ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。

練太郎

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愛情表現……?

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 バタン

 俺たちはギルド長室に入り扉を閉める。これで人目を気にする必要はなくなったわけだ。

「…………」
「…………」
『…………』

 俺は黙り、ミラさんも黙り、シエナ達も黙る。
 俺は首を傾げ、ミラさんは俺に抱きつく力を強め、シエナ達は『声をかけてあげたらどうですか?』という目線をよこす。
 ……声をかけるって言ってもだな……俺はてっきりミラさんは怒っているものだと思っていたわけで……こんな反応をされることは想定していなかったのだ。いや、怒られることが前提なのはおかしいのかもしれないのだが……そこはあれだ。ミラさんだから。

 俺は頭をフル回転させて、彼女になんと声をかけようかと考える。
 まずミラさんがなんでこんな態度をとっているかが問題だ。
 俺に対するドッキリ? ミラさんは芸術的なまでのツンデレだから、こんな大胆な行動は取れないはずだ。
 一番ありえそうなのは、俺のことをずっと心配してくれていて、俺が帰ってきたのを見た瞬間感情が爆発して抱きつき、黙りこくっているという線だが……ミラさんに限ってそんな事ありえるかなぁ……
 しかし、それ以外思いつかなかった。ありえないがありえるかもしれない。ミラさんが俺のことを心配してくれていたとして声をかけよう。よし、決まりだな。

「えっと……ご心配をおかけしたようで……すみませんでした。危ない局面もありましたが、シエナとメリッサをなんとか守り切ることが出来ました。あと、ドラゴンも見つけましたよ! それと、スズナも俺のパーティーに加わってくれてですね。そこら辺の話もしたいんですけど……」
「……あなたが二度と戻ってこないんじゃないかって……そう思ったときもあったけど……私、あなたを信じていたわ……。あなたなら、シエナさん達を守って……無事に戻ってくるって……信じていたの……。偉いわ、エリック。あなたは……私の誇りよ」

 ミラさんが顔を上げる。珍しく彼女は俺に優しい表情を向けてきており……瞳を潤ませていた。
 俺とミラさんの視線が絡み合う。
 俺は彼女の瞳と、小さくパクパクしていた可愛らしい唇に吸い寄せられるようにどんどんと彼女に近づいていき、ミラさんもミラさんでつま先立ちをして俺に近づいてくる。 
 そのまま二人は再会のキスを――

「――って、何するのよエリック!」

 キスする寸前、ミラさんは正気に戻ったのか俺に強烈なビンタをお見舞いしてくる。
 あまりの威力に俺は体が宙に浮き……扉まで二メートルほど吹っ飛ばされた。

 ドンガラガッシャーンッ!

「あ、あんた……! ひ、人目があ、あるところで、よ、よくも私を……は、辱めようとしてくれたわね! ゆ、許さないわよ!」
「イタタタタ……って、いや、ちょっと待ってください! 確かに今のはその場の雰囲気に流された俺も悪かったですけど、ミラさんだって――」
「――言い訳無用! 男ならああいう状況になったら拒絶するのが役目ってもんでしょうが! そ、そういうことは……私とエリックの二人きりで、よ、夜とかに……って何言わせてんのよ! この変態!」

 色々と理不尽なことを言いながら、ミラさんは今回も律儀に靴を脱いで、生足で俺のことをゲシゲシと蹴ってきた。

「この! 変態! せっかくあんた達が! エリックが無事に帰ってきてくれて嬉しかったのに! もう台無しよ! もう一度緊急クエストやり直してきなさい! それで、さっきの場面をやり直しなさい!」
「んな無茶苦茶な! あ! ミラさん、お土産買ってきているんで、それでさっきのは帳消しに――」
「――そんなご機嫌取りに何度も何度も引っかかるわけ無いでしょ!? あんた馬鹿なの!? というか私をそんな物で釣らないでくれる!? 失礼でしょうが!」
「い、いや、俺はそんなつもりはなくてですね……ってシエナ達もそこで黙って見ていないで俺を助けてくれ!」 

 俺は彼女達に助けを求める。
 ソフィアはまだしも、俺の呪いについて知っているシエナ、メリッサ、スズナの三人は助けてくれるはずだ! ストレスで呪いが進行するかもしれないんだし。いや、おそらくはありえないだろうが。
 そう思っていたのだが……三人とも首を横に振ってくる。
 んな……バカな!

「エリック様……これはミラさんなりの愛情表現だと思うのです。ちゃんと怪我をしない程度に加減していらっしゃいますし、エリック様も満更でもなさそうな顔をしていらっしゃいますし……」
「あ、ああああ愛情ひょひょひょひょ表現じゃないわ! これは罰よ! お仕置きよ!」
「テンパり方が尋常じゃないですわね……こんなの『その通りです』って言っているもんですわ」
「え、エリック……君……Mやったんかいな……。……分かったで! ウチ、これからエリックには女王様みたいな態度で接していくからな! 大丈夫や! アニメとかでもそういうの見たことあるからちゃんと喜ばせてあげられるはずやで! このくそ豚がぁ! ってやればええんやろ?」
「やっちゃえミラさん! それでどさくさに紛れてヤッちゃえ! あと、私ともどさくさに紛れてヤッちゃいましょう!」
「ああもう話がややこしくなっただろうが! これなら助けなんて求めなきゃよかった!」

 恥ずかしさを紛らわせるために俺に八つ当たりをしてきているミラさんの足蹴りに耐えながら、この訳のわからない状況が収まるまでダンゴムシのように丸まっていた俺であった。
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