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どこかが似ている
④
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人は皆損得ばかりを考えて生きているわけじゃない。
少しでも楽をしていい暮らしをしたいって気持ちは誰にでもあるけれど、それだけでもない。
たとえ苦しくても、意地を張りたいときはあるし。
遠回りとわかっていても、険しい道を選ぶこともある。
私のママは実家がお金持ちで、ママが再婚したおじさんもお金持ち。
どっちに頼ってもお金に不自由することはないようにも見える。
でも、わたしはできるだけ頼って生きたくない。
ママの実家は私の家ではないし、おじさんだって私のパパではないから。
「損な性格だよな。かわいくウンウンと頷いておけばもっと楽に生きられるのに」
「そうだね」
奨学金返済のために残しておいた数ヶ月分のお金を振り込もうとしてすでに全額返済されていると知った敬さんは、ショックを受けたもののおじさんい文句を言うことはできなかったそうだ。
だからこそ、悔しくて用意したお金をパッと使ってしまおう思ったらしい。
その気持ちは私にもわかる気がする。
「このお金、よかったら使ってくれないか?」
「ダメだよ」
それとこれとは話が違う。
話をしているうちに小腹が空いた私たちは、2人でカップラーメンを食べた。
「うーぅ、美味しい」
「オーバーだな。普通のラーメンだぞ」
小馬鹿にしたように敬さんが言うけれど、本当に美味しかった。
「家ではインスタント食品を嫌うママのせいでほとんど食べることができないから」
それに、1人でこっそり食べてもおいしくはないし。
「俺なんて高校時代は週7で食っていたぞ」
「週7って毎日じゃない」
ククク。
フフフ。
何がおかしいでもなく笑いあえる時間。
楽しいな。
幸せだな。
「どうする、泊って行く?それとも送ろうか?」
「うぅーん、泊ってもいい?」
「ああ。朝になったら送ってやる」
「うん」
ママには友達のうちに泊ると嘘の連絡をした。
不思議なことに、「友達って誰?」とも聞かれなかった。
それがママらしいと言えばそれまでだけれど、やはり普通の母親とはどこか違う。
おなかも満たされたところでシャワーを浴び、腕と顔にできた傷の消毒をしてもらい、捻挫した足に湿布をしてもらった。
さすがお医者さん、手際が良くてあっという間に包帯を巻かれていた。
「足を動かさない方がいいから、真理愛がベットを使うといいよ」
「えぇ、私はソファーでいいのに」
「ダメ、けが人だろ」
「じゃあ、敬さんもベットで寝ましょうよ」
深い意図があって言ったわけではない。
きっと明日も仕事で忙しいはずの敬さんに、少しでも体を休めてもらいた。
ただその思いだった。
「バカ、一緒になんか寝れるか」
顔を真っ赤にして怒る敬さんが、なぜかかわいい。
「いいじゃない。それとも襲いそう?」
「バ、バカ野郎。真理愛みたいな子供相手にそんな気になるかっ」
「ふーん、じゃあいいでしょ」
言い切った私に、モゴモゴと敬さんは黙り込んでしまった。
結局、寝室の狭いシングルベットで二人背中を合わせて眠ることになった。
少しでも楽をしていい暮らしをしたいって気持ちは誰にでもあるけれど、それだけでもない。
たとえ苦しくても、意地を張りたいときはあるし。
遠回りとわかっていても、険しい道を選ぶこともある。
私のママは実家がお金持ちで、ママが再婚したおじさんもお金持ち。
どっちに頼ってもお金に不自由することはないようにも見える。
でも、わたしはできるだけ頼って生きたくない。
ママの実家は私の家ではないし、おじさんだって私のパパではないから。
「損な性格だよな。かわいくウンウンと頷いておけばもっと楽に生きられるのに」
「そうだね」
奨学金返済のために残しておいた数ヶ月分のお金を振り込もうとしてすでに全額返済されていると知った敬さんは、ショックを受けたもののおじさんい文句を言うことはできなかったそうだ。
だからこそ、悔しくて用意したお金をパッと使ってしまおう思ったらしい。
その気持ちは私にもわかる気がする。
「このお金、よかったら使ってくれないか?」
「ダメだよ」
それとこれとは話が違う。
話をしているうちに小腹が空いた私たちは、2人でカップラーメンを食べた。
「うーぅ、美味しい」
「オーバーだな。普通のラーメンだぞ」
小馬鹿にしたように敬さんが言うけれど、本当に美味しかった。
「家ではインスタント食品を嫌うママのせいでほとんど食べることができないから」
それに、1人でこっそり食べてもおいしくはないし。
「俺なんて高校時代は週7で食っていたぞ」
「週7って毎日じゃない」
ククク。
フフフ。
何がおかしいでもなく笑いあえる時間。
楽しいな。
幸せだな。
「どうする、泊って行く?それとも送ろうか?」
「うぅーん、泊ってもいい?」
「ああ。朝になったら送ってやる」
「うん」
ママには友達のうちに泊ると嘘の連絡をした。
不思議なことに、「友達って誰?」とも聞かれなかった。
それがママらしいと言えばそれまでだけれど、やはり普通の母親とはどこか違う。
おなかも満たされたところでシャワーを浴び、腕と顔にできた傷の消毒をしてもらい、捻挫した足に湿布をしてもらった。
さすがお医者さん、手際が良くてあっという間に包帯を巻かれていた。
「足を動かさない方がいいから、真理愛がベットを使うといいよ」
「えぇ、私はソファーでいいのに」
「ダメ、けが人だろ」
「じゃあ、敬さんもベットで寝ましょうよ」
深い意図があって言ったわけではない。
きっと明日も仕事で忙しいはずの敬さんに、少しでも体を休めてもらいた。
ただその思いだった。
「バカ、一緒になんか寝れるか」
顔を真っ赤にして怒る敬さんが、なぜかかわいい。
「いいじゃない。それとも襲いそう?」
「バ、バカ野郎。真理愛みたいな子供相手にそんな気になるかっ」
「ふーん、じゃあいいでしょ」
言い切った私に、モゴモゴと敬さんは黙り込んでしまった。
結局、寝室の狭いシングルベットで二人背中を合わせて眠ることになった。
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