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「ア、アラン様…?」

すすり泣くアラン様をメイドがなだめる。

「僕は、っ、マナ様が、明日驚いて、悲しむ顔が見たくなくて、早く伝えようと、お帰りを待って、夜、遅くまで起きてました。でも、僕、のほうが辛くなってしまって……っ、」

アラン様も、クリス様のことが大好きなのね…

でも、私は、私がクリス様のことをどういう好きであるのかがわからない。

シャワーで泡を流し、身体にタオルを巻いてカーテンの向こうのアラン様を抱きしめた。

「ごめんなさい。濡れていて…」

カリーナがタオルで出ていく私を止めようとしたけれど、無視をして出てきてしまった。

「マナ、様………」

「少し、このままでいさせて。」

涙をぐっとこらえながら目を瞑り、アラン様が私の腰に回した腕を感じながら数回深呼吸をする。
細い腕。小さな手のひら。

「よし、大丈夫…」

ぱっ と身体を離し、アラン様の顔を見た。

「私は、悲しまないわ。婚約相手が誰であろうと…ね。」

「マナ様……本当?」

「ええ。本当です。」

「少し、安心しました……」

私達の会話を聞くメイド達は顔を見合わせ、微笑んでいた。


まさかの展開。
私だけではなく、メイド達もそう思っていただろう。
明日、国王様から、どうお話されるか考えながら寝るとしましょう。


部屋に戻り、ベッドに横になる。

布団をかぶり、深く息を吐いた。

なぜかアラン様に回されたあの細い腕が忘れられない。

私は、温もりに飢えているのかしら。


コンコン、

「はい。どうぞ。」

ノックされ、起き上がる。扉の向こうにはアラン様がいた。

「一緒に、寝てもいいですか…?」

枕を持って部屋に訪ねてきた。

かわいいなと思った。

「いいですよ。来てください。」

小走りでベッドまで駆け寄って来たアラン様の目元は少し赤くなってしまっていた。

薄暗くてよく見えないけれど、赤く見えた。

ベッドは広いので、大人が二人くらいなら寝られる広さはある。

誰かと一緒に寝るなんてこっちに来てから初めてかもしれない。

不思議とアラン様を弟と思っていたことは無いけれど、一緒に並んで寝ると身体の小ささから、かわいい弟と思う気持ちが湧いた。

向かい合い、頭を撫でてみた。

「マナ様、?」

「ふふっ、ごめんなさい。可愛くてつい、」

「マナ様、僕を馬鹿にしているんですか?」

ムッと睨んでくる顔はなんとも愛おしい。

「ごめんなさい。少し安心して…さ、寝ましょう。」

「…はい。」

誰かと一緒に寝ると、安心する。

クリス様の婚約決定の悲しさも忘れてしまいそう。

だけど、やっぱり少し寂しい…

どこかで、嘘であってほしいと願う私がいる。

少しだけ、ほんの少しだけ、目頭が熱くなった。
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