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4・最上級生は柱の男(?)
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教室に入り、担任がそれぞれの面々に自己紹介するように告げた。
ウィステリアの変わった決まりは、先生から用務員さんに至るまで、全てが女性であると言う事だ。
当然、芙綺らの担任も女性だ。
さて、雅が自己紹介する番になった。
「木戸雅です。長州市出身でー、家はこの学校の近所です。趣味は推し活とカメラ。時々発言がおかしいのはオタクのせいなので流してください。ござる」
早速キャラづくりが適当だなと思いながらも、雅は全く気にしない。
(どうせ美少女の前には全てが虚無よ)
「じゃあ、次。小早川さんね」
そう担任が言い、芙綺が席を立つ。
「―――――小早川芙綺です。出身は周防市、趣味はサッカーとサッカー観戦。尊敬しているのはイブラ。以上です」
美少女の言葉に、聞きほれる所のはずだったのだが、皆、言っている意味がよく判らなかった。
すさかず前の席に居た雅がくるりと振り向き、手を蛇のポーズにして尋ねた。
「コブラ?蛇?」
「イブラよ。ズラタン・イブラヒモビッチ。サッカー選手」
「ヅラのコブラ?」
「コブラにヅラはいらんでしょ。最初からハゲだし」
雅と芙綺のやり取りに、一瞬あっけにとられたが、誰かが吹き出すと、教室中に笑いがおきた。
「そうねえ、コブラに髪はないわよねえ。小早川さんはサッカーが好きなのね、ありがとう」
賑やかになった教室内で担任が言うと、ちょっと教室の空気が和んだのだった。
自己紹介が終わり、今日はお開き、という事になった。
担任は気を付けて帰るのよ、明日からよろしくね、と笑顔で頭を下げて教室を出た。
優しそうだが、やっぱり先生は先生で、生徒だけになると途端、教室内がざわつき始めた。
あちこちで帰ろう、とか、話を始めたりと途端に賑やかだ。
「じゃ、美少女も寮でしょ?一緒に帰ろ」
誘う雅だが、芙綺は尋ねた。
「同じ学校の友達とか、いいの?」
「平気平気。どうせ入学したら遊ぶつもりだったし、今日はみんな親と帰るって」
「雅は?お母さんは?」
「どうせ先に帰ってる。気にしなくていいよ」
「そうなんだ」
雅が言うのなら気にすることはないのか、と芙綺は頷いた。
その時だった。
教室の前の扉が勢いよくがらっと開いて、一瞬、先生が戻って来たのかと皆がびっくりしたその時だった。
「しずまれ、しずまれーい!新入生、あたらしきウィステリアの乙女らよー!」
え、なに?何が始まるの?ときょとんとしていると、ぞろぞろとウィステリアの先輩が3人入って来たが、妙な貫禄がある。
そして唐突にポーズを決めた。
変なポーズにざわつくも、雅はぽつりと呟く。
「柱の男じゃん」
ばーん、ばぁあーん、とポーズを繰り返すと、すっと先輩らは腕を後ろに回すと、胸を張った。
「我々は、三年生、つまり諸君らの先輩である!」
あ、先輩なんだ、三年生なんだ。
ざわつきながらも、なんだか頭を下げてしまう。
「さて、我々三年生がここに来たのは、諸君らに対する注意事項を伝える為である!」
注意事項?とざわつく一年生らに、三年生の先輩達は言った。
「我々の、このかんわいい制服は言わずとも、諸君は理解していると思う!可愛いよなァ、オイ!」
大きな声でそう言う先輩の横に立っているもう一人の先輩が、ぱちぱちぱち、と手を叩くので、ついつられて一年生らも拍手した。
「よろしい。この制服が着たくて我がウィステリアに入学した後輩たちもいるだろう!いや、殆どがそうだろう!」
先輩の言葉に、うんうんと全員が頷く。
その通りだからだ。
「ワイはそうでもないけどな」
ぼそりと雅が言うので、芙綺はそうなんだ、と驚いた。
三年生は大げさな身振り手振りで怒鳴った。
「この可愛い制服で、ウッキウキでお出かけしたい!そう思っているよなァ!」
うんうん、と一年生らは頷いた。
キリっと三年生は顔を真正面に向け怒鳴る。
「絶対に!そのような事を!してはならぬ!!!!!」
一瞬の静寂の後、「ええ―――――ッ!」と教室内からは抗議の声が上がる。
「え、出かけるつもりだったんだ」
驚く芙綺に雅が「そりゃそうだろ」と頷く。
「だってんな可愛い服なんか、そうそう私服で着れないじゃん。もう今日が待ち遠しくてたまらんで、そのままお出かけなんてみんな考える事よ」
「雅は?」
「いやでござる」
「そうよねー」
さて、どうなるんだろうと見守っていると、先輩は言った。
「諸君らは、報国院の事は、知っている事と思う!」
そう言われ、思わず芙綺の背がしゃきっと伸びる。
というのも、報国院は幼馴染が通っている学校だからだ。
はいっと一年生が挙手した。
「知ってます!ウィステリアと姉妹校の、報国院男子高等学校です!」
「よーし合格!その通りだ!」
なにが合格なんだろ、と思いつつ、演劇じみたこのやりとりを芙綺はのんびり見つめていた。
ウィステリアの変わった決まりは、先生から用務員さんに至るまで、全てが女性であると言う事だ。
当然、芙綺らの担任も女性だ。
さて、雅が自己紹介する番になった。
「木戸雅です。長州市出身でー、家はこの学校の近所です。趣味は推し活とカメラ。時々発言がおかしいのはオタクのせいなので流してください。ござる」
早速キャラづくりが適当だなと思いながらも、雅は全く気にしない。
(どうせ美少女の前には全てが虚無よ)
「じゃあ、次。小早川さんね」
そう担任が言い、芙綺が席を立つ。
「―――――小早川芙綺です。出身は周防市、趣味はサッカーとサッカー観戦。尊敬しているのはイブラ。以上です」
美少女の言葉に、聞きほれる所のはずだったのだが、皆、言っている意味がよく判らなかった。
すさかず前の席に居た雅がくるりと振り向き、手を蛇のポーズにして尋ねた。
「コブラ?蛇?」
「イブラよ。ズラタン・イブラヒモビッチ。サッカー選手」
「ヅラのコブラ?」
「コブラにヅラはいらんでしょ。最初からハゲだし」
雅と芙綺のやり取りに、一瞬あっけにとられたが、誰かが吹き出すと、教室中に笑いがおきた。
「そうねえ、コブラに髪はないわよねえ。小早川さんはサッカーが好きなのね、ありがとう」
賑やかになった教室内で担任が言うと、ちょっと教室の空気が和んだのだった。
自己紹介が終わり、今日はお開き、という事になった。
担任は気を付けて帰るのよ、明日からよろしくね、と笑顔で頭を下げて教室を出た。
優しそうだが、やっぱり先生は先生で、生徒だけになると途端、教室内がざわつき始めた。
あちこちで帰ろう、とか、話を始めたりと途端に賑やかだ。
「じゃ、美少女も寮でしょ?一緒に帰ろ」
誘う雅だが、芙綺は尋ねた。
「同じ学校の友達とか、いいの?」
「平気平気。どうせ入学したら遊ぶつもりだったし、今日はみんな親と帰るって」
「雅は?お母さんは?」
「どうせ先に帰ってる。気にしなくていいよ」
「そうなんだ」
雅が言うのなら気にすることはないのか、と芙綺は頷いた。
その時だった。
教室の前の扉が勢いよくがらっと開いて、一瞬、先生が戻って来たのかと皆がびっくりしたその時だった。
「しずまれ、しずまれーい!新入生、あたらしきウィステリアの乙女らよー!」
え、なに?何が始まるの?ときょとんとしていると、ぞろぞろとウィステリアの先輩が3人入って来たが、妙な貫禄がある。
そして唐突にポーズを決めた。
変なポーズにざわつくも、雅はぽつりと呟く。
「柱の男じゃん」
ばーん、ばぁあーん、とポーズを繰り返すと、すっと先輩らは腕を後ろに回すと、胸を張った。
「我々は、三年生、つまり諸君らの先輩である!」
あ、先輩なんだ、三年生なんだ。
ざわつきながらも、なんだか頭を下げてしまう。
「さて、我々三年生がここに来たのは、諸君らに対する注意事項を伝える為である!」
注意事項?とざわつく一年生らに、三年生の先輩達は言った。
「我々の、このかんわいい制服は言わずとも、諸君は理解していると思う!可愛いよなァ、オイ!」
大きな声でそう言う先輩の横に立っているもう一人の先輩が、ぱちぱちぱち、と手を叩くので、ついつられて一年生らも拍手した。
「よろしい。この制服が着たくて我がウィステリアに入学した後輩たちもいるだろう!いや、殆どがそうだろう!」
先輩の言葉に、うんうんと全員が頷く。
その通りだからだ。
「ワイはそうでもないけどな」
ぼそりと雅が言うので、芙綺はそうなんだ、と驚いた。
三年生は大げさな身振り手振りで怒鳴った。
「この可愛い制服で、ウッキウキでお出かけしたい!そう思っているよなァ!」
うんうん、と一年生らは頷いた。
キリっと三年生は顔を真正面に向け怒鳴る。
「絶対に!そのような事を!してはならぬ!!!!!」
一瞬の静寂の後、「ええ―――――ッ!」と教室内からは抗議の声が上がる。
「え、出かけるつもりだったんだ」
驚く芙綺に雅が「そりゃそうだろ」と頷く。
「だってんな可愛い服なんか、そうそう私服で着れないじゃん。もう今日が待ち遠しくてたまらんで、そのままお出かけなんてみんな考える事よ」
「雅は?」
「いやでござる」
「そうよねー」
さて、どうなるんだろうと見守っていると、先輩は言った。
「諸君らは、報国院の事は、知っている事と思う!」
そう言われ、思わず芙綺の背がしゃきっと伸びる。
というのも、報国院は幼馴染が通っている学校だからだ。
はいっと一年生が挙手した。
「知ってます!ウィステリアと姉妹校の、報国院男子高等学校です!」
「よーし合格!その通りだ!」
なにが合格なんだろ、と思いつつ、演劇じみたこのやりとりを芙綺はのんびり見つめていた。
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