【完結】転生愚話

よるは ねる(準備中2月中に復活予定)

文字の大きさ
上 下
35 / 52
3章『転生紛擾』

10

しおりを挟む
10

灯り一つ無い、真っ暗な空間にタマキは立っていた。そこはサーベル伯爵が断罪された亜空間――無の間だった。
奥から、厭、直ぐ傍かも知れない。人間の叫声と、獣の荒い息、そして肉を喰らう音がタマキの鼓膜を震わせた。

「…久しぶり、サーベル伯爵」
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
「どう、永久に肉を喰われる感覚は」
「あぁああ」

言葉を成さないサーベル伯爵は濁った眼球をぐるり、と動かし下卑た笑みを浮かべたままケルベロスに喰われている。

「気に入ってくれたんだね、良かった」

太陽のような汚れ一つ無い笑みを浮かべながらタマキはサーベルに近付き、首筋へと歯を埋めた。

ぐじゃり、という音がタマキの中で響き渡ると同時に口の中で広がる血の臭い。
肉を裂き、骨を砕く。鋭い歯は何度もサーベルの肉を抉った。

「ぎゃぁぁああっ!あががが」
「煩いなぁ、耳元で叫ばないでよ」

肉付きの薄い肩は余程痛かったのだろうか。今までにない程の咆哮を上げたサーベルは泡を噴いたまま失神していた。だが、次々に襲いかかる再生と消失の痛みにより、意識を取り戻した。

「何度喰べても不味いなぁ…」

ぐぅ、と込み上げてくる吐き気を無理矢理捻じ伏せ、消化を促せばタマキの中に眠る魔の力がそれ等を呑み込んでいく。

「本当、嫌いだよ。此処も、この力も」

けれどこの力が無ければ、柚を助けられない事も分かっている。

――力を奪われたタマキは何度も願った。願って、怨んだ。殺したい程の憎悪が輪廻を繰り返す度に増していった。
無力な自身を、嘲笑う神を。

何度繰り返しただろうか。何度絶望を味わっただろうか。闇に、呑まれていく。じわり、じわり、と。
そうして何かがタマキの耳元で囁いた。

『神とは何だ』

タマキは言った。
――殺すべき相手だ、と。

『己を犠牲にしてでも殺したいのか』

――ゆずが幸せになるなら構わない。

『何故』

――愛しているから。

『ならば我の力を与えよう。お前の生命と引き換えに』
『肉を喰らえ、血を啜れ。我の力は強大になる』
『お前の精神は崩壊していくが、な』

――それでも、良い。ゆずを幸せに出来るなら。

『お前の願いが叶う頃にお前の生命は、消滅する』
『過去から、未来からお前という存在は消える』
『それでも、良いのか』

――構わない。

『ならば力を授けよう』
『そして膨大な力を得て、我の処へと戻ってくるのだ』

実態の無いモノがタマキの中へと入っていく。そして、融合した。大地、人を、動物を喰らい、何も無くなった空間――無の間にタマキは佇んでいた。

「――…これで、ゆずをたすけられるんだ」

自身の声が二重に聞こえる。自身の声のようで、違う、声だった。


肉を喰らう。
血を啜る。
何度も、何度も。けれども、君を助けられなかった。だから、何度も繰り返した。力を使った。
そして、神が創った世界を塗り替える事が、出来た。これでやっと君を幸せにする事が、出来る。

忌み子、として産み堕とした。神に愛されし力を塗り替える為に。

神は世界を創る事は出来ても干渉は出来ない。
神界から指を咥えて見ていたら良い。

「ゆず…」

愛しい。
愛しい。
唯一の、君。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...