19 / 23
19
しおりを挟む
いつもより近く引き寄せられた身体に鼓動は波打ち、合わせられた手がどんどん熱を持っていく。優しく微笑み私を見る瞳からは目が離せない。
周りの視線も私達に吸い込まれるように向いている。
長いようで短い一曲が終わった。
すっ と手を離し、もう一度顔を見上げる。
「…………」
「…………」
クリス様は目があった途端離し、少し休もうと私に声をかけた。
何故か気まずい空気感が二人の周りを取り囲む。
「 クリス王子とマナ王女は、そういうご関係なのかしら? 」
「 私、密かにクリス様を狙っていましたのに…!」
「 あの二人に誰か声をかけられる人はいますの!? 」
「 私が近づく隙はなくてよ? 」
「 貴方、声をかけてみなさいよ… 」
一人が私達のことを話題にすると、ひそひそと話題に乗っていく人が増えていく。
なんだか少し恥ずかしい。
「噂されていますね…」
そう言ってひょこっと顔を覗かせたのはノア王女だった。
ノア王女だけはこの空気感を通り抜け、私達が並んで端で立っている所に横から話しかけてきた。
「お二人、とてもお綺麗でしたわ。1曲目は端で眺めておりましたが、光って見えるほどお二人が美しくて、息も合っていて、驚きましたわ。」
拍手するかのように胸元で手を合わせ、笑顔で感想を述べてくる。
「いいえ、そんな……お褒めいただき感謝します。」
一曲目は踊っていないのね…
「………クリス様、次は、私と一曲お願いしたいのですが…」
女性に誘われては断る男性は少ないだろう。
「ええ。もちろん、一曲お願いいたします。」
まあ、そうなるわよね。
少し悔しいと思っている自分に腹が立ってくる。
さっきのが上塗りされるようで。
私は二曲目に誰かに誘われることはなかった。
交友関係の少ない私だ。当たり前といえば当たり前。
二曲目は一曲目よりゆっくりのテンポで、料理を味わいながら食べるようにゆっくりと進んでいく。
滑らかな足取りでノア王女は美しく微笑み、踊る。
二曲目が終わった。
クリス様とノア王女は一礼をしてそれぞれ離れていった。
私のもとに戻ってきたクリス様は、
「すまない、熱っぽいんだ。今日はこの辺であがりたいのだが…どうしたらいいだろう…」
額に手を当ててみる。
確かに熱い。首元には汗が滲んでいる。
さっきまで涼しそうな顔で踊っていたのに…
「クリス様、熱があります。では、今日は帰りましょう。」
急いで馬車を出してもらい、重い足取りで馬車へと向かう。
ノア王女が途中で話しかけてきそうだったが、誰かに声をかけられ、こちらへは近づいてこなかった。
夜も更け、星空がいっそう輝いている。
クリス様は今日ずっと調子が悪かったのだろうか。
それをひた隠しにして私やノア王女と手を合わせ、踊っていた…?
ゲームではクリス様の発熱なんてなかったような……
周りの視線も私達に吸い込まれるように向いている。
長いようで短い一曲が終わった。
すっ と手を離し、もう一度顔を見上げる。
「…………」
「…………」
クリス様は目があった途端離し、少し休もうと私に声をかけた。
何故か気まずい空気感が二人の周りを取り囲む。
「 クリス王子とマナ王女は、そういうご関係なのかしら? 」
「 私、密かにクリス様を狙っていましたのに…!」
「 あの二人に誰か声をかけられる人はいますの!? 」
「 私が近づく隙はなくてよ? 」
「 貴方、声をかけてみなさいよ… 」
一人が私達のことを話題にすると、ひそひそと話題に乗っていく人が増えていく。
なんだか少し恥ずかしい。
「噂されていますね…」
そう言ってひょこっと顔を覗かせたのはノア王女だった。
ノア王女だけはこの空気感を通り抜け、私達が並んで端で立っている所に横から話しかけてきた。
「お二人、とてもお綺麗でしたわ。1曲目は端で眺めておりましたが、光って見えるほどお二人が美しくて、息も合っていて、驚きましたわ。」
拍手するかのように胸元で手を合わせ、笑顔で感想を述べてくる。
「いいえ、そんな……お褒めいただき感謝します。」
一曲目は踊っていないのね…
「………クリス様、次は、私と一曲お願いしたいのですが…」
女性に誘われては断る男性は少ないだろう。
「ええ。もちろん、一曲お願いいたします。」
まあ、そうなるわよね。
少し悔しいと思っている自分に腹が立ってくる。
さっきのが上塗りされるようで。
私は二曲目に誰かに誘われることはなかった。
交友関係の少ない私だ。当たり前といえば当たり前。
二曲目は一曲目よりゆっくりのテンポで、料理を味わいながら食べるようにゆっくりと進んでいく。
滑らかな足取りでノア王女は美しく微笑み、踊る。
二曲目が終わった。
クリス様とノア王女は一礼をしてそれぞれ離れていった。
私のもとに戻ってきたクリス様は、
「すまない、熱っぽいんだ。今日はこの辺であがりたいのだが…どうしたらいいだろう…」
額に手を当ててみる。
確かに熱い。首元には汗が滲んでいる。
さっきまで涼しそうな顔で踊っていたのに…
「クリス様、熱があります。では、今日は帰りましょう。」
急いで馬車を出してもらい、重い足取りで馬車へと向かう。
ノア王女が途中で話しかけてきそうだったが、誰かに声をかけられ、こちらへは近づいてこなかった。
夜も更け、星空がいっそう輝いている。
クリス様は今日ずっと調子が悪かったのだろうか。
それをひた隠しにして私やノア王女と手を合わせ、踊っていた…?
ゲームではクリス様の発熱なんてなかったような……
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
変態王子&モブ令嬢 番外編
咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と
「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の
番外編集です。
本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる