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楽しい追いかけっこ
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「ギュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!」
俺達がダッシュで逃げた後、ドラゴンが『え、お前そんな鳴き声なの!?』というような声を出してから……バッサバッサと翼をはためかせながら追いかけてきた。
対する俺はユニークスキルと筋力アップのあわせ技で『タタタタッ!』と人間ではありえない速度で洞窟を駆けていく。今の所ドラゴンの速さとは五分五分って感じだな。
最初は逃げることに全神経を集中していたのだが、後ろからドラゴンが迫ってくるというのは、まるで死神が鎌を持って追いかけてくるのと等しいわけで、とてつもない死の恐怖を感じるわけである。というわけで、少しでもそれを紛らわすために俺はお姫様抱っこをしている女性に声をかけることにした。
「なあ! あんた名前は!?」
「うちは涼奈《すずな》! 如月涼奈《きさらぎすずな》っていうんや! さっきは助けてくれてありがとうな! このままドラゴンの手の中で死ぬんかと思っていたんやけど、君に命救われたわ! 死亡フラグみたいやけど、このドラゴンから逃げきることが出来て、生きて帰ってこられたら君と籍を入れてもええよ! 君、結構度胸あるし! 中々ウチ好みイケメンやし! この状況だって、少女漫画のワンシーンみたいやない!?」
「スズナか! 珍しいがいい響きがする名前だな! で、籍を入れるって!? あんたのその提案はどうかと思うが、それも一興かもしれないな! ただ、俺はすでに二人と結婚している既婚者だぞ! それも昨日ようやく二人目と結婚の誓いをしたばっかりのな! 流石にそんな状況の中、あんたとも即日結婚します! みたないことになったら怒られそうだ!」
「いや、そこは『なんでやねん!』ってツッコむところやろ!? マジレスで返されたらどないしたらええんか分からんわ! でも、あんたが――」
スズナが何かを言いかけた瞬間、今まではただ俺達を追いかけるだけだったドラゴンがとびきりでかい咆哮を上げて……大きく口を開けてくる。
あくびかな? と思ったのだが……段々と開けている口の奥が明るくなってきて……俺はようやくドラゴンが何かの攻撃をしようとしているのだと気がつく。
「スズナ! 不味いことになった! あいつ、炎かなにかを吹くつもりだ! 今、その攻撃の準備をしているっぽい!」
「そりゃあかん! ゲームとかの知識やけど、多分『ドラゴンブレス』とかそういうものを撃つつもりやと思うで!? 早くなんとかして攻撃を避けるんや! あんな攻撃をまともに受けたら――死んでまうで!」
お姫様抱っこをされていたスズナが、胸をバルンバルンとさせながら焦った声を出す。
……この超弩級の胸が背中に当たったら不味いと思ってお姫様抱っこをしていたんだが……この体勢はこの体勢で視覚に直接訴えかけてくるなぁ……。こっちも駄目だったか。
というか、まじでデカイよな……。今まではシエナとメリッサのものを見たときに『おっぱいだ!』ってなっていたんだけど……これを見たら『おっぱい……なのか?』ってなりそう。もし、こんなことを口を滑らして言ってしまったら殴り殺されそうだけど。
……あ、そんなことを考えている場合じゃなかったわ。後ろをちらりと見ると、もう攻撃する寸前! というような感じで口から溢れんばかりの明るい光が発せられていた。本当に不味い状況になっているらしい。
俺は頭を切り替えて、急いで対策方法を考える。
まず『ドラゴンブレス』というものの威力が分からない。ただ、討伐難易度『死』のモンスターの攻撃だからめちゃくちゃ強いと仮定する。弱い訳がないからな。
その攻撃をこの状況下でなんとか防がないといけないが……おそらくは範囲攻撃だろうから盾とかで防げるものではない。というか盾を俺は持っていない。
攻撃は最大の防御ということで、こちらも攻撃魔術をぶっ放すということも良いかもしれないが……今回は相手が悪い。ローラをもってしても、ドラゴンの攻撃を相殺するだけの攻撃魔術は撃てないだろう。
となれば、必然的に魔術でなんとか防ぐしか方法が無いわけである。で、超強力な攻撃を受け切る事ができるものといえば……アレしかないだろう。
俺は使用する魔術を脳内で決めて……まずは片手を自由に使えるようにならないと何もできないということで、スズナに『左手を離すから、しっかりと俺にしがみついておいてくれよ!』と言い……左手を離す。
彼女は言われたとおり、超高速で走っている俺から振り落とされないようにギュギュギュ、というような感じで密着してきて……お、お胸が……はちきれんばかりのお胸が俺に……! というような状況になる。普通の男冒険者であれば、こんな状況になったら息子を一瞬で大木のように大きくしてしまうだろう。しかし、俺はS級ランクの冒険者。冷静沈着に息子を枝レベルで大きくするだけに留まった。よく耐えたな! 流石は特S級の息子だ!
今この場で息子をよしよしとしたいところだったが、俺達はドラゴンに追いかけられていて、今にも攻撃を受けそうな状況である。
俺はもう一度頭を切り替えて、先程決めていた魔術を起動する。
「《アイギス》!」
刹那。俺達を上下左右隙間なく取り囲むような形で、透明な分厚い壁のようなものが展開される。
起動時に魔力がごっそりと削られたが……これが俺が出せる最も強固な魔術障壁だ。さあ、壊せるものなら壊してみろ! あ、いや、本当に壊されると非常にまずい状況になるので止めていただきたいんですが。
ドラゴンの方もチャージが完了したのか追いかけるのを一旦止めて、その場に滞空し……スズナが言うところの『ドラゴンブレス』を俺達にかましてきた。
俺達がダッシュで逃げた後、ドラゴンが『え、お前そんな鳴き声なの!?』というような声を出してから……バッサバッサと翼をはためかせながら追いかけてきた。
対する俺はユニークスキルと筋力アップのあわせ技で『タタタタッ!』と人間ではありえない速度で洞窟を駆けていく。今の所ドラゴンの速さとは五分五分って感じだな。
最初は逃げることに全神経を集中していたのだが、後ろからドラゴンが迫ってくるというのは、まるで死神が鎌を持って追いかけてくるのと等しいわけで、とてつもない死の恐怖を感じるわけである。というわけで、少しでもそれを紛らわすために俺はお姫様抱っこをしている女性に声をかけることにした。
「なあ! あんた名前は!?」
「うちは涼奈《すずな》! 如月涼奈《きさらぎすずな》っていうんや! さっきは助けてくれてありがとうな! このままドラゴンの手の中で死ぬんかと思っていたんやけど、君に命救われたわ! 死亡フラグみたいやけど、このドラゴンから逃げきることが出来て、生きて帰ってこられたら君と籍を入れてもええよ! 君、結構度胸あるし! 中々ウチ好みイケメンやし! この状況だって、少女漫画のワンシーンみたいやない!?」
「スズナか! 珍しいがいい響きがする名前だな! で、籍を入れるって!? あんたのその提案はどうかと思うが、それも一興かもしれないな! ただ、俺はすでに二人と結婚している既婚者だぞ! それも昨日ようやく二人目と結婚の誓いをしたばっかりのな! 流石にそんな状況の中、あんたとも即日結婚します! みたないことになったら怒られそうだ!」
「いや、そこは『なんでやねん!』ってツッコむところやろ!? マジレスで返されたらどないしたらええんか分からんわ! でも、あんたが――」
スズナが何かを言いかけた瞬間、今まではただ俺達を追いかけるだけだったドラゴンがとびきりでかい咆哮を上げて……大きく口を開けてくる。
あくびかな? と思ったのだが……段々と開けている口の奥が明るくなってきて……俺はようやくドラゴンが何かの攻撃をしようとしているのだと気がつく。
「スズナ! 不味いことになった! あいつ、炎かなにかを吹くつもりだ! 今、その攻撃の準備をしているっぽい!」
「そりゃあかん! ゲームとかの知識やけど、多分『ドラゴンブレス』とかそういうものを撃つつもりやと思うで!? 早くなんとかして攻撃を避けるんや! あんな攻撃をまともに受けたら――死んでまうで!」
お姫様抱っこをされていたスズナが、胸をバルンバルンとさせながら焦った声を出す。
……この超弩級の胸が背中に当たったら不味いと思ってお姫様抱っこをしていたんだが……この体勢はこの体勢で視覚に直接訴えかけてくるなぁ……。こっちも駄目だったか。
というか、まじでデカイよな……。今まではシエナとメリッサのものを見たときに『おっぱいだ!』ってなっていたんだけど……これを見たら『おっぱい……なのか?』ってなりそう。もし、こんなことを口を滑らして言ってしまったら殴り殺されそうだけど。
……あ、そんなことを考えている場合じゃなかったわ。後ろをちらりと見ると、もう攻撃する寸前! というような感じで口から溢れんばかりの明るい光が発せられていた。本当に不味い状況になっているらしい。
俺は頭を切り替えて、急いで対策方法を考える。
まず『ドラゴンブレス』というものの威力が分からない。ただ、討伐難易度『死』のモンスターの攻撃だからめちゃくちゃ強いと仮定する。弱い訳がないからな。
その攻撃をこの状況下でなんとか防がないといけないが……おそらくは範囲攻撃だろうから盾とかで防げるものではない。というか盾を俺は持っていない。
攻撃は最大の防御ということで、こちらも攻撃魔術をぶっ放すということも良いかもしれないが……今回は相手が悪い。ローラをもってしても、ドラゴンの攻撃を相殺するだけの攻撃魔術は撃てないだろう。
となれば、必然的に魔術でなんとか防ぐしか方法が無いわけである。で、超強力な攻撃を受け切る事ができるものといえば……アレしかないだろう。
俺は使用する魔術を脳内で決めて……まずは片手を自由に使えるようにならないと何もできないということで、スズナに『左手を離すから、しっかりと俺にしがみついておいてくれよ!』と言い……左手を離す。
彼女は言われたとおり、超高速で走っている俺から振り落とされないようにギュギュギュ、というような感じで密着してきて……お、お胸が……はちきれんばかりのお胸が俺に……! というような状況になる。普通の男冒険者であれば、こんな状況になったら息子を一瞬で大木のように大きくしてしまうだろう。しかし、俺はS級ランクの冒険者。冷静沈着に息子を枝レベルで大きくするだけに留まった。よく耐えたな! 流石は特S級の息子だ!
今この場で息子をよしよしとしたいところだったが、俺達はドラゴンに追いかけられていて、今にも攻撃を受けそうな状況である。
俺はもう一度頭を切り替えて、先程決めていた魔術を起動する。
「《アイギス》!」
刹那。俺達を上下左右隙間なく取り囲むような形で、透明な分厚い壁のようなものが展開される。
起動時に魔力がごっそりと削られたが……これが俺が出せる最も強固な魔術障壁だ。さあ、壊せるものなら壊してみろ! あ、いや、本当に壊されると非常にまずい状況になるので止めていただきたいんですが。
ドラゴンの方もチャージが完了したのか追いかけるのを一旦止めて、その場に滞空し……スズナが言うところの『ドラゴンブレス』を俺達にかましてきた。
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