14 / 17
14・不憫な兄貴はよい兄貴
しおりを挟む
「家族ですら弱い立場の女にあれこれやらかすのはよく聞く話だろ?他人なら尚更だ。菫だってどんだけ、友達の兄貴や弟やら父親やらにあれこれされそうになったか」
菫に女性の友人が少ない理由はまさにそれだ。
どんなに友人が女だらけでも、その兄弟、親、言えないが祖父や親類まで、安心なんかできなかった。
「お前の事だから、美少女には頻繁に遊びに来いっつってんだろ?だったら遊びに来てるときは、どんな時でも俺に連絡入れとけ。その時間は家に帰らないから。親父もな」
話を聞いていた父親も「だいじょーぶ、パパどうせ遅いもん」と返した。
「パパは大丈夫よ?菫ちゃんの時で慣れてるから」
「えっ、おとーさん、そんな気遣いできてたの?」
「してたよぉ。そりゃしないとさ、モテないじゃん」
あはは、と軽く笑う父親に、雅は気づく。
「え、じゃあさっきもずっとソファーに座ってたのって」
芙綺が遊びに来ていた時、兄はいつもの椅子に座らず、ソファーに腰掛けてケーキも離れた場所で食べていた。
話しかける時も、常にソファーのある場所からだったので、なんでこっち座らないんだろうと思っていた。
兄は妹にばちんとウィンクした。
「お兄ちゃん、気がきくだろ?」
「菫お姉ちゃんに躾けられたんでしょ」
「ははは、さすが我が妹、あっぱれである」
でもま、と兄は言う。
「そのくらい気を使うくらいで、やっとモテに近づけるんだよ。俺だって好きなだけ筋肉おっきくしたいんだもん、でもモテたいんだもん」
「筋肉つけすぎって時点でアウトと思う」
「ひどい!筋肉好きなかわいい子だっていると思うし!」
「そういう人は兄貴を選ばないと思うよ」
「容赦ない!おかーさーん、雅ちゃんがひどい事言うよぉ」
「雅、あんまり本当のことを言ってお兄ちゃんを傷つけちゃ駄目よ」
「おかーさんのほうが酷い」
兄と妹は同時に呟くのだった。
「でも気を付ける。確かに、美少女だったら嫌な目にあってそう」
「会わない訳ないわよぉ、菫ちゃんだって相当だったもの」
「そんなに?」
「そんなによ。でもあの子はまあ、常世ちゃんが居たからね」
常世は報国院で教師をやっている、菫の腐れ縁の友人だ。
髭のはえたヘビースモーカーのおじさんで、武術に長けていて相当強いのだそうだ。
いつもはボケーッとしている柄の悪いおじさんだが。
「美少女に王子様が現れたらいいんだけどな」
雅が言うと、「すぐよ、すぐ」と母が笑った。
「あんなに美少女だもの、すぐ王子様が現れるわよ」
「だよねー、そこはなんか勝者って感じする」
ただ、気になる事があった。
「でもさ、帰らないのってなんでそこまで?別に今日みたいに、兄貴ソファーとか、自分の部屋とかでいーじゃん」
「あっはっは、そこが雅ちゃんのまともな所だぞ。美少女は靴はいてくるだろ?」
「そりゃ当たり前でしょ」
「靴でなにすると思う?」
「なに……って、なんかするって」
「トイレに入った後、なにを探す?美少女が落とした髪の毛拾う奴もいるだろうな。食っちゃうかも」
「ギャー!気持ち悪い!兄貴変態!!!」
「変態なのはお兄ちゃんじゃないよ雅ちゃん」
「そういう発想自体がキモイんですけど!!!!」
「そういうのをなんとも思ってない、普通にやる男はいくらでもいるんだぞお」
「うそー!信じられない!」
「居るのよ雅ちゃん、残念だけど。普通かどうかはおいといて」
「おかーさんまで……」
まさかの母親まで認めて来て雅は驚いた。
「あなたもねえ、可愛い制服着るし、女子高生になったんだし、用心を覚えなくちゃね。本当に気持ち悪いのは多いんだから」
「うぇええ、きもちわるいよー、もう二次元にしか恋しない!」
「おにーちゃんはそのほうが安心だな!」
「お兄ちゃんも雅ちゃんに甘いんだから」
はあ、とため息をつく母だった。
「でも、ウィステリアならそこはママ安心してるの。OGは絶対に後輩を守るし先輩を助けるもの」
母の言葉に乗っかったのは父だ。
「判る!報国院もそう!絶対後輩守っちゃう!先輩は知らん」
「なんで先輩は助けないの」
呆れる雅に父は笑った。
「だって先輩、俺なんかいなくったって充分つよつよだもん。俺は助けてもらう一択」
「つよつよとかおっさんが言わないでよもう……」
はあ、とため息をつく雅だった。
自分の部屋へ戻り、雅は制服を見つめた。
(確かにデザインはとってもかわいいわ)
詰襟のジャケットのウエストは絞られていて、肩についているワッペンもカッコいい。
ダブルの金ボタンも細工が入っていて細かい。
多分、東京のイベントにこの制服で行ったら、なにかのアニメのコスプレだと思われるのは間違いない。
自分が来ても、もざいオタクが似合わないコスプレしているだけにしか思えない。
しかし、家族の贔屓目もあるとはいえ、あんなに可愛い可愛い気をつけろと言われると、確かにちょっとは考えたほうがいいのかもしれない。
のだが。
「うーん。よくわからん。まあ、推しの目を潰さない程度に頑張ろう」
そういって雅は、持ち歩く用の推しミニバインダーを取り出し開いた。
「推しよ……推し可愛い……」
うっとりと雅が見つめているのは、今現在の最推しである、乃木君だ。
菫に女性の友人が少ない理由はまさにそれだ。
どんなに友人が女だらけでも、その兄弟、親、言えないが祖父や親類まで、安心なんかできなかった。
「お前の事だから、美少女には頻繁に遊びに来いっつってんだろ?だったら遊びに来てるときは、どんな時でも俺に連絡入れとけ。その時間は家に帰らないから。親父もな」
話を聞いていた父親も「だいじょーぶ、パパどうせ遅いもん」と返した。
「パパは大丈夫よ?菫ちゃんの時で慣れてるから」
「えっ、おとーさん、そんな気遣いできてたの?」
「してたよぉ。そりゃしないとさ、モテないじゃん」
あはは、と軽く笑う父親に、雅は気づく。
「え、じゃあさっきもずっとソファーに座ってたのって」
芙綺が遊びに来ていた時、兄はいつもの椅子に座らず、ソファーに腰掛けてケーキも離れた場所で食べていた。
話しかける時も、常にソファーのある場所からだったので、なんでこっち座らないんだろうと思っていた。
兄は妹にばちんとウィンクした。
「お兄ちゃん、気がきくだろ?」
「菫お姉ちゃんに躾けられたんでしょ」
「ははは、さすが我が妹、あっぱれである」
でもま、と兄は言う。
「そのくらい気を使うくらいで、やっとモテに近づけるんだよ。俺だって好きなだけ筋肉おっきくしたいんだもん、でもモテたいんだもん」
「筋肉つけすぎって時点でアウトと思う」
「ひどい!筋肉好きなかわいい子だっていると思うし!」
「そういう人は兄貴を選ばないと思うよ」
「容赦ない!おかーさーん、雅ちゃんがひどい事言うよぉ」
「雅、あんまり本当のことを言ってお兄ちゃんを傷つけちゃ駄目よ」
「おかーさんのほうが酷い」
兄と妹は同時に呟くのだった。
「でも気を付ける。確かに、美少女だったら嫌な目にあってそう」
「会わない訳ないわよぉ、菫ちゃんだって相当だったもの」
「そんなに?」
「そんなによ。でもあの子はまあ、常世ちゃんが居たからね」
常世は報国院で教師をやっている、菫の腐れ縁の友人だ。
髭のはえたヘビースモーカーのおじさんで、武術に長けていて相当強いのだそうだ。
いつもはボケーッとしている柄の悪いおじさんだが。
「美少女に王子様が現れたらいいんだけどな」
雅が言うと、「すぐよ、すぐ」と母が笑った。
「あんなに美少女だもの、すぐ王子様が現れるわよ」
「だよねー、そこはなんか勝者って感じする」
ただ、気になる事があった。
「でもさ、帰らないのってなんでそこまで?別に今日みたいに、兄貴ソファーとか、自分の部屋とかでいーじゃん」
「あっはっは、そこが雅ちゃんのまともな所だぞ。美少女は靴はいてくるだろ?」
「そりゃ当たり前でしょ」
「靴でなにすると思う?」
「なに……って、なんかするって」
「トイレに入った後、なにを探す?美少女が落とした髪の毛拾う奴もいるだろうな。食っちゃうかも」
「ギャー!気持ち悪い!兄貴変態!!!」
「変態なのはお兄ちゃんじゃないよ雅ちゃん」
「そういう発想自体がキモイんですけど!!!!」
「そういうのをなんとも思ってない、普通にやる男はいくらでもいるんだぞお」
「うそー!信じられない!」
「居るのよ雅ちゃん、残念だけど。普通かどうかはおいといて」
「おかーさんまで……」
まさかの母親まで認めて来て雅は驚いた。
「あなたもねえ、可愛い制服着るし、女子高生になったんだし、用心を覚えなくちゃね。本当に気持ち悪いのは多いんだから」
「うぇええ、きもちわるいよー、もう二次元にしか恋しない!」
「おにーちゃんはそのほうが安心だな!」
「お兄ちゃんも雅ちゃんに甘いんだから」
はあ、とため息をつく母だった。
「でも、ウィステリアならそこはママ安心してるの。OGは絶対に後輩を守るし先輩を助けるもの」
母の言葉に乗っかったのは父だ。
「判る!報国院もそう!絶対後輩守っちゃう!先輩は知らん」
「なんで先輩は助けないの」
呆れる雅に父は笑った。
「だって先輩、俺なんかいなくったって充分つよつよだもん。俺は助けてもらう一択」
「つよつよとかおっさんが言わないでよもう……」
はあ、とため息をつく雅だった。
自分の部屋へ戻り、雅は制服を見つめた。
(確かにデザインはとってもかわいいわ)
詰襟のジャケットのウエストは絞られていて、肩についているワッペンもカッコいい。
ダブルの金ボタンも細工が入っていて細かい。
多分、東京のイベントにこの制服で行ったら、なにかのアニメのコスプレだと思われるのは間違いない。
自分が来ても、もざいオタクが似合わないコスプレしているだけにしか思えない。
しかし、家族の贔屓目もあるとはいえ、あんなに可愛い可愛い気をつけろと言われると、確かにちょっとは考えたほうがいいのかもしれない。
のだが。
「うーん。よくわからん。まあ、推しの目を潰さない程度に頑張ろう」
そういって雅は、持ち歩く用の推しミニバインダーを取り出し開いた。
「推しよ……推し可愛い……」
うっとりと雅が見つめているのは、今現在の最推しである、乃木君だ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる