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偶然の出会い

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大通りまで出てタクシーを拾い、私は自宅に向かった。
正直、このまま家に帰ってしまおうと思っていた。
でも、このままじゃパパは納得しないだろうな。

「あのぉ、この通りをまっすぐに行ってください。市立病院の救急外来へお願いします」

家に着く直前で気が変わった。
パパから握らされた五千円札を見つめながら病院へ向かう決心をした。

さっきパパのアパートで見たおじさんたちはきっと借金の取り立てだと思う。
パパがお金に苦労しているのは知っていたし、じゃなければ娘の私にお金を貸してほしいなんて言うはずないのもわかっている。
だから、パパにとってこの五千円は大切なお金のはず。それを私に渡して病院へ行けと言ってくれた気持ちを考えると、このまま家に帰る気にはならなかった。



「はーあ、せめて受診したかったなあ」
誰に言うともなく、つい愚痴が出た。

あのまま救急外来を受診してママを呼ばれるのは困るけれど、パパの気持ちを無にしたようで後味が悪い。
そうは言っても、高校生の私にはどうすることもできなくて、

ブブブ ブブブ。
携帯の着信。

あれ、パパからだ。

「もしもし」
きっとケガを心配したパパがかけてきたんだろうと思って、電話に出た。
しかし、
「お嬢ちゃん?」

え?
一瞬息が止まりそうになった。

聞こえてきたのは昼間に会った強面なおじさんの声。
驚いてもう一度携帯を確認するけれど、発信元はやはりパパ。
ということは・・・

「お嬢ちゃん、聞いてるか?」
もう一度呼びかけられれば、
「はぃ」
返事をするしかない。

マズイな。
パパの電話からかかってきたってことは、パパの携帯を手中にしているってこと。パパが自分から渡すとは思えないから、窮地に立たされてるるってことだと思う。

「悪いけれど、君が用意した20万では足りないんだ。あと30万お願いできないかなあ」
「そんなあ」
30万なんて私に用意できるはずがない。

「そのお金がないとパパが困ったことになるんだよ」
「でも・・・」

「無理にとは言わない。ダメならパパに働いてもらうから。ただ、もう一度検討してみてくれ。明日の昼間にもう一度連絡するから、じゃあ」
私の返事など待つことなく電話は切れてしまった。

はあぁー、困った。
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