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【17】大安吉日~恋の為ならなんでもするよ
ロミオ様、心底から笑う
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からかわれすぎてすっかりもう普通になってしまって、普が残念そうに言う。
「いっくんちっとも照れなくなった。えろい」
「あんだけいろいろやってりゃ慣れるって」
ハハ、と笑っていると児玉が尋ねた。
「それよかさっきの恋ってなんだよ。洒落た言い回しだな」
「そうかな?素直にその通りっていうか。この町と海を初めて見たとき、あんまり綺麗で、もうここがいいって即効で決めちゃったからさ。ほんと一目ぼれ。勿論、報国院も気に入ったよ?実力主義だし」
「勝気なみほりんには確かに合ってるかもね」
にぎやかに食事をしつつ、そう喋っていると、声をかけられた。
「―――――賑やかだな。試験お疲れ様」
そう声をかけてきたのは、三年の桜柳寮提督、前原だ。
「ちょっとお邪魔しまーす」
そういって顔をのぞかせたのは、お金先輩こと、梅屋だ。
「提督」
「お疲れ様です!」
桜柳寮の一年生が次々に挨拶する。
勿論、幾久も児玉も頭を下げる。
ふと、幾久は視線を感じた。
梅屋が楽しそうな目で幾久を見ていた。
(……なんだ?)
不思議に思いつつも、特に話しかけられる様子もなかったので幾久は大人しく席についたまま、桜柳寮生たちの話を聞いていた。
と、前原が幾久に尋ねた。
「乃木君、最近は御堀がお世話になったね」
「いえ、そんなの全然。むしろこっちが、誉……御堀君にお世話になりっぱなしで」
「いや、そんなのは全然かまわないよ。御堀も楽しそうだしね。ただ、あまり他の寮にばかり行くのは控えないと」
前原の言葉に、幾久は気づいた。
(これって、けん制だ)
そっか、と幾久は思う。
御堀は有能で、当然桜柳寮としては手放したくない人材だ。
だから桜柳寮の提督がわざわざこうして、幾久や御堀の様子を探りにきているのかと。
「オレがサッカーしたいって言ってるからなんです。勉強もみてもらったし」
「いや、かまわないと。そこは御堀だって賢いから、わきまえているさ。な?」
前原の問いに御堀は「そうですね」と頷く。
なんとなく微妙な空気が漂い始め、桜柳寮の一年生も、不穏な表情になってきている。
幾久は前原に微笑みつつ言った。
「じゃあ、今度から、オレが桜柳寮じゃなくて、学校に誘ったらいっすよね!」
幾久の言葉に前原が、ん?という表情になる。
「わざわざ御門寮に来て貰わなくても、学校ならサッカーできるし、今度から誉を誘って学校に行こう?うん、そうしよ!いいよね誉」
幾久が言うと御堀は苦笑した。
「そりゃ僕はかまわないけど」
「そっかー、誉が御門に来てくれるから、オレちっとも気づかなかったけど、オレがそっち行ったらいいんだよな。あ、そっか、だったら外郎食べ放題だし!」
「ちょっといっくん!どんだけ外郎好きなんだよ!」
「主食」
幾久の言葉に一年生がどっと笑い出し、前原はやれやれと苦笑した。
「相変わらずなようだな。じゃあ、乃木君、いつでも桜柳寮に遊びにきてくれ」
「あ、ハイッす」
幾久が頷くと、前原は梅屋と一緒にテーブルを去って言った。
三年生二人が去ると、一年生全員が顔を見合わせた。
「なんか迫力。やっぱ提督って雰囲気あるのな」
児玉が感心したように言うと、山田が言った。
「前原提督は真面目なんだよ。きちんとしてる」
「見るからにそんな感じだな」
児玉が言うと、普が頷く。
「梅やん先輩がふらついてる分、前原提督がきっちり締めてていいコンビだよ、あの二人」
「なるほど」
確かに梅屋は三年生というよりは、栄人の先輩といった雰囲気が強く、山縣とも仲がよくトリッキーな存在だ。
「本当は梅屋先輩が提督にっていうのもあったんだけど、向いてないからって前原提督になったんだって」
「それは判る。すごく判る」
幾久も頷く。
確かに、桜柳寮といえば変わり者の巣窟なので、梅屋がトップでもおかしくもなんともないが、変わり者の中の変わり者がトップに立つと収集がつかなくなってしまう気もしないでもない。
山田が言う。
「本当は、恭王寮も前原提督がどうかって話もあったらしいけど、前原提督じゃガチガチになるんじゃないかってなって、結局雪ちゃん先輩が引っ張られたんだってね」
「そうなんだ?」
確かに、あのまっすぐなきちんとした雰囲気の前原だと恭王寮はどこまでも真面目になりそうだ。
「タマ、前原提督だったら案外合ってたかも」
「まるで俺が雪ちゃん先輩と喧嘩したみたいな言い方すんなよ」
児玉が苦笑すると、確かにな、と幾久も笑った。
「でもさ、タマ君だって前期は鳳だったわけだし、だったら案外、桜柳寮に来てたのかもね」
普が言うと、児玉が苦笑した。
「ないって。俺、けっこうギリギリで鳳だったし実際鷹落ちしてるわけだし」
「でも次は鳳だろ?」
入江が言うと山田が言った。
「饅頭が落ちるからな」
「いや、やっぱここは味噌の鷹漬け、もとい鷹の味噌付」
なにがおかしいのか、そう言って入江が噴出すと山田が殴る、いつものパターンだ。
苦笑して見ながら児玉が答えた。
「あと、俺の事はタマでいい。君とかつけたら間抜けだし」
「―――――そっか」
普がほっとしたように山田を見ると、山田が言った。
「鳳来いよ、タマ」
そう言う山田に児玉は「おう」と笑った。
横で入江が「お前が落ちてたりな!」と言うと品川の肘が入江のみぞおちに入ったのだった。
さて、その日の夜の桜柳寮である。
試験期間はぴりぴりしていた寮内も、終わったばかりとあって空気は和やかだ。
さすがに今日は参考書を広げたり、すぐ勉強をしたり、ということもなく、ノートを広げて点数の確認とか、判らなかった問題を同級生や先輩に尋ねたり、いつもの桜柳寮になっていた。
そんな寮生たちの様子を穏やかに見つめる桜柳寮の提督、前原の前に一年生が現れた。
「前原提督、お話よろしいでしょうか」
御堀の言葉に前原は頷く。
(やっときたか)
やはり、と前原は思った。
桜柳祭で仕事を多く引き受けていた御堀は、桜柳寮での責任者のことまで尋ねられ、いっぱいいっぱいになってしまい、一度逃げ出してしまった。
その件については、前原のタイミングが悪かったと反省している。のだが。
その後、緊急の対処として御門寮に預かってもらったまでは良かったのだが、これまで普通に過ごしていたはずの御堀がやけに御門寮に肩入れするようになった。
最初は、地球部の舞台で御門寮の乃木幾久がどうも下手だという事で、御堀と頻繁に練習をしているのは聞いていたが、隙あらばというか、事あるごとに御堀は御門寮に行きたがった。
先日も、文化芸術祭の前に緊急事態があって、それは確かに仕方のないことだったらしいのだが、それでも御堀は御門寮に泊まりっぱなしだった。
さすがにそろそろ、自重してもらわないと困る。
一言注意をしようと思ったのだが、梅屋に『試験の後にしろ』と言われ、それもそうだとこの日まで待った。
(正式に、御堀を桜柳寮の提督にする為に)
前原は考えていた。
この寮で、御堀以上の人材はいない。
それは誰に尋ねても、いや、尋ねなくとも判っている事だ。
だからあえて、発表は早いほうがいい。
どうせもう決まっていることだ。
御堀はずっとこの寮に居て、そして桜柳寮を導いてくれる。
そう前原は信じていた。
「勿論だ御堀。じゃあ、移動を」
「その必要はありません。ここで大丈夫です」
言うと、御堀は前原の正面の席につき、両手を組んだ。
「寮についてですが。前原提督がおっしゃりたいことは、僕に、ちゃんとあるべき寮へきちんと所属せよ、という事ですよね」
「!勿論だ」
やはりちゃんとわきまえてくれているらしい。
前原はほっとして頷いた。
御堀が続ける。
「僕もずっと、自分の存在意義について考えていました。僕は鳳から落ちるつもりは勿論、首席から落ちるつもりもありません」
強気な発言に、前原は強く頷いた。
「それでこそ、わが寮の所属だ」
「桜柳寮が報国院から一番近い場所にあるのも、勉強に支障が出ないため、そして桜柳会にできるだけ参加できるため、ですよね?」
前原は頷く。
「勿論だ。わ桜柳寮は、鳳の為にあり、本来は鳳クラスだけで占めるものだ」
実際、桜柳寮に所属する生徒で、鷹落ちするのはごくわずかだ。
といっても落ちても戻ることが多く、まずそんなことはありえない。
首席で入学、そしていまだその席を譲らず。
昨年、一昨年の首席は御門寮に奪われてしまい、いくら桜柳寮と言ってもトップ不在の微妙な雰囲気であったが、ここに来てやっとトップを頂に据えることが出来る―――――そう前原は思っていた。
しかしである。
御堀はロミオ様スマイルと呼ばれる笑顔で微笑むと、前原に告げた。
「でも僕、桜柳会、キライなんですよね。面倒くさくて」
「え?」
「先輩達の仕事っぷりは見事の一言なんですが、雑用多すぎだし、面倒多すぎだし、正直もう絶対にやりたくないしやりたくないしやりたくないし、かといってやると言ったからにはやらないといけないんですけど極力サボりたいんですよね、正直言うと」
ちょっと待て。
前原は思った。
この饒舌な御堀は、自分が知っている御堀とずいぶんと違う。
「首席は譲るつもりはないんですけど、桜柳会に桜柳寮に、進学のことなんかさすがに僕でも無理なんですよね。桜柳寮は好きなんですけど。というわけで」
こほんと御堀はひとつ咳をつくと、晴れ晴れしい笑顔で言った。
「僕、御門寮に移寮します」
「いっくんちっとも照れなくなった。えろい」
「あんだけいろいろやってりゃ慣れるって」
ハハ、と笑っていると児玉が尋ねた。
「それよかさっきの恋ってなんだよ。洒落た言い回しだな」
「そうかな?素直にその通りっていうか。この町と海を初めて見たとき、あんまり綺麗で、もうここがいいって即効で決めちゃったからさ。ほんと一目ぼれ。勿論、報国院も気に入ったよ?実力主義だし」
「勝気なみほりんには確かに合ってるかもね」
にぎやかに食事をしつつ、そう喋っていると、声をかけられた。
「―――――賑やかだな。試験お疲れ様」
そう声をかけてきたのは、三年の桜柳寮提督、前原だ。
「ちょっとお邪魔しまーす」
そういって顔をのぞかせたのは、お金先輩こと、梅屋だ。
「提督」
「お疲れ様です!」
桜柳寮の一年生が次々に挨拶する。
勿論、幾久も児玉も頭を下げる。
ふと、幾久は視線を感じた。
梅屋が楽しそうな目で幾久を見ていた。
(……なんだ?)
不思議に思いつつも、特に話しかけられる様子もなかったので幾久は大人しく席についたまま、桜柳寮生たちの話を聞いていた。
と、前原が幾久に尋ねた。
「乃木君、最近は御堀がお世話になったね」
「いえ、そんなの全然。むしろこっちが、誉……御堀君にお世話になりっぱなしで」
「いや、そんなのは全然かまわないよ。御堀も楽しそうだしね。ただ、あまり他の寮にばかり行くのは控えないと」
前原の言葉に、幾久は気づいた。
(これって、けん制だ)
そっか、と幾久は思う。
御堀は有能で、当然桜柳寮としては手放したくない人材だ。
だから桜柳寮の提督がわざわざこうして、幾久や御堀の様子を探りにきているのかと。
「オレがサッカーしたいって言ってるからなんです。勉強もみてもらったし」
「いや、かまわないと。そこは御堀だって賢いから、わきまえているさ。な?」
前原の問いに御堀は「そうですね」と頷く。
なんとなく微妙な空気が漂い始め、桜柳寮の一年生も、不穏な表情になってきている。
幾久は前原に微笑みつつ言った。
「じゃあ、今度から、オレが桜柳寮じゃなくて、学校に誘ったらいっすよね!」
幾久の言葉に前原が、ん?という表情になる。
「わざわざ御門寮に来て貰わなくても、学校ならサッカーできるし、今度から誉を誘って学校に行こう?うん、そうしよ!いいよね誉」
幾久が言うと御堀は苦笑した。
「そりゃ僕はかまわないけど」
「そっかー、誉が御門に来てくれるから、オレちっとも気づかなかったけど、オレがそっち行ったらいいんだよな。あ、そっか、だったら外郎食べ放題だし!」
「ちょっといっくん!どんだけ外郎好きなんだよ!」
「主食」
幾久の言葉に一年生がどっと笑い出し、前原はやれやれと苦笑した。
「相変わらずなようだな。じゃあ、乃木君、いつでも桜柳寮に遊びにきてくれ」
「あ、ハイッす」
幾久が頷くと、前原は梅屋と一緒にテーブルを去って言った。
三年生二人が去ると、一年生全員が顔を見合わせた。
「なんか迫力。やっぱ提督って雰囲気あるのな」
児玉が感心したように言うと、山田が言った。
「前原提督は真面目なんだよ。きちんとしてる」
「見るからにそんな感じだな」
児玉が言うと、普が頷く。
「梅やん先輩がふらついてる分、前原提督がきっちり締めてていいコンビだよ、あの二人」
「なるほど」
確かに梅屋は三年生というよりは、栄人の先輩といった雰囲気が強く、山縣とも仲がよくトリッキーな存在だ。
「本当は梅屋先輩が提督にっていうのもあったんだけど、向いてないからって前原提督になったんだって」
「それは判る。すごく判る」
幾久も頷く。
確かに、桜柳寮といえば変わり者の巣窟なので、梅屋がトップでもおかしくもなんともないが、変わり者の中の変わり者がトップに立つと収集がつかなくなってしまう気もしないでもない。
山田が言う。
「本当は、恭王寮も前原提督がどうかって話もあったらしいけど、前原提督じゃガチガチになるんじゃないかってなって、結局雪ちゃん先輩が引っ張られたんだってね」
「そうなんだ?」
確かに、あのまっすぐなきちんとした雰囲気の前原だと恭王寮はどこまでも真面目になりそうだ。
「タマ、前原提督だったら案外合ってたかも」
「まるで俺が雪ちゃん先輩と喧嘩したみたいな言い方すんなよ」
児玉が苦笑すると、確かにな、と幾久も笑った。
「でもさ、タマ君だって前期は鳳だったわけだし、だったら案外、桜柳寮に来てたのかもね」
普が言うと、児玉が苦笑した。
「ないって。俺、けっこうギリギリで鳳だったし実際鷹落ちしてるわけだし」
「でも次は鳳だろ?」
入江が言うと山田が言った。
「饅頭が落ちるからな」
「いや、やっぱここは味噌の鷹漬け、もとい鷹の味噌付」
なにがおかしいのか、そう言って入江が噴出すと山田が殴る、いつものパターンだ。
苦笑して見ながら児玉が答えた。
「あと、俺の事はタマでいい。君とかつけたら間抜けだし」
「―――――そっか」
普がほっとしたように山田を見ると、山田が言った。
「鳳来いよ、タマ」
そう言う山田に児玉は「おう」と笑った。
横で入江が「お前が落ちてたりな!」と言うと品川の肘が入江のみぞおちに入ったのだった。
さて、その日の夜の桜柳寮である。
試験期間はぴりぴりしていた寮内も、終わったばかりとあって空気は和やかだ。
さすがに今日は参考書を広げたり、すぐ勉強をしたり、ということもなく、ノートを広げて点数の確認とか、判らなかった問題を同級生や先輩に尋ねたり、いつもの桜柳寮になっていた。
そんな寮生たちの様子を穏やかに見つめる桜柳寮の提督、前原の前に一年生が現れた。
「前原提督、お話よろしいでしょうか」
御堀の言葉に前原は頷く。
(やっときたか)
やはり、と前原は思った。
桜柳祭で仕事を多く引き受けていた御堀は、桜柳寮での責任者のことまで尋ねられ、いっぱいいっぱいになってしまい、一度逃げ出してしまった。
その件については、前原のタイミングが悪かったと反省している。のだが。
その後、緊急の対処として御門寮に預かってもらったまでは良かったのだが、これまで普通に過ごしていたはずの御堀がやけに御門寮に肩入れするようになった。
最初は、地球部の舞台で御門寮の乃木幾久がどうも下手だという事で、御堀と頻繁に練習をしているのは聞いていたが、隙あらばというか、事あるごとに御堀は御門寮に行きたがった。
先日も、文化芸術祭の前に緊急事態があって、それは確かに仕方のないことだったらしいのだが、それでも御堀は御門寮に泊まりっぱなしだった。
さすがにそろそろ、自重してもらわないと困る。
一言注意をしようと思ったのだが、梅屋に『試験の後にしろ』と言われ、それもそうだとこの日まで待った。
(正式に、御堀を桜柳寮の提督にする為に)
前原は考えていた。
この寮で、御堀以上の人材はいない。
それは誰に尋ねても、いや、尋ねなくとも判っている事だ。
だからあえて、発表は早いほうがいい。
どうせもう決まっていることだ。
御堀はずっとこの寮に居て、そして桜柳寮を導いてくれる。
そう前原は信じていた。
「勿論だ御堀。じゃあ、移動を」
「その必要はありません。ここで大丈夫です」
言うと、御堀は前原の正面の席につき、両手を組んだ。
「寮についてですが。前原提督がおっしゃりたいことは、僕に、ちゃんとあるべき寮へきちんと所属せよ、という事ですよね」
「!勿論だ」
やはりちゃんとわきまえてくれているらしい。
前原はほっとして頷いた。
御堀が続ける。
「僕もずっと、自分の存在意義について考えていました。僕は鳳から落ちるつもりは勿論、首席から落ちるつもりもありません」
強気な発言に、前原は強く頷いた。
「それでこそ、わが寮の所属だ」
「桜柳寮が報国院から一番近い場所にあるのも、勉強に支障が出ないため、そして桜柳会にできるだけ参加できるため、ですよね?」
前原は頷く。
「勿論だ。わ桜柳寮は、鳳の為にあり、本来は鳳クラスだけで占めるものだ」
実際、桜柳寮に所属する生徒で、鷹落ちするのはごくわずかだ。
といっても落ちても戻ることが多く、まずそんなことはありえない。
首席で入学、そしていまだその席を譲らず。
昨年、一昨年の首席は御門寮に奪われてしまい、いくら桜柳寮と言ってもトップ不在の微妙な雰囲気であったが、ここに来てやっとトップを頂に据えることが出来る―――――そう前原は思っていた。
しかしである。
御堀はロミオ様スマイルと呼ばれる笑顔で微笑むと、前原に告げた。
「でも僕、桜柳会、キライなんですよね。面倒くさくて」
「え?」
「先輩達の仕事っぷりは見事の一言なんですが、雑用多すぎだし、面倒多すぎだし、正直もう絶対にやりたくないしやりたくないしやりたくないし、かといってやると言ったからにはやらないといけないんですけど極力サボりたいんですよね、正直言うと」
ちょっと待て。
前原は思った。
この饒舌な御堀は、自分が知っている御堀とずいぶんと違う。
「首席は譲るつもりはないんですけど、桜柳会に桜柳寮に、進学のことなんかさすがに僕でも無理なんですよね。桜柳寮は好きなんですけど。というわけで」
こほんと御堀はひとつ咳をつくと、晴れ晴れしい笑顔で言った。
「僕、御門寮に移寮します」
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