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鋼の意思

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 で、用は済んだので寝ようとしたのだが……グイッとメリッサが俺の服を引っ張ってくる。
 ……?

「いや、もうするべきことは終わったと言うか、これ以上俺から言うことは無いんだが?」

 しかし、黙ったままメリッサは不満げに首を横に振る。
 何を求めていると言うんだ?
 分からずに頭を捻っていると……彼女は瞳を閉じて……唇を少しだけ俺の方に突き出してきた。
 ……ほう。なるほどなるほど。
 シエナの方を見てみると……親指を立ててグッジョブと無言で言ってきていた。
 ……なるほどー。オッケーだということですな? では遠慮なく……
 俺は少しずつ近づいていって……彼女とは二度目のキスをする。
 いつもどおり、ついばむようなキスで終わるんだろうと思っていたのだが……メリッサの長い耳がいきなりビビンッ! と立ったかと思えば……俺の頭を逃がさんとばかりに鷲掴みにしてきて……彼女自ら舌を入れてきた。

「ン゛ン゛ン゛ン゛!」(痛い! 頭が痛い!)
 
 口を塞がれているので声が出せず、呻くことしか出来ない。
 いや、こいつマジで力加減がおかしいって! 頭が割れる! 頭が割れるから! 
 というか、そんな頭を押さえつけなくても求めてきたらやってあげるって!

 たっぷり五分ほど地獄を味わった後、メリッサはようやく頭を離してくれて、ぷはぁ! と息継ぎをする。

「し、しちゃいましたわ……ついにエリックと大人なキッスをしちゃいましたわ! うふ、うふふふふ……これが……エリックの味……」

 イッている目をしながらなにやら怖いことを言ってくる。
 ……ようやく解放された……というか、俺の頭から血が出ているんですが、それに関しては何か一言無いんですかね?
 彼女に小言を言いたいのは山々だったのだが、喜んでいる? ことには間違いなかったので、今回ばかりは何も言わないでおくことにした。
 ……まあ、次回も同じことをしたらお叱りだがな。


 で、今度こそやることはやったので寝ようと思い、布団の中へと入る。シエナとメリッサは着ていたネグリジェを何故か脱ぎ捨て、左右に分かれて彼女たちも布団の中に入ってきた。
 ……今日は暑い日だっけ? それでも全裸はいけないと思うんだけど。まあ……いいか。

「よし、じゃあロウソクの火を消すぞ?」
「はい、お願いします」
「な、なるほど……暗闇の中でするというわけですわね」

 ……え? なにをするの? いや、なんとなく見当はついたが……明日の早朝、この街を出るんだぞ……? まあ、気のせいだろう。こういうのは気にしないのに限る。
 というわけで、ロウソクに息を吹きかけて……火を消す。
 瞬間。部屋は暗闇に包まれて……月の光だけが俺達を照らし出した。
 
「じゃあ、おやすみー」

 そう言って俺は目を閉じる。
 ここは先手必勝だ。俺が寝てしまえば彼女たちも諦めて寝てくれるだろう。
 いや、シても良いのだが……明日絶対しんどくなるし……。別にシたくないわけじゃないんだよ? むしろシたいけど……
 そんなことを心のなかで考えていると、体内時計で十分が経過した。
 そろそろ諦めてくれたかな? と思ってちらりとまずはメリッサを見てみると……彼女と目線が合った。
 メリッサは……発情した顔をしており、かつ獲物を狙っている目をしていた。
 (……これ、俺が寝静まったら絶対襲ってくるな……)
 未来を予知して若干怖くなったので、安心するために今度はシエナの方をちらっと薄目で見てみると……彼女とも目が合った。
 シエナの方はというと、メリッサと違って発情したような感じはなく、ただただ俺を見てきているようだったのだが……目が合って数瞬後、彼女はたまに見せる妖艶な表情をしてきて……えー、なになに……『え・っ・ち・し・ま・せ・ん・か?』と無音声でそう言ってきているようです。
 …………エリック、お前はここで流されてはいけない。お前はここでブレーキを踏まなければいけないんだ。明日のことを考えて、S級の冒険者としてここは『ヤラん!』と言わなきゃ駄目なんだ!
 俺は鋼の意思を持ってシエナから目線を外し、目を再び閉じる。
 俺はなんと言われてもシない。絶対にシない! これは決定事項だ! 覆ることなんてありえない! 俺はそんなにチョロくないぞ!
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