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後宮で侍女になった私は精霊に好かれている
十二、青年と少年、魔獣
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すると、
コンコンコン。
ドアをノックされた。
何だろう。
そういえば、すごい寒気がする…?氷の使い手である医者の近くにいるからか?
「どうぞ。入ってください。」
ドアが開き、先にいたのは来客を案内する武官と、フード付きのコートを深く被った人が二人。背が高い青年と、私より十センチほど低い背丈の少年。
少年とは目があった。
けれど、ばっ、とフードで顔を隠し、うつむいてしまった。
『こ、こいつらは…!』
精霊が急に声をあげた。
どうしたの?この人達が何か?
『北の国にいる凶暴な魔獣をどちらか宿している………どっちも…か?』
「魔獣……?」
はっ!?声が出てしまった。
私が発したことに二人は反応し、私の方を向いた。
目を見開き、驚いていた。
「あ、貴方……今、魔獣……と言いましたか?」
青年は私に問いかけた。
怖い。今にも私を殺しそうな表情をしている。
青年は顔は冷静そうに見えるが、怒りを顕にしている。
少年は私達に目を向けながらガクガクと震え始めた。
魔獣……が何か駄目だったのだろうか…
「大丈夫か。スラヴァ……」
青年は少年にそう問いかけた。
この少年の名前はスラヴァ?くん?
「おい……雪蘭…?」
「はい……」
憂炎さんは私に話しかけた時、不思議そうな顔をしていた。
「この人達は一体何と言っているんだ?」
私には普通に聞こえるけれど、憂炎さんには何を言っているかわからない?
「言葉がわからないのですか?」
「ああ。この言葉は他の国の言葉か?」
「……私には普通に聞こえるもので…分かりません。」
これも精霊の力なのか?
『そうだ。精霊が宿った者は基本的にどの言語でも同じ言語に聞こえる。会話もできる。ただ、こうなった以上、他の者にこの言語が通じないのは面倒だな。』
そうね……
「ま、まあまあ…事情は分かりませんが、どうぞこちらへ。腰掛けてくださいな。」
医者はそう二人に案内したが、言葉が通じたのは青年の方だけだった。少年は頭にハテナを浮かべている。
じゃあこの青年は精霊付き?
「雪蘭。すまないが、奥の部屋から毛布を持ってきてくれないか?」
「分かりました。」
私が席を立ち、移動すると、憂炎さんも私を追ってきた。
ガチャ………パタン…
「なあ。彼らは一体何を言っていたのだ?」
「私が魔獣と呟いたとき、彼等……いえ、青年は驚いた表情で魔獣と言ったか?と問いかけてきました。おそらく、どちらか…あるいはどちらも魔獣を宿していると考えられます。」
「はあ………魔獣が?この帝国に被害が及ぶようならば早急に処分しなければならないが。」
「まあ、お待ちください。まずは、様子見…です。私も彼等の事は気になります。ここに来た理由も。」
「ああ、それもそうだな。だが、正体がわからない以上、油断は禁物。」
「存じております。」
この世界は全く分からないものだな。
何が起こるかも分からない。けれど、色々とできる世界である分、何を起こすか、行動は限られない。
自分の選択次第で何もかもが変わる……変えられる。それはこの世界の人もそう。
怖いなぁ。
コンコンコン。
ドアをノックされた。
何だろう。
そういえば、すごい寒気がする…?氷の使い手である医者の近くにいるからか?
「どうぞ。入ってください。」
ドアが開き、先にいたのは来客を案内する武官と、フード付きのコートを深く被った人が二人。背が高い青年と、私より十センチほど低い背丈の少年。
少年とは目があった。
けれど、ばっ、とフードで顔を隠し、うつむいてしまった。
『こ、こいつらは…!』
精霊が急に声をあげた。
どうしたの?この人達が何か?
『北の国にいる凶暴な魔獣をどちらか宿している………どっちも…か?』
「魔獣……?」
はっ!?声が出てしまった。
私が発したことに二人は反応し、私の方を向いた。
目を見開き、驚いていた。
「あ、貴方……今、魔獣……と言いましたか?」
青年は私に問いかけた。
怖い。今にも私を殺しそうな表情をしている。
青年は顔は冷静そうに見えるが、怒りを顕にしている。
少年は私達に目を向けながらガクガクと震え始めた。
魔獣……が何か駄目だったのだろうか…
「大丈夫か。スラヴァ……」
青年は少年にそう問いかけた。
この少年の名前はスラヴァ?くん?
「おい……雪蘭…?」
「はい……」
憂炎さんは私に話しかけた時、不思議そうな顔をしていた。
「この人達は一体何と言っているんだ?」
私には普通に聞こえるけれど、憂炎さんには何を言っているかわからない?
「言葉がわからないのですか?」
「ああ。この言葉は他の国の言葉か?」
「……私には普通に聞こえるもので…分かりません。」
これも精霊の力なのか?
『そうだ。精霊が宿った者は基本的にどの言語でも同じ言語に聞こえる。会話もできる。ただ、こうなった以上、他の者にこの言語が通じないのは面倒だな。』
そうね……
「ま、まあまあ…事情は分かりませんが、どうぞこちらへ。腰掛けてくださいな。」
医者はそう二人に案内したが、言葉が通じたのは青年の方だけだった。少年は頭にハテナを浮かべている。
じゃあこの青年は精霊付き?
「雪蘭。すまないが、奥の部屋から毛布を持ってきてくれないか?」
「分かりました。」
私が席を立ち、移動すると、憂炎さんも私を追ってきた。
ガチャ………パタン…
「なあ。彼らは一体何を言っていたのだ?」
「私が魔獣と呟いたとき、彼等……いえ、青年は驚いた表情で魔獣と言ったか?と問いかけてきました。おそらく、どちらか…あるいはどちらも魔獣を宿していると考えられます。」
「はあ………魔獣が?この帝国に被害が及ぶようならば早急に処分しなければならないが。」
「まあ、お待ちください。まずは、様子見…です。私も彼等の事は気になります。ここに来た理由も。」
「ああ、それもそうだな。だが、正体がわからない以上、油断は禁物。」
「存じております。」
この世界は全く分からないものだな。
何が起こるかも分からない。けれど、色々とできる世界である分、何を起こすか、行動は限られない。
自分の選択次第で何もかもが変わる……変えられる。それはこの世界の人もそう。
怖いなぁ。
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