ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。

練太郎

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スズナの今後

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 次の日。
 今日も今日とて夜の見張りで寝不足気味な俺だったが、メガバチを飲んで元気を取り戻し……昨日中断していた馬車の修理をシエナとメリッサがパパっと終わらせた後、アルメルドに向かって馬車を走らせた。まあ、御者をしているのはシエナとメリッサだが。
 二人共肝が座ってきたのか、俺と同じくらい、いや、今は俺よりも馬車を飛ばしている。この感じだと今日の夕方くらいには俺達の街に着きそうだ。
 というわけで、着いてからどうしようかと目を閉じて考えることにした。
 まずはギルドに直行して、ミラさんに報告をするのがいいだろう。ドラゴンの居場所を教えてこれからどうするのかを聞くのと、俺の呪いについても色々と協力してもらう必要があるからな。
 あと、クエスト報酬もその場で貰いたい。今回の冒険でかなりお金を消費したからな。正直、全盛期の財産が見る影もなくなっている。早く大量の金貨を貰わないと手が震えてきそうだ。
 そうこうして報告と報酬を受け取った後は……スズナをどうするかだよなぁ。いや、俺のパーティーメンバーなんだから、クエストとかでは一緒になると思うんだけど……別に彼女は俺の奴隷でもなんでも無いし、一緒のところに住む理由は無い。
 まあ、お金を一銭も持っていないらしいし、手ぶらで放り出すなんてことはしないが……これに関しては今、直接聞いてみるか。
 ということで、俺の隣に座っていたスズナに声を掛ける。

「なあスズナ。街についたらどうする? 早急に解決しないといけないのは宿問題だと思うんだが」
「……そうやな……ウチ、一文無しやし……この世界のことを女神様から教えてもらったとはいえ、それはただの『知識』やからなぁ……。頼れる人といえば、エリックしかいいひんし……宿、どうしたらええんやろうなぁ……チラチラ」
「…………」

 スズナの言葉と目線を受けて俺は黙る。
 いや、彼女のお願いを受け入れるのに問題はない。スズナを俺の家に招き入れて、気が済むまで住んでもらっても俺としてはいいのだ。
 しかし……なんというか、彼女の場合はシエナとか、メリッサのときとは違って家に上がってもらうのに勇気がいるというか……。
 ほら、シエナたちは俺の奴隷ということで家に迎えるハードルは低かったわけだけど……スズナは普通の女性じゃん? そうなるとハードルが高くなるじゃん? この違いを分かってくれ。
 ……といっても、このまま放っておくのはよろしくない。このハードルどうこうの話は俺の気持ちの問題だし、彼女がせっかく俺を頼ってきてくれているのだ。ここは男らしい返答をするのがいいだろう。

「……スズナさえ良ければ、俺の家を宿代わりとしてもいいぞ? 金を取りはしないし、ご飯もちゃんと出す。まあ、俺のパーティーに入ったんだしな。面倒は見るさ。シエナとメリッサも文句は言わないだろうし」
「――ほんまか! ありがとうな、エリック! やっぱ、君は優しいなぁ。漫画的表現をするなら今のウチは『トゥンク』状態やわ!」

 スズナは俺の手を握ってブンブンと上下に振ってくる。
 ……よく分からんが、喜んでくれているようなので良かった。


 これにてスズナの今後の宿は決まったということで……彼女に関連する他の問題も一応聞いておくか。

「スズナ。今のお前の服はシエナの服を借りているんだったっけ?」
「そうやで」
「ふむ。それならいつまでも借りているってわけにはいかんだろう。もしよければ――」
「――え!? エリックがウチの服を買ってくれるん!?」

 目をキラキラさせながらかぶせ気味に聞いてくる。
 俺は彼女の勢いに若干驚きながらも首肯する。

「ああ。スズナは俺のパーティーメンバーだしな。なんでもかんでも貰い受けるっていうのは気分が良いものではないかもしれないが……せめて必要最低限の服、あとは防具や武器は揃えないと。それがなかったらそもそも冒険者としてやっていけないし」
「それはめちゃくちゃ嬉しい提案やけど……ウチがそんなにいっぱいもらってもええんか……? 勇者っていっても、本当に壁にしかなられへんで……?」

 あまりにも俺がポンポンとあれやこれやを買ってあげると言ったせいか、スズナの勢いが急にそがれる。
 別に遠慮するようなことではないんだけどな。

「タンク役だって立派な冒険者の職業だぞ? それに……この前は恥ずかしくて言えなかったが……俺はお前に出来る限り傷ついてほしくない。いくら『不死身』だとはいえ、怪我をしたら痛いだろう? だから、ちゃんとした服、まあ、これは正直ちゃんとしてなくても良いかもしれないが……シエナとメリッサが良いものを着ているからな。お前にも同等のものを着させてやりたい。あと、防具! これはタンク役にとって重要なもの! だから、最高に良いものを用意したい。まあ、武器は……対モンスターではなくて、護身用のものを持っておくのが良いだろう。スズナの顔とスタイルなら暴漢が襲ってくるかもしれないからな。長くなってしまったが、そういうわけで服だけとは言わない。装備一式も俺が揃えてやる。これは俺がしたくてしていることだから、スズナは『バカな男が自分に貢いでいる』みたいな感じで思っておけばいい。分かったか?」

 色々と思い浮かべるために目線を宙に向けて話していたので、スズナの顔をよく見ていなかったのだが……ちらりとご機嫌伺いのように彼女を見てみると……笑顔でありつつも涙を流していた。いわゆる嬉し涙というやつだろう。

「ご、ごめんな……こんなブスな泣き顔見せてもうて。でも、ウチ……ここまで色々してくれるなんて思って無くて……。ウチが、してほしいけど無理やろうな、それは願い過ぎやって心の中で思っていたことを全部してくれて……ホンマに嬉しくて……ありがとう、ありがとうな、エリック……」

 俺は泣いている彼女の頭を撫でてあげる。
 彼女も彼女で色々と遠慮していたらしい。まあ、今の所俺達に頼りっきりな状況を見て思うところがあったのだろう。
 (今度からはスズナが遠慮しないようにもっと気を回そう。)
 そう心の中で決める俺だったが、ふと前に視線を向けてみると……シエナとメリッサがこちらの話を聞いていたようで、親指を立てて『よくやった』という目線を送ってきていた。俺も力強く首肯し、それに答える。
 なんというか、俺、超男らしいことしたんじゃね? いや、やっていることは服とか装備を買ってやる! って感じだけど……今の俺、もしかしてイケメン?
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