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9・うわすげえ美少女だなオイ
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賑やかにお喋りしていると、玄関のほうから「ただいまー」と声がする。
「あ、兄貴帰って来た。おかえりー」
じゃあそろそろ席を立った方がいいのかな、と腰を浮かせた芙綺に「座ってていいのよ」と気づいた雅の母が言った。
頷き、腰を落とすと足音も大きく、男性が入って来た。
「雅―、お兄ちゃんが入学祝を……って、お客様か、すまんすまん」
がっはっは、と笑いながら入って来た男性は、かなり体つきがごつい。
ラグビーでもしてるんだろうかというくらいしっかりしたマッチョで、驚いてみていると、男性はぺこりと頭を下げた。
「雅の兄貴です!妹がお世話になって、ってうわすげえ美少女だなオイ!」
なんか驚き方が兄妹同じだなあ、と思いつつ、芙綺はぺこりと頭を下げた。
「小早川芙綺です。お邪魔してます」
「いやあ、我が家へようこそ!美少女ならいつでも大歓迎だぞ!」
そういう呼び方まで一緒なんだ、とちょっと呆れた。
雅の母が言った。
「ね、菫ちゃんにまさるとも劣らない美少女でしょう?」
「そーだなあ、確かに菫もすんげえ美少女だったもんなあ。でも小早川さんの方が性格良さそうだぞ!」
すると雅が言った。
「おねーちゃんは性格悪い訳じゃないよ。ちゃっかりしてて強引で我儘なだけで」
うーん、確かに違う意味で『良い』性格をしているのか、その菫さんとやらは、と芙綺は思った。
「ところで、それは?どうしたんですか?」
雅の兄は、大量の花を抱えていたのだ。
綺麗にラッピングされた花束で、春らしい、可愛らしいコンセプトでまとめてあり、華やかだ。
「だって妹がウィステリア入学したから。こっちお菓子」
「だからもうケーキはいいって言ったじゃん!」
「だからお菓子にしたんだもん」
あまり可愛くはないが妹に向かって箱を差し出す。
「もー、また大量に……あ、そうだ!美少女寮だよね!持って帰って!」
「え?いいの?」
「いーっていーって。どうせホールケーキまだ残ってるし!兄貴はいっつも買い過ぎるんよ」
「でも」
躊躇っていると、雅の母が「そうしましょーよー、だったらわけちゃいましょ」とさっと息子からの箱を受け取る。
けっこう大きな箱の中にはぎっしりとクッキーやビスケットなんかの焼き菓子が沢山詰まっていて、確かにこれは量が多いなと芙綺も思った。
「うちで食べるのってこのくらいでいいよ。あとは箱ごと持って帰って!」
え、と芙綺が驚いていると、みんなにこにこしながら「どうぞ」と言っているので、いいのかな、と思いつつ受け取る事にしたのだった。
暫くみんなでお喋りをしているうちに、寮に帰る時間になった。
「じゃあ、寮の前まで送る!」
そういう雅に「別にいいのに」と笑うが、確かに目の前なので、送ると言うよりは見ていてもらう、といった感じだ。
お邪魔しました、とご家族に挨拶し、雅と芙綺は家を出て、寮へ向かう。
「本当に目の前だね。むしろ寮の離れみたい」
「うん。だからさ、頻繁に遊びに来てよ。寮で用事がないなら遊ぼう」
「そんな、お邪魔だし」
「美少女ならOK。それにさ、美少女、このあたり詳しくないでしょ?」
「うん」
引っ越して来たばかりで、まだ寮と学校くらいしか覚えていない。
「今週って学校、午前中ばっかじゃん。このあたり、案内するから一緒に遊ぼうよ」
「いいの?助かる」
実はどこで買い物をすれば良いのかもちょっと困っていて、全部オンラインですべきかと悩んでいたくらいなのだ。
「おかーさんがさ、美少女ちゃんはそういうの必要になるから案内しなさいって言うし。それならお散歩がてら案内できるし」
「そっか」
雅の母親は、のんびりして見えてけっこう気が利くタイプのようだ。
本当にそういうのは助かるな、と芙綺は笑った。
「じゃあ、お言葉に甘えて明日からお願いね」
「うん、明日も一緒に学校行こう」
そして雅はニヤッと笑った。
「ショートカット教えるぜ」
「やった。頼む」
ただでさえ近い学校が、一層近くなりそうだ。
じゃーねー、と二人は手を振って別れ、芙綺はあっという間に量に到着した。
門を抜けて玄関に入り、靴を脱いで片付けた。
帰って来たのでボードにお知らせして、さて、お菓子があるから先に休憩室へ行くか、と考えていると、なにやら休憩室が賑やかだ。
なんだろう、と思い中へと入る。
すると休憩室の正面、大画面に、イケメンがドアップで映っていた。
なんだアレ、なんか見てるんかな、と一瞬見過ごしそうになって、そこに映っているイケメンの顔を見て、芙綺は噴出した。
『僕の名前をもう一度呼んで。君の美しさに皆、目を丸くするだろう、僕の天使』
画面に食い入る女子達は、寒くなるほどの甘いセリフにキャーっと声を上げている。
画面はなんらかの舞台で、芙綺の知っている顔の男が、なんか派手な格好をして相手役の手を握っていた。
(誉くんじゃないか―――――ッ!!!!なにやってんだアイツ!!!!)
映っていたのは、現在、報国院男子高等学校に通っている、芙綺の幼馴染である、ひとつ年上の、御堀 誉だった。
しかもそれだけじゃあ、なかった。
「あ、兄貴帰って来た。おかえりー」
じゃあそろそろ席を立った方がいいのかな、と腰を浮かせた芙綺に「座ってていいのよ」と気づいた雅の母が言った。
頷き、腰を落とすと足音も大きく、男性が入って来た。
「雅―、お兄ちゃんが入学祝を……って、お客様か、すまんすまん」
がっはっは、と笑いながら入って来た男性は、かなり体つきがごつい。
ラグビーでもしてるんだろうかというくらいしっかりしたマッチョで、驚いてみていると、男性はぺこりと頭を下げた。
「雅の兄貴です!妹がお世話になって、ってうわすげえ美少女だなオイ!」
なんか驚き方が兄妹同じだなあ、と思いつつ、芙綺はぺこりと頭を下げた。
「小早川芙綺です。お邪魔してます」
「いやあ、我が家へようこそ!美少女ならいつでも大歓迎だぞ!」
そういう呼び方まで一緒なんだ、とちょっと呆れた。
雅の母が言った。
「ね、菫ちゃんにまさるとも劣らない美少女でしょう?」
「そーだなあ、確かに菫もすんげえ美少女だったもんなあ。でも小早川さんの方が性格良さそうだぞ!」
すると雅が言った。
「おねーちゃんは性格悪い訳じゃないよ。ちゃっかりしてて強引で我儘なだけで」
うーん、確かに違う意味で『良い』性格をしているのか、その菫さんとやらは、と芙綺は思った。
「ところで、それは?どうしたんですか?」
雅の兄は、大量の花を抱えていたのだ。
綺麗にラッピングされた花束で、春らしい、可愛らしいコンセプトでまとめてあり、華やかだ。
「だって妹がウィステリア入学したから。こっちお菓子」
「だからもうケーキはいいって言ったじゃん!」
「だからお菓子にしたんだもん」
あまり可愛くはないが妹に向かって箱を差し出す。
「もー、また大量に……あ、そうだ!美少女寮だよね!持って帰って!」
「え?いいの?」
「いーっていーって。どうせホールケーキまだ残ってるし!兄貴はいっつも買い過ぎるんよ」
「でも」
躊躇っていると、雅の母が「そうしましょーよー、だったらわけちゃいましょ」とさっと息子からの箱を受け取る。
けっこう大きな箱の中にはぎっしりとクッキーやビスケットなんかの焼き菓子が沢山詰まっていて、確かにこれは量が多いなと芙綺も思った。
「うちで食べるのってこのくらいでいいよ。あとは箱ごと持って帰って!」
え、と芙綺が驚いていると、みんなにこにこしながら「どうぞ」と言っているので、いいのかな、と思いつつ受け取る事にしたのだった。
暫くみんなでお喋りをしているうちに、寮に帰る時間になった。
「じゃあ、寮の前まで送る!」
そういう雅に「別にいいのに」と笑うが、確かに目の前なので、送ると言うよりは見ていてもらう、といった感じだ。
お邪魔しました、とご家族に挨拶し、雅と芙綺は家を出て、寮へ向かう。
「本当に目の前だね。むしろ寮の離れみたい」
「うん。だからさ、頻繁に遊びに来てよ。寮で用事がないなら遊ぼう」
「そんな、お邪魔だし」
「美少女ならOK。それにさ、美少女、このあたり詳しくないでしょ?」
「うん」
引っ越して来たばかりで、まだ寮と学校くらいしか覚えていない。
「今週って学校、午前中ばっかじゃん。このあたり、案内するから一緒に遊ぼうよ」
「いいの?助かる」
実はどこで買い物をすれば良いのかもちょっと困っていて、全部オンラインですべきかと悩んでいたくらいなのだ。
「おかーさんがさ、美少女ちゃんはそういうの必要になるから案内しなさいって言うし。それならお散歩がてら案内できるし」
「そっか」
雅の母親は、のんびりして見えてけっこう気が利くタイプのようだ。
本当にそういうのは助かるな、と芙綺は笑った。
「じゃあ、お言葉に甘えて明日からお願いね」
「うん、明日も一緒に学校行こう」
そして雅はニヤッと笑った。
「ショートカット教えるぜ」
「やった。頼む」
ただでさえ近い学校が、一層近くなりそうだ。
じゃーねー、と二人は手を振って別れ、芙綺はあっという間に量に到着した。
門を抜けて玄関に入り、靴を脱いで片付けた。
帰って来たのでボードにお知らせして、さて、お菓子があるから先に休憩室へ行くか、と考えていると、なにやら休憩室が賑やかだ。
なんだろう、と思い中へと入る。
すると休憩室の正面、大画面に、イケメンがドアップで映っていた。
なんだアレ、なんか見てるんかな、と一瞬見過ごしそうになって、そこに映っているイケメンの顔を見て、芙綺は噴出した。
『僕の名前をもう一度呼んで。君の美しさに皆、目を丸くするだろう、僕の天使』
画面に食い入る女子達は、寒くなるほどの甘いセリフにキャーっと声を上げている。
画面はなんらかの舞台で、芙綺の知っている顔の男が、なんか派手な格好をして相手役の手を握っていた。
(誉くんじゃないか―――――ッ!!!!なにやってんだアイツ!!!!)
映っていたのは、現在、報国院男子高等学校に通っている、芙綺の幼馴染である、ひとつ年上の、御堀 誉だった。
しかもそれだけじゃあ、なかった。
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