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【14】星羅雲布~わたしの星の王子様
ほどけたものと、ほどけないもの
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校舎の外に出て、多留人は言った。
「いい先輩だなあ」
「うーん、いい先輩かどうかは置いといて、にぎやかな人だよ」
「あと彼女もちってうらやましい。可愛いかったし」
「いやー、わこ先輩も中々変わってるからなあ」
ウィステリアに行ったことのある幾久からしたら、杷子は最初からちょっと変な、山縣に似ているオタクな先輩だ。
「でもいい人じゃん」
「うん。そこは間違いないよ」
二人ともおせっかいで面倒見がいいのは間違いないので、多留人を預けるのは安心だ。
「あと、トッキ―先輩、元ケートスのユースだから、そういう話聞くの面白いかも」
「へー!そうなんだ!今はやってないんだ」
「他にやりたいことがあるからって辞めたんだって」
「そうなのか。残念だな」
二人は歩きながら、外の境内に並んでいる店を歩いた。
雑貨にゲーム、そしてマスターの店もあった。
通りがかると声をかけられ、幾久と多留人にコーヒーを奢ってくれたので、そこは得をしたので良かった。
「幾久、レスラーとも知り合いなんだな」
「ウン。うちの寮のOBでさ、ゴールデンウィークにバイトもした」
「言ってたな」
夏に再会してからずっと、多留人と幾久は頻繁に連絡を取っていた。
変な学校と寮のおかげで、話題に事欠くことはなかったし、多留人とサッカーの話をしていれば、何時間でも過ごせた。
「……幾久、あのさ」
「なに?」
「俺、ずっと気になってなんだけど」
深刻な多留人の声に、幾久は足を止めた。
「中二の頃、塾増やして連絡しなくなったのって、ひょっとして俺のせい?」
幾久はわけがわからず、首を傾げた。
二人でコーヒーをもって、石段の空いている場所に腰を下ろした。
「俺ら中学に上がる時さ、俺はユースに残れたけど、お前は落ちたじゃん」
「うん」
小学生の頃は幾久も、ルセロ東京と言う名の知れたサッカー一部リーグのユースという育成機関に所属していた。
だが、幾久は中学に入る前に落とされ、多留人は残った。
「それを実は気にしてたのかなって思って」
いつもなら、そんなことねーよ、気にしすぎ、と笑えるはずなのに、そう言えなかったのは多留人の言葉がとても重く感じてしまったからだ。
幾久はコーヒーを一口飲むと、正直に答えた。
「本当は、やっぱ気にした」
「だろ」
「そりゃさ、悔しいじゃん。多留人とオレで何回も勝ってきたのにさ、オレだけ落とされて。多留人はいるけど、オレの代わりなんか誰でもいいんだって思うとやっぱ悔しかったよ」
「そうだよな」
多留人は幾久の言葉を聞いて、ほっとしているようだった。
「かっつんも残ってオレだけ外されてさ。あー、これがプロになれる奴と、そうじゃない奴なのかあって最初にふるいにかけられたのは判っててさ。頑張れば少しだけなら、どうにかなるのも判ってた。けど」
「けど?」
「……母さんが、落ちたときに凄い喜んでて」
「……そっか」
思い出すつもりもなかったのに、幾久はなぜ自分が辞めてしまったのかを鮮明に思い出し始めていた。
サッカーをすると喜ぶ父、友達も出来て楽しかった。
だけど母はいつも嫌そうな顔で、多留人の両親が挨拶しても無視するような態度だった。
それでも幾久がユースを落ちたと知った時、少しくらいは、残念だったわね、とか元気出しなさいよ、くらいは言ってくれると思っていたのだ。母親だから。
「でも、母さんは喜んで『ほらみなさい!』って。『勉強に関係ない事をするからよ!』ってさ」
「言いたくないけど、お前のカーチャンは言いそうだよな」
何度も幾久の母親に失礼な態度をとられた多留人はぼそりと言う。
「これに懲りたら無駄なことはやめなさい、って言われて、オレのサッカーやってた時間ってなんだったんだろうって」
幾久は手に持っていた空の紙コップをくしゃりと潰した。
「ユースに残れて、結果が出てたら無駄じゃないって反論出来たけど、実際は落とされたわけで、無駄だって言われたらもう何も言えなくなってさ。かといって塾行くのもつまんねーし、学校なんか勉強ばっかだし」
「だよな」
「時々、ストリートで遊んでてもオレにはそこしかサッカーがねーのに、多留人とか、かっつんにはこれはオマケの遊びで、すげー楽しそうだったじゃん。オレもやってるときは楽しいんだけど」
一緒に遊んでいる時は楽しかった。
塾にさえ行けば母親は文句を言わなかったので、塾の合間を縫って多留人と遊ぶのだけが楽しみだった。
「けど、お前らには遊びで、オレにはなんか、それだけが救いみたいになってるなって思ったら、無理してつき合せてるんじゃねーのかなって」
「してねーよ」
「今ならそれが判るんだ。けど、そん時はそう思ったら申し訳ないとか、いろいろ考えちゃってさ」
どうあがいても、多留人たちと自分の向かう場所は違う。
そんなの当たり前の事なのに、それがどうしても辛かった。
「で、母さんは大学を考えろ、父さんと同じところに行けとか干渉が段々酷くなってきてさ」
今思えば、幾久には余裕が全くなかった。
母親の言うとおりにしておかないとヒステリーを起こされる。
どうせ幾久のいう事なんかこの人は聞いていない。
それなのに幾久は母親のいう事を聞かなければならない。
「正直、サッカーとかどころじゃなくなってた」
「そっか」
そんな時に、乃木希典のドラマでおちょくられて、いろいろあって爆発してしまった。そんな所だ。
「この学校に来てなかったら、オレ自分がどうなってたか全然わかんない」
子供で、ヒステリーをおこして、ここに来たばかりの頃はまるで嫌っている母親そのもののようだった。
東京が良い、いい大学に行かなくちゃ、こんな田舎、何ができる。
だけど父の言う三か月を過ぎて、自分で考えて、この無駄で馬鹿馬鹿しい生活が、どんなに必要か判った。
「オレ、ひょっとしたら、この学校に来てなかったら、多留人が連絡くれても会えなかったかも。変な意地はったり、疑ったりしたかも。コンプレックスこじらせたりしてそう」
何をいまさら、と思ったかもしれない。
面倒くさい、とか、なんか暇潰しの相手か?とか意地の悪い事を考えてしまったかもしれない。
素直に会えたのは、ここに居て、たくさんの人に会って楽しかったからだ。
「じゃあ、幾久には、ここがあってたんだな」
多留人の言葉に、幾久の脳裏にばっと夏の風景がよみがえった。
『―――――あのさ幾久。お前、居ろよここに』
オレンジ色に染まる空と、石橋の上で児玉が幾久に言った事だ。
『俺も、なんでって言えねえけど。でもお前はここが似合ってると思う』
そうだ。勘が働く児玉らしい。
幾久にはここがあっていた。
知らない場所なのに、おかえりと言ってくれる。
この田舎の港町の、小さな城下町の学校が、幾久にはあっていたのだ。
「うん。オレ、ここがあってたんだ」
先輩が居たのも、御門寮だったのも。ほかにいろんな人と出会えたのも。この学校に来たからだ。
「多留人と再会できて良かった」
素直に会いたい、と喜べたのは、自分が中学の頃を引きずったままじゃなく、新しく報国院の生徒になっていたからだ。
いまやっと、そのことに気づけた気がする。
「オレは絶対、ここに来る運命だったんだって思う、し、信じるよ」
もし未来の自分が存在するなら、どんなに辛くても苦しくても、きっと命令するだろう。
お前は報国院に行くべきだ、行け、と。
父親が言外にそう差し向けたように。
「それって、なんかスゲーじゃん」
幾久の言葉に多留人が言う。
「なかなかはっきりと、運命とかって言えないと思う」
「そうじゃなくてもいいんだ」
幾久はそう信じたのだから、もう本当にそうであるのかどうかは関係ない。
「だから、多留人に会えたのも、再会できたのも、運命」
「それかっけえな」
幾久の言葉に多留人も笑った。
「じゃあ、俺も運命使う。アンダー超えて代表になるわ。そんで、十代のうちにヨーロッパに呼ばれる」
「多留人なら出来るよ」
「おう。運命だもんな」
「そうだよ」
東京で別れた、とっくに消えたはずの繋がりは消えておらず、こんな遠い場所で繋がったのだ。
だったら、どこにもで繋がりそうな気がする。
「多留人が必要だっていうチームは絶対にあるよ」
「今もそう言われてる。一年レギュラーだぜ」
自慢げに言う多留人に幾久は言った。
「ま、多留人なら妥当かな」
「だっろ?」
「なんたって代表だし?」
「いまもそうだけどな」
才能がある多留人はアンダーなら代表に選ばれている。だけどまだ、枠に入っているだけで常に呼ばれる選手ではない。
「ぜってー選ばれてやるからな、俺」
「オレも負けてらんないなあ」
幾久が言うと、多留人が尋ねた。
「まずは何に勝つ?」
「うーん。今日は初めて生徒以外の前で演じるから、絶対に動揺せずに、オレの世界に引きずり込む!」
「おお、いいじゃん」
「そんで、なんか決める!」
「なんかって」
「なんか。よくわかんないけど、ゴール決めるみたいにどかーんって決める」
「応援するわ」
「やってやる」
うん、と頷いて二人はこぶしを握り、こつんとくっつけた。
きっともう、この先多留人と連絡が途切れることはこの先一生、二度とないのだと、幾久はわけもなくそう思った。
「いい先輩だなあ」
「うーん、いい先輩かどうかは置いといて、にぎやかな人だよ」
「あと彼女もちってうらやましい。可愛いかったし」
「いやー、わこ先輩も中々変わってるからなあ」
ウィステリアに行ったことのある幾久からしたら、杷子は最初からちょっと変な、山縣に似ているオタクな先輩だ。
「でもいい人じゃん」
「うん。そこは間違いないよ」
二人ともおせっかいで面倒見がいいのは間違いないので、多留人を預けるのは安心だ。
「あと、トッキ―先輩、元ケートスのユースだから、そういう話聞くの面白いかも」
「へー!そうなんだ!今はやってないんだ」
「他にやりたいことがあるからって辞めたんだって」
「そうなのか。残念だな」
二人は歩きながら、外の境内に並んでいる店を歩いた。
雑貨にゲーム、そしてマスターの店もあった。
通りがかると声をかけられ、幾久と多留人にコーヒーを奢ってくれたので、そこは得をしたので良かった。
「幾久、レスラーとも知り合いなんだな」
「ウン。うちの寮のOBでさ、ゴールデンウィークにバイトもした」
「言ってたな」
夏に再会してからずっと、多留人と幾久は頻繁に連絡を取っていた。
変な学校と寮のおかげで、話題に事欠くことはなかったし、多留人とサッカーの話をしていれば、何時間でも過ごせた。
「……幾久、あのさ」
「なに?」
「俺、ずっと気になってなんだけど」
深刻な多留人の声に、幾久は足を止めた。
「中二の頃、塾増やして連絡しなくなったのって、ひょっとして俺のせい?」
幾久はわけがわからず、首を傾げた。
二人でコーヒーをもって、石段の空いている場所に腰を下ろした。
「俺ら中学に上がる時さ、俺はユースに残れたけど、お前は落ちたじゃん」
「うん」
小学生の頃は幾久も、ルセロ東京と言う名の知れたサッカー一部リーグのユースという育成機関に所属していた。
だが、幾久は中学に入る前に落とされ、多留人は残った。
「それを実は気にしてたのかなって思って」
いつもなら、そんなことねーよ、気にしすぎ、と笑えるはずなのに、そう言えなかったのは多留人の言葉がとても重く感じてしまったからだ。
幾久はコーヒーを一口飲むと、正直に答えた。
「本当は、やっぱ気にした」
「だろ」
「そりゃさ、悔しいじゃん。多留人とオレで何回も勝ってきたのにさ、オレだけ落とされて。多留人はいるけど、オレの代わりなんか誰でもいいんだって思うとやっぱ悔しかったよ」
「そうだよな」
多留人は幾久の言葉を聞いて、ほっとしているようだった。
「かっつんも残ってオレだけ外されてさ。あー、これがプロになれる奴と、そうじゃない奴なのかあって最初にふるいにかけられたのは判っててさ。頑張れば少しだけなら、どうにかなるのも判ってた。けど」
「けど?」
「……母さんが、落ちたときに凄い喜んでて」
「……そっか」
思い出すつもりもなかったのに、幾久はなぜ自分が辞めてしまったのかを鮮明に思い出し始めていた。
サッカーをすると喜ぶ父、友達も出来て楽しかった。
だけど母はいつも嫌そうな顔で、多留人の両親が挨拶しても無視するような態度だった。
それでも幾久がユースを落ちたと知った時、少しくらいは、残念だったわね、とか元気出しなさいよ、くらいは言ってくれると思っていたのだ。母親だから。
「でも、母さんは喜んで『ほらみなさい!』って。『勉強に関係ない事をするからよ!』ってさ」
「言いたくないけど、お前のカーチャンは言いそうだよな」
何度も幾久の母親に失礼な態度をとられた多留人はぼそりと言う。
「これに懲りたら無駄なことはやめなさい、って言われて、オレのサッカーやってた時間ってなんだったんだろうって」
幾久は手に持っていた空の紙コップをくしゃりと潰した。
「ユースに残れて、結果が出てたら無駄じゃないって反論出来たけど、実際は落とされたわけで、無駄だって言われたらもう何も言えなくなってさ。かといって塾行くのもつまんねーし、学校なんか勉強ばっかだし」
「だよな」
「時々、ストリートで遊んでてもオレにはそこしかサッカーがねーのに、多留人とか、かっつんにはこれはオマケの遊びで、すげー楽しそうだったじゃん。オレもやってるときは楽しいんだけど」
一緒に遊んでいる時は楽しかった。
塾にさえ行けば母親は文句を言わなかったので、塾の合間を縫って多留人と遊ぶのだけが楽しみだった。
「けど、お前らには遊びで、オレにはなんか、それだけが救いみたいになってるなって思ったら、無理してつき合せてるんじゃねーのかなって」
「してねーよ」
「今ならそれが判るんだ。けど、そん時はそう思ったら申し訳ないとか、いろいろ考えちゃってさ」
どうあがいても、多留人たちと自分の向かう場所は違う。
そんなの当たり前の事なのに、それがどうしても辛かった。
「で、母さんは大学を考えろ、父さんと同じところに行けとか干渉が段々酷くなってきてさ」
今思えば、幾久には余裕が全くなかった。
母親の言うとおりにしておかないとヒステリーを起こされる。
どうせ幾久のいう事なんかこの人は聞いていない。
それなのに幾久は母親のいう事を聞かなければならない。
「正直、サッカーとかどころじゃなくなってた」
「そっか」
そんな時に、乃木希典のドラマでおちょくられて、いろいろあって爆発してしまった。そんな所だ。
「この学校に来てなかったら、オレ自分がどうなってたか全然わかんない」
子供で、ヒステリーをおこして、ここに来たばかりの頃はまるで嫌っている母親そのもののようだった。
東京が良い、いい大学に行かなくちゃ、こんな田舎、何ができる。
だけど父の言う三か月を過ぎて、自分で考えて、この無駄で馬鹿馬鹿しい生活が、どんなに必要か判った。
「オレ、ひょっとしたら、この学校に来てなかったら、多留人が連絡くれても会えなかったかも。変な意地はったり、疑ったりしたかも。コンプレックスこじらせたりしてそう」
何をいまさら、と思ったかもしれない。
面倒くさい、とか、なんか暇潰しの相手か?とか意地の悪い事を考えてしまったかもしれない。
素直に会えたのは、ここに居て、たくさんの人に会って楽しかったからだ。
「じゃあ、幾久には、ここがあってたんだな」
多留人の言葉に、幾久の脳裏にばっと夏の風景がよみがえった。
『―――――あのさ幾久。お前、居ろよここに』
オレンジ色に染まる空と、石橋の上で児玉が幾久に言った事だ。
『俺も、なんでって言えねえけど。でもお前はここが似合ってると思う』
そうだ。勘が働く児玉らしい。
幾久にはここがあっていた。
知らない場所なのに、おかえりと言ってくれる。
この田舎の港町の、小さな城下町の学校が、幾久にはあっていたのだ。
「うん。オレ、ここがあってたんだ」
先輩が居たのも、御門寮だったのも。ほかにいろんな人と出会えたのも。この学校に来たからだ。
「多留人と再会できて良かった」
素直に会いたい、と喜べたのは、自分が中学の頃を引きずったままじゃなく、新しく報国院の生徒になっていたからだ。
いまやっと、そのことに気づけた気がする。
「オレは絶対、ここに来る運命だったんだって思う、し、信じるよ」
もし未来の自分が存在するなら、どんなに辛くても苦しくても、きっと命令するだろう。
お前は報国院に行くべきだ、行け、と。
父親が言外にそう差し向けたように。
「それって、なんかスゲーじゃん」
幾久の言葉に多留人が言う。
「なかなかはっきりと、運命とかって言えないと思う」
「そうじゃなくてもいいんだ」
幾久はそう信じたのだから、もう本当にそうであるのかどうかは関係ない。
「だから、多留人に会えたのも、再会できたのも、運命」
「それかっけえな」
幾久の言葉に多留人も笑った。
「じゃあ、俺も運命使う。アンダー超えて代表になるわ。そんで、十代のうちにヨーロッパに呼ばれる」
「多留人なら出来るよ」
「おう。運命だもんな」
「そうだよ」
東京で別れた、とっくに消えたはずの繋がりは消えておらず、こんな遠い場所で繋がったのだ。
だったら、どこにもで繋がりそうな気がする。
「多留人が必要だっていうチームは絶対にあるよ」
「今もそう言われてる。一年レギュラーだぜ」
自慢げに言う多留人に幾久は言った。
「ま、多留人なら妥当かな」
「だっろ?」
「なんたって代表だし?」
「いまもそうだけどな」
才能がある多留人はアンダーなら代表に選ばれている。だけどまだ、枠に入っているだけで常に呼ばれる選手ではない。
「ぜってー選ばれてやるからな、俺」
「オレも負けてらんないなあ」
幾久が言うと、多留人が尋ねた。
「まずは何に勝つ?」
「うーん。今日は初めて生徒以外の前で演じるから、絶対に動揺せずに、オレの世界に引きずり込む!」
「おお、いいじゃん」
「そんで、なんか決める!」
「なんかって」
「なんか。よくわかんないけど、ゴール決めるみたいにどかーんって決める」
「応援するわ」
「やってやる」
うん、と頷いて二人はこぶしを握り、こつんとくっつけた。
きっともう、この先多留人と連絡が途切れることはこの先一生、二度とないのだと、幾久はわけもなくそう思った。
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