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舞踏会当日。

「ごきげんよう。ノア様。」


衣装は派手すぎないが、相手に印象を与えられるものを選ぶ。

淡いピンクの愛らしさあふれるドレスに身を包み、胸元のリボンにアクセントとしてブローチを付けた。

これが私の、マナ王女としての流儀。

とはいえ、本当は淡い色よりも派手な夜に映える色を選びたいのよね。

けれど、今回は選択ミスだったかもしれない。
ノア王女もピンクのドレスを身にまとっていた。
私から話しかけたが、なんだか気まずい雰囲気になりそう。

「ごきげんよう。マナ様。ドレスの色は被ってしまいましたが、このブローチ、凄く綺麗ですわ。オーダーメイドですか?」

くっ、色に触れつつブローチに話を変える…
話の展開が上手い…
性格も……悔しい…

だめだめ、しっかりしてください私。

「ありがとうございます。このブローチは私が十二の時にオーダーメイドしたものです。細かいダイヤモンドが散りばめられていますので光が当たると七色に光って見えますよ。陽の光が当たると特に綺麗に見えます。舞踏会が夜なのが残念です。」

「そうなのですか!ぜひ今度お茶でもしてゆっくり見せてくださいますか?私も綺麗なアクセサリーをオーダーメイドしてみたいです。ですので参考にさせていただきたくて…」

「ええ、良いですよ。」

「嬉しいです。ありがとうございます。」

まあ、そんな未来はゲームではなかったし、結局お茶することはないのだろうな。


「ところで、クリス様はどこにいらっしゃいますか?」

私を探して挨拶をしてきた理由はこっちが本命かしら?

「クリス様は執事と軽く衣装直しをしております。何せ、ここまで来るのに少し道が悪くて…馬車がガタガタ揺れるものですから引っ掛かって裾が破けてしまったみたいです。」

嘘みたいな話だが本当のこと。
どうやってあの作戦を始めようか。

「そうでしたか…では、あちらに用意されたフルーツを召し上がりましょう。とても美味しいのですよ。」

「ええ。行きましょうか。」

にこりと笑って返事をした。
甘いものは好きなのでこういった会場に用意されたフルーツなどはもちろんいただく。

「いただきます。」

ぱくっ………

んーー美味しい!
イチゴも甘酸っぱさが丁度良い。

「あら、見てください。お隣のノスタリア王国の王女様がいらっしゃいますわ。ご挨拶に行こうかしら…いや、でももう始まってしまうわね…」

「大丈夫よ。急げば問題ないわ。」

「そう…よね!行ってきますわ!」

ひらひらと手を降ってノア王女は離れていった。

社交会なるものは苦手なのでフルーツを食べながらコーヒーをいただく。

皆、未来の婚約者を探しにしているのよね…

「待たせたかな…悪い。」

「いいえ、大丈夫ですよ。あっ、ノア様がお探しになられていました。」

まずは一曲、ノア様の相手をしていただく。
これが作戦一つ目。

「あ、ああ。そうか。わかった。」

ん?反応が悪いわね…照れてるのかしら…?
ノア様はまだ戻ってこないのね…

「あの…さ、一曲目はマナに相手をしてもらいたいのだが…」

「………え?」
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