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4章『転生終焉』
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ざわり、と森がざわめく。
沢山の気配が人類を監視する。
薄らと目を醒ました柚は、自身の身体が木に固定されている事に気が付いた。太い縄で腕ごと幾重にも巻かれている為、脱出は叶わない。
「気が付いたようですわね」
「ここは…」
ふ、とアリーの言葉を思い出した。
『魔物』
嫌な予感が、した。
異常な程の視線。
何処からか感じる生臭い臭い。
彼等は気付いていないのだろうか。それとも――…
「貴女がタマキ様に媚びなければ…!タマキ様を誑かしやがって!!雌豚!!」
「っ…!」
メロードが剣の柄で柚の頬を殴る。どろり、と口元から血が滴った。
息を荒くしたメロードは醜悪だった。嫉妬、憎悪、妬み、僻み、嫉み。沢山の感情がメロードを支配している。
「この!この!!死ね!」
ガンガン、と柄で何度も柚の後頭部を殴る。いくら女性とはいえ、痛みは相当のものだった。
「この私に恥かかせやがって!!豚がタマキ様に腰振ってんじゃねーよ!!」
「まぁまぁ、メロード嬢。そこまでにしなって。死んじゃうよ?」
一人の男――先程、柚を拘束していた男がメロードの暴動を押さえつける。だが、男は柚を助けたい訳では無かった。柚に向ける視線で分かる。男は柚を犯したいのだ。
「ほら、メロード嬢に汚れ仕事は似合わないって。そこに座ってみてな」
「はぁはぁ…。えぇ、任せるわ」
柚を殴っていた凶器を捨て、腰を掛けるのには丁度良い切り株に座る。ジッと柚から目を離さずに。
先程まで、憎悪で歪んでいた瞳が愉悦に染まる。
「へへっ、本当極上な身体だなぁ?俺のコレが早くぶち込みたくて疼いてやがる」
「ゃ…やだ…!」
ズボンの上からでも分かる程に主張したモノを柚の頬に擦り付ける。顔を背けるも、男の腰は執拗に柚を追い回し、まるでマーキングのように腰を振りたくった。
「その表情たまんねーなぁ…」
「やだ!止めて…!」
助けて。
助けて、お兄ちゃん。
とうとう柚の瞳から涙が溢れた。その柚の表情に男は唾液を嚥下しながら自身のズボンを下げた。
「口開けな」
「んんん!」
「殴られたいのか?」
「んんん!」
「口を開けろ!!」
「何してるの?」
「うるせぇ!邪魔するな!…あ?」
柚を襲っていた男が間抜けな声を上げながら思い切り吹き飛ぶ。いきなりの状況にメロードと残りの男達が驚きで言葉を失っている。
けれど、柚には届いた。――タマキの声が。
「お兄ちゃん…!」
「ゆず…ごめんね、遅くなって。アリーは無事だから安心して」
「タ、タマキ様、な、何故…」
上から降りてきたタマキに腰を抜かしたようで、メロードはガクガクと震えている。
「お久しぶりですね、メロード嬢。一体コレはどういう事ですか?」
「こっ!これは!私はこの男達におっ脅されて!!怖かったですわ!」
「そうなんですね。ではこの男達を片付けましょう」
笑みを浮かべたまま、タマキは男達へと手を伸ばす。
「メロード嬢、それは無いでしょー」
「良いんじゃね?こいつ殺してメロード嬢もヤっちまいましょうか」
男達は下卑た笑みを浮かべたままジリジリとタマキの方へと近付いてくる。
タマキ一人に対して相手は三人。メロードはこっそりと笑みを浮かべる。男達には万が一の事を伝えてある。
万が一、タマキが来たらメロードは男達に騙された振りをすると。優しいタマキは男達に仕掛ける筈だから大人数で痛めつけろ、と。
死ななければ、何をしても良い。ただし顔には傷を付けるな。
それがメロードと男達の誓約だった。
堪らない。あのタマキを足下に置けるだなんて。考えるだけでメロードの背中がゾクゾクした。
「お兄ちゃん…!」
「大丈夫」
安心して、と振り向いたタマキの瞳は濃い灰色で濁っていた。
「随分余裕だなぁ?」
「君達こそ。ここがどこかわかっているのかな」
「あ?知らねーよ」
「そっか――行け」
低く、タマキが唸ると同時に暗闇から飛び出した漆黒の異形。その異形は男達に襲い掛かり牙を剥いている。
ぐじゃり。
ぐちゃり。
「ぎゃああああああぁあああ!!」
「ここはダアンド山。ねぇ、メロード嬢。君は知らない筈、無いよね?」
劈く男の悲鳴。
肉を喰らう音。
非現実的な出来事に、メロードのドレスがじわり、と濡れた。
「何、ここにゆずを連れてきて何をするつもりだった?そもそも男達に何をさせるつもりだったのかなぁ」
「ひ、ひぃっ…!!」
「ひぃじゃないよ、ほら、ちゃんと見て。君のせいであの男達は魔物に喰われてるんだよ」
男達の断末魔。
血だらけの手がメロードに伸びる。片眼を失った瞳が憤怒の色に染まりながらメロードを睨み付ける。
「あぁぁああ!お前のっお前のせいだぁぁぁぁああ!」
「わっ私のせいじゃありませんわ!」
メロードは両手で耳を塞ごうとするも、タマキによって両手を掴まれ、彼等の最期から逃げることが出来なかった。
ざわり、と森がざわめく。
沢山の気配が人類を監視する。
薄らと目を醒ました柚は、自身の身体が木に固定されている事に気が付いた。太い縄で腕ごと幾重にも巻かれている為、脱出は叶わない。
「気が付いたようですわね」
「ここは…」
ふ、とアリーの言葉を思い出した。
『魔物』
嫌な予感が、した。
異常な程の視線。
何処からか感じる生臭い臭い。
彼等は気付いていないのだろうか。それとも――…
「貴女がタマキ様に媚びなければ…!タマキ様を誑かしやがって!!雌豚!!」
「っ…!」
メロードが剣の柄で柚の頬を殴る。どろり、と口元から血が滴った。
息を荒くしたメロードは醜悪だった。嫉妬、憎悪、妬み、僻み、嫉み。沢山の感情がメロードを支配している。
「この!この!!死ね!」
ガンガン、と柄で何度も柚の後頭部を殴る。いくら女性とはいえ、痛みは相当のものだった。
「この私に恥かかせやがって!!豚がタマキ様に腰振ってんじゃねーよ!!」
「まぁまぁ、メロード嬢。そこまでにしなって。死んじゃうよ?」
一人の男――先程、柚を拘束していた男がメロードの暴動を押さえつける。だが、男は柚を助けたい訳では無かった。柚に向ける視線で分かる。男は柚を犯したいのだ。
「ほら、メロード嬢に汚れ仕事は似合わないって。そこに座ってみてな」
「はぁはぁ…。えぇ、任せるわ」
柚を殴っていた凶器を捨て、腰を掛けるのには丁度良い切り株に座る。ジッと柚から目を離さずに。
先程まで、憎悪で歪んでいた瞳が愉悦に染まる。
「へへっ、本当極上な身体だなぁ?俺のコレが早くぶち込みたくて疼いてやがる」
「ゃ…やだ…!」
ズボンの上からでも分かる程に主張したモノを柚の頬に擦り付ける。顔を背けるも、男の腰は執拗に柚を追い回し、まるでマーキングのように腰を振りたくった。
「その表情たまんねーなぁ…」
「やだ!止めて…!」
助けて。
助けて、お兄ちゃん。
とうとう柚の瞳から涙が溢れた。その柚の表情に男は唾液を嚥下しながら自身のズボンを下げた。
「口開けな」
「んんん!」
「殴られたいのか?」
「んんん!」
「口を開けろ!!」
「何してるの?」
「うるせぇ!邪魔するな!…あ?」
柚を襲っていた男が間抜けな声を上げながら思い切り吹き飛ぶ。いきなりの状況にメロードと残りの男達が驚きで言葉を失っている。
けれど、柚には届いた。――タマキの声が。
「お兄ちゃん…!」
「ゆず…ごめんね、遅くなって。アリーは無事だから安心して」
「タ、タマキ様、な、何故…」
上から降りてきたタマキに腰を抜かしたようで、メロードはガクガクと震えている。
「お久しぶりですね、メロード嬢。一体コレはどういう事ですか?」
「こっ!これは!私はこの男達におっ脅されて!!怖かったですわ!」
「そうなんですね。ではこの男達を片付けましょう」
笑みを浮かべたまま、タマキは男達へと手を伸ばす。
「メロード嬢、それは無いでしょー」
「良いんじゃね?こいつ殺してメロード嬢もヤっちまいましょうか」
男達は下卑た笑みを浮かべたままジリジリとタマキの方へと近付いてくる。
タマキ一人に対して相手は三人。メロードはこっそりと笑みを浮かべる。男達には万が一の事を伝えてある。
万が一、タマキが来たらメロードは男達に騙された振りをすると。優しいタマキは男達に仕掛ける筈だから大人数で痛めつけろ、と。
死ななければ、何をしても良い。ただし顔には傷を付けるな。
それがメロードと男達の誓約だった。
堪らない。あのタマキを足下に置けるだなんて。考えるだけでメロードの背中がゾクゾクした。
「お兄ちゃん…!」
「大丈夫」
安心して、と振り向いたタマキの瞳は濃い灰色で濁っていた。
「随分余裕だなぁ?」
「君達こそ。ここがどこかわかっているのかな」
「あ?知らねーよ」
「そっか――行け」
低く、タマキが唸ると同時に暗闇から飛び出した漆黒の異形。その異形は男達に襲い掛かり牙を剥いている。
ぐじゃり。
ぐちゃり。
「ぎゃああああああぁあああ!!」
「ここはダアンド山。ねぇ、メロード嬢。君は知らない筈、無いよね?」
劈く男の悲鳴。
肉を喰らう音。
非現実的な出来事に、メロードのドレスがじわり、と濡れた。
「何、ここにゆずを連れてきて何をするつもりだった?そもそも男達に何をさせるつもりだったのかなぁ」
「ひ、ひぃっ…!!」
「ひぃじゃないよ、ほら、ちゃんと見て。君のせいであの男達は魔物に喰われてるんだよ」
男達の断末魔。
血だらけの手がメロードに伸びる。片眼を失った瞳が憤怒の色に染まりながらメロードを睨み付ける。
「あぁぁああ!お前のっお前のせいだぁぁぁぁああ!」
「わっ私のせいじゃありませんわ!」
メロードは両手で耳を塞ごうとするも、タマキによって両手を掴まれ、彼等の最期から逃げることが出来なかった。
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