ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。

練太郎

文字の大きさ
上 下
61 / 108

準備

しおりを挟む
 翌日。体力が回復した俺達は、次なる目的地へと馬車を走らせる。
 今日向かうのは、大昔に傷ついたドラゴンが羽を休めたと言われているところで、その近辺ではよく強力なモンスターが出現するらしい。危険なところではあるが、モンスターがいる確率も高そうなので行くことに決めたのだ。


 街を出てから三時間後。俺達は目的地に到着した。
 馬車から降りて、周辺を見渡してみる。

「……なんというか……今までのどの場所よりも不気味な感じがしますね。鳥肌が立ってしまいました」
「ですわね……。それに……嫌な予感もしますわ」

 二人が、森から出ているなんとも言えないオーラを感じで怯えてしまう。
 確かに、この森からは踏み入れてはいけないオーラを感じる。普段の俺ならこんなところに足を踏み入れたりしないのだが……

「俺達はドラゴンの捜索という緊急クエストを請け負っている。とんでもないオーラが出ているということは、ドラゴンがいる可能性も高いということだ。まあ、怖がる必要はない。俺が付いているんだ。どしっと構えて周りに注意を払っていたら大丈夫だ」

 S級ランクでもペーペーな俺が言うことに安心感なんてあるのかとも思ったが……シエナとメリッサは不安が消えたようで、明るい顔で『はい!』と言ってきた。

 装備を確認した後、いよいよ探索に出発しようと思ったのだが……
(……あ。あれを忘れていたな……危ない危ない)

 俺はポケットからいつもの異常回復ポーションと少し違うものをシエナに渡す。

「この前はそこまで危険そうじゃなかったから使っていなかったんだが……この森では常にユニークスキルを使って警戒をする必要がありそうだ。というわけで、この異常回復ポーション改を飲んでくれ。こいつは異常を回復する効果が三時間も続くすぐれものでな。値段は高かったが……まあ気にせず飲んでくれ」

 いつもの異常回復ポーションが銀貨一枚、この異常回復ポーション改は金貨五枚もするのだが……効果が凄いし、命には変えられないからな。
 シエナは早速ごくごくと飲み……全てを飲み干す。よし、これで大丈夫だな。
 彼女の準備が整ったところで、俺達は全員同時にユニークスキルを……って危なっ! 

「――ちょっとユニークスキルを使うのを待ってくれ! メリッサ、お前のユニークスキルってなんだ? 聞くのを忘れていたんだが」

 彼女をパーティーに迎え入れて結構な時間が経っていたが、重要なことを聞いていなかったことにいまさら気がついたのだ。昔、一度だけ彼女とクエストを受けたが……あのときは発情させてしまったがために彼女のユニークスキルを見聞きできなかったし……

「そういえば言ってませんでしたわね。わたくしのスキルは『近くにある草木を自分の意のままに操れる』というものですわ! 主な用途としては、動かないはずの木の枝をムチのようにしなやかに動かして、モンスターの足止めとかをしたりする感じですの!」

 メリッサが自分の腕をうねうねとさせてイメージを教えてきてくれた。
 ……これまた凄い……ユニークスキルだな……
 エルフは昔は森に住んでいて、森の守り人の役割をしていたとされる種族だから、そういう超能力みたいなことを出来るのだろう。分からんけど。
 しかし、そんな凄いことが出来るなら……

「ユニークスキルの副作用な何なんだ? 結構凄そうだが……」
「いえ、大したことではありませんわ。一定の確率で自分の思い通りにならない木が出てきて、わたしくの体を拘束してきたり色々ちょっかいをかけてくるとか、そんな感じですし。それに、シエナさんのユニークスキルがあれば副作用を帳消しにできますから問題ないですわ!」

 しれっとシエナのユニークスキルを知っていることを教えてきた。
 ……まあ、二人きりの時にそういう話もしたんだろう。説明が省けてラッキーだな。
 今聞いた限りの話だと、特に使わない理由もないし、彼女にもスキルを使ってもらうことにした。

「分かった。じゃあ、もう一度三人同時でユニークスキルを使うぞ。さん、にい、いち、はい!」

 俺は聴力強化に身体機能強化、視力強化に魔術威力強化を施した。これくらいやっておけば問題ないだろう。頑張ればもう少し強化項目を増やせるが……それをすると体力がものすごい速さで削られていくからな。ドラゴンが出てくるまではここくらいで収めておくのがいいだろう。
 え? 同時にユニークスキルを使う意味があるかって? んなもん無い。気分である。
 シエナとメリッサもしっかりとスキルを発動したらしいので、俺達は気を引き締めてこの不気味な森の中へと入っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

処理中です...