40 / 52
4章『転生終焉』
01
しおりを挟む
01
「今日はお兄ちゃん街に出かけているんですね」
「はい。タマキ様は定期的に街の偵察に行きます。とても民から慕われているのですよ」
アリーからタマキの武勇伝をいくつか聞かされ、柚の瞳はキラキラと光る。この世界でもタマキは柚にとって自慢の兄だったのだ。
にまにまと笑みを浮かべる柚に、アリーの気持ちが穏やかになるのを感じた。
「そういえば…ユズ様は魔物の存在をご存じですか?」
「魔物、ですか…?」
ゲームや漫画の中の魔物は知っているが、同一の存在なのだろうか。
「昔、この世界は私達人類と、魔物が争っていたと言われています」
「へぇ…」
「魔族は人類にとって脅威的な存在でした。人を、動物を襲い、魔物が持つ魔力で草木を枯らしました」
「魔力?」
「私も詳しくは知りませんが、火や氷を自在に使ったり、人の動きを止めたりするみたいです」
まるでゲームの世界だ、と柚は思ったが口には出さずに相槌を打った。
「ですが、人類には知能があります。彼等は兵器を使いました。今は使用禁止になっていますが、大砲や銃等の兵器はその時に造られたと言われています。
人類はその兵器で魔物を倒していき、無事に世界は平和になりました」
「………」
「ですが、魔物は全滅した訳ではありませんでした。今でも各地に散らばっています」
「え!?」
アリーの言葉に柚は大きく目を見開く。柚の中ではアリーの話は物語として聞いていた。そんな恐ろしい存在が今のこの世界に居ると思うと背筋がぞっとする。
「安心してください。魔物が棲む土地は入れないようになっています。魔物もこちらから手を出さない限り土地から出てくる事はないです」
「そう、なんだ…」
アリーの言葉に安堵しながら、柚の心臓が大きく跳ねるのを感じた。
どくん、どくん、と脈打つ。まるで全身が心臓になったような、感覚だった。
『――せ』
誰かが囁く。
『――ろせ』
柚の精神に直接語りかける、その声は――
「ユズ様!」
「…え!?」
アリーに肩を揺すられながら、柚の意識がは、と醒めた。
「顔色が悪いですね…横になりますか?」
心配そうに柚の顔を覗くアリーに曖昧な笑みを浮かべながら首を横に振った。
「ごめんなさい…ちょっとお話に驚いて…」
「いえ、私もいきなりこんな話をして申し訳ございません。今飲み物をお持ち致しますね」
アリーが悪い事なんて何もない。謝る必要なんて無かったのだが、言葉に出来なかった。
――ドアを開けたアリーの呻き声によって。
「グッ…!」
「アリーさん!?」
「お、お前は…イニシリア国のっ…」
柚がアリーの下へと駆け寄ろうと手を伸ばしたが、素早く部屋に侵入した男が柚の身体を拘束する。
大きな身体に抱きかかえられる感覚に嫌悪感を覚えながら、必死に藻掻いたが、暴れれば暴れる程、男の腕が柚の身体にめり込んでいった。
「アリーさん!アリーさん!!」
「ユ、ユズ様ッ…!ぅあ!!」
アリーの身体が吹き飛ぶ。一人の男がアリーの身体を蹴り上げたのだった。
「止めて!放して!触らないで!!」
「活きの良い子猫ちゃんだなぁ?メロード嬢、ヤっていいか?」
「!!!」
男の言葉に柚の動きが止まる。イニシリア。そう聞いた時に思い出すべきだった。イニシリアは――…
「ここでは止めてちょうだい。…久しぶりですわ、ユズ様」
「メ、メロード様…」
タマキの婚約者だったメロードが卑しい笑みを浮かべながら柚の目の前に立っていた。思わぬ存在に柚は言葉を失う。
「な…」
「何故?」
「きゃっ!」
メロードは憤怒の表情で柚の前髪を掴み、何度も揺さぶる。引きちぎられるような痛みに柚の目尻に涙が浮かぶ。だが、こんな人達のせいで涙を流したくなかった柚は唇を噛んで必死に耐えた。
メロードが柚に暴力を振るいながら、ふと柚の首筋に浮かぶ赤い痕が目に入り、更に柚の髪を掴む力が増した。
「この厭らしい身体でタマキ様を誑かしたのですね。厭らしい雌豚ですわ」
「……っ」
「男なら誰でも良いのでしょう?ほらっ!」
鋭いナイフが柚のドレスを裂くと同時に露わになった豊満な胸元に男達はピュウ、と口笛を吹く。
「まるで発情した豚のようですわ。…みっともない。貴方達。発情するのは早くてよ」
「へへっ、メロード嬢、早く生きましょう」
柚の身体を拘束する男が柚の胸を鷲掴みにしながら反応した下半身を柚の尻に押しつける。
「やだ!やめて!!」
「すっげぇ痕。余っ程お前の身体の具合が良いんだろうなぁ」
無数に散らばる痕を荒れた指でなぞりながら、柚の耳朶に舌を這わす。荒い息が、触れる箇所が気持ち悪かった。
男の腰がヘコヘコと柚の臀部を穢していく。互いに衣類を挟んでいる筈なのに生々しい感覚に吐き気を催す。
「メロード嬢、此方の女はどうしますか」
「好きにしなさい」
メロードは吐き捨てるように男に告げ、部屋から去る。他の男達もメロードに倣って部屋を出た――一人除いて。
「あんま夢中になって気付かれるなよ」
「へへっ、心配すんなって」
柚を拘束した男が嗤いながら言えば、男は息を荒くしながらアリーに馬乗りになっていた。
「止めて!アリーさんに触らないで!!アリーさん!アリー!!」
「うるせぇなぁ」
「グッ…!」
アリーに跨がる男が柚の腹に拳を沈めたと同時に、柚は息を詰まらせ意識を失った。
「今日はお兄ちゃん街に出かけているんですね」
「はい。タマキ様は定期的に街の偵察に行きます。とても民から慕われているのですよ」
アリーからタマキの武勇伝をいくつか聞かされ、柚の瞳はキラキラと光る。この世界でもタマキは柚にとって自慢の兄だったのだ。
にまにまと笑みを浮かべる柚に、アリーの気持ちが穏やかになるのを感じた。
「そういえば…ユズ様は魔物の存在をご存じですか?」
「魔物、ですか…?」
ゲームや漫画の中の魔物は知っているが、同一の存在なのだろうか。
「昔、この世界は私達人類と、魔物が争っていたと言われています」
「へぇ…」
「魔族は人類にとって脅威的な存在でした。人を、動物を襲い、魔物が持つ魔力で草木を枯らしました」
「魔力?」
「私も詳しくは知りませんが、火や氷を自在に使ったり、人の動きを止めたりするみたいです」
まるでゲームの世界だ、と柚は思ったが口には出さずに相槌を打った。
「ですが、人類には知能があります。彼等は兵器を使いました。今は使用禁止になっていますが、大砲や銃等の兵器はその時に造られたと言われています。
人類はその兵器で魔物を倒していき、無事に世界は平和になりました」
「………」
「ですが、魔物は全滅した訳ではありませんでした。今でも各地に散らばっています」
「え!?」
アリーの言葉に柚は大きく目を見開く。柚の中ではアリーの話は物語として聞いていた。そんな恐ろしい存在が今のこの世界に居ると思うと背筋がぞっとする。
「安心してください。魔物が棲む土地は入れないようになっています。魔物もこちらから手を出さない限り土地から出てくる事はないです」
「そう、なんだ…」
アリーの言葉に安堵しながら、柚の心臓が大きく跳ねるのを感じた。
どくん、どくん、と脈打つ。まるで全身が心臓になったような、感覚だった。
『――せ』
誰かが囁く。
『――ろせ』
柚の精神に直接語りかける、その声は――
「ユズ様!」
「…え!?」
アリーに肩を揺すられながら、柚の意識がは、と醒めた。
「顔色が悪いですね…横になりますか?」
心配そうに柚の顔を覗くアリーに曖昧な笑みを浮かべながら首を横に振った。
「ごめんなさい…ちょっとお話に驚いて…」
「いえ、私もいきなりこんな話をして申し訳ございません。今飲み物をお持ち致しますね」
アリーが悪い事なんて何もない。謝る必要なんて無かったのだが、言葉に出来なかった。
――ドアを開けたアリーの呻き声によって。
「グッ…!」
「アリーさん!?」
「お、お前は…イニシリア国のっ…」
柚がアリーの下へと駆け寄ろうと手を伸ばしたが、素早く部屋に侵入した男が柚の身体を拘束する。
大きな身体に抱きかかえられる感覚に嫌悪感を覚えながら、必死に藻掻いたが、暴れれば暴れる程、男の腕が柚の身体にめり込んでいった。
「アリーさん!アリーさん!!」
「ユ、ユズ様ッ…!ぅあ!!」
アリーの身体が吹き飛ぶ。一人の男がアリーの身体を蹴り上げたのだった。
「止めて!放して!触らないで!!」
「活きの良い子猫ちゃんだなぁ?メロード嬢、ヤっていいか?」
「!!!」
男の言葉に柚の動きが止まる。イニシリア。そう聞いた時に思い出すべきだった。イニシリアは――…
「ここでは止めてちょうだい。…久しぶりですわ、ユズ様」
「メ、メロード様…」
タマキの婚約者だったメロードが卑しい笑みを浮かべながら柚の目の前に立っていた。思わぬ存在に柚は言葉を失う。
「な…」
「何故?」
「きゃっ!」
メロードは憤怒の表情で柚の前髪を掴み、何度も揺さぶる。引きちぎられるような痛みに柚の目尻に涙が浮かぶ。だが、こんな人達のせいで涙を流したくなかった柚は唇を噛んで必死に耐えた。
メロードが柚に暴力を振るいながら、ふと柚の首筋に浮かぶ赤い痕が目に入り、更に柚の髪を掴む力が増した。
「この厭らしい身体でタマキ様を誑かしたのですね。厭らしい雌豚ですわ」
「……っ」
「男なら誰でも良いのでしょう?ほらっ!」
鋭いナイフが柚のドレスを裂くと同時に露わになった豊満な胸元に男達はピュウ、と口笛を吹く。
「まるで発情した豚のようですわ。…みっともない。貴方達。発情するのは早くてよ」
「へへっ、メロード嬢、早く生きましょう」
柚の身体を拘束する男が柚の胸を鷲掴みにしながら反応した下半身を柚の尻に押しつける。
「やだ!やめて!!」
「すっげぇ痕。余っ程お前の身体の具合が良いんだろうなぁ」
無数に散らばる痕を荒れた指でなぞりながら、柚の耳朶に舌を這わす。荒い息が、触れる箇所が気持ち悪かった。
男の腰がヘコヘコと柚の臀部を穢していく。互いに衣類を挟んでいる筈なのに生々しい感覚に吐き気を催す。
「メロード嬢、此方の女はどうしますか」
「好きにしなさい」
メロードは吐き捨てるように男に告げ、部屋から去る。他の男達もメロードに倣って部屋を出た――一人除いて。
「あんま夢中になって気付かれるなよ」
「へへっ、心配すんなって」
柚を拘束した男が嗤いながら言えば、男は息を荒くしながらアリーに馬乗りになっていた。
「止めて!アリーさんに触らないで!!アリーさん!アリー!!」
「うるせぇなぁ」
「グッ…!」
アリーに跨がる男が柚の腹に拳を沈めたと同時に、柚は息を詰まらせ意識を失った。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
(R18)灰かぶり姫の公爵夫人の華麗なる変身
青空一夏
恋愛
Hotランキング16位までいった作品です。
レイラは灰色の髪と目の痩せぎすな背ばかり高い少女だった。
13歳になった日に、レイモンド公爵から突然、プロポーズされた。
その理由は奇妙なものだった。
幼い頃に飼っていたシャム猫に似ているから‥‥
レイラは社交界でもばかにされ、不釣り合いだと噂された。
せめて、旦那様に人間としてみてほしい!
レイラは隣国にある寄宿舎付きの貴族学校に留学し、洗練された淑女を目指すのだった。
☆マーク性描写あり、苦手な方はとばしてくださいませ。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
トリスタン
下菊みこと
恋愛
やべぇお話、ガチの閲覧注意。登場人物やべぇの揃ってます。なんでも許してくださる方だけどうぞ…。
彼は妻に別れを告げる決意をする。愛する人のお腹に、新しい命が宿っているから。一方妻は覚悟を決める。愛する我が子を取り戻す覚悟を。
小説家になろう様でも投稿しています。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
女性執事は公爵に一夜の思い出を希う
石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。
けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。
それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。
本編4話、結婚式編10話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる