけど、昨日夜から吐き気が止まらなくて、ね、慌てた一が病院へ朝一番の診察を捻じ込んで、周りには怒られたけど、一に診察してもらったの。」
「そうなんだ、8週目なんだよ!!!本国へ加奈を先に帰してから、こっちでの片付けを2,3日中に終わらせて、私も急いで帰る事にしたんだ。」
「おめでとう、一兄に加奈さん。」
「一郎さんと加奈さん、おめでとうございます。」
一兄が、にやけながら話す。
「多分、2人か3人の多胎だと思う。」
「ますます、おめでたいじゃないですか。」
一兄の家系は、子供が他の人よりも生まれにくい系統で、双子か三つ子で産まれるのは非常に珍しいのだ。その証拠に、一兄は一人っ子なのだ。
だからだろう、一兄は本国で加奈さんを早く休ませてやりたいのだなと思った。
「だから、大事を取って、加奈を先に帰したいんだ。加奈を家でのんびりさせてやりたい。」
「陽に電話して手続きとか雑用をしてもらいますので、お茶でも飲んで待っていて下さい。」
「ああ、待ってる。」
一兄と加奈さんが結衣子とお茶を飲みながら話している間に、寝室へ移動してから陽へ電話した。
陽がなかなか電話に出なかったが、しつこく何度も電話しておいて陽からの折り返し電話を待っていたら、携帯電話が震えて「陽」と表示された。
「すまん、ちょっと帰国準備や週刊誌の対応で電話に出られなかった…。何かあった?」
「一兄と加奈さんが部屋に来ているんだが、加奈さんが多胎で妊娠したと今朝、判明したそうだ。ついては、水曜に一緒に帰還させたいと頼まれてしまった。
一兄も2,3日中に片付けて、本国へ早急に帰国するって言っている。
一兄帰国の手続きも今の業務と並行して行わなければならない。
その報告と、加奈さんの帰国手続きを迅速に追加して欲しい。」
「おめでたいけど、一兄の家での双子以上の妊娠自体が珍しいな。
早急な帰国理由になる案件だ。加奈さんと祥と結衣子さんの帰国が一緒になるように頑張るわ。
同時に、一兄の早急の片付けの手配に、早々に帰国しそうだから、そっちも手配する。」
「で、婚約者へ送る指輪は準備出来たか?」
「2組の番から話を聞けたんで、準備出来た。協力を感謝してる。」
「陽は、私達と一緒に一時帰国して、その足でプロポーズしに行くんだろ。スキンは買ったのか。」
「段ボールにギッシリ詰めたのを用意した。暴走してもいい様に、薬もあれこれ手配したよ。加奈さんの説教は祥と結衣子さんを見ていて、身に染みたからな。」
「止まれなかったからな。気付いたら、朝だった…。
一兄には「気持ちも身体もよーーーーく分かるが、結衣子さんの事も考えろ…。」って、肩を叩かれて言われたよ。」
「…一兄の言葉が経験から発せられた言葉だって分かるから、深くて重みがあるな…。」
「まったくだ。経験したからこそ、出る言葉だと思う。」
「明日は我が身か…。」
「じゃあ、頼む。」
「分かった、手配する。」
内容はともかく、しんみりしてしまった陽との電話を終わらせた。
寝室から出て、結衣子が何をしているかと見れば、加奈さんから常識や細々した知識を教えてもらっていた。それを微笑ましく見ている一兄。
「帰る時にはロングスカートが良いって聞きましたけど、持ってないんです。私は明日部屋から出れないんですよね、どうしましょう。」
「私が明日、買ってくるよ。要る物があったら、明日までに紙に書いておいて欲しい。」
「そうします。」
そんな私達の様子を見ていた一兄が、
「幸せそうだな。」
「これからも幸せになりますよ。」と、私が答えた。
「2人して話してないで、晩ご飯へ行きましょう。一、私、あっさりした物なら食べられそうなの。」
「あと食べたい物は?」
「んー、食べてみないと分かんない。」
加奈さんを甲斐甲斐しく世話する一兄を羨ましく思いながら、自分と結衣子で想像すると、顔がにやけてきた。幸せが増えるんだな…って思って。
晩ご飯では、加奈さんが米で出来たお粥なら食べられる事が分かって、一兄がレトルトのお粥各種を加奈さんに持たせる荷物とした事。
段ボール箱5箱に用意するぞ!!と私に嬉しそうに伝える一兄からの電話で話を聞いたのだった。
その後何時間かして、私達との食事後に寄ったコンビニでたまたま見掛けたミカン缶詰を買って帰ったら、これまた加奈さんの口に合って、ミカン缶詰を嬉々として食べていると、メールで報告された。
水曜朝の出発前までに一兄が24時間スーパーやコンビニを回って、ミカン缶詰を段ボールに嬉々として詰め込むであろう姿を想像してしまったが、気付かない振りをしようと決めたのだった。
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