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温もり

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side 真理愛

どうぞと助手席をすすめられ、乗った敬さんの車は国産のスポーツカー。
「中古だよ」って言うけれど、綺麗に使っていて古さは感じない。
ただ、意外だな。
おじさんなんて遊び用と普段用で車を2台を使い分けていて、どちらも外車だもの。
お医者さんってみんないい車に乗っているんだと思っていた。

「なあ真理愛」
「はい」

思いのほか厳しい声で呼ばれ、振り返った。

「どうしたの?」

車に乗り込んだのになかなか発進しないのを不思議だなって思っていた。
なんだか機嫌が悪そうだし、私何かしたっけ?

「今朝、俺は『寄り道せずにまっすぐ帰れよ』って言ったよな?」
「うん」
私は「はぁい」って答えた。

「じゃあ何で、家に帰らなかった?」
「それは・・・」



マンションで別れた敬さんがなぜパパのアパートに現れたのかはわからない。
結果として敬さんに迷惑をかけることになったけれど、私が頼んだわけじゃないと言いたい気持ちもあって、ムッとした表情になる。

「危ないってわかっていて行くのはバカだぞ」
「それはそうだけど・・・」

私はただパパが心配だった。
まさか借金取りに出くわすとは思わずに様子が気になって見に行っただけ。

「それに足、今朝よりひどくなっているだろ?」
「ぅ、うん」

さすがお医者さんよく見ている。
気をつけていたつもりなのに、やはりバレていた。

「何やってるんだよ」

呆れたように言われ、なぜか腹が立った。

「別に好きでトラブルを起こしているわけじゃないわ。パパが心配で見に来ただけじゃない」
何がいけないのよの思いを込める。

「自分を大事にしろって言ってるの」
「そんなこと言われなくても」
「わかってないからだろ」

うっ。
言葉に詰まった。

敬さんの言う事は間違っていない。
危険なものからは自分で身を守らないといけない。でも、そうも言っていられない時だって実際あるわけで・・・

「もういい1人で帰ります」
この空気がいたたまれなくなり車を降りようとシートベルトに手をかけようとして、
「行かせるわけないだろ」
腕を取られ止められた。
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