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高城真理愛の事情

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side 真理愛

私のママはお金持ちのお嬢様だった。
その上美人で、学生の頃からモテたらしい。

日光アレルギーがあるとかで、外に出ることはできるだけ避け必要に迫られたときは完全防備。
いくら小さな子供がいても、日差しの中へ出ることは一切しない人だった。
だから、私は母と外を歩いた記憶がない。
それどころか、小学生に上がった頃には家の買い物を任されるようになってしまっていた。

「お母さん、すごい美人だって評判だな」
敬さんの何気ない言葉。

そりゃあね、あれだけ色白で、いくら食べても太らない体質のおかげでスレンダー。二重の大きな目が印象的な美魔女。
それが高城小児科の奥様、高城友梨亜の世間での評価。

「まあ、恋人にするには最高な人かもね」
母親には最悪だけれど。

いつまでたっても少女のようで、年齢を感じさせないかわいらしい人。
儚げで、か弱くて、つい守ってあげたくなる存在。
男性にはそう見えるんだろうけれど、娘には違って見える。
何よりも自分が一番で、子供のためにとか、自分は後でいいからなんてことは一切ない人。
物心ついた時からママは私を友達のように扱った。


「ママ、おなかすいた」
まだ小さい私が言っても、
「あら、ママはおなかすいてないのよ」
それで終わり。

ママがカフェをやっていたから食べることに苦労はしなかったが、世話をしてもらった記憶はない。
だからかな、季節が変わるようにママの彼氏が変わっても私は気にすることもなくいつも冷静な目で見ていた。

「今度の休み、どこか旅行に行こうと思うんだけれど・・・」
「いいじゃない。行って来れば」
そう言って私は何度もママを送り出した。

私の覚えているだけでも、ママの彼氏は何人いただろうか?
見た目がよくて一見優しそうなお金持ちの男性がママの好み。
社長さんだったり、弁護士だったり、ホストだったり、本当に色んな人がいた。
ただ共通して言えるのは、関係が長く続くことはなかったってこと。

昨日まで仲良くしていたのにって思っていたら、いきなり大泣きして酔っぱらって大騒ぎ。数日間は部屋に閉じこもり出て来ないママをただ待つしかない私は「あぁあ、また別れたんだ」とすぐにわかった。

物心ついた時から、私はそうやって生きてきた。

「頑張ったんだな、真理愛」
頭の上から敬さんの声が降ってきた。

家の前の路上で、車の陰になっているとはいえ抱き合っている私たち。
もし人に見つかればどんな噂を立てられるかわかったものじゃない。
それがわかっていても、私は敬さんから離れることができなかった。
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